【場面別に紹介】新規事業で活用できるフレームワーク9選!
目次
フレームワークを活用することで期待できる効果
フレームワークとは、ある1つのテーマをルールに沿って図に整理する「思考のフォーマット」のことです。フレームワークを新規事業で活用すると「思考の整理」と「検討の抜け漏れ防止」の2つの効果が期待できます。
1.自分の思考が整理される
フレームワークは、検討に必要な「市場と社会情勢の変化」や「自社の弱み」などの要素を、1枚のフレームで可視化します。例えば、市場分析に使用する「SWOT分析」は企業が置かれた環境について内部と外部に分けて分析しますが、フレームを使用しない場合、自社状況を都合良く解釈してしまうことがあります。フレームワークを使用することで思考が足りていない部分や検討すべき要素が明らかとなり、新規事業についての理解が深まります。
2.検討要素の抜け漏れを防げる
フレームワークは、いわば事業企画のテンプレートといえます。あらかじめ書き出す項目が決まっているため、考えることが多い新規事業立案でも検討に必要な事項の抜け漏れを防ぎます。また、「検討事項が抜け漏れなく整理されている」という特性を生かし、完成したフレームワークをそのまま事業企画書に用いるといった活用も可能なため、事業化のスピードアップにもつながります。
顧客・ニーズ分析に活用できるフレームワーク
新規事業の検討に必要不可欠なフレームワークですが、ここからは「顧客・ニーズ分析」「市場分析」「アイデア出し」の3つの目的別に、「活用目的」「構成要素」「活用例」の3つの観点でそれぞれ紹介します。
まず、紹介するのは「顧客・ニーズ分析」のフレームワークです。顧客が求めているインサイトは何か、どのような製品・サービスを求めているのかを理解することが新規事業の立案では重要です。
ペルソナキャンバス
写真 | 願望・悩み・目標 | 状況 (悩み・欲求が発生している状況) |
成し遂げたい成果・回避したい未来 | 感情 (どういう感情になりたいのか、またはどういう感情にはなりたくないのか) | |
代替手段 (悩みの解決や欲求を満たすために現在行っている活動、使っているサービスはあるか。ある場合、どんな活動を行っているか) | 支払い意思 (ニーズを満たすサービスにいくらまでなら払えるか) | |
人口動態特性・属性 例.年齢・性別・職業と担当業務・年収・家族構成・居住地域・平日や休日の過ごし方・趣味・性格など | 好むメディア |
ペルソナキャンバスは、製品・サービスの顧客を「ペルソナ」という人物像に見立て、顧客理解を深めるために使用するフレームワークです。
ペルソナキャンバスでは、ペルソナが抱えている悩みや好むメディアなど9つの要素を記載しながらペルソナを作り上げます。このとき、できるだけ具体化することが制作のポイントです。例えば、30代のビジネスパーソンをペルソナにする場合は、以下のように記載します。広く「30代のビジネスパーソン」をターゲットにするよりも、ペルソナを作ることでより深く顧客の人物像を理解でき、製品・サービスの検討につながります。
- 人口動態特性・属性:既婚で共働き。息子、娘の4人家族。東京都品川区在住で最寄り駅は不動前。趣味は目黒川沿いを子どもと散歩すること
- 支払い意思:共働きで、妻と夫で財布は別々。月1~2万円までなら支払いは可能だが、数年後には子どもが小学生になるため、できるだけ貯金に回したいと思っている
しかし、ペルソナキャンバスは不確実な要素が多いため、企業にとって都合の良いペルソナ像を立てる危険性もあります。そのため、想定顧客へのヒアリングや、公表されているアンケート調査など、できる限り具体的な根拠に基づいた制作が求められます。
ロジックツリー
ロジックツリーは、ペルソナが抱える悩みを分解し、根本的な原因を特定するために使用するフレームワークです。
顧客が抱える悩みをテーマとして左側に記載し、考えられる原因を右側に記載します。さらに、その原因が生じている原因は何か、そしてその次……と、階層を右へ深めます。枝の数を増やせば増やすほど、悩みを生み出している本質的な原因や潜在的な欲求にたどり着くため、顧客の悩みに寄り添った本質的な解決策の検討に役立ちます。
カスタマージャーニーマップ
認知・興味 | 比較・検討 | 購入 | 共有・リピート | |
接点 | ||||
行動 | ||||
思考・感情 | ||||
課題・悩み |
カスタマージャーニーマップは、ターゲットが製品を認知してから購入・リピートするまでの行動を可視化できます。製品認知からリピートまでの各フェーズごとに「ターゲットの製品とのタッチポイント」「ターゲットの行動」「ターゲットの思考や感情」「企業側の課題」「課題に対する解決策」を記載。完成したマップは、ターゲットとの関係性構築を目的としたマーケティング施策の立案に役立ちます。
市場分析に活用できるフレームワーク
新規事業を成功させるには市場を分析して自社の優位性を見つけることも大切です。ここからは市場分析に活用できるフレームワークを3つ紹介します。
SWOT分析
例.オンラインショッピングサイト | プラス要素 | マイナス要素 |
内部環境 | 強み 例.レコメンド機能の精度が低い | 弱み 例.サイトの表示に時間がかかる |
外部環境 | 機会 例.新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要の増加 | 脅威 例.SNS上でのプロモーション機能の廃止 |
「SWOT分析」は、自社視点から自社を取り巻く状況の分析が可能です。内部・外部環境それぞれのプラス・マイナス要素を可視化によって自社の競合優位性やビジネス上の課題を明らかにし、アイデアのブラッシュアップに活用できます。
PEST分析
政治的要因 ・法律や条例の制定 ・助成金や補助金制度の施行 など | 経済的要因 ・為替 ・景気動向 など |
社会的要因 ・人口動態 ・流行の変化 など | 技術的要因 ・技術革新 など |
PEST分析は、現時点での企業を取り巻く外部環境から数年後のトレンドや起こりうる変化の検討を目的としたフレームワークです。
「政治」「経済」「社会」「技術」という、マクロな視点で市場を広く理解し、自社の状況を分析します。
例えば、「AIによる自動運転実験が成功」という技術的要因と「道路交通法の改正検討」という政治的要因からは、「実験成功が法改正のきっかけ」という考察と「AIを用いたビジネス」という予測トレンドを導き出せるなど、数年後のトレンドに即した新規事業アイデアの立案にも役立ちます。
5フォース分析
売り手(サプライヤー) | 新規参入企業の脅威 | 買い手(顧客) |
既存の競合他社 | ||
代替品の脅威 |
5フォース分析は、業界の収益を左右する「5つの競争要因」をそれぞれ分析し、事業の収益性を検討するフレームワークです。左側に売り手(サプライヤー)、右側に買い手(顧客)を位置し、起こりうる市場競争やコスト面のリスクを把握します。例えば、市場に競合他社が多く、類似の製品・サービスが多い場合は「買い手側の交渉力が高まる(別製品にスイッチするなど)」ため、価格以外のメリットを提示し収益性を高める手法をとるといった検討に使用します。
アイデア出しに活用できるフレームワーク
新規事業には、革新的なアイデアやこれまで誰も気付いていないアイデアが必要と考えられていますが、アイデアだけでは事業化につながりません。そのアイデアは顧客の本質的な悩みを解決するのか、その解決はビジネスになるだけの収益性を持っているのかなど、検討を重ねることも重要です。
ここからはアイデア出しに活用できるフレームワークを3つ紹介します。
マンダラート
ステップ1:3×3の表を作成して中心のテーマから連想される要素をマスに記載する
テーマから連想される要素を記載 | ||
テーマを記載 | ||
ステップ2:1で記載した要素8つを中心にした3×3の表を最初の表の周辺に新しく作成する
中心のテーマから連想される要素を記載 | ||
ステップ1で記載した要素を記載 | ||
マンダラートは、1つのテーマから事業アイデアの着想を得ることに特化したフレームワークです。中心のテーマから連想される要素を3×3のマスに埋めていき、発想を膨らませます。テーマに含まれる要素を細かく分解することで、課題に対する本質的な解決策を導き出すことが目的です。
オズボーンのチェックリスト
テーマ:既存の事業アイデアを記載 | ||
転用するとどうか (違う使い方はできないか) | 応用するとどうか (他社や他業界のアイデアを取り入れられないか) | テーマの内容を一部変更するとどうか |
拡大するとどうか 例:規模、ターゲットなど | 縮小するとどうか | 代用するとどうか 例:違う場所でこの事業はできるか |
再配置するとどうか (テーマを構成する要素の場所や配置を換えるとどうなるか) | 逆転するとどうか | 結合するとどうか |
オズボーンのチェックリストは、既存事業を土台にして新しい事業企画を導き出すためのフレームワークです。「転用するとどうか」「応用するとどうか」「拡大するとどうか」など、9つの項目に従ってアイデアを記載することで、全く新しい企画を生み出すことが可能です。
KJ法
KJ法のステップ
- グループワーク:ディスカッションのテーマや制限時間、役割を設定する
- 個人ワーク:テーマから連想されるアイデアや要素を付箋に思いつくだけ書き出す
- グループワーク:書き出したアイデアを全体に共有し、グルーピングする
- グループワーク:グルーピングされたアイデアを見つつ、テーマに対する結論を導き出す
KJ法は、複数人でアイデアのグルーピングを行うフレームワークです。各セッションで制限時間が設けられ、短い時間で事業企画案を出すことが求められます。テーマ設定の自由度も高く、また時間が限られているという緊張感から、通常では思いつかないようなアイデアが見つかるといった効果も期待できます。
フレームワークを効果的に活用するポイント
フレームワークの活用は、「思考の整理」「検討の抜け漏れ防止」の2つの効果が期待できますが、使い方には注意点も。ここからは、フレームワークの効果を最大限高めるためのポイントを3つご紹介します。
ポイント1:自社にあったフレームワークを活用する
フレームワークは自社との適性によって期待できる効果に差が生まれます。例えば、過去の事業データから課題が明確な場合には、フレームワークを活用しても分かりきった答えしか見つけられないかもしれません。また、種類や目的によって分析できる要素は異なります。PEST分析は自社の置かれた状況をマクロ的に分析しますが、企業規模が小さいうちは社会に与えるインパクトが小さく、分析結果の活用が限定的になる可能性があります。そのため、フレームワークを活用する際は、自社の状況や種類ごとの特性を踏まえ「何を知りたい、明らかにしたいのか」を検討したうえで、フレームワークを選ぶことが重要です。
ポイント2:検証・改善を繰り返す
フレームワークで記載した内容は不確実なものも多く、導き出した課題はあくまで仮説にすぎません。そのため、フレームワーク活用後はテストマーケティング等を実施するなど、検証・改善を繰り返すことを意識しましょう。
ポイント3:フレームワークに時間をかけすぎない
現在のビジネス市場は変化が激しく、新しいテクノロジーの登場や競合他社による市場参入がいつ起こるか分からない状況です。分析に時間をかけている間に市場環境が変化していては、フレームワークの効果は限定的です。そのため、フレームワークを活用する際は重要度の高い要素のみ分析し、あまり時間をかけない意識を持つことも重要です。
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まとめ
フレームワークを活用することで思考を整理し、検討事項の抜け漏れを防止する効果が期待できます。しかし、フレームワークは種類によって目的や分析できる要素が異なり、自社の課題に対する解像度によっても効果は変動します。したがって、自社の状況やフレームワークの特性を踏まえ、自社に適するフレームワークを活用することが新規事業を成功させるうえでとても重要です。
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