データ利活用はどうやる?具体的な企業事例や活用のポイントを紹介
目次
データ利活用とは
そもそも、なぜ「データ利活用」は近年、注目を集めているのでしょうか。
データを手段として用いてビジネスに変革をもたらすこと
データ利活用とは、データを用いて製品やサービスの提供価値を高めたり事業展開の可能性を模索したり、また新たな市場を創出したりと、ビジネスに “変革” をもたらすことを意味します。
用いられるデータには
- 国や自治体が提供する「オープンデータ」
- 個人情報や、個人との関係性が見られる「パーソナルデータ」
- パーソナルデータ以外の、企業や産業が保持する「企業(産業)データ」
などさまざまで、活用できるデータの量や種類が多いほど、解析の精度が向上し、ビジネス変革につながる可能性も高まると考えられています。
データ利活用が注目されている背景
2010年代以降の「第四次産業革命」と呼ばれる情報技術の発展によって、大規模データを効率的に分析してビジネスに生かそうとする動きが活性化しています。具体的には、経済活動のさまざまな領域でデータ化・集約が可能になり、またそれらのデータを分析するための処理技術も向上し、これまで以上にデータ利活用が進んでいます。
また企業だけでなく、政府もデータ利活用の重要性に注目しており、日本の目指す未来社会のあり方としてサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステム「Society5.0」も検討されています。
実現に向け、政府が社会全体でデータ連携・共有を行うための基盤づくりを推進していることも、企業による取り組みが活性化している一つの要因だと言えるでしょう。
データ利活用を推進する企業事例5選
ここからはデータ利活用を進める企業事例について、 1.取り組みの概要 2.活用データの種類 3.データ利活用で期待される効果 の3つの観点からそれぞれご紹介します。
1.株式会社カカクコム:不動産住宅情報サイト「スマイティ」の機能追加
スマイティとは、株式会社カカクコムが運営する不動産住宅情報サイトで、賃貸物件をはじめ、新築マンション、新築一戸建て、中古マンション、中古一戸建て物件を多数掲載しています。日本最大級の450万の物件を掲載しています。(出典:株式会社カカクコム)
データ利活用の概要 | 不動産情報サイト「スマイティ」内に「住みやすい街」機能を追加。政府が公開する統計データを集約し、街の住環境をヒートマップとして視覚的に表した。 |
活用データの種類 | 人口や出生率、犯罪率、一般病院数など、政府が提供する統計データ |
データ利活用で期待される効果 | 住宅の購入希望者が、物件の条件だけでなく住環境にまつわるさまざまな条件をふまえ、より自分のニーズに合う街・物件を手軽に探せるようになる。 |
2.福岡市LINE 公式アカウント:学校給食の情報を取得できる「あんしん給食管理」
「あんしん給食管理」とは、小学校給食のアレルギー品目・献立情報の通知をLINEで受け取れる機能です。福岡市は2019年時点で私立小学校の3.1%にあたる2,513人の自動に食物アレルギーがあることから、2020年8月から福岡市LINE公式アカウントにて利用が開始されました。(出典:福岡LINE公式アカウント)
データ利活用の概要 | 福岡市のLINE公式アカウントに、小学校給食情報の配信・検索機能を追加した。ユーザーは小学校・地域・アレルゲン・配信希望時間を設定すると、献立情報とアレルゲン品目の該当有無を通知で受け取ることができる。 |
活用データの種類 | 給食の献立情報 |
データ利活用で期待される効果 | 給食のアレルゲン確認作業の自動化により、職員の負担が軽減されるとともにチェック漏れリスクが解消されること。ユーザーによる献立表の確認と夕食の準備の手間を軽減すること。 |
3.株式会社ONE COMPATH:電子チラシ「Shufoo!」
Shufoo!とは、大手スーパーからドラッグストア、家電量販店など毎日のお買い物に便利なお店のチラシを掲載する情報サイトです。スマートフォン、タブレットからもチラシの閲覧が可能で、会員登録をしてチラシを見ると「シュフーポイント」が貯まり、豪華賞品が当たる抽選への応募も可能です。(出典:株式会社ONE COMPATH)
データ利活用の概要 | 電子チラシサービス「Shufoo!」において、データをもとにタイムリーかつサービスの利用者に最適なターゲティング広告を配信する。 |
活用データの種類 | 消費者のエリア別買い物動向、エリアごとの気象データ(+チラシの閲覧状況などのデータ:マーケティングデータとして事業者に提供) |
データ利活用で期待される効果 | 消費者にとっての利便性を高めること。販売促進効果を高め企業の売上拡大に貢献すること。 |
4.東急電鉄・日立製作所:東急線駅構内の混雑状況を確認できる「駅視-vision」
駅視-visionとは、2016年10月から鉄道利用者向けに駅の混雑状況などを画像で配信するサービスです。日立製作所の人流分析技術をベースに開発されたこのサービスによって、各駅の混雑状況をリアルタイムで把握でき、乗車時間の調整や迂回ルートの選択といった判断に役立てる狙いがあります。(出典:東急グループ)
データ利活用の概要 | 東急線駅(一部路線を除き東急線全85駅対応)構内の人の位置や動きをアイコンで表示した画像を、スマートフォンなどに配信する。 |
活用データの種類 | 駅構内カメラシステムから取得したカメラ画像(プライバシー加工が施され、匿名情報としてアプリに配信される) |
データ利活用で期待される効果 | 混雑状況の把握によって、利用者が乗車時間の調整や運行支障が発生した際の迂回ルート選択をしやすくなること。路線の利便性や安全性が向上すること。 |
5.SOMPOホールディングス:安全運転支援サービス「.Driving!」
.Driving!とは、運転時の安全サポート機能や事故発生時には自動通報・手動通報に加え「ALSOKかけつけ安心サービス」を提供してくれるサービスです。通常のドライブレコーダーと異なり、事故の未然防止から解決までトータルでサポートしてくれることが特徴です。(出典:損害保険ジャパン株式会社)
データ利活用の概要 | スマートフォン用無料アプリに、「事故多発地点アラート」や「安全運転診断」などの機能を追加し、診断結果に応じた自動車保険料の割引を実施。また通信機能付きのドライブレコーダー「Driving!」を通じて、事故対応や運転後のメンテナンスのサポートも行う。 |
活用データの種類 | 利用者の走行データ |
データ利活用で期待される効果 | 交通事故を減少させること、渋滞を緩和させること。利用者に事故多発地点を認識させるとともに、安全運転を促すこと。 |
データ利活用を成功に導くための3つのポイント
データ利活用をより意味のあるものにし、成果につなげるために、おさえておきたい3つのポイントとは何でしょうか。ここでは3つのポイントに絞って解説します。
ポイント1:業務改善とビジネス創出の両軸から考える
データ利活用は目的ではなく、あくまでビジネス変革や経営課題の解決を実現するための手段です。何のためにデータ利活用を行うのか。なぜデータ利活用をしなければならないかを検討し目的を明確にしたうえで、その目的に合ったデータや用途を選択することが重要になります。
具体的には、「自社軸」と「市場軸」の2つの軸から目的を洗い出し、それぞれ「自社の課題を把握して業務改善を行うこと」「自社の現状と市場動向を把握してビジネスチャンスを見つけること」を検討し、施策の具体性を高めていくとよいでしょう。
ポイント2:定性的なデータにも着目する
データ利活用は、定量データのみで行うわけではありません。むしろ居住地域や家族構成のような定性的なデータもビジネスチャンスを見つけるうえで重要です。
例えば、定量データで現在の状況を把握したうえで、定性データから現状の背景にある消費者の行動パターンや心理を読み解き、最適なアクションプランを策定するといったことも可能になるため、定量的なデータにこだわりすぎず定性データにも着目し、両者を組み合わせて分析していくと良いでしょう。
ポイント3:分析から改善までのサイクルを繰り返す
データ利活用は、取り組みから成果が出るまでにある程度の時間が必要です。そのため、必要なデータを入手するためのデータ蓄積の仕組みを構築し、「収集→整理→分析とアクションプランの策定→アクションプランの実施→改善」というサイクルを何度も繰り返すことが重要です。
そのため、プロジェクトと並行してデータ分析人材の採用や育成など体制づくりを進めておくことで、中長期的なデータ利活用につなげることが可能です。
まとめ
市場の変化が大きい現代において企業が持続的に成長していくためには、データを収集・蓄積・分析してビジネスへの活用につなげていくことが重要です。
まずは「既存業務の改善」と「新たなビジネスチャンスの発見」の二つを軸に、データ利活用の目的を明確化することから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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