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DX、デジタライゼーション、デジタイゼーションの違いとつながりを徹底解説

DX、デジタライゼーション、デジタイゼーションの違いとつながりを徹底解説
DXを導入しようとして情報収集を行っている際に似たような単語や横文字で困っている担当者もいらっしゃるかと思います。 本記事は、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、DX・デジタライゼーション・デジタイゼーションそれぞれの違いを事例とともに解説します。DXを正しく進めるための必携ガイドとなっておりますので、ぜひご一読ください。

目次

1. はじめに

DX、デジタイゼーション、デジタライゼーション――似た用語が並ぶ中で、何がどう違い、どうつながっているのかが分かりづらいと感じてはいませんか?

この記事では、こうした用語に明確な違いを持たせ、正しく理解することで、DXプロジェクトの全体像をつかみ、社内にわかりやすく説明できるようになります。

まずは背景から整理し、なぜ用語への理解が重要かを紐解いていきましょう。

1-1 デジタル化が求められる背景

近年、企業を取り巻く環境は急激に変化しています。

働き方の多様化、サプライチェーンの複雑化、顧客ニーズの多様化など、企業には「変化への柔軟な適応」力が問われています。

その中でキーワードとなるのが「デジタル化」です。

紙・対面・人手に依存していた業務を、デジタル技術で効率化・高度化することは、企業競争力を維持するための必要条件となっています。

COVID-19をきっかけに、リモートワークや非対面での業務遂行が一気に普及したことも、「デジタル前提社会」への移行を加速しました。

この大きな転換点においては、ただのIT導入では乗り切れません。

「何を目的として、どのようにデジタルを活かすか」が経営判断の肝になります。

1-2 なぜ用語の違いを正しく理解する必要があるのか

経営層が「DXを進めよう」と指示を出す一方で、現場では「すでにデジタル化は進んでいるのでは?」という声が上がることも多いのではないでしょうか。

多くの企業でDXが進まない理由の一つに、「DX」と「デジタル化(デジタイゼーション、デジタライゼーション)」が混同され、目指すべきゴールや現状が曖昧なままであることが挙げられます。

それぞれの用語を正しく使い分けることで、「今、自社はどこにいるのか?」「次にめざすべきステップは何か?」を明確にでき、プロジェクトの方向性が見えてきます。

まずは、これらの用語の定義と違いを理解することから始めましょう。

2. 用語定義:DX・デジタイゼーション・デジタライゼーションの違い

言葉が違えば意味も違います。

明確な定義を理解しておけば、誤解のない社内説明やプロジェクトの段階整理が可能になります。

2-1 デジタイゼーション(Digitization)とは

デジタイゼーションとは、「アナログ情報をデジタル化すること」を指します。

例えば、紙の書類をPDFファイルに変換する、手書きの帳票をスキャンして保存する、といった行為がこれに該当します。

この段階では、業務の最初のデジタル化が進みますが、業務プロセスそのものには変化はありません。

ただ単に「情報の形式」が変わるだけであり、業務手順・価値の創出方法そのものの革新はありません。

2-2 デジタライゼーション(Digitalization)とは

デジタライゼーションでは、個別の情報変換にとどまらず、「業務プロセス全体」をデジタル技術で効率化・最適化します。

例えば、在庫管理や受発注を手作業から「ERP(企業資源管理)システム」で自動化する、といったケースが該当します。

業務のスピードが向上し、エラーや無駄も削減され、組織全体の生産性が上がる効果があります。

この段階では、複数部門が横断的に関与しながら、業務プロセスの見直しが進みます。

2-3 デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

DX(Digital Transformation)は、「デジタルを活用してビジネスモデルや企業文化を根本的に変革すること」を意味します。

単なる業務の改善や効率化ではありません。

例えば、製品中心の企業がサブスクリプション型のサービス提供にシフトする、新しい価値を生むビジネスを展開するといった、大胆な改革を伴います。

DXは「最終ゴール」であり、「ITで業務が便利になる」といった次元を超えた戦略的改革です。

2-4 それぞれの違いを整理する

表にすると次のように違いが明確になります:


| 用語 | 主な内容 | 例 | 意義 |

|------|----------|----|------|

| デジタイゼーション | アナログ → デジタル変換 | 紙→PDF | 情報の形式を変える |

| デジタライゼーション | 業務のデジタル活用 | IT導入での自動化 | 効率化で業務の質向上 |

| DX | ビジネス全体の変革 | モデル・価値の転換 | 競争力の源泉を再構築 |


次章では、この違いを踏まえて、実際のデジタイゼーションの具体例から順に見ていきましょう。

3. デジタイゼーションの実例と導入ポイント

デジタイゼーションは、DXへの第一歩であり、多くの企業にとって最も身近な取り組みのひとつです。

この段階における典型的な事例や、導入時に注意すべきポイントを整理してみましょう。

3-1 紙の書類をPDFに変換

企業で未だ多く活用されている紙の書類をスキャナーやOCR(光学文字認識技術)などを使ってPDF化する作業は、最も単純なデジタイゼーションの代表例です。

この作業により、資料の情報はアナログからデジタルへと移行します。

検索や共有が容易になり、保管スペースも不要になります。

ただし、この段階ではファイルのやりとりや運用の仕方には依然として人手による処理が発生し、業務自体は改善されていない点に注意が必要です。

3-2 アナログ機器のデジタル化

例えば、アナログの温度計を使って設備の温度を毎回手書きで記録していた現場が、IoTセンサー付きのデバイスを使って自動的に記録・保存するようになることもデジタイゼーションに該当します。

このように、可視化されていなかった「現場の情報」がデジタル化されることで、後のデータ分析や管理が可能になり、業務改善の土台が整います。

3-3 デジタイゼーションのメリットと限界

デジタイゼーションによる主なメリットは、情報がデジタル化されることで検索・保存・共有がしやすくなり、物理的な制約を受けにくくなる点です。

しかし、これはあくまでも「情報形式の変換」でしかありません。

プロセス自体の仕組みは変わらず、業務の効率や質にはまだ大きな変化がないため、企業の成長や競争力強化に直結する効果は限定的です。

本当の効果を得るには、次の「デジタライゼーション」へ進む必要があります。


4. デジタライゼーションの実例と範囲の広がり

デジタライゼーションは単なる情報形式の変換に留まらず、業務・部門・顧客との関係性全体をデジタル技術で変革するステージです。

ここでは、実際の事例を通じて、変化のスケールを掴んでいきましょう。

4-1 業務プロセスの自動化

例えば、従業員が手入力していた勤怠データを、ICカードやスマホアプリ連携で自動収集し、人事給与ソフトへ連動させるような経路は、まさにデジタライゼーションの典型例です。

また、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)というツールを使えば、ルーティン作業をソフトウェアロボットに自動化させることも可能です。

こうした仕組みにより、業務効率が飛躍的に向上するだけでなく、ヒューマンエラーの削減や、社員が本来注力すべき業務へ集中できるようにもなります。

4-2 部門横断的なデジタル統合の事例

一部の作業が自動化されても、部署間での情報共有が不十分なら、全体最適は実現しません。

例えば、営業部門・生産部門・物流部門がそれぞれ個別のシステムを使っていた場合、それらを統合して「一気通貫」な業務管理を行えるようにするのがデジタライゼーションの次のステップです。

この段階になると、ERPやSFA(営業支援ソフト)などの導入が活躍し、全社で一貫性のあるデータ活用が可能になっていきます。

4-3 顧客体験の改善とデータ活用

デジタライゼーションは、社内システムだけでなく顧客との接点にも影響を与えます。

顧客の問い合わせ管理が電話中心だった企業が、チャットボットやAI自動応答サービスを導入することで、レスポンスのスピードと正確性を向上させる事例も該当します。

また、Webサイトのアクセス解析や購買履歴の分析を通じて、熱心なリピーターを特定し、パーソナライズされた提案を行う仕組みも顧客体験(CX)向上の一環で、立派なデジタライゼーションです。

5. デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質と成功要因

多くの企業で「DXを推進する」と掲げられる中、その本質を正しく捉えられていないケースも少なくありません。

単なるIT導入や業務のIT化を越えて、企業の在り方そのものを変えるDXとは何か――そして成功するためにはどのような要因があるのか、企業変革の鍵をひも解いていきます。

5-1 単なるIT導入ではないDXの定義

「デジタルを導入すればDX」と勘違いされがちですが、DXの本質は“変革”です。

ITツールの導入によって業務が便利になっただけでは、DXとは言えません。

DXとは、最新のデジタル技術を活用して、企業のビジネスモデル・商品やサービス・組織文化を根本から見直す取り組みを意味します。

例えば、製品販売中心だった企業が、顧客との関係強化を図るために「サービス化」を進め、モノではなく体験や継続的な価値提供にシフトする――これがDXの代表例です。

このように、デジタルは「手段」であり、本質は「変わること」にあるのです。

5-2 ビジネスモデル変革としてのDX

産業構造そのものが変わってきている今、過去の成功モデルに固執していては時代の流れに乗れません。

例えば、自動車メーカーが本体販売だけでなく、月額使用料を支払うカーシェアリングなどの「利用型」モデルに進出するように、DXとは収益の得方を根底から変えるビジネス構想でもあります。

旧来の事業に頼るだけでなく、顧客の本質的なニーズに合わせて柔軟に変化できる体制づくりが求められます。

こうした際に必要となるのが、既存の仕組みにとらわれない発想力と、それを可能にするIT環境の整備です。

5-3 DX事例(成功・失敗)から学ぶポイント

成功事例では、経営層が強いリーダーシップを持ち、組織を横断して変革を牽引したケースが多く見られます。

例えば、ある製造業では、受注〜納品〜アフターサービスまでを一貫管理できるプラットフォームを構築し、部門間の連携と顧客満足度を大幅に向上させることに成功しました。

一方、失敗事例で多いのは「ツールを入れただけ」「現場任せで形だけの改革」といったもの。

DXを成果へ導くためには、目的・手段・人材・組織の全てに対話と変革が求められます。

6. デジタイゼーション→デジタライゼーション→DXのステップ関係

これまで解説してきた3つの概念は単独ではなく、明確なステップとして相互に繋がっており、段階的に進化するプロセスがあります。

この章ではその流れと各段階での課題を紹介します。

6-1 3つの段階の繋がりと進化の流れ

まず最初に行うのが「デジタイゼーション」。

情報をデジタル化することで、効率化の土台が整います。

次に「デジタライゼーション」へ進み、業務そのものを自動化・最適化することで、業績への貢献を高めます。

最後のステップが「DX」であり、ビジネス全体をデジタルベースに再設計する段階です。

この順番を無視して、例えば、デジタイゼーションを飛ばしていきなりDXに取り組もうとしても基盤が不十分なため、現場の混乱や費用の無駄に繋がってしまいます。

適切な順序を理解し、段階的なロードマップを描くことが、DX推進の現実的かつ効果的な鍵となります。

6-2 各段階で企業が直面する課題

1. デジタイゼーションでは、「現状あらゆる情報がどこに、どのように保管されているか」が把握されていないことも多く、デジタル化作業が属人的・断片的になりやすい課題があります。

2. デジタライゼーションでは、業務フローの可視化や最適化が要求され、特に部門間の連携が求められます。それゆえ、組織の縦割り構造の壁にぶつかることが多いです。

3. DXでは、既存の企業文化・慣習を見直し、経営レイヤーが納得の上で変革へ舵を切る必要があるため、リーダーシップとビジョンの共有が決定的に大切となります。


7. 業種別に見るデジタル化の進行度とベストプラクティス

業種によってデジタル化の進み方や活用ポイントは異なります。

この章では、製造業・小売・サービス業・医療・公共など、幅広い分野におけるデジタル化の事例を紹介しながら、成功のためのヒントを探っていきます。

7-1 製造業での活用事例

製造業は、比較的早い段階から工場の自動化(FA:ファクトリーオートメーション)やIoTの導入が進んできた業界の一つです。

例えば、センサーを活用して設備稼働状況をリアルタイムでモニタリング、品質管理システムと連動することで、不良品の早期発見や原因解析が可能になります。

AI(人工知能)を使って需要予測や計画生産を行う企業も増えており、このような試みは、DXの基盤である「データに基づいた意思決定」を実現しています。

今後は、サプライチェーン全体を見渡したデータ統合や、製品のサブスクリプション化など、ビジネスモデルの転換がより一層求められるでしょう。

7-2 小売・サービス業の顧客体験の変革

EC(オンライン販売)の進化や実店舗のデジタル連携など、小売業やサービス業では「顧客体験(CX)」の強化がDXの主要テーマです。

例えば、あるアパレル企業では、来店・Web・アプリを通じた行動履歴を一元的に管理し、パーソナライズされた提案やクーポン配信を実現しています。

また、セルフレジやモバイル決済など、接客のデジタル化も進んでいます。

店舗の混雑状況をAIカメラで解析し、人員配置を柔軟に調整する仕組みも好事例と言えるでしょう。

このように顧客との接点をテクノロジーで進化させることで、LTV(顧客生涯価値)を高めることが可能になります。

7-3 医療・公共分野でのデジタル展開

医療業界や行政機関でも、近年急速にデジタル化が進んでいます。

電子カルテの導入や、予約・問診をWebフォームで受け付ける仕組みなどは、患者の利便性向上と医療従事者の業務削減を同時に実現しています。

行政では、マイナンバーカードを活用した手続きのオンライン化や、チャットボットによる市民への情報提供、自動翻訳の導入などが進んでいます。

特に公共分野ではセキュリティや公平性も重要であるため、テクノロジーの導入には慎重さも求められますが、その分、地域住民の満足度や安心感に直結する重要な取り組みと言えます。

8. 中小企業がDXを実現するためのロードマップ

「大企業ならDXもできるだろうが…」と二の足を踏みがちな中小企業の皆さんへ。

実は地域密着型や小回りのきく事業スタイルだからこそ、小さな変革からDXへの道が開かれています。

ここでは、現実的なステップと支援策を紹介します。

8-1 小規模事業者が実践すべきステップ

中小企業にとって最初のステップは「身近な課題」の可視化です。

例えば、「紙で管理している在庫をデジタル化する」「Excelで運用している顧客データをCRMなどに集約する」など、小さく始められるデジタイゼーションを選ぶべきです。

その後、集めたデータを活かして業務の見直しや改善を図る段階、つまりデジタライゼーションに進みます。

リソースに制限がある場合は、外部パートナーの力を借りながら段階的に取り組むことも想定しておきましょう。

8-2 必要なスキルと人材の確保

DXを推進するには、IT知識だけではなく、業務理解やプロジェクトを進める力も必要です。

しかし、中小企業では専任のDX人材が存在しないケースが多くあります。

その場合、若手社員のスキルアップ、既存社員のジョブチェンジ、外部人材の活用、ITベンダーとの伴走体制の構築など、柔軟に人材活用を考えることが求められます。

経営層が「学ぶ姿勢」を示すことで、社内全体のDXリテラシーも向上します。

8-3 補助金・支援制度の活用

資金面のハードルがある場合でも、国や自治体が提供する補助金や税制優遇制度を用いれば、無理なくDXにチャレンジすることが可能です。

例えば、「IT導入補助金(経済産業省)」や「ものづくり補助金」などは、多くの中小企業が導入の第一歩を踏み出すための支援制度となっています。

申請には一定の準備が必要ですが、最近は専門家や商工会議所のサポート体制も整ってきており安心です。

制度をフル活用し、無理なく持続可能なDXをスタートさせましょう。

9. 今後求められる視点とまとめ

企業のDXは、ツール導入や業務改善だけで終わるものではありません。

今後の成長を考慮すると、より本質的な取り組みが求められます。

9-1 「デジタル化」の先の競争優位性とは

価格競争・人材不足といった課題を背景に、多くの企業が「効率化」のためにデジタル化を推進してきました。

しかし、それだけでは競合との差は生まれません。

これからの時代は、「顧客にどんな体験や価値を提供できるか」といった視点が不可欠です。

データをもとに顧客ニーズを先読みし、スピーディに価値を届ける。

この柔軟性とスピードこそが、これからの競争優位性につながります。

9-2 DX推進に必要な文化と組織改革

DXを成功させる鍵は、「ソフト(技術)」よりも「カルチャー(文化)」や「マネジメント(経営)」にあります。

現場が自ら気づき、アイデアを出し、改善を進める土壌がある企業ほどDXは進化します。

そのためには、失敗を許容しチャレンジを歓迎する文化、そして現場と経営が一体となって進める推進体制が欠かせません。

いま問われているのは、社内全体の“意識改革”なのです。


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