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データ転送の不安を解消!AWS DataSyncの実践ノウハウと運用ポイント

データ転送の不安を解消!AWS DataSyncの実践ノウハウと運用ポイント
クラウド移行やデータバックアップで注目される「AWS DataSync」。本記事は、システム・アプリ開発を行っているGMOデザインワンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、オンプレミスとAWS間のデータ同期を安全かつ効率的に行うためのポイントを、導入手順・構成・運用設計からトラブル対策・コスト最適化まで徹底的に解説します。AWS活用に課題を感じているインフラエンジニアにとって必読の内容です。

目次

1. AWS DataSyncとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)やクラウド導入が進む中、オンプレミスのシステムとクラウド環境との間でいかに安全かつ効率的にデータを同期・転送するかは、社内・顧客向けITインフラを支えるエンジニアにとって重要な検討テーマです。

AWS(Amazon Web Services)が提供するDataSync(データシンク)は、こうした課題に応える強力かつ柔軟なデータ転送サービスです。オンプレミスとAWSのストレージサービスの間で大量のファイルデータを高速に、そしてセキュリティを高く保ちながら転送できます。

ここでは、DataSyncの基本的な概要と特長、そして導入することで得られる代表的なメリットについて解説します。

1-1 サービス概要と主な特徴

AWS DataSyncは、企業内のサーバーやNAS(ネットワーク接続ストレージ)などのオンプレミス環境と、AWSクラウド内の各種ストレージ(Amazon S3、EFS、FSxなど)の間で、ファイルベースのデータを自動・高速・安全に転送できるサービスです。

最大で10Gbps(ギガビット毎秒)のスループットが可能とされているため、数TB(テラバイト)規模の転送も処理可能。転送時は、暗号化・チェックサムによる整合性確認など、セキュリティ面にも配慮されています。タスクはGUI(管理画面)ベースで設定可能で、特別なスクリプトを書く必要がなく、利用開始までの時間が短いのも特徴です。

DataSyncは、単発のファイル転送だけでなく、定期的な同期や自動スケジュールによる実行も可能。これにより、クラウドとのバックアップや継続的なレプリケーションの仕組みも簡単に導入することができます。

1-2 利用するメリットとユースケース

AWS DataSyncを活用することで得られる代表的なメリットは以下の3つです。

- 作業の自動化:スクリプトや手作業なしに、GUIと設定のみで運用を行え、定期的な転送も自動化できます。

- パフォーマンス:ネットワーク最適化が施された転送エンジンにより、大量データの転送でもスピードが落ちにくい設計です。

- セキュリティ:DMA(データ整合性確認)や通信の暗号化により、コーポレートデータや顧客情報も安全に転送可能です。

ユースケースとしては、クラウド移行プロジェクト、複数拠点間でのログ共有、バックアップアーカイブ対応、さらには法令準拠に向けた監査データの保存など、幅広い業務での活用が期待されます。

2. オンプレミスとのデータ同期の基本戦略

オンプレミス環境に存在する既存データをAWS上に正しく、計画的に同期するには、いくつかのポイントを事前に押さえておく必要があります。

特に、どのデータをいつ、どのように転送するのかといった同期設計と、ネットワーク帯域を意識した負荷分散の計画は、DataSyncを活用する上で重要です。

ここでは、データ同期を安全かつ効率的に進めるための基本戦略を解説します。

2-1 同期対象データの選定

まず検討すべきは、「どのデータをクラウドと同期すべきか」という点です。全てのデータを転送するとコストや時間がかかりすぎることもあるため、ビジネス的・技術的な必要性に応じて、優先順位をつけましょう。

例えば、頻繁に更新されるアプリケーションログや、定期的にバックアップしたいプロジェクトファイルなどは即時性が高いため同期対象として適しています。

逆に、業務には使わない長期保管用データなどは、初期の一括マイグレーション後にGlacier(低コストストレージ)などへ自動で移す設計が望ましいです。

2-2 頻度とトリガーの設計

DataSyncでは、同期の頻度や実行のタイミング(トリガー)を柔軟に設定することが可能です。1日に数回の定期スケジュールから、1時間ごとの同期、夜間のバッチ転送など、業務スタイルに合わせて設計しましょう。

例えば、日中の業務時間帯に高負荷な転送を行うとネットワークに影響する場合があります。そのため、夜間や週末に限定したスケジュール設定が現実的なケースも多いです。

また、AWS EventBridgeやLambdaと組み合わせれば、例えば「新しいファイルがサーバーに追加されたら自動で同期開始」といったトリガー型の運用も可能となります。

2-3 ネットワーク帯域を意識した最適化

ネットワーク帯域(インターネット回線の容量)も、パフォーマンスや転送効率に直結する重要な要素です。DataSyncはマルチスレッド転送やデータ圧縮によって効率性は高められていますが、回線混雑時は転送遅延が発生する可能性もあります。

そのため、管理ツールなどで利用可能なネットワーク帯域を把握したうえで、転送ウィンドウ(転送してよい時間帯)の設定や、スロットリング(意図的に速度制限をかける)といった手法を取り入れるのが有効です。

実際の企業現場では「毎日深夜2時〜4時まではIDログファイルを送信」といった帯域を意識した運用がよく見受けられます。

3. DataSyncのアーキテクチャ構成

DataSyncを導入するためには、構成要素の理解が欠かせません。

どのようにオンプレミスとAWSをつなぎ、どんな中継ポイントや制御要素があるのかを把握しておけば、後々のトラブルやパフォーマンス課題を回避しやすくなります。このセクションでは基本構成と要素、接続方法、認証まわりまでを丁寧に説明します。

3-1 基本構成とコンポーネントの紹介

DataSyncのアーキテクチャには、ベースとなる3つの要素があります。

1. DataSyncエージェント:オンプレミス側に配置され、ローカルデータをAWSに転送する際の玄関口となる仮想マシン型ツールです。VMware、Hyper-V、あるいはAWS EC2上でも展開可能です。

2. タスク:転送ジョブの単位であり、「どのフォルダを、いつ、どこにどう同期するか」といったルールを定義するものです。GUIで設定・実行できます。

3. AWSストレージ:データの転送先または転送元として、S3やEFS、FSxなどのストレージサービスを選択します。

これらが組み合わさることで、柔軟でセキュアなデータ連携が実現されます。

3-2 オンプレミスからAWSへの接続方法

DataSyncのエージェントは、一般的な仮想マシン(VM)環境に展開可能です。VMwareやHyper-Vなど多くの現場で使われている基盤がサポートされており、ネットワーク経由でAWSのDataSyncサービスと接続されます。

AWSとの通信にはHTTPSが使われ、443番ポートの通過が前提となります。そのため、ファイアウォール設定が不適切だと接続に失敗する場合があるため注意しましょう。

また、AWS Direct Connectなどの専用線がある企業は、それを経由することでさらなる高速かつ安定した通信が可能になります。

3-3 セキュリティと認証の考慮点

DataSyncは、IAM(アクセス制御)とKMS(暗号鍵管理)を活用してセキュリティを維持します。IAMロールを介して転送対象のS3バケットなどにアクセス許可を付与し、データは転送中にTLS(暗号通信)で保護され、かつ保存時にも暗号化できます。

転送タスクの処理状況やエラーもCloudWatchを通じてモニタリングできるため、可視性や監査性も高い構造になっています。オンプレミス側のエージェントとAWSが直接的にやり取りせず、認証された中継を通して通信する点も安心材料です。

4. 同期先のAWSサービスとその選定基準

DataSyncが同期対象とするAWS上のストレージには複数の種類があります。それぞれ用途や特性が異なるため、「どのサービスを選べばよいか」は非常に重要な検討事項です。

ここでは、代表的なサービスであるAmazon S3、EFS、FSx、Glacierなどの機能を比較し、適切な選定基準をご紹介します。

4-1 Amazon S3との連携

S3(Simple Storage Service)は、オブジェクトストレージと呼ばれるサービスで、大量の非構造データ(画像、ログ、バックアップファイルなど)を保管する用途に最適です。

DataSyncはS3との相性が非常によく、大規模転送・階層化・バケット間の移行にも対応しています。ストレージクラス選択(Standard、Infrequent Access、Glacierなど)によってコスト調整が可能なのも魅力です。

トランザクション性(ファイルの更新や削除を頻繁に行う)を求めない用途では、S3が最適な選択となるでしょう。

4-2 Amazon EFSやFSxとの統合

EFS(Elastic File System)は共有が可能なネットワークドライブ型ファイルストレージで、Linuxベースのアプリケーション環境に向いています。

一方、FSxはWindows File ServerやLustre(高速HPC用途)と統合されたファイルサービスです。これらはファイル単位での読み書きに強く、アプリケーションや業務ファイルを扱うシステムに向いています。

DataSyncではEFS/FSxの間の移行や、オンプレミスとの定期同期などに適用可能です。共有ストレージとして使用可能なため、マルチユーザー環境で一元化したファイル管理が必要なパターンに向いています。

4-3 Glacier・Backupとの比較

Glacierは低コスト・長期保存向けのストレージで、主にアーカイブや法的義務のあるデータ保管に適した選択肢です。ただし取得のリードタイムが数分〜数時間かかるため、頻繁な参照は不向きです。

AWS Backupは複数のAWSサービスに対する定期バックアップ管理ツールで、DataSyncと明確に役割が異なります。DataSyncはあくまでデータの転送・同期がメインであり、Backupはスナップショットベースで復旧機能も提供します。

このように目的によって適合するサービスが異なるため、「一時利用」「共有ファイル」「ログアーカイブ」など用途に合わせた設計が必要です。

5. DataSyncのデプロイと初期設定手順

DataSyncを実際の業務環境で利用するには、まずは正確なデプロイと設定作業が必須です。

ここでは導入する際に必要なステップを、初めての利用者でもつまずかずスムーズに進められるように順を追って解説します。

5-1 エージェントのインストールと登録

DataSyncにはオンプレミス環境に設置する「エージェント」が必要です。

これは、仮想マシンとして提供されるファイルを使ってVMwareやHyper-Vに展開し、AWSに接続させる役割を持ちます。

エージェントをダウンロードし、仮想マシンとして起動した後、初回アクセス時にWebブラウザからIPアドレスを叩いて設定画面に入り、AWS側のDataSyncサービスと紐づけ登録を行います。

ここまでが完了すると、AWSマネジメントコンソール上に該当エージェントが表示され、タスク作成や設定が可能になるという流れです。

5-2 タスク作成と設定パラメータの解説

タスクとは、データ転送の計画単位を意味します。DataSyncの管理画面では、「送信元(オンプレミス)」「送信先(クラウド)」を選び、どのディレクトリを転送対象にするか、転送条件(除外パス、ファイル更新の有無の判定方法など)を細かく指定できます。

また、圧縮や暗号化の有無、ファイル整合性検証の粒度などもここで選べるため、業務要件やデータの重要度に応じて最適な転送設定が可能です。

5-3 テスト実行の手順とポイント

設定後は、なるべく本番タスク実行の前に小規模データでのテストを行いましょう。

これにより、ファイル名の文字コード対応やネットワーク速度、転送エラーなどを事前に検証できます。

転送ログもAWSコンソールまたはCloudWatch上から確認でき、トラブル発見やパフォーマンスの最適化に役立ちます。

6. 業務要件に合わせた同期パターンの設計

実際の運用では、「どれだけの頻度で」「どのような構成で」データを同期するかという設計が全体の安定性とコスト効率に大きな影響をもたらします。

ここでは、業務ニーズに合わせたさまざまな同期パターンと、それぞれの使いどころを紹介します。

6-1 バッチ同期 vs リアルタイム同期

バッチ同期は、一定のスケジュールでまとめてデータを転送する方式です。

一方で、リアルタイム同期(イベントベース同期)はファイルが変更されるたびに即転送される方式です。リアルタイムは利便性が高い一方で、頻繁な通信が発生しネットワーク負荷が高まりやすいため、業務に応じた使い分けが望まれます。

ログやメディアアップロードの同期ならバッチ方式、ビジネスクリティカルな取引データ間の反映にはリアルタイム方式が効果的です。

6-2 定期スケジュールの設定

DataSyncではcron形式(Linuxで使われるスケジュール指定方式)を使った柔軟な実行タイミング設定が可能です。

これにより、毎時・毎日・毎週といった繰り返しタスクの設定が視覚的に管理できます。

頻度が高すぎるとネットワークやAWS課金に影響するため、アクセス頻度やファイルの実使用状況を踏まえて吟味しましょう。

6-3 冗長性・可用性を意識した構成案

高可用性構成を検討している場合には、複数リージョンへの転送や、S3のクロスリージョンレプリケーションと併用することで、災害時の復旧速度や堅牢性を大きく改善できます。

また外部システムでのミラーリングやスナップショットとの組み合わせも有効であり、DataSyncは一機能としてのパーツ役割だけでなく、全体バックアップアーキテクチャの中核に据えることも可能です。

7. よくあるトラブルとその対策

DataSyncは便利なサービスではありますが、やはり運用中にはいくつかのトラブルや不具合が発生しうるため、事前に対応法を把握しておくことが重要です。

7-1 転送失敗・遅延の原因と対処法

失敗の原因としては、以下のような要因が挙げられます:

- エージェントの接続不良(ファイアウォール制限)

- IAMロールの設定ミス(S3などへの書き込み権限不足)

- ネットワーク帯域の飽和(特に大規模転送時)

これらを防ぐには事前検証、モニタリングの継続、適切な設定レビューが欠かせません。

7-2 パフォーマンス改善のヒント

- 転送元のファイルシステムや権限整理

- 並列タスクの調整

- 転送対象ファイルのフィルタリング(不要ファイルを除外)

などを取り入れることで、全体の転送時間を削減できます。特に「すべてのファイルを転送しない」設計を意識することで大きな効果があります。

7-3 CloudWatchなどの監視ツール活用

CloudWatchを使えば、タスクの成功率・遅延時間・失敗数などが視覚化され、異常の早期発見ができるため、DataSync運用での管理負荷を下げる手段として重要な役割を果たします。

8. コスト最適化のためのベストプラクティス

AWSでは、使った分だけ課金される従量課金制が基本です。そのため、DataSyncの無駄な利用によって予期せぬコスト発生を避けるには、常にコスト意識を持った設計が求められます。

8-1 転送データ量の管理

DataSyncの課金は、転送した「データ容量」に対して発生します。不要なファイル、バックアップ済みデータ、不要なオブジェクトなどを除外することで、料金を抑えることが可能です。事前にフィルター設定を行い、ファイル拡張子や更新日時で制御しましょう。

8-2 スケジューリングと費用のバランス

転送頻度が高くなると、それに比例して通信量も増加するため、必要以上の頻度での同期を避けることが費用管理の第一歩です。

バッチ方式とリアルタイム方式の住み分け、夜間の一括同期など、「いつ実施するか」によっても料金に差が出ます。

8-3 リージョンとストレージクラス選定による節約

S3には複数のストレージクラス(Standard、IA、Glacierなど)があり、アクセス頻度に応じて選択することが重要です。

また、DataSyncの同期先をリージョン間で切り替えると転送料が発生することもあるため、「同一リージョン内への転送」がベターです。

9. DataSyncを活用した実践ユースケース紹介

ここでは、DataSyncを実際に運用で活用している企業のユースケースを取り上げ、具体的にどのようなシーンで有効に機能しているのかを解説します。

9-1 バックアップ・アーカイブ運用パターン

定期的にオンプレミスの業務データをS3にバックアップし、古くなったデータは自動でGlacierに移すといった運用は、特に中堅・大企業でよく採用されています。

費用と保存性のバランスを保ちながら、法令準拠や監査にも対応可能なアーキテクチャを実現しています。

9-2 大規模なデータマイグレーション事例

1TBを超える規模のオンプレデータをAWSへ段階的に移動した事例があります。DataSyncを通じて、並列転送とステータス管理を活かし、「停止期間ゼロ」で移行が完了しました。

アジャイル開発的にマイグレーション実行を分割できた点も高く評価されています。

9-3 法令対応・監査ログ転送の活用事例

システム監査に利用されるアクセスログやIDアクセス履歴など、企業が保持すべき証跡データをS3等に保管する用途でも使われています。

これにより監査要件を満たすだけでなく、ログ検索の高速化や保管コスト削減にもつながっています。

10. まとめと今後の展望

AWS DataSyncは、クラウド移行・災害対策・アーカイブ管理など幅広い用途に適した転送サービスです。

オンプレミスからクラウドへの「橋渡し」としての機能は、昨今のハイブリッドクラウド戦略において重要な位置づけを占めています。

今後も機能拡張によって転送元・転送先の拡充、さらなるコスト最適化、自動化支援が進むことが予想され、AWS内の他サービス(Backup、Storage Gateway、Lambda等)と連携して進化を続けるでしょう。

こうした流れを踏まえ、企業インフラにおける「データ同期の戦略」を検討する上で、DataSyncは今後も欠かせないツールの一つであり続けることは間違いありません。


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