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DX・EX・CXの違いと連動戦略とは?中堅企業でもできる「3つのX」実践ガイド

DX・EX・CXの違いと連動戦略とは?中堅企業でもできる「3つのX」実践ガイド
顧客体験(CX)、従業員体験(EX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)の3つの“X”は、業種を問わず企業変革の鍵を握る視点です。 それぞれの役割を正しく理解することは、正しいDXの導入に必要不可欠です。 本記事は、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンのDX事業本部 事業責任者・泉川学氏監修のもと、3つのXの違いや関係性、実務に活かせる連動戦略を解説します。 CXやDXがうまく進まない背景にEXの課題があると感じている方にとっても、変革のヒントが得られる内容となっていますので、ぜひご一読ください。

目次


1. “3つのX”とは何か?

ビジネス環境が大きく変わる中で、企業が持続的に成長していくためには、顧客の満足度だけでなく、社員の働きやすさや組織の柔軟性も求められる時代になっています。

そんな中で注目されているのが、「3つのX」と呼ばれる概念です。それは、DX(デジタルトランスフォーメーション)、EX(エンプロイーエクスペリエンス=従業員体験)、CX(カスタマーエクスペリエンス=顧客体験)という、企業変革に必要な3つの視点です。


1-1.DX・EX・CXの概要と関係性

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、企業がデジタル技術を活用して業務や事業構造を刷新する取り組みです。

EX(エンプロイーエクスペリエンス)は、社員が組織と関わる中で感じる体験の質を示し、働きがいや成長支援、環境整備などが含まれます。

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、顧客が製品やサービスに触れるあらゆる接点で受ける体験価値を指します。

これら3つの“X”は、企業の変革を推進する上で相互に連動しています。

DXによる業務改革がEXに影響を与え、それが社員の意欲や行動に表れた結果、CXの質向上へとつながるのです。



1-2.なぜ今“3つのX”が注目されているのか

これまでは、主に顧客満足(CX)や効率化(DX)の視点が重視されてきました。

しかし、現場の反発や形だけのIT導入で失敗に終わる例が後を絶たず、単なる技術導入では変革は実現できないという教訓が業界共通の認識となってきています。


その中で「EX(従業員体験)」という観点に注目が集まりはじめています。社員の体験が良好でなければ、DXもCXも推進できません。

働く人が自らのやりがいを感じ、変化に主体的に取り組める環境を整えることが、DX成功の「地盤」となるためです。

そのため3つのXは、それぞれを単独で考えるのではなく「連動体」として経営に組み込むべきだと考えられています。


2. DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

デジタルトランスフォーメーションとは、単なるIT化ではありません。

企業がデジタル技術を活かして、旧来の仕事のやり方や考え方を抜本的に変えるための取り組みを指します。

製造業、サービス業、医療、教育、流通など、すべての業界で必要となっている概念です。


2-1.DXの定義と目的

DXの目的は、単なるIT導入ではなく、企業の競争力を高める「構造改革」にあります。

環境変化に迅速に対応し、新たな価値を創出できる柔軟な組織体制を構築すること。それが、DXを進める本質的な狙いです。

特に昨今は、業界や業種を問わず、市場のニーズ変化が激しく、従来のやり方が通用しない局面も増えています。

その中で、リアルタイムな情報収集と迅速な意思決定、サービスのパーソナライズ化などを可能にするのがDXの力です。


2-2.ビジネスにおけるDXの具体例

DXはあらゆる業界で広がっており、現場に即した導入事例が増えています。

店舗や施設の運営現場ではIoTを活用して稼働状況を可視化し、予測型のメンテナンスで効率化を図るケースがあります。

また、小売業や物流業ではAIによる需要予測や在庫管理の自動化が進み、医療や教育の現場でも、デジタルによる業務負担の軽減が注目されています。

顧客対応においても、チャットボットやオンライン接客などを活用し、CX向上を目指す動きが広がっています。

こうした例から、DXは単なる業務改善にとどまらず、企業価値そのものを高める可能性を秘めていることがわかります。


2-3.DXがもたらす業務・組織の変革

DXがもたらす変化は、業務効率化だけではありません。

部門間の連携を促し、社員同士のコラボレーションや意思疎通の仕組みを整えることで、「組織の在り方」そのものを変えていきます。

業務フローが可視化されることで属人性が減り、現場の負担軽減やミスの抑制にもつながります。

ただし、こうした変革を浸透させるには、新たな教育体制の整備や評価制度との連動も欠かせません。

DXは“技術導入”で完結せず、“組織全体のアップデート”として捉えることが重要です。


3. EX(エンプロイーエクスペリエンス)とは

“従業員体験”とも訳されるEXは、社員が会社との関わりの中で感じるすべての体験のことです。

採用時の印象、入社手続き、研修、業務遂行、評価制度、人間関係など、多様な要素が含まれます。

EXを高めることで、社員のモチベーション、エンゲージメント(仕事への愛着)、定着率などが向上します。


3-1.EXが示す「従業員体験」

EX(エンプロイーエクスペリエンス)とは、従業員が採用から退職までの間に企業との接点を通じて得る体験のすべてを指します。

単なる労働環境の快適さにとどまらず、「自分が尊重されている」「成長できている」と実感できるかどうかといった感情的価値も含まれます。

特に近年は、リモートワークやフレックス制度など柔軟な働き方が浸透し、“働きやすさ”の捉え方が多様化しています。

そのため、EXは経営課題の一つとして捉えるべき重要な要素となっています。


3-2.離職率・モチベーションへの影響

EXが低い環境では、離職率が高まり、人材の流出やモチベーション低下が起きやすくなります。

一方で、良好なEXを実現すると、従業員は仕事に誇りや責任を持ち、業務改善の自発的な提案やチーム協力が生まれやすくなります。

つまり、EXの向上は、単なる“働きやすさ”を超えた「組織の活性化策」であり、企業の持続的成長を支える基盤となるのです。


3-3.EXと働き方改革・ウェルビーイングの関係

働き方改革は、労働時間の短縮だけでなく、社員がよりよい人生を送るための環境整備を意味します。

ウェルビーイング(Well-being)は、心身の健康や自己実現、社会とのつながりといった幅広い幸福感を含む概念で、近年では企業経営における重要なテーマです。

EXは、こうした取り組みと密接に関係しています。

社員が安心して働ける環境を整え、ライフステージに応じた支援を行うことで、結果的に企業の生産性やブランド価値も高まっていきます。


4. CX(カスタマーエクスペリエンス)とは

顧客体験という言葉には、商品を使った時だけではなく、「購入前」「接客中」「使い終えた後」まで含まれます。

商品そのものの機能や価格に加えて、“心地よく利用できたか”“不快な思いをしていないか”という感情的な満足度が、ビジネスの成否を分けています。

CXの重要性が高まる中、各社では体験価値に着目した改善活動が進められています。


4-1.顧客体験の定義と背景

CX(カスタマーエクスペリエンス)は、顧客が商品やサービスを知ってから、購入・利用・サポートを受けるまでのすべてのプロセスにおいて感じる体験のことを指します。

特に、品質や価格だけでは企業の差別化が難しくなっている中で、「どんな気持ちで利用したか」「心に残る接点があったか」が重視されるようになり、CXへの関心が高まっています。

これは、一度の購入が終わりではなく、体験によって次回の選ばれ方が変わる時代だからです。

顧客が「この会社は自分の気持ちをわかっている」と感じるサービスを提供できるか否かが、長く選ばれる企業かどうかの分かれ目になります。


4-2.顧客満足との違い

よく似た言葉に「顧客満足(CS)」がありますが、CS(カスタマーサティスファクション:顧客満足)は、商品やサービスに対する評価として「過去の結果」に焦点を当てる概念です。

一方のCXは、顧客が接点ごとに感じる「全体的な印象」や「感情の動き」に着目します。

CSが“旅行の満足度”であるのに対して、CXは“旅の道中での体験そのもの”です。

企業にとっては、CSだけでなく、CXの視点を取り入れることで、より長期的な顧客ロイヤルティを築くことが可能になります。




4-3.成功するCXの事例と戦略

CXを重視した取り組みは、多くの業界で成果を上げています。

アパレル業界では、店舗とECをシームレスに連携し、試着後に自宅で注文できる仕組みを構築。

顧客にとっての「買いやすさ」「選びやすさ」を向上させることで、購買率とリピート率が上がっています。

また宿泊業界では、予約前から宿泊後までの体験を丁寧に設計。

事前の案内メッセージやスムーズなチェックイン対応、滞在後のフィードバック収集などを一貫して行うことで、CXの向上とともに顧客のエンゲージメント強化にも成功しています。


5. DXとEXの違いと関係性

DXとEXは一見別のものに見えますが、実は“車の両輪”のような関係にあります。

ITツールを導入して効率化を進めたとしても、それが社員に受け入れられなければ、結果として業績にもつながりません。

逆に、従業員の体験を向上させることで、そのDXは加速します。


5-1.デジタル化 × 従業員体験の交差点

DXは「手段」であり、EXは「定着を支える土台」です。

紙による報告書の作成を、タブレットによる入力に置き換えたとします。

これもDXの一種ですが、現場で「入力が難しい」「使いにくい」と感じられてしまえば、その仕組みは「導入しただけ」の形骸化に陥ります。

つまり、デジタル化を導入する際に、社員の立場や習熟度を意識しないと、DXは失敗に終わるのです。

ここにこそ、DXとEXの交差点が存在します。


5-2.DX推進におけるEXの重要性

DXを成し遂げるには、社員一人ひとりが新たな仕組みに意味を感じ、自ら活用できるようになる必要があります。

そのためには、スキル強化の教育だけでなく、現場の声を吸い上げて「導入に納得感を持ってもらう」仕掛けが不可欠です。

単なる命令ではなく、現場が「これなら助かる」「仕事しやすい」と思えば、自発的なDX活用が進みます。

EXを向上させる視点は、このようにDX戦略の基盤とならなければなりません。


5-3.両者を両立させた企業変革のフレームワーク

実際には「業務改革×意識変革」の掛け算が不可欠です。

そのため、大きな改革をする際には段階を追ったアプローチが有効です。

①現状業務の課題共有

②社員の声を反映したデジタル施策の構築

③導入後の体験向上に向けたフィードバックループ

このように、EXを主軸にしたフレームワークでDXを捉えることで、社内の納得感と定着率を高められます。



6. EXがDX成功のカギを握る理由

デジタル技術だけを持ち込んでも、現場が動かなければ効果は出ません。

その理由の多くが「EXの軽視」にあるといわれています。

では、なぜEXはよく見落とされてしまうのか。そして、従業員が変化を受け入れ前向きに取り組むためには、何が必要なのでしょうか?


6-1.なぜEXが軽視されがちなのか

多くの企業が直面するのは「忙しさ」や「即効性」へのプレッシャーです。

成果を早く求めすぎるあまり、社員との向き合いが後回しにされてしまうケースが多くあります。

実際に、業務改善の話が経営上層部から一方的に降ってくるだけでは、現場の理解や協力は得られません。

EXへの配慮がない限り、DXは「指示の押しつけ」で終わる危険性があります。


6-2.従業員が変革を受け入れる組織文化とは

変革を根づかせる文化は、「心理的安全性」がカギです。

それは、意見を出しても否定されず、失敗を恐れずに挑戦できる「心理的安全性」が確保された職場環境を意味します。

社員が変革の提案をしたり、疑問を持ったりすることが歓迎される職場にすることで、変革が自発的に生まれます。

そのためには、単なる作業指示ではなく、リーダー自身が変化に向けて対話を続け、安心して挑戦できる空気をつくる努力が求められます。


6-3.IT導入だけではDXは進まない

ITはあくまで道具であり、「人の使いこなし」が成果を決めます。

そのためには、IT導入の前段階である、社員意識や体制づくりからの見直しが重要です。

便利なシステムの入れ替えではなく、社員が「もっと会社を良くしたい」「自分の働き方を良く変えられる」と思える仕組みが必要なのです。



7. 3つのXの連動が生み出す真価

CX、EX、DX、この3つのXを別々に考えるのではなく、“一体の仕組み”として設計することで、大きな成果を生み出せます。

それを可能にするのは「社員の体験が変わることで、顧客の体験も変わる」連鎖です。


7-1.顧客体験と従業員体験の接点

顧客対応を行う部署では、現場スタッフの態度や言葉遣いがCXの質に大きく影響します。

また、サービス提供や業務品質の最終段階を担う従業員の集中力やモチベーションは、成果物の完成度に直結します。

顧客と直接接点がない業務であっても、EXの改善は間接的にCXを押し上げる力になります。


7-2.外部(CX)と内部(EX)をつなぐDXの役割

DXの価値は、単なるデジタルツール導入ではありません。

DXの本質は、外部(顧客)と内部(従業員)のデータや体験をつなぎ、「価値の流れ」を最適化することにあります。

顧客データベースと社員の行動ログを結びつけることで、よりパーソナライズされた提案や対応が可能になります。

これにより、CXの強化、EXの充実、そして効率化という3者が同時に実現されるのです。


7-3.“3つのX”すべてに向き合う企業が勝つ理由

情報があふれ、競争が激化する今の時代には、「選ばれ続ける企業」であることが重要です。

そのためには、顧客に感動を与え、社員にもやりがいを持たせ、常に変化できる柔軟な組織であることが求められます。

3つのXは、それぞれ企業の生命線。部分最適にとどまらず、全体の仕組みとして統合的に捉える企業こそ、これから勝ち続ける存在となるでしょう。



8. 組織全体で推進するための実践ステップ

実際に3つのXを連動的に実行していく際、必要なのは「段階づけたアプローチ」と「部門を超えた協力体制」です。


8-1.「X」推進ロードマップの描き方

最初から完璧な仕組みを作る必要はなく、段階ごとの目的設定が重要です。

  • フェーズ1
    現状把握と課題整理(社員・顧客アンケートなど)

  • フェーズ2
    小規模な改善プロジェクトの開始(現場に近い部署から)

  • フェーズ3
    全社への展開と定着支援(教育・評価との連携)

このように、無理なく実行可能なステップで進めることで、社内の負担を最小限に抑え、変化を受け入れてもらいやすい体制を築けます。


8-2.各部門を巻き込むリーダーシップ

「3つのX」の推進において重要なのは、特定の担当者や部署に任せきりにしないことです。

経営層やDX部門だけでなく、人事、現場部門、営業、カスタマーサポートなど、組織全体が関わる必要があります。

そのためには、「部門横断のタスクチーム」や「プロジェクトオーナー制度」を活用し、それぞれの立場から意見を反映できる仕組みが求められます。

特に経営に近い立場にあるリーダーは、DX・EX・CXが相互に関係することを深く理解し、社内全体にその目的と意義を浸透させる“旗振り役”にならなければなりません。

このような統合的ビジョンを現場が実感できるとき、社員も自分ごととして変革に取り組むようになります。


8-3.KPI・定量/定性指標の設計方法

「成果が見えないと評価できない」というのは、DX・EX・CXいずれも共通の課題です。

そのためには、数値で追える「KPI(重要業績評価指標)」と、人の声に基づく「定性指標」を組み合わせた評価軸が必要です。

  • DX
    IT導入による作業時間の削減率、デジタルツールの利用頻度

  • EX
    従業員満足度(ES)の推移、離職率、従業員インタビューからの声

  • CX
    NPS(顧客推奨度)スコア、カスタマーサポートへの問い合わせ内容の変化

こうした指標を通じて、変化を可視化し、PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクルを回していく仕組みが不可欠です。



9. 日本企業の成功事例と課題

最後に、実際に「3つのX」の取り組みが行われた日本の企業での成功事例や、中堅・中小企業が感じやすい課題について紹介します。


9-1.EX・DX・CXの統合的アプローチ成功例

国内のサービス業企業では、カートの仕組みを使ったDXを実施するとともに、現場スタッフの声をもとに仕様を微調整。

これによって業務の効率化だけでなく、従業員の不満の解消、さらには問合せ対応の迅速化など、CXでも高い評価を獲得しました。

また食品メーカーでは、DXの導入に際して、EX向上を目的とした「ボトムアップ方式」を採用、現場の声を定期的にフィードバックループとして活用し、プロトタイプの段階で実際の業務に即した使いやすさを確認しました。

結果として導入後の定着率が向上し、業務効率や従業員満足度の両面で成果が表れました。


9-2.中小企業が抱える悩みと解決策

中堅・中小企業では「リソース不足」や「社内のDX人材がいない」という悩みがよく挙がります。

この課題に対しては、次のような解決策が有効とされています。


  • 初期段階では大掛かりなツール導入よりも、「小さな成功体験」から始める

  • 外部の専門家(ITコンサル、DX推進パートナーなど)を一時的に活用する

  • 社内のDX人材を育てる研修を、人事部と連携しながら少しずつ構築する


また、EXやCXの仕組み化に関しても、必ずしも特別なツールが必要なわけではありません。

Googleフォームなど手軽なサービスを活用して社員や顧客の声を集め、Excelによる簡易集計からPDCAを始めた企業も成果を出しています。


9-3.今後の推進に向けた課題と展望

今後の課題は、「X」を一過性のプロジェクトで終わらせず、組織文化として根付かせることです。

そのためには、1回限りの研修、1つのツール導入にとどまらず、継続的な教育・改善サイクルが求められます。

また、DXやCXの成果を測るには時間がかかることも多いため、経営陣が焦らず長期的視点で支援し続けることが重要です。

「社員と向き合い、顧客の声に耳を傾け、それらをつなげるDXの設計を行う」こと。

顧客と従業員、そして企業の未来をつなぐ視点を持ち、しなやかに進化し続ける企業こそが、これからの時代に選ばれ続ける存在となるでしょう。

「3つのX」を定着させるには、一度きりの施策で終わらせず、継続的な改善と文化の醸成が重要です。

本記事が、持続可能な変革を目指す企業の一助になれば幸いです。





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