要件定義書の作成手順 4つのポイント徹底解説!要件定義書フォーマットもご用意
目次
要件定義とは?システム開発における重要性
要件定義とは、システムの機能や性能などを網羅的にまとめる作業です。要件定義の完成度を高めることは、システム開発プロジェクトの成功に大きく影響します。
要件定義の目的と役割
要件定義の目的は、「開発するシステムの機能、性能、制約などを明確にし、関係者全員の共通理解を得る」ことです。これを設定することにより、プロジェクトの目標と範囲が明確になり、開発チームは的確な設計と実装を行うことができます。
また、要件定義は、プロジェクトの各段階で参照される重要な文書となります。この文書を使用することで、設計、開発、テスト、運用など、プロジェクトの全工程にて一貫性のある開発が可能になります。
要件定義がプロジェクト成功に不可欠な理由
要件定義が不十分であると、開発中に足りなかった機能が出てくるなど不測の事態が起きる確率が高まります。結果的にシステムの仕様変更が頻発し、納期遅延やコスト超過につながる恐れがあり、ユーザーのニーズを満たせないシステムが出来上がってしまうことも考えられます。
そのため、明確な要件を設定することにより、開発の手戻りを防ぎ、品質の高いシステムを効率的に開発することができます。また、関係者間の認識のずれを防ぐとともに円滑なコミュニケーションを図ることができるでしょう。
要件定義書の作成手順とポイント
要件定義書の作成はしっかりとした手順を踏むことが重要です。手順を無視して作成を進めると、時間がかかる他、要件の漏れなどの可能性が高まります。要件定義書の作成手順を解説します。
要件の収集と整理方法
要件定義書を作成する上で、最初に行うべきことは「要件の収集と整理」です。この時、プロジェクトに関わるステークホルダーからの情報収集が不可欠となります。
インタビューやヒアリングを通じて、ステークホルダーのニーズや期待を明確にしていきましょう。また、現状の業務フローやシステムを詳細に分析することで、改善点や新たな要求を抽出することができます。
集めた要件は、システム概要、業務要件、機能要件、非機能要件などに分類し、整理していくことが大切です。
ステークホルダーとのコミュニケーション
要件定義書のドラフトは共有し、フィードバックを得ましょう。これにより、関係者間の合意形成を図ることがます。合意が得られたら要件定義書を正式に確定させましょう。
要件定義書のフォーマットと記載内容
複雑なシステムほど要件定義の量は増えていきます。必然的に要件定義書を確認する時間もかかるため、要件定義書のフォーマットを見やすく統一していくことをお勧めします。
フォーマットを統一することで、文書の一貫性と読みやすさが向上します。フォーマットに含めるとよい構成要素は次のとおりです。
- システム概要:プロジェクトの背景、目的、範囲を明示する。
- 業務要件:現状の業務フローと新システムに求められる業務プロセスを記載。
- 機能要件:システムが提供する具体的な機能やインターフェースを詳細に記述する。
- 非機能要件:システムの性能、セキュリティ、可用性、保守性などの要件を含む。
各要素について、具体的かつ詳細に記述をしましょう。また、プロジェクトにかかわるすべての人が見る可能性があります。専門知識がなくても理解できるような言葉づかいを表現しましょう。
見やすい要件定義書の特徴から考える作成のコツ
見やすい要件定義書を作成するために、次の特徴を意識しましょう。
- わかりやすさ:専門知識がなくても理解できるように記載されている。
- 具体性:課題に対する解決策や具体的な機能が詳細に記述されている。
- 一貫性:ドキュメント全体で一貫した用語やフォーマットが使用されている。
利便性の高い要件定義書を作成するためには、コミュニケーションスキルとドキュメント作成スキルの両方が求められます。ステークホルダーとの信頼関係を築き、要件を的確に聞き出し、まとめ上げること重要です。また、テンプレートや既存の要件定義書サンプルを参考にすれば効率的に作業を進めることができるでしょう。
要件定義書のサンプルとテンプレート
ここでは、要件定義書のサンプルとテンプレートのダウンロード方法、およびカスタマイズ方法について解説します。
要件定義書のサンプル
要件定義書のサンプルを参考にすることで、書式や記載内容のイメージをつかみましょう。サンプルにはプロジェクトの概要、業務要件、機能要件、非機能要件などが具体的に記述されていますので、要件定義書に必要な情報や記載方法を学ぶことができるでしょう。
なお、これらを参考に、自社のプロジェクト専用の要件定義書を作成することをおすすめします。
要件定義書や仕様書などを作成できる資料一覧はこちら
https://dx-king.designone.jp/document/business_requirements_document
テンプレートのカスタマイズ方法
ダウンロードしたテンプレートは、自社のプロジェクトに合わせてカスタマイズし使用しましょう。テンプレートは様々な用途にも対応できるように制作されています。しかし、一般的に使用する項目が含まれており、プロジェクトによって必要な情報は異なるからです。
まず、不要な項目を削除し、必要な項目を追加します。次に、プロジェクトの内容に合わせて、各項目の記述を具体的に修正します。その際、専門用語を避け、分かりやすい表現を心がけましょう。
最後に、全体の構成を見直し、必要に応じて項目の順序を入れ替えます。これにより、読みやすく、理解しやすい要件定義書に仕上げることができるでしょう。
要件定義の実践的なアドバイスと事例
要件定義の成功事例や失敗事例から学び、課題を解決するための実践的なアドバイスを紹介します。
要件定義の成功事例と失敗事例
ある小売業のDX推進プロジェクトでは、要件定義フェーズで現場スタッフとIT部門が密接に連携し、業務プロセスの可視化とニーズの明確化に注力しました。その結果、プロジェクトは期待通りの成果を上げ、業務効率化と顧客満足度向上を実現できました。
一方、製造業のシステム刷新プロジェクトでは、要件定義が不十分だったために、開発途中で大幅な仕様変更が発生し、納期遅延とコスト超過を招いてしまいました。このケースでは、関係者間のコミュニケーション不足と要件の曖昧さが問題の原因でした。
このように、プロジェクトが成功するのかを大きさ有する要件定義書ですが、どこでその差が出るのでしょうか。今までもお伝えしていますが、より実践的なアドバイスをここでは、お伝えします。
要件定義における課題とその解決策
上述しましたが、典型的な課題として、ステークホルダー間の意識のズレ、専門用語の多用による理解不足、業務知識の偏りなどが挙げられます。これらの課題を解決するには、次のような取り組みが有効です。
- ワークショップやインタビューを通じて、関係者の意見を幅広く収集する
- 専門用語を平易な言葉で説明し、わかりやすい要件定義書のフォーマットを活用する
- 業務知識を持つ現場スタッフとIT部門が協力して要件を洗い出す
要件定義の最適解
最適な要件定義を作成するための方法は次のとおりです。
- プロジェクトの目的と範囲を明確にし、関係者間で共有する
- 業務プロセスの可視化とAs-IsとTo-Beの差分分析を行う
- 要件定義書のテンプレートを活用し、統一されたフォーマットで文書化する
- ユーザーストーリーやシステム利用シーンを具体的に記述する
- 定期的に要件のレビューを行い、変更管理プロセスを確立する
※As-Isは現在の状況やプロセスを示し、現行の問題点や改善点を明らかにします。To-Beは望ましい将来の状態や目標を設定し、どのように進化や改善を図るかを計画します。
DX推進における要件定義の役割と留意点
DX推進プロジェクトでは、業務プロセスの抜本的な見直しとデジタル技術の活用が求められます。要件定義は、現状の課題を明らかにし、あるべき姿を描く上で重要な役割を果たします。ただし、DXの要件定義では次の点に留意が必要です。
- デジタル技術の理解が不足しているステークホルダーへの配慮
- 柔軟性とスピード感を重視したアジャイルな要件定義アプローチの採用
- PoC(概念実証)を通じた要件の具体化と実現可能性の検証
要件定義書は、通常、業務部門とIT部門が協力して作成します。
ただし、プロジェクトの規模や特性に応じて、経営層やコンサルタントが関わることもあります。
さいごに
要件定義は、システム開発プロジェクトを成功に導く第一歩です。この記事では、要件定義の重要性、作成手順、ポイント、サンプル、テンプレート、実践的なアドバイスと事例を紹介しました。これらを理解しておけば、IT初心者の方でも、要件定義の基本を理解し、自信を持ってプロジェクトに臨むことができるでしょう。
要件定義書の質が高いほど、システム開発の成功確率は上がります。ステークホルダーとのコミュニケーションを大切にし、わかりやすく具体的な要件定義書を作成することが、DX推進におけるターゲットユーザー獲得の鍵となります。この記事で得た知識を活かし、ぜひプロジェクトを成功に導いてください。