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自治体が進めるまちづくりDX|地域課題解決の最新事例5選

自治体が進めるまちづくりDX|地域課題解決の最新事例5選
「まちづくりのDXを任されたが、何から着手すべきか分からない」「開発パートナーをどう選べばいいのだろう」。住民サービス向上から地域活性化まで、広範な課題を扱うまちづくりDXにおいて、こうした悩みを抱える担当者は少なくありません。 まちづくりDXを成功させる鍵は、技術導入そのものを目的にするのではなく、地域が抱える具体的な課題解決から発想することです。先進自治体の成功事例は、そのための実践的なヒントを数多く含んでいます。 本記事では、先進自治体の成功事例5選を詳しく紹介し、DX推進の実践ステップから開発パートナー選びの要点までを網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたの地域が目指すべきDXの道筋が明確になるはずです。

目次

DXまちづくりの本質とは?単なるIT化との決定的な違い

DX(デジタルトランスフォーメーション)によるまちづくりを理解するうえで、まず押さえておくべきは「DX」と「IT化」の本質的な違いです。多くの担当者がこの2つの概念を混同しがちですが、実際にはまったく異なるアプローチを意味します。

IT化は「業務の効率化」、DXは「価値の創造」

IT化とは、既存の業務プロセスをデジタル技術によって効率化することを指します。例えば、紙の申請書をデジタルフォームに置き換える、手作業のデータ入力を自動化するといった取り組みがこれに該当します。作業時間の短縮と人的ミスの減少を実現します。

一方、DXはデジタル技術を活用して、ビジネスモデルや住民サービスそのものを根本的に変革し、新たな価値を創出することを目指します。単なる効率化を超えて、これまでにない住民体験や地域サービスを生み出すのがDXの本質です。

まちづくりDXが目指す3つの価値変革

まちづくりの観点でDXを考えると、以下の3つが核心となります。

第一に「住民生活の質的向上」です。例えば、単に窓口業務をオンライン化するだけでなく、AIチャットボットによる24時間対応や、住民にパーソナライズされた情報提供など、住民一人ひとりにとっての利便性を飛躍的に高めます。

第二に「データ駆動型の意思決定」です。各種センサーやIoTデバイスから収集されるリアルタイムデータを活用し、交通渋滞の解消や防災対策など、科学的根拠に基づいた政策立案が可能になります。

第三に「官民連携による新サービスの創出」です。自治体が持つデータを民間企業に開放することで、地域課題を解決する新たなビジネスやサービスが生まれる土壌を作ります。

従来の「電子化」との3つの違い

まちづくりDXと従来の電子化を比較すると、アプローチの違いが明確になります。

従来の電子化は「部分最適」を追求するものでした。各部署が個別にシステムを導入し、それぞれの業務を効率化します。しかし部署間でのデータ連携は考慮されず、いわゆる「サイロ化」が発生しがちでした。対してDXは「全体の最適化」を目指し、部署間のデータの連携が可能な基盤を構築します。

次に、電子化は「既存プロセスの置き換え」にとどまりますが、DXは「プロセスの再設計」をします。デジタル技術を前提として業務フロー自体を見直し、より合理的な仕組みを構築するのです。

最後に、電子化は「内部効率化」が主目的ですが、DXは「住民価値の向上」を最優先します。行政側の都合ではなく、住民が何を必要としているかという視点から、サービス全体を再構築します。

なぜ今まちづくりDXが急務なのか?地域が直面する3つの構造的課題

多くの自治体でDX推進が急がれる背景には、日本の地域社会が抱える深刻な課題があります。これらの課題は放置すれば地域の持続可能性そのものを脅かすものであり、デジタル技術による解決が不可欠となっています。

人口減少と少子高齢化による行政サービスの限界

日本全体で人口減少が進む中、地方自治体では特に深刻な問題が表面化しています。生産年齢人口が減少する一方で高齢者人口は増加し、限られた職員数で増大する行政ニーズに対応しなければならなくなっています。

従来型の人的リソースに依存したサービス提供では、もはや住民の期待に応えることが困難になりつつあります。デジタル技術を活用した業務の自動化や効率化は、単なる選択肢ではなく、住民サービスを維持するための必須条件となっているのです。

レガシーシステムのリスク

既存の古くなったレガシーシステムを放置すると、様々なリスクが生じます。自治体の多くの基幹システムが20年以上前に構築されたものであり、保守コストの増大や技術者不足により、システムの維持が困難になりつつあります。

レガシーシステムは個別で最適化されているので、データの連携が困難です。また、セキュリティ上の脆弱性も高まり、サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが増大します。クラウド技術やAIなど新しい技術との統合も難しく、デジタル社会の進展に取り残される恐れがあります。

こうした状況を打開するには、システムの抜本的な刷新と、データ連携を前提とした新しいシステムへの移行が必要です。これはまさにDXの核心的な取り組みといえます。

住民ニーズの多様化

民間企業のデジタルサービスに慣れた住民は、行政サービスにも同様の利便性を求めるようになっています。24時間いつでもスマートフォンから手続きができる、一度登録した情報を何度も入力する必要がない、自分に関係する情報だけが届く 、こうした「当たり前」の体験が、行政サービスでも期待されています。

また、ライフスタイルや価値観の多様化により、画一的なサービス提供では住民満足度を高めることが難しくなっています。年齢、家族構成、居住地域、関心事項などに応じた情報提供や、個々のニーズに応じた柔軟なサービス設計が求められています。

こうした期待に応えるには、データ分析による住民理解とデジタル技術を活用した個別対応が不可欠であり、まちづくりDXの重大な課題となっています。

まちづくりDXの最新事例5選

理論や課題認識だけでは、実際のDX推進は始められません。ここでは全国の先進自治体が取り組む具体的な事例を5つ紹介し、それぞれの取り組み内容、成果、そして他の自治体や企業が参考にできるポイントを詳しく解説します。

事例1:宇都宮市「デジタル共創未来都市ビジョン」による全庁的DX推進

栃木県宇都宮市は「宇都宮市デジタル共創未来都市ビジョン」を策定し、地域社会全体のデジタル化に向けた包括的な取り組みを展開しています。この事例が特筆すべきなのは、単発的なシステム導入ではなく、市全体として統一されたビジョンのもとで戦略的にDXを推進している点です。

具体的な施策としては、まず庁内のデジタル環境整備から着手しました。Web会議システムの全庁的導入により、部署間の連携がスムーズになり、会議のための移動時間も削減されました。また、外部からデジタル人材を積極的に任用し、民間企業での経験やノウハウを行政に取り入れています。

住民向けサービスでは、行政手続きのオンライン化を進め、窓口に来庁しなくても完結できる手続きを大幅に拡充しました。結果として窓口の混雑が緩和され、職員はより複雑な相談業務や政策立案に時間を割けるようになりました。

この事例から学べるポイントは、トップダウンでビジョンを明確にし、組織全体で共有することの重要性です。各部署が個別にDXを進めるのではなく、全体最適の視点で優先順位を決定し、リソースを集中投下する戦略が成果に結びついています。

事例2:長野市「ローカル5G」によるスポーツ施設での新体験創出

長野県長野市では、地元バスケットボールチームの拠点施設に5Gを整備し、スポーツをより快適に観戦することができるようになりました。。この事例は、DXが「住民の生活をより豊かにする」という本質を体現した取り組みといえます。

5Gの超高速・大容量通信を活用し、客席からスマートフォンで飲食物の注文・決済ができるシステムを導入しました。従来は試合の途中で売店に並ぶ必要がありましたが、座席を離れることなく注文でき、指定の時間に受け取れるようになりました。観戦体験が大幅に向上し、売店の売上増加にも貢献しています。

さらに、モバイルチケットの導入により、チケットの購入から入場までがスムーズになりました。デジタルチケットは転売対策にもなり、運営側とファン双方にメリットをもたらしています。

この事例が示すのは、DXは行政業務の効率化だけでなく、地域の魅力向上や経済活性化にも貢献できるということです。テクノロジーを住民が楽しめる形で実装することで、DXへの理解と支持を広げる効果も期待できます。

事例3:高松市「スマートシティたかまつ」のデータ連携基盤構築

香川県高松市が推進する「スマートシティたかまつ」は、データ連携を中核とした先進的な取り組みです。この基盤の特徴は、自治体だけでなく民間企業、大学、市民団体など多様な主体が参画し、それぞれが持つデータを共有・活用できる仕組みを構築している点にあります。

データ連携基盤では、交通、防災、健康、環境など様々な分野のデータが集約されます。これらのデータはAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を通じて参画者が利用でき、新たなサービス開発の基盤となります。

例えば、交通データと観光データを組み合わせることで、観光客向けの最適な移動ルートを案内するサービスが生まれました。また、気象データと農業データの統合により、農家向けの栽培支援サービスも開発されています。行政が直接サービスを提供するのではなく、データ基盤を整備することで民間の創意工夫を引き出すというアプローチが、持続可能なエコシステムを作り出しています。

この事例から学べるのは、DXにおけるオープンデータとエコシステム構築の重要性です。自治体が単独でサービスを開発・運営するには限界がありますが、データ基盤を提供して民間の力を活用することで、より多様で質の高いサービスが生まれる可能性があります。

事例4:千葉市の「プッシュ型通知」による積極的な情報発信

千葉県千葉市は、住民が必要とする情報を適切なタイミングで届ける「プッシュ型通知」サービスを展開しています。従来の行政情報発信は「プル型」、つまり住民が自ら情報を探しに行く必要がありました。

プッシュ型通知では、住民が事前に登録した属性(居住地区、年齢層、関心分野など)に基づいて、関連性の高い情報が自動的にスマートフォンに通知されます。例えば、子育て世帯には予防接種の案内や子育て支援イベントの情報が、高齢者には健康診断の案内や詐欺被害防止の注意喚起が届きます。

この仕組みにより、従来は見逃されがちだった重要な行政情報が確実に住民に届くようになりました。特に防災情報や緊急情報の伝達においては、迅速性が命を守ることにつながります。実際、台風接近時の避難所の開設情報や、不審者情報などが適切なタイミングで通知され、住民の安全確保に貢献しています。

千葉市の取り組みで注目すべきは、情報の「届け方」をデジタル化したことで、住民と自治体のコミュニケーションの質が変わった点です。一方的な情報提供ではなく、住民のニーズに応じた情報提供が、行政への信頼感と満足度を高めています。

事例5:横浜市「IoTスマートホーム実証実験」による生活の質向上

神奈川県横浜市では「未来の家プロジェクト」の一環として、IoT技術を活用したスマートホームの実証実験を行っています。この取り組みは、住宅という最も身近な生活空間にデジタル技術を導入することで、住民のQOL(生活の質)を向上させる試みです。

実証実験では、センサーやスマートデバイスを設置した住宅で、エネルギー使用の最適化、高齢者の見守り、防犯対策などを統合的に実現しています。例えば、AIが住民の生活パターンを学習し、エアコンや照明を自動制御することで、快適性を保ちながらエネルギー消費を削減します。

また、高齢者世帯では、各部屋に設置されたセンサーが日常の活動を検知し、異常があれば家族や支援者に通知されます。プライバシーに配慮しながら、一人暮らしの高齢者が安心して暮らせる環境を実現しています。

この実証実験から得られたデータや知見は、将来的な都市計画や住宅政策に反映される予定です。個別の住宅レベルでのDXが、まち全体のスマートシティ化につながるというビジョンが、この事例の重要なポイントです。

まちづくりDXの具体的な進め方:7つの実践ステップ

先進事例を参考にしながら、自組織でまちづくりDXを推進するには、体系的なアプローチが必要です。ここでは実践的な7つのステップを順を追って解説し、各段階で何に注意すべきか、どのように進めるべきかを明確にします。

ステップ1:現状分析と課題の可視化

DX推進の第一歩は、自治体や地域が抱える課題を正確に把握することです。しかし多くの担当者が陥りがちなのは、「デジタル化する」に集中してしまい、本来解決すべき課題が曖昧なまま進んでしまうことです。

現状分析では、まず各部署でどのような業務があり、どれくらいの時間とリソースが使われているかを定量的に把握します。同時に、職員や住民からのヒアリングを通じて、現場が感じている課題を収集します。

次に、収集した情報を整理し、課題を優先順位付けします。影響範囲の広さ、緊急性、解決可能性などの観点から評価し、どの課題から着手すべきか戦略的に判断することが重要です。

ステップ2:ビジョンと目標の設定

課題が明確になったら、DXを通じて実現したい将来像(ビジョン)を描きます。このビジョンは組織全体で共有され、すべての取り組みの指針となるものです。

ビジョンは抽象的な理想論ではなく、具体的にイメージできるものが望ましいです。「5年後にはこのようなサービスを提供している」「住民がこのような体験を得られている」といった形で、ゴールの状態を明確にします。

さらに、ビジョンを実現するための測定可能な目標(KPI:重要業績評価指標)を設定します。例えば「行政手続きのオンライン化率を80%にする」「窓口での待ち時間を平均15分以内にする」「住民満足度調査で80点以上を獲得する」など、進捗を客観的に評価できる指標が必要です。

ステップ3:推進体制の構築とデジタル人材の確保

DX推進には専任の組織体制が不可欠です。兼務での対応では日常業務に追われ、なかなか前に進みません。可能であれば、首長直轄のDX推進室や専任チームを設置することが理想的です。

チーム編成では、IT技術だけでなく業務改革やプロジェクト管理のスキルを持つ人材が必要です。自治体内部だけで人材を揃えるのが困難な場合は、外部からのデジタル人材の任用や、民間企業との人材交流も検討すべきです。

また、DXは技術部門だけで完結するものではありません。各部署から代表者を集めた横断的なプロジェクトチームを組織し、現場の知見を取り入れながら進めることで、実行的な施策が生まれます。

ステップ4:小さく始めて成功体験を積む(スモールスタート)

大規模なシステム刷新を一度に行うのはリスクが高く、失敗した場合の影響も甚大です。DX推進では「スモールスタート」の原則が重要になります。

まずは比較的取り組みやすく、効果が見えやすい領域から着手します。小規模なプロジェクトで成功体験を積むことで、組織内にDXへの理解と支持が広がります。

また、スモールスタートには「早期に問題を発見できる」というメリットもあります。小規模であれば軌道修正も容易であり、失敗から学んで次のステップに活かすことができます。

ステップ5:データ基盤の整備と連携

個別のシステムやサービスを導入するだけでは、真のDXは実現しません。各システムのデータを連携させ、部門間で活用できるシステムの整備が必要です。

データの管理では、まずデータの標準化とマスタデータ管理が重要です。部署ごとに異なるフォーマットや定義でデータが管理されていると、連携が困難になります。共通のフォーマットを作成し、データの一貫性を保つ仕組みが必要です。

次に、APIなどの技術を用いてシステム間のデータ連携を実現します。リアルタイムでのデータ共有が可能になれば、住民は一度入力した情報を何度も提供する必要がなくなり、シームレスなサービス提供が実現します。

また、データの活用においてはセキュリティとプライバシー保護が最重要課題です。適切なアクセス管理、暗号化、匿名化などの技術的対策と、利用目的の明確化や同意取得などの運用面での対策を両立させる必要があります。

ステップ6:職員のデジタルリテラシー向上

最新のシステムを導入しても、それを使う職員のスキルや意識が伴わなければ効果は限定的です。DX推進と並行して、組織全体のデジタルリテラシー向上に取り組む必要があります。

研修プログラムは、一律の内容ではなく、職員のレベルや役割に応じた段階的なものが効果的です。基本的なITスキルから、データ分析、デジタルツールの活用、デザイン思考など、多様なテーマを用意します。

また、「デジタル化=業務削減=自分の仕事がなくなる」という不安を持つ職員もいます。DXの目的は人員削減ではなく、単純作業から解放されることで、より創造的で価値の高い業務に集中できるようになることだと、丁寧に説明し理解を得ることが重要です。

ステップ7:PDCAサイクルによる継続的改善

DXは一度実施したら終わりではなく、継続的に改善していくものです。定期的に効果測定を行い、当初設定したKPIに対する達成状況を確認します。

測定結果をもとに、うまくいっている点は他部署でも展開し、課題がある点は原因を分析して改善策を講じます。また、住民や職員からのフィードバックを積極的に収集し、ユーザー視点での改善を重ねることで、サービスの質が向上します。

技術環境も社会ニーズも常に変化しています。定期的にビジョンや戦略を見直し、新しい技術や手法を取り入れながら、進化し続けるDX推進体制を構築することが、長期的な成功につながります。

まちづくりDXにかかる主要な費用項目

DX推進を検討する際、多くの担当者が直面するのが予算の問題です。ここではまちづくりDXにかかる主要な費用項目と、それぞれの予算目安を解説します。

初期投資が必要なコスト

DX推進の初期段階では、システム開発やインフラ整備に関する投資が中心となります。まず「システム開発費」は、導入するシステムの規模や機能によって大きく変動します。

例えば、特定の業務をデジタル化する小規模なシステムであれば、数百万円から1,000万円程度で実現可能な場合もあります。一方、基幹系システムの刷新や、データ連携のシステムのような大規模プロジェクトでは、数億円規模の投資が必要になることもあります。

「インフラ費用」としては、サーバーやネットワーク機器の調達費用があります。ただし近年はクラウドサービスの利用が主流となっており、初期投資を抑えて月額課金制で利用開始できるサービスが増えています。クラウド利用の場合、初期費用は大幅に削減できますが、ランニングコストが継続的に発生する点に注意が必要です。

また、「コンサルティング費用」も重要な項目です。DX戦略の策定、現状分析、要件定義などの上流工程を外部専門家に依頼する場合、数百万円から数千万円の費用が発生します。しかし、この初期投資を惜しんで不適切なシステムを導入してしまうと、後から修正するコストの方がはるかに高くつく可能性があります。

継続的に発生するランニングコスト

DXは初期投資だけでなく、継続的な運用コストも考慮する必要があります。「システム保守・運用費」は、システムの安定稼働を維持するために不可欠です。一般的に、初期開発費の10~20%程度が年間の保守費用として必要とされます。

「人件費」も見逃せません。システムの運用管理、データ分析、ユーザーサポートなどを行う人員が必要です。自治体の職員で対応する場合も、人件費を十分に支払う必要があります。外部に委託する場合は、その委託費用が継続的に発生します。

さらに、「教育研修費」も継続的に必要です。新しい職員への教育、既存職員のスキルアップ、システムのアップデートに伴う再教育など、人材育成には継続的な投資が求められます。

予算を抑えつつ効果を最大化する3つの戦略

限られた予算の中でDXを進めるには、戦略的なアプローチが重要です。

第一の戦略は「段階的な投資」です。すべてを一度に実現しようとせず、優先度の高い領域から順次投資していきます。各段階で効果を検証しながら進めることで、無駄な投資を避け、投資対効果を最大化できます。

第二の戦略は「既存資産の活用」です。既に導入しているシステムやデータを最大限活用し、新規投資を最小限に抑えます。レガシーシステムも、適切なAPI連携によって新しいシステムと統合できる場合があります。

第三の戦略は「国の補助金・交付金の活用」です。政府はデジタル田園都市国家構想推進交付金など、自治体のDX推進を支援する制度を整備しています。これらの制度を積極的に活用することで、自己財源の負担を軽減できます。

投資対効果(ROI)の考え方

DX投資の妥当性を評価するには、投資対効果(ROI:Return on Investment)の考え方が重要です。ただし、行政のDXでは民間企業のように売上増加という明確な指標がないため、効果の測定には工夫が必要です。

定量的な効果としては、「業務時間の削減」「窓口対応件数の減少」「紙の使用量削減」などが測定できます。これらを金額換算することで、投資額との比較が可能になります。

定性的な効果としては、「住民満足度の向上」「職員のモチベーション向上」「政策立案の質向上」などがあります。これらはアンケート調査などを通じて定期的に測定し、DXの効果を多面的に評価します。

重要なのは、DX投資を単なるコストではなく、将来への投資として捉えることです。短期的なコスト削減だけでなく、長期的な組織能力の向上や地域価値の創造という観点から評価することが、適切な意思決定につながります。

まとめ

本記事では、まちづくりDXの基礎概念から具体的な推進方法、成功事例、予算の考え方、そして開発パートナーの選び方まで、包括的に解説してきました。DXは単なるIT化ではなく、デジタル技術を活用して住民サービスや地域社会そのものを変革し、新たな価値を創出する取り組みです。

宇都宮市のデジタル共創未来都市ビジョン、長野市のローカル5G活用、高松市のデータ連携基盤、千葉市のプッシュ型通知、横浜市のIoTスマートホームといった先進事例は、いずれも住民視点に立ち、地域の課題を解決するための創意工夫に満ちています。これらの事例に共通するのは、トップのコミットメント、住民視点でのサービス設計、データ連携によるエコシステム構築、実証実験を通じた検証、そして段階的な拡大と継続的改善というアプローチです。

DX推進は決して容易な道のりではありません。組織の壁、予算の制約、技術的な課題など、様々な困難に直面することでしょう。しかし、明確なビジョンを持ち、適切なパートナーと共に一歩ずつ着実に進めていけば、必ず成果は現れます。重要なのは、完璧を目指して動けなくなることではなく、小さくても良いので実際に始めてみることです。まちづくりDXによって、より豊かで持続可能な地域社会が実現されることを願っています。

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