AI開発のRFP(提案依頼書)テンプレート|失敗しない書き方と必須9項目
目次
なぜ AI開発の RFP は通常のシステム開発と違うのか

汎用テンプレートで済ませると、ほぼ確実に見積もりが比較できなくなります。理由は AI開発特有の「不確実性」にあります。
AI開発特有の3つの不確実性(精度・データ・フェーズ設計)
通常開発では「仕様どおりに動くか」が基準ですが、AI開発では「どの程度の精度で動くか」が問われます。正解が一意に決まらない点が根本的な違いです。
不確実性は3つあります。
第一に精度要件です。Precision か Recall かで開発工数は大きく変わります。第二にデータ要件です。学習データの品質と量が成否を左右しますが、発注時点で状態不明なケースが多いです。第三にフェーズ設計です。PoC→本番化の2段階が前提になり、一括見積もりでは追加費用が膨らみます。
汎用 RFP テンプレートをそのまま使うと起きる問題
Ragate株式会社が2025年にビジネスパーソン550名を対象に実施した調査では、RFP 作成時の課題として「要件の粒度がわからない」が19.6%を占めました。
精度・データ要件が抜けた RFP は各社が異なる前提でコストを積む原因になります。「PoC では動いたが本番で使えない」失敗の多くは、本番化の判断基準を RFP で定めていなかったためです。
AI開発 RFP に必須の9つの記載項目
以下の9項目を網羅すれば、見積もり前提を揃えられます。基本5項目と AI 特有4項目に分けて整理します。
基本項目(5項目)
AI 特有の項目(4項目)
AI開発 RFP テンプレート(コピペ可)
以下の穴埋め式テンプレートを自社の要件に合わせて編集してください。
テンプレート全文
■ プロジェクト名:[ ]
■ 作成日:[YYYY-MM-DD]
■ 担当者:[ ]
【1. 背景・目的】現状の課題:[ ] AI で実現したいこと:[ ]
【2. 対象業務】業務名:[ ] 現状手順:[ ] AI 適用箇所:[ ]
【3. 機能要件】入力データ:[形式・量・頻度] 期待出力:[ ] 連携システム:[ ]
【4. 非機能要件】同時アクセス:[ ] 応答速度:[ 秒以内] 可用性:[ %以上]
【5. 予算・スケジュール】予算レンジ:[ 万〜 万円] 希望納期:[ ]
【6. データ要件】形式:[PDF/CSV/DB等] 量:[約 件/ GB] 品質:[整備済/未整備/一部]
【7. 精度要件】指標:[Precision/Recall/F1] 目標:[ %以上] 正解の定義:[ ]
【8. PoC 設計】期間:[ 週間] データ規模:[ 件] 成功基準:[ ] 本番化判断:[ ]
【9. セキュリティ・運用】方針:[クラウド/オンプレ/閉域網] 保守範囲:[ ] 改善:[月次/四半期]記入例:社内文書検索 AI(RAG)の RFP サンプル
RAG 構築を題材にした記入例です。
プロジェクト名「社内ナレッジ検索 AI」、対象業務「社内規程の問い合わせ(月200件を手動回答)」、データ「PDF 約500件・2GB・一部未整備」、精度「Top-3 Recall 85%以上」、PoC「4週間・100件で評価、本番化は Recall 80%以上かつ応答3秒以内」のように記載します。
■ プロジェクト名:社内ナレッジ検索 AI(RAG)構築プロジェクト
■ 作成日:202X-XX-XX
■ 担当者:総務部 デジタル推進担当
【1. 背景・目的】
現状の課題:総務・人事等へ寄せられる「社内規程の問い合わせ」に対し、月間約200件を手動で検索・回答しており業務負荷が高い。
AI で実現したいこと:LLMおよびRAG技術を活用し、社内規程に関する問い合わせ対応を自動化・効率化する。
【2. 対象業務】
業務名:社内規程に関する社内からの問い合わせ対応業務
現状手順:担当者がファイルサーバーから該当文書を検索し、内容を読み込んで回答を作成。
AI 適用箇所:従業員からの自然言語による質問への自動回答生成、および根拠ドキュメントの提示。
【3. 機能要件】
入力データ:従業員からのテキスト質問(随時)
期待出力:自然言語による回答文、根拠ドキュメント(参照元PDFと該当ページ)の提示
連携システム:社内ポータルサイト、またはチャットツール(Teams/Slack等)
【4. 非機能要件】
同時アクセス:数十名規模
応答速度:3秒以内
可用性:99.9%以上
【5. 予算・スケジュール】
予算レンジ:〇〇万〜〇〇万円
希望納期:202X年XX月末(本番稼働)
【6. データ要件】
形式:PDFファイル
量:約500件 / 約2GB
品質:一部未整備(スキャン画像由来のPDFや、フォーマット不統一なドキュメントが含まれる)
【7. 精度要件】
指標:Top-3 Recall
目標:85%以上
正解の定義:ユーザーの質問に対し、回答の根拠となる正しいドキュメントが検索結果の上位3件以内に含まれること
【8. PoC 設計】
期間:4週間
データ規模:評価用テストデータ(質問と想定ドキュメントのペア)100件
成功基準:テストデータにて Recall 80%以上、かつ応答時間3秒以内を達成
本番化判断:PoC期間内に上記の成功基準(精度・パフォーマンス)を両方満たすこと
【9. セキュリティ・運用】
方針:セキュアなクラウド環境(Azure OpenAI等の閉域網接続を想定)
保守範囲:インフラの稼働監視、APIアップデート対応、QAサポート
改善:月次でのログ分析・プロンプトチューニング対応
ベンダー選定で失敗しないための評価チェックリスト
技術力だけでベンダーを選ぶと失敗します。AI開発は運用しながら精度を改善し続ける仕事だからです。以下の10項目で総合評価してください。
技術力だけで選ぶと失敗する理由
業務理解が浅いベンダーは的外れなモデルを作りがちです。保守体制が弱いと精度劣化に対応してもらえません。技術力・業務理解力・運用力の3軸で評価してください。
チェックリスト(10項目)
発注者がやりがちな5つの NG パターン
発注者側でよくある失敗パターンを紹介します。いずれも RFP の段階で防げます。
費用だけで比較する、精度要件を書かない、PoC の成功基準が曖昧、など
NG1:費用だけで比較する。 安さ重視で PoC 頓挫→再発注になるケースがあります。内訳粒度と実績で比較してください。
NG2:精度要件を書かない。 「高精度で」だけではベンダーごとに解釈が異なります。評価指標と目標値を数字で定めてください。
NG3:PoC の成功基準が曖昧。 「うまくいったら本番化」では合意なく追加費用が発生します。開始前に判断指標を書面化してください。
NG4:データの現状を隠す。 未整備を伝えないと着手後にクレンジング費用が追加されます。正直に開示してください。
NG5:丸投げでノウハウが残らない。 ベンダーロックインの原因です。ナレッジ移転の要件を含めてください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 通常のシステム開発の RFP との違いは?
Q2. どのくらいの粒度で要件を書けばいい?
Q3. PoC と本番開発の契約は分けるべきですか?
Q4. RFP は誰が書くべき?
Q5. RFP を出す前に社内で準備すべきことは?
Q6. 見積もりが各社でバラバラになるのはなぜですか?
Q7. 中小企業でも RFP は必要ですか?
まとめ
AI開発の RFP では「精度要件」「データ要件」「PoC 設計」の3項目が必須です。テンプレートの9項目を埋めれば見積もり前提が揃い、比較・選定がスムーズになります。まずはチェックリストで自社の RFP を点検してみてください。
小売業界でブランド品のバイヤーなどを経験したのちIT業界に転身。 株式会社ライブドアのインフラ事業の営業責任者を担当。 ベンチャー企業の運営に関わった後、2016年にデザインワン・ジャパン(現GMOデザインワン株式会社)へ入社。 「エキテン」事業の営業・サポート部門責任者を務めたのち受託開発事業の立ち上げを担当し、 現在は執行役員兼エキテン事業、受託開発事業とその所管グループ会社を統括。
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