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DX化とIT化の違いとは?今こそ知っておくべき10の視点

DX化とIT化の違いとは?今こそ知っておくべき10の視点
デジタルトランスフォーメーション(DX)とIT化の違いを曖昧にしたままでは、DX推進は進展しません。 本記事は、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、DXとIT化の定義や導入プロセスの違い、実際の事例、成功のポイントまで網羅的に解説します。 DXに取り組み中の中堅企業の情報システム部門や経営層にとって、具体的な実践へのヒントが詰まった必読の内容です。

目次

1. はじめに

デジタル技術の進化とともに、「DX化(デジタルトランスフォーメーション)」と「IT化」という言葉を耳にする機会が増えています。

しかし、それらの言葉が何を意味し、どのように異なるのかを正確に理解している企業は、実は少ないのが現状です。

とくに製造業や中堅企業においては、「システムを導入すること=DX化」と誤解されてしまうケースも見受けられます。

ここでは、IT化とDX化の根本的な違いを整理し、企業が取り組むべき方向性を再確認します。

読者の皆様が、DX化の本質を理解し、自社の未来づくりに活かせる一助となれば幸いです。

1-1 DX化とIT化が注目される背景

近年、人口減少・人手不足・供給過多といった構造的課題に直面している日本企業では、業務の効率化や働き方改革が急務となっています。

こうした中で、デジタル技術によって「業務の再構築」や「生産性の向上」を目指す動きが強まり、DXとIT化が注目されるようになりました。

特に2020年以降、新型コロナの影響もありリモートワークやオンラインサービスが一気に加速しました。

この変化の流れの中で、企業には"デジタルで変革する力"が求められているのです。

1-2 なぜ今、違いを理解することが重要なのか

曖昧なままでは、工数やコストだけが増えて効果が見えにくく、結果的にプロジェクトが頓挫してしまうこともあります。

とくに中堅企業では、トップ層と現場・IT部門の認識のズレから「ただのツール導入」に終わってしまうケースも。

そうならないために、まずは「IT化」と「DX化」の違いをしっかり理解し、正しいゴール設定を行うことが必須です。

2. DX化とIT化の定義の違い

既存の仕組みにデジタル技術をどう活かすかによって、IT化とDX化は明確に異なる目的を持ちます。

ここではそれぞれの意味を整理し、混同されがちなポイントを明らかにします。

2-1 IT化とは何か?(定義と目的)

IT化とは、Information Technology(情報技術)の略で、業務の中にITを取り入れて効率化することを指します。

例えば、紙で管理していた勤怠簿をデジタルで打刻・管理するようにしたり、Excel作業を帳票ソフトに切り替えたりすることが該当します。

つまり、作業そのものは変わらず、方法だけが変わるイメージです。

目的は「効率化・省力化」であり、経費削減や時間短縮を重視する点が特長です。

2-2 DX化とは何か?(定義・本質・長期的視点)

一方でDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を使って「ビジネスそのもの」を抜本的に変革することです。

経済産業省の定義では、「企業が競争上の優位性を確立するための根本的な変革」とされています。

ただITツールを導入するのではなく、組織の在り方、働き方、価値提供の手段まで見直す必要があります。

時間軸も中長期的で、顧客の体験価値を高めることがゴールです。

2-3 両者の目的の相違点

IT化=業務の効率化、DX化=提供価値の向上や競争力強化と表現できます。

前者は「今ある仕事を速く・正確にこなす」、後者は「そもそもその仕事が必要か?」と問い直すアプローチです。

3. 歴史と発展の流れ

IT化とDX化は似ているようで全く異なる経緯をたどってきました。ここではそれぞれの歴史的背景を確認しつつ、現代の社会がこれらに何を求めているかについて考えていきます。

3-1 IT化の歴史と導入初期の背景

IT化の始まりは1980年代から1990年代にかけて、パソコンや業務用のソフトウェアが多くの企業に導入された時代です。

当時の目的は「作業時間の短縮」と「ミスの減少」で、紙や手作業が中心だった業務を効率よく処理することが中心でした。

さらに2000年代に入り、インターネットやクラウドサービスの台頭とともに、メール管理・勤怠・販売・在庫などの業務がITツールによって円滑に回るように改善されてきました。

これがいわゆる「部分的最適」の時代です。

3-2 DX化が起きたきっかけ(ビジネス構造の変革)

一方でDX化という概念が広まり始めたのは2010年代後半です。最大のきっかけは、Amazonや楽天、Uberなどの「破壊的サービス」と呼ばれるイノベーション企業の登場にあります。

これらの企業は、デジタル技術を基盤にサービスそのものの形を変え、産業構造を大きく転換しました。

「サービスを提供するだけでなく、その体験全体を最適化する」ことが重視されるようになり、世界中の企業がデジタル変革の必要性を実感し始めました。

3-3 デジタル化の進化と社会ニーズの変化

現在では、単なる作業効率化を超えて「人材不足への対応」や「顧客体験の高度化」といった新たな社会課題に向き合う必要があります。

特に中堅企業や製造業では、新規顧客の獲得やグローバル市場への対応が課題となる中、これらに対応できる仕組みづくりとしてのDXが求められているのです。


4. 企業における導入目的と役割の違い

IT化とDX化が企業にもたらす影響は、施策の種類・目的・範囲によって大きく異なります。ここでは、それぞれが現場や経営にどのように影響を与えるのかを整理します。

4-1 IT化がもたらす業務効率化

毎日の定型業務を短縮・簡略化するのがIT化の主な目的です。

例えば、経理部門での手入力処理を自動集計ソフトに切り替えたり、営業日報をクラウドで一元管理するなどです。

こうした効率化はミスの削減にもつながり、従業員の時間に余裕を生む効果もあります。

ただし、それによって「ビジネスの質が大きく変わる」ことはありません。

4-2 DX化がもたらすビジネスモデルの変革

DXの目的は、業務の単純効率化ではなく「提供価値を再設計すること」です。

例えば、製造業であれば「製品を作って販売する」から「製品+データによるサービス提供」へのモデル転換が該当します。

センサーを活用して製品の使い方データを収集し、そのフィードバックをもとに新たなアフターサービスを開発する、という具合に、デジタルが収益構造に直接結びつくのです。

4-3 現場・経営・企業全体への影響範囲

IT化が主に「現場業務の改善」にとどまるのに対して、DXは経営戦略や顧客との関係性までを見直す大規模な取り組みになります。

従って、DX推進には全社的なビジョンと強力なリーダーシップが不可欠です。

現場の担当者だけで推進できるものではなく、経営層とシステム部門・現場担当全体の連携が鍵になります。

5. バックオフィスへの影響

バックオフィス(総務・経理・人事など)の業務は、デジタル技術による変革の影響を最も受けやすい領域のひとつです。ここではそれぞれがどのように進化しているのかを実例を交えて紹介します。

5-1 IT化の事例:会計ソフト、電子帳票、労務管理

従来、請求書を紙で発行し、ファイルに保管していた業務が、クラウド型の会計ソフトへと切り替わることで、確認・提出・保管の作業時間が大幅に短縮されました。

同様に、労務管理においても勤怠打刻や給与明細の発行がオンライン化されたことで、ヒューマンエラーの減少や監査対応の迅速化に役立っています。

その一方で、これらの効果はあくまで「既存プロセスを効率化した」にとどまります。

5-2 DX化の事例:RPAによる自動化、戦略的データ活用

RPA(ロボティックプロセスオートメーション)とは、パソコン上で行う単純反復作業を自動化するツールです。

これを人事や財務部門に導入することで、採用データの抽出や予算管理レポートなどの分析業務も瞬時に処理できるようになります。

また、こうしたデータを経営判断やサービス設計に活かす「データドリブン(データ主導型)経営」もDXの重要な成果です。

5-3 働き方改革、人材不足への対応の違い

IT化による負担軽減は、従業員の働きやすさに繋がりますが、DXはさらにもう一歩進んで、人材活用そのものを変える可能性があります。

例えば、育児や介護でフルタイム勤務が難しい人でも、在宅で価値貢献できる仕事を設計したり、AIや自動化ツールと協働するチーム体制を整備するなど。

こうした人材戦略は、DXの延長線上にあるものといえます。

6. 導入プロセスとアプローチの相違点

DX化とIT化は、導入の目的だけでなく進め方にも大きな違いがあります。技術をどのように取り入れるか、どのように効果を生み出すかという点において、両者はまったく異なるプロセスをたどるのです。

6-1 IT化:ツール導入中心のステップ

IT化のプロセスでは、主に「現在行っている業務をどうすれば効率良くできるか」という視点で、適切なシステムやツールを選び、それを導入することで課題解決を目指します。

例えば、既存の在庫管理をクラウドシステム化する、経理・会計ソフトを更新する、紙文書を電子化するなどが該当します。

導入前には現状分析と要件定義を行い、導入後の操作研修やサポート体制も整備されます。

工程が比較的明確で、導入と定着にかかる時間も短く、目的も「限られた作業時間を削減する」といった具体的なものです。

6-2 DX化:ビジョン策定から組織風土改革まで

一方で、DX化のプロセスはかなり複雑です。単なるツールの導入では不十分で、まずは経営戦略の中に「どのように企業を変えていくか」というビジョンを描く必要があります。

その上で、部門間の壁をこえたチーム組成や、試行錯誤を許容する企業文化など、ソフト面まで見直す必要があります。

例えば、新しい製品・サービスの開発において、顧客体験を軸にプロトタイプを素早く作成し、改善を重ねる「アジャイル(柔軟・反復)型開発」が重要になる場面では、上層部から現場までの共通理解が不可欠です。

6-3 成果創出までのプロセスの違い

IT化の成果が見えやすいのに対して、DX化の成果は中長期的に現れます。

そのため、数か月で効果を求めると「失敗した」と判断されることもしばしばですが、ここで諦めずに軌道修正しながら継続できるかが成功の鍵です。

短距離走か、長距離マラソンか。

この違いをしっかりと把握しておくことが大切です。

7. 成功事例から学ぶDXとITの違い

ここでは、実際に成果を出している企業の取り組みを紹介しながら、DXとIT化の違いを具体的に確認していきます。

7-1 IT化の成功事例(中小企業向け)

ある地方の製造業では、手作業で行っていた製品在庫の管理をクラウド型在庫システムに移行しました。

この結果、在庫数の見える化が進み、注文漏れや過剰仕入れが解消。

倉庫管理の人員配置の最適化にもつながりました。

このように、IT化による改善は比較的短期間で結果が見えやすく、コスト効率にも優れています。

7-2 DX化の成功事例(大企業・業界変革)

一方、大手小売業では、顧客の購買行動データをもとに、AI(人工知能)で商品推薦を行う仕組みを導入しました。

これにより、利用者ごとの「欲しい商品がすぐに見つかる体験」が実現され、購入単価やリピート率が大きく向上しました。

このように、デジタル化が企業の「競争力」そのものに直結するのがDXの本質です。

7-3 共通点と違いに見る成功要因

成功しているすべての事例に共通しているのは、「自社の現実を正確に把握し、目的に応じて最適な手段を選択していること」です。

また、IT化でもDX化でも「現場の協力」「わかりやすさ」「サポート体制」が欠かせません。

特にDXでは「変われる文化を作る」ことが、成功の前提になります。

8. よくある誤解と失敗パターン

「DXを始めたつもりが、実はIT化どまりだった」という失敗は、決して珍しくありません。よくある誤解と注意すべきパターンを紹介します。

8-1 DX化=IT化の誤解によるミス

「クラウドツールを導入すればDX」だと思い込み、ツールだけを先に導入してしまうケースがあります。

しかし、ツールを入れ替えるだけでは、会社の働き方や価値提供は変わりません。

むしろ、現場の混乱や使わないシステムが増え、不信感を生むことすら起こります。

8-2 部分最適 vs 全体最適の落とし穴

「この部署だけで使えればOK」という局所的な改善、いわゆる“部分最適”では、全体としての連携が取れず、情報の断絶が起こってしまいます。

DXでは全社を巻き込んだ“全体最適”が必要であり、各部門の事情を吸収しつつ、部門間をネットワークのようにつなぐ発想が求められます。

8-3 ツール導入で満足してしまうリスク

最もよくあるのが、「入れたら終わり」という思い込みです。

導入後も使われなければ意味はなく、活用レベルを高めるための教育や、利用の習慣づけが不可欠です。

ツール導入はスタート地点に過ぎません。むしろ「そこで何を変えるのか」がゴールです。

9. DX時代に求められる人材と組織の変化

最先端の技術があっても、生かす人や組織がなければ意味がありません。DX時代には、新たなスキルと組織の在り方が問われます。

9-1 ITリテラシーで止まらないDX人材要件

単に「パソコンが使える」「システムに詳しい」といったITスキルだけでなく、「テクノロジーを使って、仕事のあり方自体を変えられるか」という視点が問われます。

業務改善と価値創造の両方に目を向け、社内外のステークホルダー(利害関係者)との架け橋になれる人材が求められます。

9-2 部門横断型チームとアジャイル思考

従来のような「業務を縦割りで進める組織」ではスピード感に欠けます。

DX推進には、営業・製造・ITといった異なる部門のメンバーが、1つのゴールに向けて協力する“部門横断型”の体制が必要です。

また、「完璧を目指して準備する」より、「小さく試して改善する」という柔軟さ、つまりアジャイル思考が重要となります。

9-3 学び続ける組織づくり

技術や顧客ニーズは日々更新されています。

それに対応するには、社員一人ひとりが継続的に学ぶ姿勢を持ち、社内でもそうした行動が評価される文化を整備することが必要です。

DX推進は「一度やって終わり」のものではなく、成長する仕組みをつくることなのです。

10. 最後に:これからの企業に必要な視点

IT化とDX化の違いを正しく理解し、現実的なステップを踏むこと。それが企業の未来を変える第一歩です。

10-1 IT化からDX化へステップアップするために

まずはIT化での効率化を土台に、小さくてもDX的なチャレンジを取り入れてみましょう。

例えば、データの可視化や、部門をまたいだ業務プロセスの整理から始めるのも一つです。

重要なのは、小さな成果を積み重ね、社内の理解と支持を広げていくことです。

10-2 選ばれる企業・取り残される企業の分岐点

もはや、DXは一部の先進企業だけの課題ではありません。

将来に向けて、常に変化に対応できる企業だけが、顧客にも選ばれ、働く人からも支持を集める時代です。

その分岐点に立つ企業として、未来を描く力を持った取り組みを始めましょう。


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