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DX推進計画の全体像と実践ガイド|行政・企業に共通する8つの視点

DX推進計画の全体像と実践ガイド|行政・企業に共通する8つの視点
DX推進は、サービスの質向上と業務の効率化を同時に実現するための重要な取り組みです。 本内容では、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、自治体や中堅企業が活用できるDX推進計画のモデルをもとに、全体設計、組織体制、市民・顧客参加、人材育成、進捗評価の考え方までを整理します。 公共・民間問わず、これからDXを計画・実行する担当者に向けた、実務目線でのヒントを多数紹介していますので、ぜひご一読ください。

目次

1. 計画の目的と基本方針

DX推進計画は、組織の持続的な発展を目指し、利用者サービスの向上と業務の効率化を両立させることを目的として策定されるものです。

急速にデジタル技術が発展する中で、あらゆる組織がその変化に対応し、着実な業務変革を進めていくことが求められています。


1-1.DX(デジタルトランスフォーメーション)について

DX(ディーエックス)とは、「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、単なるIT導入ではなく、デジタル技術によって社会や組織の仕組みそのものを変革させる取り組みを指します。
紙の申請書類を電子化するだけでなく、手続きそのものを見直して効率化することも含まれます。

企業や公共機関におけるDXは、業務効率化や人手不足への対応にとどまらず、顧客・利用者の利便性向上や、長期的なコスト削減、組織全体の価値向上にもつながります。


1-2.計画策定の背景と社会課題

現在、多くの組織が少子高齢化、人材不足、業務の複雑化といった社会的課題に直面しています。
特に手続きや事務処理が煩雑で長時間かかる業務は、利用者にも従業員にも大きな負担となっています。
こうした背景のもと、DXを活用し、サービス提供と組織運営の在り方をよりスムーズかつ柔軟に進化させていくことが重要です。

また、コロナ禍で顕在化した非接触対応の必要性により、オンラインサービスや遠隔業務の整備は、あらゆる組織において喫緊の課題となっています。


1-3.2つの基本方針とその意義

多くの組織が策定するDX推進計画では、「利用者目線でのサービス向上」と「現場主導の業務改善」の両立が基本方針として重視されています。
両者は相互に補完しあう関係にあり、ニーズに即した現場改善を促すためにも、現場主体の内発的な改革が鍵を握ります。
利用者にとって使いやすく、わかりやすいサービスを提供するために、デジタル技術を活用し、手続きや問い合わせ対応を24時間体制で可能にする仕組みづくりが進められています。

また、従業員がAIやデータを活用して業務を効率的に行える体制を整えることで、限られた人材でも成果をあげられるようになります。

これらの方針は、持続可能な組織運営を実現するうえで欠かせない柱です。


2. 計画期間と推進体制

DX推進計画の実効性を高めるには、明確な期間設定と、部門横断的な体制づくりが重要です。

特に従来の組織構造における部門ごとの分断を超えて連携を図ることが、DXの成否を左右する大きな要素となります。


2-1.計画期間

一般的な中期DX推進計画では、3~5年程度の期間を対象とし、段階的な実装・評価・改善を重ねていくケースが多く見られます。

計画初期は「基盤整備と人材育成」、中盤は「実証と横展開」、終盤には「サービスや施策の評価とスケーリング(拡張)」を進めることで、継続可能な変革モデルの構築が図られます。


2-2.人材育成・庁内横断体制の構築

DXは単なる技術導入にとどまらず、それを活用できる人材の育成が不可欠です。

そのため、多くの組織では、計画初期から部門横断型の推進チームを編成し、デジタルスキルや変革推進力を持つメンバーの育成に取り組んでいます。
情報システム部門や戦略企画部門などを中核に、現場部門とも連携しながら、現実的な課題に即した施策を立案・実行していく体制が重要です。


2-3.外部との連携(行政・企業・地域・顧客など)

公的機関やベンダー企業、研究機関、地域社会、顧客との連携も、DX推進における成功の鍵を握ります。

自組織だけで完結するには限界があるため、外部の専門性や多様な視点を取り入れながら、ニーズに柔軟に対応できる“ひらかれた組織”を志向することが求められます。


3. 市民サービスのDX化

利用者が感じる不便や手間を少しでも軽減することは、あらゆる組織にとって重要な使命です。

デジタル技術を活用して、誰もが使いやすく親しみやすいサービスを提供することによって、顧客や地域社会との信頼関係をより強固なものにしていくことが可能です。


3-1.デジタル技術による行政手続きの簡素化

従来の各種申請や手続きを紙ベースで行っていた業務については、そのフロー自体を見直し、デジタル技術によって簡素化・効率化を進めていく必要があります。

たとえば、本人確認付きのアカウントやID連携機能を活用することで、オンライン上で手続きを完結できる仕組みを整備する企業・団体も増えています。
このような取り組みは、日中に時間が取れない働く世代や子育て中の利用者にとって、大きな利便性向上につながります。


3-2.オンライン窓口・チャットボット活用

利用者からのよくある問い合わせや相談に対しては、チャットボット(自動応答システム)の導入が進んでいます。
夜間や休日など、有人対応が難しい時間帯でも一定の情報提供が可能となり、業務負荷を軽減すると同時に、サービスのアクセシビリティも向上します。
また、Web会議ツールを活用したリモート相談や問い合わせ窓口の設置により、場所や時間にとらわれず、多様なニーズに応える支援体制を整えることが可能です。

こうした施策は、デジタル機器に不慣れな方や配慮が必要な利用者にも寄り添う手段となります。


3-3.デジタルデバイド対策と支援施策

「デジタルデバイド」とは、インターネットやスマートフォンなどのデジタル機器を使いこなせないことにより、情報格差が生じる状態を指します。
この課題に対し、多くの組織では、ICT講座の開催や、高齢者向けのスマートフォン相談窓口の設置など、支援体制の整備を進めています。

さらに、ボランティア団体やNPOとの連携を通じて、地域全体でのデジタルリテラシー支援にも力を入れる動きが見られます。
公共施設や地域拠点を活用した「スマホ教室」や、「ICTサポート隊」といった草の根の支援活動を通じ、年間数百人規模のサポートが実現される例もあります。

こうした取り組みは、デジタル格差の是正のみならず、地域・組織内のつながりを深める効果も期待されます。


4. 業務の効率化

DXは顧客対応だけでなく、組織内部の業務プロセスの改革にも大きなインパクトをもたらします。

限られた人員やリソースの中で、質の高いサービスや成果を持続するためにも、業務の効率化は急務となっています。


4-1.RPA・AI等の導入による業務の自動化

業務の自動化を実現する「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」や、判断支援を行う「AI(人工知能)」の導入は、日常業務の負担を軽減する効果的な手段です。

顧客からの定型的な問い合わせ対応、売上・会計データの処理、社内手続きの自動化などを活用することで、従業員が本来注力すべき企画・分析・判断業務に集中できるようになります。


4-2.ペーパーレス化・クラウド活用

紙を前提とした業務フローを見直し、会議資料や稟議書、契約関連文書などをデジタル化する「ペーパーレス化」は、業務スピードの向上とコスト削減の両立につながります。
さらに、クラウドストレージの活用により、データを安全に管理しながら、複数のメンバーがリアルタイムで同時にアクセス・編集できる環境が整います。

これにより、部門間の連携や在宅勤務・災害時対応など、柔軟で強靭な業務体制の構築が可能となります。


4-3.働き方改革を支える柔軟な制度設計

DXの基盤整備により、テレワークやフレックスタイム制度といった柔軟な働き方も現実のものとなります。
時間や場所に縛られない就業が可能になることで、育児・介護・健康上の理由を抱える従業員も、継続して活躍しやすくなります。

こうした働き方改革の推進は、従業員の満足度や定着率の向上にも寄与し、長期的には人材不足の解消にもつながる重要な施策です。


5. データの利活用とセキュリティ対策

DXを進める上で欠かせないのが、「情報の信頼性」と「セキュリティの確保」です。

特に個人情報や機密データを扱う組織においては、データを有効活用しながらも、安全に管理するための対策が必須となります。


5-1.オープンデータの推進

「オープンデータ」とは、組織が保有する公共性の高い情報(例:施設情報、統計データ、運行状況など)を、誰でも利用できる形で公開する取り組みを指します。

これにより、企業や地域のステークホルダーがデータを活用し、新たなサービスやアプリケーションを開発することが可能になります。
混雑状況の可視化、地域資源の案内、災害時の情報共有など、生活の質や利便性を向上させるアイデアが生まれやすくなります。


5-2.データ連携基盤の整備

部門や部署ごとに分散しているデータを一元的に管理し、スムーズに連携・共有できる「データ連携基盤(データプラットフォーム)」の整備も重要です。

これにより、営業・マーケティング・カスタマーサポート・経営企画など、異なる部門間でリアルタイムな情報連携が可能となり、より迅速かつ合理的な意思決定を支援します。
将来的にはAIを活用したデータ分析や予測モデリングなども視野に入れ、柔軟に拡張可能な基盤設計が求められます。


5-3.個人情報保護・サイバーセキュリティの強化

顧客や従業員の信頼を維持するには、個人情報の適切な管理と、サイバー攻撃への備えが欠かせません。
多要素認証(パスワード+ワンタイムコード等)の導入や、アクセスログの管理など、具体的な技術的対策を講じる必要があります。

加えて、社内の情報セキュリティ研修を定期的に実施し、全従業員のリテラシー向上を図ることも重要です。
研修はeラーニングや集合研修を併用し、受講状況や理解度テストをKPIとして運用することで、形骸化を防ぎ、実効性のあるセキュリティ体制を構築していきます。


6. DX人材の確保と育成

DXを推進する上で、「どのような人材が関与し、誰が活用するか」は成功の鍵を握ります。

組織内で即戦力となる人材の育成と、外部の専門家との連携を組み合わせることで、持続可能な体制を整えていくことが重要です。


6-1.社内向けのデジタル研修プログラム

従業員のリテラシーを底上げするため、部門や職階を問わず、段階的なデジタル研修を導入します。
内容は、Word・Excelなどの基本操作から、RPAツールの活用、セキュリティの基礎知識まで多岐にわたります。

座学中心ではなく、実務に即したワークショップ形式とすることで、研修内容が現場での行動につながりやすくなります。


6-2.外部専門人材の活用と知見の共有

高度な専門性が求められるプロジェクトやフェーズにおいては、民間企業や大学などから外部人材を招聘し、プロジェクト単位で参画してもらうケースが増えています。
実績ある専門家の視点を取り入れることで、新たな発想や課題解決のヒントを得られると同時に、スピード感のある推進が可能になります。

また、外部人材と社内メンバーが共同で取り組むことで、知識やノウハウの組織内への定着も促進されます。


6-3.社会全体でのITリテラシー向上

次世代育成や地域との連携も、DXを広く浸透させるための重要な視点です。
学校教育との連携によるプログラミング教育支援や、地域住民を対象としたワークショップ・相談窓口の設置などを通じて、世代や立場を問わず「使える人材」を増やす取り組みが進んでいます。

特に高齢者やデジタル機器に不慣れな層への継続的なサポートは、社会全体のデジタル活用力を底上げする鍵となります。


7. 社内外との協働によるDX推進

DXを本質的に進めるには、組織内部だけでなく、関係者や地域との連携が欠かせません。

社内外の関係者と協働し、現場の課題を反映した取り組みを通じて、実効性と継続性のあるDXを実現していきます。


7-1.オープンなアイデア創出と実証の場づくり

住民・顧客・関係企業などの多様なステークホルダーが集まり、自由にアイデアを出し合い、地域や業界の課題を試作や実証を通じて解決していく「DXラボ」や「共創スペース」の設置が注目されています。

このような場を設けることで、実際のニーズや課題に即したソリューションを迅速に育てることができ、結果として現場に根づくDXが進展します。


7-2.参加型プロジェクトの推進

アンケート、ワークショップ、デジタルツールを通じた意見収集など、組織外のステークホルダーを巻き込んだプロジェクトは、納得感と実効性のある施策づくりに不可欠です。
行政に限らず、企業においても「社内外の声を取り入れた企画設計」は、ブランド価値やエンゲージメント向上にも直結します。

また、オンライン投票やディスカッション機能を備えたプラットフォームの活用は、より多様な視点を迅速に取り入れる手段として注目されています。


7-3.地域・業界課題とデジタル技術の融合事例

IoTを用いたインフラ監視や、ドローンによる施設管理、AIを活用した需要予測など、地域や業種ごとに多様なDXの実践が始まっています。

こうした事例は、一企業や一地域に留まらず、横展開や再利用によって新たな価値を生むことができます。
そのためにも、自治体・企業・団体を超えたナレッジ共有と連携の仕組みが求められています。


8. 今後のスケジュールと進捗管理

DX推進においては、明確なスケジュールと客観的な評価指標が不可欠です。

段階的な実施計画とKPIに基づく進捗管理を行うことで、着実に変革を推し進めることが可能になります。


8-1.実施スケジュール(フェーズ別)

  • フェーズ1(初年度):
    体制構築と関係者の巻き込み、デジタルリテラシーの底上げ

  • フェーズ2(2~3年目):
    モデルプロジェクトによる実証と改善サイクルの構築

  • フェーズ3(最終年度):
    全社展開・スケール化、外部連携との強化

このように年度単位や四半期単位で段階的に目標を設定すれば、成果の追跡と資源配分の最適化が可能になります。

8-2.KPIによる進捗可視化と評価体制

KPI(重要業績評価指標)を明確に設定し、定量・定性の両面から進捗状況を評価します。

「業務自動化による時間削減率」「社員向け研修の受講完了率」「新サービスの導入件数」など、施策に紐づいた数値を使って効果を測定します。

さらに、必要に応じて外部の専門家や顧客代表者を含む第三者評価体制を整備することで、客観性と透明性を高めることが可能です。


8-3.柔軟な見直しと継続的改善

テクノロジーや利用者ニーズの変化に対応するには、柔軟なPDCAサイクルが欠かせません。

定期的なフィードバックやユーザーテストを取り入れ、初期計画にとらわれず、現場からの声やデータをもとに見直しを図ります。
継続的な改善の仕組みを組織文化に根づかせることが、DXを一過性のプロジェクトではなく、持続的な価値創造の基盤とする鍵です。

DXの推進は、単なるツールの導入にとどまらず、業務の質や組織の持続性に直結する全社的な改革です。
関係者の巻き込み・現場主導の設計・成果に基づく柔軟な改善といった視点を踏まえ、段階的に取り組むことが求められます。

この内容が、実務に即したDX推進計画の立案・改善を進めるうえでの一助となれば幸いです。




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