GiftX調査、AI活用は脱チャットが分岐点|業務のエージェント化で成果実感3.8倍
目次
調査でわかった「チャット止まり」という停滞

まず今回の調査が浮き彫りにしたのは、AIの普及と成果実感のあいだにある隔たりです。GiftXは事前調査で全国8,000名を対象にAI利用実態を把握し、そのうえでビジネス職(オフィス系7職種)のAI利用者669名に本調査をおこないました。
結果を見ると、ビジネス職の約67%がすでに業務でAIを利用しており、利用者の約77%が毎日から週数回の高頻度で使っています。AIはすでに日常の道具になっているといえます。

問題は「何に使っているか」です。使い方の内訳は、チャットで質問・相談するが28.1%、チャットで文章や資料を作らせるが42.2%で、あわせて約7割がチャット利用にとどまっていました。自社の情報を覚えさせて実行させる段階は19.3%、業務プロセスそのものを AI エージェント化できている人は10.5%にとどまります。
多くの現場が「便利な相談相手」としてAIを使う一方で、業務を任せる段階までは進めていない。これが今回の調査が示す出発点です。
成果を分けた「AIエージェント化」という一線

次に、成果実感の差がどこで生まれたのかを見ていきます。ここで言う AIエージェント化とは、業務手順や判断基準をもとに、複数の工程にまたがる業務をAIが半自動もしくは自動で進める状態を指します。
調査では、生産性や成果が「明確に上がった」と答えた人は全体の約2割にとどまりました(生産性19.4%、成果・品質20.2%)。最も多かったのは「やや上がった」で約5割です。役に立っている実感は広くても、明確な成果にはつながりきっていない様子がうかがえます。
この差を分けていたのが、使い方の深さでした。業務を AIエージェント化した層では、生産性が「明確に上がった」と答えた人が54%、これに対しチャット利用にとどまる層では14%で、約3.8倍の開きが出ています。成果・品質の面でもエージェント化した層は44%に達し、他の段階(16〜19%)を大きく上回りました。

注目したいのはマーケティング職の結果です。AI利用率は約74%と7職種中2位で活用は広がっているものの、生産性が「明確に上がった」割合は13%、成果は14%と7職種で最も低い数値でした。利用が広いからといって成果に直結するわけではないという、示唆に富む結果です。
なお、これらは回答の関連(相関)を示すものであり、因果関係を証明するものではないと調査主体は明記しています。使い方の深さと成果実感が強く連動している、という読み方が妥当でしょう。
他調査が裏づける「個人まかせ」という共通課題
GiftX調査では、組織側の課題の1位が「AI活用が個人まかせになっている」で26%でした。一方で「AIをより積極的に活用したい」と答えた人は約6割にのぼります。足りないのは意欲ではなく、意欲を成果につなげる業務の仕組みだと読み取れます。
同じ傾向は中小企業でも確認できます。商工中金が2026年3月に公表した調査「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」では、6割超の中小企業が生成 AIの活用を個人の判断にまかせており、会社主導で導入・推奨している企業は約3割にとどまりました。個人まかせの状態は、規模を問わず日本企業に共通する課題だといえます。
導入率そのものの格差も見逃せません。総務省の令和7年版情報通信白書(2025年7月公表)によると、生成 AIの活用方針を策定している企業は大企業で約56%に対し、中小企業は約34%にとどまります。
また、中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」では、中小企業のAI導入率は20.4%で、導入目的は「業務効率化・作業時間の短縮」が87.0%と最多でした。
市場全体は拡大が続いています。関心と実装のあいだにある溝を、どう埋めるかが問われる局面です。
中小・中堅企業が注目すべきポイント|自社への示唆
ここからは、今回の調査を自社にどう持ち帰るかを考えます。大企業の話として片づけず、明日からの一歩に落とし込むための視点を3つに整理しました。
示唆1:ツール導入より「業務プロセス設計」に投資する
今回のデータが示す最大の学びは、AIを配っただけでは成果が出にくいということです。成果実感が跳ね上がったのは、業務手順や判断基準を言語化し、複数工程をAIに任せる段階に進んだ層でした。
中小・中堅企業がまず取り組むべきは、高価なツールの選定ではなく、「どの業務を、どの手順で、どこまでAIに任せるか」を設計することです。既存の業務フローを一度書き出し、判断が定型化できる工程を洗い出すところから始めると、投資対効果が見えやすくなります。
示唆2:1業務からのスモールスタートで成功体験をつくる
いきなり全社展開を狙うと、個人まかせの状態に逆戻りしがちです。効果を見込みやすい1業務にしぼり、成果を確認しながら広げるほうが定着しやすいといえます。
たとえば問い合わせ一次対応、定型的な資料作成、見積もりの下書きなど、手順が明確で頻度の高い業務は最初の対象に向いています。小さく始めて数字で効果を確かめ、社内に横展開する。この順番が現実的です。
示唆3:「個人任せ」を脱するルールと役割を決める
意欲があっても仕組みがなければ成果は再現できません。誰がAI活用を推進するのか、どの情報を入力してよいのか、出力を誰が確認するのか。この3点だけでも社内ルールとして明文化すると、属人化から一歩抜け出せます。
推進役は専任である必要はありません。まずは現場に近い担当者を旗振り役に指名し、成功事例を共有する場を設けるだけでも、個人任せからチームの取り組みへと変わっていきます。
よくある質問
Q1. AI エージェント化とは具体的に何を指しますか。
Q2. なぜチャット利用だけでは成果が出にくいのですか。
Q3. 中小企業でも AI エージェント化はできますか。
Q4. 導入で最初につまずきやすい点はどこですか。
Q5. どの業務から着手するのがよいですか。
Q6. 成果を測るにはどうすればよいですか。
まとめ
今回のGiftX調査から読み取れる要点を整理します。
AIをすでに使っているのに成果が伸びないと感じるなら、次の一手は新しいツールの追加ではなく、まかせる業務を決めて手順を設計することかもしれません。
小売業界でブランド品のバイヤーなどを経験したのちIT業界に転身。 株式会社ライブドアのインフラ事業の営業責任者を担当。 ベンチャー企業の運営に関わった後、2016年にデザインワン・ジャパン(現GMOデザインワン株式会社)へ入社。 「エキテン」事業の営業・サポート部門責任者を務めたのち受託開発事業の立ち上げを担当し、 現在は執行役員兼エキテン事業、受託開発事業とその所管グループ会社を統括。
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