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そのDX、意味ありますか?胡散臭さを打ち破る「本当の変革」とは

そのDX、意味ありますか?胡散臭さを打ち破る「本当の変革」とは
DXが「胡散臭い」と言われる背景には、誤解や失敗の構造があります。 本記事では、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学監修のもと、定義のズレ、現場との温度差、成果の曖昧さ、そして再起動のための実践策までを詳しく解説します。 意味のあるDXを目指すすべての担当者に向けた、実務に役立つ内容となっておりますので、ぜひご一読ください。

目次

1. DXとは何だったのか?

「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は一時期、企業変革の救世主として持ち上げられました。

しかし、ブームの波が引いた今、「うさんくさい」「何が変わったの?」という疑念が、現場からも管理職からも聞こえてきます。

このセクションでは、本来の「DX」が持っていた意図と、なぜここまで誤解され、形骸化してしまったのかを紐解いていきます。


1-1.バズワード化した「DX」の正体

本来、DXとは「単なるデジタル化」ではなく、「組織やビジネスモデルの変革」を意味していました。

ところがメディアやセミナーでは、「DX=最新ITの導入」や「アプリを出すこと」など、一面的で表層的な定義が繰り返され、「バズワード(流行語)」として消費されてしまったのです。

結果として、「DX」という言葉に真剣な議論や追求が向けられず、実効性のあるプロジェクトが見えにくくなっています。


1-2.本来の定義とどこでズレたのか

DXは、2004年にスウェーデンの教授が提唱した「社会全体の変革」に端を発する言葉です。

それは、ITやデジタルの力で「人々の生活や組織構造に根本的な変化をもたらす」ことを意味していました。

しかし、日本にこの言葉が導入されたとき、「AI」「IoT(モノのインターネット化)」といった派手さを持つ言葉に引っ張られ、個別ツールへのすり替えが起きました。そのズレこそが、DXの胡散臭さの根源です。


1-3.「とりあえずやってる感」を演出する企業の実態

デジタル会議体を作る。Webサイトをリニューアルする。スマートフォンアプリを配信する。

そのいずれも悪いことではありませんが、「DXをやっています」とアピールするだけの目的で導入されたものに、業務改革としての意義があるのでしょうか?

実際には「実態がともなっていない」「本質的な変化が何もない」と現場が感じ、プロジェクトが定着せずに終わる事例も多く見られます。

2. なぜ多くの企業のDXは空回りするのか

導入当初は期待感に包まれ、予算も確保され、経営層からも強いメッセージが発信されます。

一時的には社内の熱も高まり、DXプロジェクトは順調に見えるかもしれません。

しかし数年後、その取り組みは振り返られることもなく、成果の曖昧な“過去の遺産”となってしまいます。
こうした「空回りしたDX」には、いくつかの共通した落とし穴があります。

ここでは、その構造的な原因と実態を掘り下げていきます。


2-1.明確な目的がないまま始まるDX

多くのプロジェクトは、「他社がやっているから当社も」といった外圧的な動機でスタートします。

しかし、DXはあくまでも結果であって、「何が目的で、それをどう変えたいのか」という意図がなければ意味がありません。

明確なゴール設定なしに始まったDXが、静かに頓挫するのは当然の結果です。プロジェクトの持続可能性を支えるのは「組織が本気で変わりたいかどうか」に他なりません。


2-2.現場と経営陣の温度差

経営者が「DXで未来を切り開こう」と語る一方で、現場では「これ以上仕事が増えるならやりたくない」というのが本音。

このギャップこそが、DXを進めようとする際の最大の障壁です。

現場の理解や業務の棚卸しなしに導入されたツールは「定着しない」「使いこなせない」状況を生み出し、結局は紙とExcelに戻るのです。


2-3.成果指標が“雰囲気”で定まる問題

「DXが進んでいるとは言えない気がする」と抽象的な指摘をする経営層。

一方で、現場はKPI(成果指標)も曖昧なまま不安を抱えて突き進みます。

「使う人が満足してないのに導入が成功?」といった違和感から、プロジェクトは自壊していきます。DXには、定量的かつ現場に寄り添った評価軸がなければなりません。


3. DXプロジェクトに群がるコンサルの生態

外部支援に頼ることは悪いことではありません。

しかし、支援を名乗るDX専門コンサルタントの中には、実態として「実働ゼロ」「資料作成だけ」なケースもあります。

ここでは、その背景と注意すべきサインを紹介します。


3-1.「DX支援」の中身:実はただの会議進行?

あるあるとしてよく聞くのが、「毎週やってた定例会議だけが進んでいた」という状況です。

コンサルが関与しても業務改善が走らないケースの多くは、議事録づくりや会議の司会進行が支援の中心であり、実働がまったく伴わないものです。

力のある外部パートナーは、現場に深く入り込み、一緒に変化の本質を掘り下げていく存在です。


3-2.最新ワードを並べるだけの提案書

「生成AI」や「ノーコード」など、最近のバズワードばかりが並ぶパワーポイント資料が、「自社の何をどう変えたいか」をまったく触れず作られているとしたら、それは“ふんわりした提案”=中身のない支援の危険信号です。

プロジェクトの目的は「カッコイイ資料」ではなく、「本当に困っている現場の変革」であるべきです。


3-3.「DXは禁止ワードにします」と言いたくなる瞬間

現場で何年も苦労してきた人ほど、「DXって言葉はもう聞きたくない」と本音を漏らします。

それは、あまりにも多くの曖昧で表面的な取り組みと、その言葉がセットで使われてきたからです。

本当に大切なことは、「どう変革したいか」「なぜそれが必要か」を明確にした上で、DXという言葉抜きでも実現することかもしれません。


3-4.「相場観」とコスト意識のズレ

多くの企業が外部コンサルに多額の費用を支払っていますが、「成果に見合った対価だったのか」という視点が抜け落ちがちです。
月額数百万の支援費用が、単なるレポーティングや手続き支援にとどまっていた事例もあります。
費用対効果を見える化し、内製とのバランスを取ることが重要です。


4. 本当に価値があるDXとは何なのか?

ここまで、うまくいかないDXの共通パターンに焦点を当ててきました。

では、逆に「成功しているDX」は何が違うのでしょうか?この章では、取り組みに価値を持たせる条件に迫ります。


4-1.売上・コスト・顧客満足への明確なリンク

価値あるDXに共通するのは、その改革が「売上増加」や「コスト削減」「顧客満足の向上」といった経営目標と直結していることです。

どこに数字が反映され、どう事業成長に寄与したのか?そこが曖昧なDXは、評価されず、続きません。

現場施策が経営指標に直結するルートを定義し続ける必要があります。


4-2.「業務改善レベル」で止まっていないか

「DXやってます」と言いながら、その実態はRPA(ロボット業務自動化)やExcelマクロの導入止まりという企業も少なくありません。

それらが無意味というわけではありませんが、業務の一部を効率化しただけで組織全体が変わったと言うのは早計です。

本当に価値あるDXとは、〈職場がどのように意思決定するか〉〈顧客との接点をどのように作るか〉といったビジネス構造そのものへの問い直しです。

単なる「便利化」でなく「変化をリードする企画力」をどうつけるかが本質です。


4-3.スモールスタートで得られる学び

成功するDXの多くは、大きな投資や全社一丸の掛け声から始まったわけではありません。

むしろ、1部署や数名の現場チームから、小さく始め、成果をフィードバックしながら広げていった事例が大多数です。

この「スモールスタートからの学び」を通して、自然にDXの方向性が社内に広がっていくのです。

いきなり全社で巨大プロジェクトを立ち上げるより、小さな成功事例を積み上げていくことが、最も効果的な変革手法です。


5. 現場の苦悩とジレンマ

DXがうまくいかない理由の一つに、現場との間にある「ギャップ」と「無関心」があります。

プロジェクトが注目されても、実際に行動を強いられるのは現場です。

ここでは、その矛盾と現場が抱える苦悩に迫ります。


5-1.現場に丸投げされる“変革”

役員が「業務改革せよ」と掲げても、実際に手を動かすことになるのは現場社員です。

しかし、十分な時間もリソースも与えられず、「ついでにやっておいて」と丸投げされるケースは少なくありません。

結果的に「業務を変えながら日常業務も続ける」という無理矢理な状況が生まれ、改革の質はどんどん低下していきます。

これは、働く人の意欲や信頼感を損なう重大な問題です。


5-2.業務量は増えるのに評価はされない

DXプロジェクトに参加する人たちは、多くの場合通常業務と並行でプロジェクト対応をしています。

しかし、その努力や負荷がきちんと評価されないケースがいまだに多く見られます。

タスクは増えるのに、人事評価にも給与にも反映されないといった不公平感は、やがて改革そのものへの冷めた態度につながります。

認識と制度が一致していなければ、DX推進の熱量はもたないのです。


5-3.現場の声がプロジェクトに届かない構造

現場の生の声こそが、真の課題を見つけるための宝庫です。

しかし、プロジェクトチームが経営企画室やIT部門に閉じてしまっていると、現場との接点が失われ、机上の空論が加速します。

「現場では既に紙を使わなくなってきているのに、紙から電子化するツールばかり導入しようとしている」といった的外れな改革もあります。

この断絶を埋める役割を担えるのが、情報システム部門などのハブ機能なのです。


5-4.「誰のためのDXか」が見えない

DXという言葉が一人歩きする中で、「誰のための変革なのか」が曖昧になるケースも少なくありません。
顧客の利便性のためなのか、従業員の働きやすさのためなのか。
また経営数値の改善なのか、この目的が共有されていないと、現場にとっては“なぜやるのか”が見えず、やらされ感ばかりが募ります。


6. 組織の中でDXが形骸化する理由

プロジェクトの立ち上げ時には盛り上がっても、数カ月後には誰も口にしなくなる、このような「消えていくDX」の原因はどこにあるのでしょうか?

組織の内部構造に存在する障害を解き明かします。


6-1.社内政治と上層部の自己満足プレゼン

「俺がいたときにDX始めてたから」「これがうちの成長戦略の一つだ」というように、プロジェクトを“自分の実績”にしたがる管理職が一定数存在します。

その結果として、実行力よりも見栄え重視のプレゼン資料に焦点が当たり、実態のないプロジェクトが稼働します。

「何を変えるか」より「誰がやったことにするか」が中心になってしまっては、本質的な変革は望めません。


6-2.対面主義と紙文化の根深さ

ITツールの導入が進んでも、稟議書は紙・押印・対面承認。

Web会議を行っても、「やっぱりリアルじゃないと伝わらない」という発言がでる。

こうした文化的・習慣的なバリアは、技術よりも強力に変革を妨げます。
「文化を変える覚悟」とは、ルールや制度だけでなく、上司が率先してSlackを使う、ペーパーレス会議を徹底するなど、日々の行動に表れるものです。
こうした“些細な変化の連続”こそが、DX成功の土台となります。


6-3.成果より“大義”が振りかざされる不毛

「弊社はサステナビリティとデジタルを両立させる未来組織を目指します」といった“かっこいい理念”が語られることがあります。

しかし、実際になされているのは稟議プロセスのWeb化程度であり、理想と現実のギャップは見るに堪えません。

理念に関心がないわけではないが、実務との紐付けがない“空中戦”は現場のやる気を削ぎます。

「言葉に酔わず」「地に足のついた」アプローチが、変革の第一歩です。


7. 正直、デジタルじゃなくても変われるのでは?

多くの課題と矛盾が浮き彫りになると、「本当にデジタルは必要なのか?」という疑問が生じてきます。

ここでは「変革の本質はツールではない」という視座から、DXを見直します。


7-1.「仕組み」より「目的」が先にあるべき

ツールを入れることを目的としていませんか?

新しく買ったシステムが、よくわからないまま置物になっている例は後を絶ちません。

本来の出発点は「何を変えたいか」であり、それが明確であって初めて「どんな手段を使うか」が決まるのです。

デジタルはあくまで選択肢の一つであり、目的に一致する手段を選ぶ柔軟さが必要です。


7-2.使われない変革ツールたち

導入されたチャットツール、可視化ダッシュボード、プロジェクト管理アプリなど。その数だけあっても、実際に使われていない。

使いこなせない、意味がわからない、そもそも業務とつながっていない。

このような状況は、手段が独り歩きして現場との接続が失われている証拠です。

本当に求められるのは、技術ではなく「使う人が価値を感じること」です。


7-3.カイゼン+ITくらいがリアル

「変革」=「ハイテク化」ではありません。

すでに多くの現場では、生産性向上や業務効率のため小さなカイゼン活動を行っています。

それらに「ちょっと便利なIT」を組み合わせることで、大きな成果が生まれることもあるのです。

地に足のついた改善+テクノロジー。それが今のリアルなDX実現への一歩です。


7-4.「無理に“DX”にしない勇気」

すべての改革を「DX」に括る必要はありません。
業務フローの見直しだけでも大きな改善につながることもあります。
「ITが主役でなければいけない」という思い込みを捨て、柔軟な発想で“本質的な変革”に集中することが、結果的にDX的な効果をもたらすこともあるのです。


8. これからの“ほんとうのDX”はどうあるべきか?

「では本質的なDXのあり方とは?」を具体的に考察します。

変革の本質は、職場と人材の「意識と行動」をどう変えるかにあるのです。


8-1.現場と技術が同じゴールを見る仕組み

DXの失敗の多くは、「技術側と現場側が別の目的に向かっていた」ことが原因です。

同じ課題感を持ち、共通の言葉で会話できる仕組みを作る必要があります。

そのためには、IT側は業務の理解を深める努力を、現場側はテクノロジーに触れるチャレンジをして、両輪で歩み寄る文化が欠かせません。


8-2.経営陣のコミットメントの在り方

本気でDXを進めるならば、経営層も時に一歩踏み込む必要があります。

「やれ」と命じるのではなく、「現場と一緒に考える」「先に変わってみせる」姿勢が求められるのです。

人は、変わろうとする姿勢からしか本当の納得感を得られません。

トップダウン型の押し付けではなく、現場と共創するリーダーシップが求められています。


8-3.最小限で最大効果を生む方法論

大きな予算や構想ではなく、小さなチャレンジから始め、そこにリソースを集中して成果を「見える化」し、それを他部門と共有し、水平展開する。

この小さな成功事例が、無理なく全社を動かす最も現実的な方法です。

DXとは、一発逆転の変革ではなく、小さな成功の積み重ねによって、企業全体の行動様式を変える営みなのです。


8-4.人材育成という“見えにくい投資”※新規追加案

本質的な変革は、技術ではなく「人」が担うものです。
そのため、ITリテラシーを高める研修や、部門横断での対話機会の創出といった「見えにくい投資」こそが最終的に大きな差を生みます。
人が変わることで、組織の行動も変わり、結果としてDXが定着していくのです。


DXが「胡散臭い」と感じられてしまう背景には、目的の不明瞭さや表面的な取り組み、現場との乖離など、さまざまな要因が複雑に絡んでいます。

本質的なDXを実現するには、言葉のイメージや流行に振り回されず、「なぜ変えるのか」「誰のために何を変えるのか」を見つめ直すことが欠かせません。

現場・経営・技術が同じゴールを共有し、小さな成功から着実に進めていくことの積み重ねが、やがて意味のある変革として実を結びます。

この整理が、これからのDXの再起動と、その先の組織変革の一助になれば幸いです。




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