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製造・小売・医療も!業界別に学ぶ最新DX事例と導入のヒント

製造・小売・医療も!業界別に学ぶ最新DX事例と導入のヒント
デジタルトランスフォーメーション(DX)を正しく進めるには、単なるシステム導入にとどまらず、業務プロセスや組織文化、そしてデータ活用と人材育成まで総合的な視点が必要です。 本記事は、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、DXをこれから推進する企業が迷いなく実行に移せるよう、定義と成功事例、業界別の取り組み方、最新トレンドまでを網羅的に解説。 中堅企業やDX推進担当者にとって、現実的かつ実践的なアクションのヒントが詰まった内容です。全ビジネスパーソン必読!

目次

1. DXとは何か?基本の理解と定義

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ただ単に紙の書類をデジタルに置き換えるだけの取り組みではありません。

企業がデジタル技術やデータを活用して、サービスのあり方やビジネスそのものの仕組みを大きく変える革新のことです。

この記事では、DXの本質的な意味を理解した上で、業界ごとの成功事例や、自社で活用できる具体施策について詳しく紹介していきます。

1-1 DXの定義と目的

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略で、「デジタルの力を使って良い方向に変化すること」を意味します。

経済産業省の定義によると、企業がDXを実現する目的は、顧客や社会のニーズに柔軟に対応し、ビジネスモデルや業務の仕組みに革新を起こすことです。

例えば、単に紙の管理表をエクセルに置き換えるだけでは、本来のDXとは言えません。

そうではなく、会社全体の業務の見える化を図り、顧客とのやり取りや経営判断を素早く柔軟に行う仕組みをつくることが求められます。

その目的は大きく分けて以下の3点です。

1. 業務効率化によるコスト削減

2. 顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)の向上

3. 新たなビジネス価値(サービスや収益源)の創出

1-2 なぜ今、DXが重要とされるのか

なぜ今、DXがさかんに求められているのでしょうか?

その背景には3つの時代的な要因が絡んでいます。

1つめは「人手不足」です。

製造業をはじめとする多くの分野で、若年層の採用が難しく、業務の属人化が大きな課題になっています。

デジタル技術の導入によって、誰でも同じ水準で仕事ができるような仕組みが求められています。

2つめは「社会の変化のスピード」です。

新しい顧客ニーズが現れてはすぐに変化する時代です。

その変化に柔軟かつ迅速に対応できる企業になるために、意思決定スピードを上げる必要があります。

3つめは「既存システムの更新リスク」です。

古い基幹システムは維持費も高く、改造が難しい状況になっています。

DXによりクラウドや新しいソフトに切り替えることで、長期的にはコストとリスクの削減も可能です。

1-3 デジタライゼーション、デジタリゼーションとの違い

DXと混同されやすい言葉に、「デジタライゼーション(Digitization)」と「デジタリゼーション(Digitalization)」があります。

似ていますが意味が異なりますので、理解しておくことが大切です。

デジタライゼーションとは、「アナログデータをデジタルに変換すること」です。

例えば、紙の書類をスキャンしてPDFにするなどが該当します。

次にデジタリゼーションは、「業務の一部をデジタル化して効率的な仕組みに変えること」です。

例としては、勤怠管理を紙からクラウド型の打刻システムに変更するなどがあります。

しかし、DXとなると、単なる業務の改善ではありません。

会社の組織の体質や顧客との関係性そのものが変わるような、本質的な変革が求められます。

2. 業界別のDX成功事例

どの業界でも取り組めるDXですが、取り組み方は業界ごとに異なります。

ここでは製造業、小売業、金融業、医療業界という異なる分野でのリアルなDX事例を紹介します。

自社に合った方向性や施策を見つけるヒントとして活用してください。

2-1 製造業:IoT・ロボティクスによる自動化例

製造業では、IoT(モノのインターネット)やロボット技術を活用して、生産ラインの自動化や予測保全(トラブルの前に対処)を実現する企業が増えています。

センサーを活用して機械の稼働データをリアルタイムで収集・分析し、故障の兆候を検知してメンテナンスの時期を事前に予測する事例があります。

これによりダウンタイム(停止時間)を減らし、生産性が大幅に向上しました。

さらに、AIを活用した品質検査ロボットの導入によって、人手不足の現場でも一定の品質を保った生産が可能になった事例もあります。

2-2 小売業:EC・OMO戦略の導入例

小売業では、店舗とネット販売を組み合わせた「OMO戦略(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合)」が成功のカギとされています。

例えば、スマートフォンアプリで在庫確認やクーポン利用ができる仕組みを整え、店舗での購買体験を快適にすることで顧客満足を向上させました。

ECサイトと顧客の購買履歴を連携させることで、パーソナライズされたおすすめ商品や配信が可能になり、リピート率の向上にも繋がりました。

このような取り組みは、デジタルの力で実店舗の価値を高めています。

2-3 金融業:オンラインバンキング・AIによる審査の導入

金融機関では、窓口業務の削減を目指してオンラインバンキングの導入が進んでいます。

スマホアプリ上での口座開設、残高照会、振込など、以前は店舗に行かなければできなかったことが自宅からできるようになりました。

また、融資の審査にAIを活用することで、申請者の信用スコアや取引履歴を基にした迅速で精度の高い判断が可能になっています。

これにより、審査にかかる時間が大幅に短縮され、顧客との関係構築もスムーズになりました。

2-4 医療業界:オンライン診療・電子カルテの活用

医療機関では新型コロナウイルス影響下でオンライン診療が急速に普及しました。

ビデオ通話による診察とスマホアプリでの予約・決済を組み合わせた仕組みにより、患者の通院負担が減少しています。

また、電子カルテをクラウド化することによって、複数のスタッフが同時に患者情報を共有・参照できるようになり、診療の質とスピードも大きく向上しました。

さらには過去の診察データを活用した治療の選択肢提案もできるようになるなど、医療の質そのものにも好影響を与えています。

3. 社内業務の効率化によるDX施策

DXというと大掛かりな改革をイメージしがちですが、まずは社内の日常業務から改善を進めることで、大きな成果につながります。

このセクションでは、業務フローの見直しとデジタル化によって、業務効率や業績改善につながった具体例を紹介します。

3-1 ワークフローの電子化と承認プロセスの自動化

多くの企業で時間がかかるのが、稟議(りんぎ)や申請といった社内の「承認プロセス」。

これを紙やメールでおこなっていると、時間も手間もかかってしまいます。

ワークフローシステムを導入することで、申請・承認のプロセスがすべてデジタル上で完結。

部署や役職によるルートの設定も可能で、「誰に申請すべきか分からない」と迷うこともありません。

また、スマートフォン対応のシステムであれば、出張先や外出中でも承認でき、業務のスピードアップにもつながります。

ペーパーレス化の推進にも一役買います。

3-2 電子請求書・電子契約サービスの導入

紙による請求書や契約書の処理は、郵送・保管・印鑑押印と多くの手間がかかります。

これを電子請求書・電子契約サービスに切り替えるだけでも、大幅な業務改善が実現可能です。

例えば、ある中堅企業では、電子契約システムを導入したことで年間1万件以上の契約業務がデジタル上で完結。

印紙代や郵送費が不要になり、年間数百万円のコスト削減に成功しました。

さらに、セキュリティ面も強化され、改ざんや誤記の防止にもつながっています。

3-3 業務フローにおけるRPAの活用

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、ルールが明確な定型業務を自動で処理してくれるツールです。

例えば、データの転記、請求書の発行、定型報告書の作成などに使われています。

ある企業では、経理部門の月末処理にRPAを導入することで、日々3時間分あった手作業がほぼゼロに。

その時間を分析業務など、より付加価値の高い業務にシフトできるようになりました。

このように、RPAを有効に使うことで省人化と業務効率化を同時に達成できます。


4. テレワークを支えるDXツール

ここ数年で急速に一般化したテレワークですが、それを支えるにはデジタルツールの整備が欠かせません。

ここでは、業務の円滑な遂行と情報共有、安全性を両立するための代表的なツールを紹介します。

4-1 ビジネスチャットとビデオ会議ツールの導入例

メールよりも早く、カジュアルなやり取りができるビジネスチャット(例:Slack、Chatwork)や、

複数拠点のスタッフと円滑に打合せができるビデオ会議(例:Zoom、Microsoft Teams)は、テレワークを支える必須ツールです。

ある企業では、これらの導入を通じて「ちょっとした相談」のハードルが下がり、社内コミュニケーションが増加。

プロジェクトの進行もスムーズになり、チームの連帯感や業務スピードも向上しました。

加えて、全員のスケジュールが共有できるツールを併用することで、調整や報告もスムーズになりました。

4-2 クラウドストレージによる資料共有・管理

テレワーク環境では、書類の物理保管が難しくなります。

そこで有用なのが「クラウドストレージ(=インターネット上にある書類の保管庫)」です。

Google DriveやDropbox、Boxといったクラウドサービスを活用すれば、社内・社外を問わずアクセスでき、常に最新の資料を共有できます。

誰がどのファイルを編集したか履歴も残るため、管理側も安心です。

ある企業では、プロジェクト単位でフォルダーを細かく分類し、メンバーに応じて権限設定を行うことで、セキュリティ性と利便性を両立させています。

4-3 セキュリティ対策とログ管理の重要性

テレワークでは社外からのアクセスが増えるため、セキュリティの強化が非常に重要になります。

例えば、「二要素認証」や「VPN(仮想専用線)」を導入する企業も多く、データ漏えいのリスク低減ができます。

また、誰がいつ・どのデータにアクセスしたかという「ログ管理」も不可欠です。

この記録があることで、不正アクセスへの対策はもちろん、万が一のトラブル時の原因追及にも活用できます。

IT部門としては、利便性と安全性の両立が大きなテーマです。

導入時には現場の要望をしっかりヒアリングし、スムーズな運用を意識することが重要です。

5. データ活用のDX戦略

デジタルを活かしたDXでは、データの利活用が核心となります。

社内外の情報を適切に集め、分析し、意思決定に生かすことができる企業こそ、今後の競争を勝ち抜けるでしょう。

5-1 顧客データの一元管理とCRMシステムの導入

CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)システムは、顧客情報を一元的に管理するためのツールです。

営業履歴・購入履歴・問い合わせ内容などを一つのシステムで可視化できます。

ある企業では、CRM導入により営業活動のヌケモレが減少。

対応状況がリアルタイムで共有されることで、チーム全体の顧客対応力が向上しました。

また、顧客の行動履歴をもとにした商品提案も可能となりました。

5-2 マーケティングオートメーションによる効率化

マーケティングオートメーションとは、見込み顧客へのメール配信・Web広告・スコアリングなどを自動化して行う仕組みのことです。

例えば、企業のサイトに来訪したユーザーにあわせて、関心の高い商品情報を自動で配信する仕組みなどが代表例です。

このような自動化により、少人数のマーケティングチームでも多くのリード(見込み顧客)に効率よくアプローチでき、売上拡大に貢献します。

5-3 BIツールによるデータ可視化と意思決定支援

BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールは、Excelなどに保存されている数字データを「見える化」し、わかりやすいグラフやチャートで表示できるツールです。

代表的な製品には、Tableau(タブロー)やPowerBI(パワー・ビーアイ)などがあります。

これを活用することで、経営者や管理職が「感覚」ではなく「データ」に基づいた判断を行えるようになります。

例えば、月ごとの売上や部門別の原価率をリアルタイムで把握できるようになり、経営方針を素早く見直すことが可能になりました。

6. 中小企業におけるDX導入の実例と課題

DXは大企業だけのものではありません。

中小企業こそ、自社の業務に合った技術を柔軟に取り入れることで、大きな生産性アップや顧客満足の向上が期待できます。

ここでは、その具体的な事例と、よくあるハードルについて紹介します。

6-1 小規模飲食店の予約システムによる業務改善

ある小規模の飲食店では、忙しいランチタイムの電話対応を減らすために「Web予約システム」を導入しました。

予約が自動でカレンダーに反映され、当日の席配置やスタッフ配置もスムーズになりました。

予約時にメニューを事前注文できる機能も追加することで、調理の準備段階から効率化でき、客単価(1人あたりの売上)アップにも成功しています。

6-2 地方企業の業務クラウド化成功例

地方の建設業を営む中小企業では、従来紙で行っていた「現場調査報告」「請求書管理」「顧客対応」などをクラウド化しました。

現場でスマホから報告書を送れる環境に変えたことで、事務作業が大幅に軽減。事務担当者の業務も分散され、過重労働の改善につながっています。

6-3 費用対効果と導入ハードル

中小企業がDXに取り組む際、多くの経営者の関心は「費用対効果(=導入にかかったお金と、その効果や利益のバランス)」にあります。

実際、最初の導入費用がネックとなって踏み切れない企業もありますが、無料から使えるツールや、「使った分だけ支払い(従量課金)」のサービスも多数存在します。

まずは小さな範囲からスタートし、効果や使いやすさを試しながら段階的に広げる方法が現実的です。

DXによる改善を数字や業績で「見える化」する仕組みを整えることで、経営層や現場の理解も得やすくなります。

7. DX推進における組織改革と人材育成

DXを推進するには、技術だけでなく「人」が鍵を握ります。

特に、情報システム部門だけでなく、全社的にDXを自分ごととして捉える組織文化の醸成が不可欠です。

ここでは、DX人材の定義や育成方法、組織改革で注意すべき点を見ていきましょう。

7-1 DX人材の定義と必要なスキル

DX人材とは、デジタル技術を活用して自社の課題解決や業務変革を進められる人材のことを指します。

この人材には特別に高度なプログラミングスキルが必要というわけではありません。

重要なのは「課題を見つけて新しい手段で解決する発想力」と「デジタルツールの活用力」です。

例えば、現場視点から業務のムダを見抜き、ツール活用で改善へと導ける人が求められています。

さらに、部門間をつなぐ「橋渡し役」のコミュニケーション力や、経営層に提案できるような説得力も必要です。

7-2 社内研修・リスキリング施策の導入

新しい技術を取り入れる時、社員全体がついてこられるようサポートする仕組みも重要です。

そのためには、社内での研修や「リスキリング(再学習)」の機会を設けることが効果的です。

例えば、ITリテラシー向上を基礎からサポートするeラーニングの導入や、現場の成功体験を共有する定例会を行うことで、理解と実践が進みます。

また、部署を超えて若手社員が新しいツールを紹介・展開するような「デジタル推進チーム」を設けた企業もあります。

学ぶ文化を社内に根づかせることが、DXを持続的に進める土台となります。

7-3 DXを実現する組織文化の醸成

DXの成否を大きく分けるのが、企業文化そのものです。

「これまでのやり方にこだわらず、変化を受け入れる姿勢」を組織全体で持つ必要があります。

そのためには、トップ(経営層)が率先して変革を推進する姿勢を見せることが重要です。

また、現場でデジタルの取り組みを行った社員を表彰する制度などを取り入れ、チャレンジの風土を醸成すれば継続的な改善も期待できます。

8. 未来を見据えたDXの展望とテクノロジー

DXは一度の取り組みで完結するものではなく、未来を見据えた継続的な変革です。

ここでは、今後の注目キーワードと、新たに登場するテクノロジー、そしてサステナビリティとの関係について紹介します。

8-1 AIの進化と業務自動化の未来

AI(人工知能)は、すでに多くの業務現場に入り込みつつありますが、今後はより高度な「認識・予測・判断」の分野へと進化すると見られます。

例えば、人手で行っていた品質検査をAIカメラが判断したり、売上データから未来の需要を予測したりと、業務の中で直接「判断や提案」ができるようになります。

こうしたAI技術の応用により、単なる効率化にとどまらず、新たな価値創出が期待されています。

8-2 メタバース・ブロックチェーンによる新たな活用事例

メタバースとは、仮想空間上で人が集まったり、商品やサービスを提供したりできる「デジタルの中の新しい社会空間」のことです。

現在はイベントや会議、ECでの導入が始まっており、顧客体験の場として大きく期待されています。

また、ブロックチェーン技術は「改ざんできない取引記録」を残せることから、金融や物流だけでなく、建設現場の実績管理や社内通貨管理などでも導入が進んでいます。

信頼と透明性を高めながら新たなサービス展開を可能とする技術です。

8-3 サステナビリティとDXの接点

SDGsや脱炭素社会の実現といったキーワードに示されるように、社会全体が「持続可能な発展」に向けて歩み始めています。

DXはこうしたサステナビリティの推進にも深く関係しています。

例えば、紙やエネルギーの使用削減、働き方の柔軟化、長時間労働の是正につながる施策は、経営と社会の両面で価値を提供します。

デジタル技術を活用してこれらの目標達成に寄与する企業は、社会からの評価も高まっていくことでしょう。

9. DXは誰にとっても「現実的」で「必要不可欠」な取り組み

本記事では、DXの定義や目的に始まり、業界別の成功事例、社内業務や働き方の変革、データ活用の戦略、中小企業ならではの導入ポイント、そして未来のテクノロジーまで幅広く解説しました。

特に情報システム部門の管理職として、「どこから手をつけるべきか」「どう現場と経営層の意識をつなぐのか」に頭を悩ませる方にとって、自社に合ったアプローチを考える一助になれば幸いです。

DXは特別なことではありません。

小さな一歩から始め、成果を積み重ねることが大きな変革への力となります。

まずは社内での共有から、未来を見据えて動き出しましょう。


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