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経営層も納得!Excelで始めるコストを抑えたDX入門ガイド

経営層も納得!Excelで始めるコストを抑えたDX入門ガイド
デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が進む中でも、現場では依然としてExcelが幅広く活用されています。 この記事は、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、Excelを活かした現場主導のDX推進について詳しく解説します。 Excelを完全に排除するのではなく、その特徴と優れた柔軟性を活かしながら、持続的に業務の効率化と可視化を実現するアプローチを紹介します。 高コストな全社システム刷新が難しい中堅・中小企業のDX推進担当者必見の内容となりますので、ぜひご一読ください。

目次

1. はじめに:なぜ今、Excelなのか?

デジタル技術を導入してDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めようとしても、なかなか現場の変化が追いつかない。

その中心にあるのが、Excelなどの既存ツールの存在です。

多くの企業ではすでにExcelが業務の中心となっており、新しいツールを導入しても従来のやり方から脱却できず、非効率な運用が続いています。

この記事では、Excelを完全に手放すのではなく、進化した活用方法を知り、DXにつなげていく考え方をご紹介します。

1-1 DXと聞くとシステム導入だと思いがち

「DX=新しいITシステムを導入すること」と考えている企業は少なくありません。

確かに、最新システムを導入すれば一時的に作業の効率は上がります。

しかし、最も重要なのは「現場でそれが使いこなせるかどうか」です。

Excelはすでに社員の多くが操作を理解しているため、いきなり使い慣れない新ツールに切り替えるよりも、現場にとって馴染み深いExcelを起点としてDXを目指すアプローチも有効です。

1-2 Excelの現場浸透力と柔軟性

Excelは、データの整理、表作成、グラフ、簡易な計算など、幅広い業務に対応できる万能ツールです。

しかも、カスタマイズしやすく、ユーザーが自由に使えるため、部署ごとの「現場の知恵」が詰まっています。


このような高い柔軟性により、今でも多くの現場で手放せない存在となっています。

だからこそ、Excelを排除するのではなく、うまく活用しながらDXを推進することが重要です。

2. DXの基礎知識と現場のギャップ

デジタルトランスフォーメーションとは、単に業務をデジタル化するのではなく、企業のビジネスモデルや働き方を根本から変革することを目指す取り組みです。


しかし、その目的が誤解されていたり、理想と現場の現実にギャップがあることで、多くの企業が足踏みしています。

2-1 DXの定義と目的

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を活用して、企業の製品やサービス、業務プロセス、働き方を根本から変えることです。


目の前の仕事を便利にする"業務改善"とは異なり、ビジネスそのものを再設計するような大きなビジョンが求められます。

このためには、単なるツール導入にとどまらず「何をどう変えるのか」を明確に示す必要があります。

2-2 よくある誤解と失敗パターン

例えば、大金をかけて業務システムを導入しても、「使いづらい」「現場に合わない」と不満が続出し、結局はExcelに戻ってしまう…というケースは珍しくありません。


また、現場の声を無視してDXを進めると、反発されて定着しないこともあります。

DXは現場の理解と参画があってこそ成功します。

2-3 現場視点でのDXの第一歩

最初に取り組むべきは「業務の見える化」です。

どのような作業が、どの順番で、誰によって行われているのか?

Excelで管理されている作業フローを洗い出し、効率の悪さや情報の分断を見つけることがスタートラインです。

3. “脱Excel”ではなく“進化するExcel”という発想

Excelを完全に排除しようとするのではなく、その強みを活かしながら、どのように進化させ、DXと融合できるかを考えましょう。

3-1 Excelは本当に排除すべきなのか?

Excelは非常に汎用的で、ほとんどの職種・業態で活躍しています。

一部では、セキュリティ面や属人化の問題を理由に「脱Excel」が叫ばれていますが、むしろ「Excelをどのように全社最適にするか」が重要です。


完全になくすことより、整理・標準化して活用すれば、コストを抑えながらDXを加速できます。

3-2 実務にフィットしたツールとしての価値

Excelは、部署ごとに異なる業務スタイルに柔軟に対応できます。

簡単な自動化も可能で、操作にも習熟している人が多いため、短期間で効果を出せるのも大きな魅力です。

ターゲットとなる中堅・中小企業にとって、新システムの導入よりもExcelを拡張していく方が、導入や運用の障壁が低いというメリットもあります。

3-3 Excel+αの考え方

Excelをそのまま使うのではなく、連携ツールや自動化機能、可視化ツールなどを「+α」で組み合わせることで、新たな価値が生まれます。

例えば、Microsoft社のPower Platform(パワープラットフォーム)を活用すれば、Excelの限界を超えた高度な分析や自動化が可能になります。

4. Excelを核に据えた業務最適化アプローチ

DXを加速するには、一足飛びに全社システムを刷新するのではなく、まずはExcelを基盤とした業務最適化から始めることが実践的です。

大規模投資をせず、現場に負担を掛けずに、段階的に改善していくことが成功の鍵です。

4-1 段階的な業務プロセス改善

まずは現状の業務プロセスを棚卸しして、「どこでExcelが使われているか」「どこにムダや手戻りがあるか」を明確にします。

Excelファイルの管理が属人化していたり、手入力による転記ミスが起きていないかといった点も確認が必要です。

例えば、「手順が毎回異なる見積書作成フロー」や「重複した情報を複数箇所で入力している作業」などは、簡単な見直しだけでも大きな効果を生み出せます。

4-2 共有・連携・管理の強化術

Excelは個人単位で作成・保存してしまいがちです。

そのため、バージョンの混乱や情報の整合性が失われるリスクもあります。

こうした事態を避けるには、共有フォルダやクラウドサービス(Google Drive や OneDrive など)を活用し、常に最新情報を追えるようにします。

また、ファイル名や保存ルールを明文化しておけば、誰が見ても理解できる「共通言語」になります。

4-3 データの標準化と可視化

異なるシートやファイルに散らばったデータを統一フォーマットで管理することが、業務効率化の出発点です。

例えば、日付の表記が「2024/06/01」「6月1日」「2024-06-01」のようにバラバラだと、集計作業でミスが発生します。

データ入力のルールを明確に定めてから可視化に進めば、Power BI などのツールと連携して一元管理が現実的になります。


5. Power Platformとの連携でExcelの力を倍増させる

MicrosoftのPower Platform(パワープラットフォーム)は、Excelをより強力な業務ツールへと成長させる4つの製品群で構成されています。

特に注目すべきが、Power Automate、Power BI、Power Appsの3つです。

5-1 Power Automate で実現する自動化

Power Automate(パワーオートメイト)とは、繰り返し発生する作業を自動化できるクラウドベースのツールです。

例えば、「Excelに入力された売上データを毎週集計」「特定の条件を満たすとメール通知」などが簡単に行えます。


プログラミングの知識がなくても利用できる仕組み(ノーコード/ローコード)なので、現場主導で運用開始できるのが特徴です。

5-2 Power BI で実現する可視化と分析

Power BI(パワー・ビーアイ)は、Excelに蓄積されたデータをグラフなどでわかりやすく表示できるビジュアル分析ツールです。

単に集計するだけでなく、「時間帯別の傾向」や「製品ごとの売上推移」などの視点で分析することが可能です。

意思決定スピードを高める武器になるでしょう。

5-3 Power Appsで簡易アプリ化へ

Power Apps(パワー・アップス)を使えば、Excelで管理していた申請書や報告書などを、スマホやタブレットから入力・確認できるアプリに変換できます。


手書き・紙ベースだった業務がアプリに置き換わることで、業務スピードも劇的に向上します。

6. Excelマクロ/VBAからはじめる業務効率化

Excelには、自動化機能としてマクロ(VBA:Visual Basic for Applications)があります。

これを使うことで、日々のルーティン作業を自動的にこなすことが可能です。

6-1 マクロの基本構築と実務活用

例えば、複数のCSVファイルを1つにまとめたり、決まったレイアウトでグラフを作成したり…こうした処理をマクロに組み込んでおけば、ボタン一つで実行できます。

毎日30分かかっていた作業が、数秒で終わるというケースも少なくありません。

6-2 陥りがちな失敗とその対策

属人化(特定の人しか扱えない状態)や、エラー発生時に誰も対処できないといった問題がよく発生します。

その予防には、簡単なマニュアルの共有、コメントの記述、そして他部署の人でも理解できるような設計が必要です。

6-3 業務ノウハウの見える化とナレッジ化

マクロを使う際には、そこに詰め込んだ知識・工夫を文書化してチームに共有しておくと、ノウハウが「会社の財産」になります。

これにより、業務が属人化せず、引き継ぎや教育がスムーズになる効果も期待できます。

7. ノーコード/ローコードのトレンドに合わせたExcel活用

最近では、プログラミングの知識がなくてもツールを作れる「ノーコード」「ローコード」が業界の注目を集めています。

Excelユーザーこそ、この流れに乗れるポテンシャルがあります。

7-1 ノーコードで何ができる?

ノーコードとは、文字通り「コード(プログラム)」を書かずにアプリやツールを作る方法です。

Power Automate や Power Apps などはその代表例です。

例えば、Excel入力をトリガーにSlack通知をしたり、アンケート結果を自動で可視化するなど、手間と時間を大幅に削減することが可能です。

7-2 Excelを軸にした最新テクノロジー活用事例

ある製造業では、品質管理の報告書をExcelとPower Appsで連携し、検査担当者がタブレットで現場入力できるようにした事例があります。

これにより、手書き→転記→確認の3つのステップが一気に1つに短縮されました。

7-3 業務に導入する際のポイント

いきなり大規模展開をせず、まずは「業務改善のタネがある部署(改善意欲がある人)」から始めてノウハウを蓄積しましょう。

その成功体験を社内に広げていくことで、現場のモチベーションも育ちます。


8. 現場主導で進めるDX推進ステップ

DXは「トップダウン(上からの号令)」ではなく、「ボトムアップ(現場からの提案)」のアプローチが重要です。

現場担当者とシステム担当が手を取り合うことではじめて、成果が見えてきます。

8-1 ボトムアップで現場からDXを始める

Excelを活用した業務改善などの「小さな成功」を積み重ね、それを社内で共有することで全社推進への波が生まれます。

これは、中堅・中小企業において現実的かつ効果的な方法です。

8-2 協業・巻き込みの工夫と仕掛け

部署をまたぐ連携には、共通言語や共通ルールが必要です。

標準テンプレートを作成する、Excelフォーマットの改善を協議するワークショップを開く、改善案コンテストを実施する、などの仕掛けが有効です。

8-3 DX人材の育成と仕組みづくり

ITの専門家ではない現場担当者でも、自動化ツールや分析ツールを使えるようにするための勉強会・トレーニングを実施しましょう。

この「現場から育つDX人材」が社内の変革を担う存在になります。

9. ケーススタディ:Excelベースで成功したDX事例

ここでは、実際にExcelを中心としてDXに成功した企業の事例をご紹介します。

業種や企業規模にかかわらず、現場の創意工夫でExcelは大きな力を発揮します。

9-1 中小企業におけるExcel中心のDX成功事例

ある地方の食品加工会社では、従業員数50名ほどの小規模な体制にもかかわらず、Excelを中心に業務改善が進められました。

もともと紙ベースで行っていた生産記録をExcel化し、作業者がその日の生産数や異常を記録する仕組みに変更。

さらにPower Automateを使って、記録内容を週間レポートとしてメールで自動配信するようにしました。

これにより、毎週行っていた手動集計作業が不要となり、報告業務の時短とデータの可視化が実現。

現場の作業負担が軽くなり、ミスも減少しました。

9-2 大企業でも進むExcelとのハイブリッド活用

ある大手流通業では、全社的にはERP(統合業務システム)が導入されていますが、現場では日々のデータ管理に依然としてExcelが使用されていました。


そこで、「Excel上で必要なデータを入力すれば、自動でERPへ連携される仕組み」を構築しました。

これにより、入力の二重化がなくなり、業務スピードが向上し、ERPの活用率も大幅に改善しました。

Excelを捨てるのではなく、業務に合った連携という「ハイブリッド型DX」の好例です。

9-3 現場からの声:失敗と成功の教訓

現場社員の声として多いのが、「ツールを変える前に、何が非効率かを見直すことが大切だった」という意見です。

また、最初は「また新しいことか」と嫌がられた改革も、効果を実感すれば「もっと早くやればよかった」と変わるようです。

一方で、進め方を誤ると「Excelが進化どころか複雑化しただけ」になるケースもあります。

このような事態を防ぐには、ルール・設計・教育の3点を意識しましょう。

10. まとめ:Excelとともに進化するDXの姿

ExcelをDXの敵と見なすのではなく、“進化のための出発点”として捉えることが成功への鍵です。


10-1 すぐにできることと中長期的に目指す姿

すぐに取り組める改善としては、業務で使用しているExcelの見直し(重複作業の削減、入力項目の整理)、自動化ツールの導入(Power Automate など)があります。

中長期的には、Excelを機軸としたデジタル人材育成、ツールの連携による業務の見える化、自部署での成功事例の水平展開(横展開)といった視点が求められます。

10-2 DX実現に向けたマインドセット

DXを会社の一部門だけの課題と考えず、「自分たちの仕事をよりよくするための手段」と捉えましょう。

現場が主役となって改善を続けていく習慣、つまり“継続的改善(カイゼン)”の文化を醸成することが、どんなツールよりも力強い推進力になります。

Excelを否定せず、正しく使い、つなげていけば、それは立派なDXです。


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