データ利活用の事例紹介。課題や活用のポイントから得られた効果までを解説
目次
データ利活用に関する3つの誤解
データ利活用には、「1.データがあれば分析ができる」「2.ツールがあれば分析ができる」「3.統計分析を学べば分析ができる」という3つの誤解があります。1に関しては、大量のデータを適切に統計処理や関連付けをしないと分析ができず、2もツールごとに特徴は異なるため曖昧なままの運用では分析効果が限定的になってしまいます。3も、統計分析を学ぶだけでは効果は出ず、データの収集や加工、使用するデータの選択等、分析前にデータを見極める力をつけることで、利活用できる分析結果が得られます。
データ利活用する際には、こうした誤解を解消し、利活用の目的を明らかにしたうえで必要なアプローチを取る必要があります。
データ利活用の事例紹介
ここでは総務省の「データ利活用の事例集」をもとに、データ利活用の背景とポイント・効果に分けて事例を紹介します。
事例1:株式会社ゼンリン
株式会社ゼンリンは地図情報の作成や提供を主な事業としています。ゼンリンは地図を作成する際に用いる「建物ポイントデータ」等の計測データを利活用しました。(出典:株式会社ゼンリン)
利活用の背景
従来から行っていたクライアント向けの地図提供では、IoTの普及による顧客ニーズの変化に適応するため、地図本体に加えて計測データも提供し、保有しているデータの利活用を検討し始めました。
利活用のポイント・効果
利活用によって、地図だけでなく計測データもクライアントに提供することで、クライアントが計測データを活用できる可能性が増えました。今回のケースでは、マーケティング施策の検討や運転支援システムなど、地図以外の様々な分野でデータが利活用されています。
事例2:アスクル株式会社
アスクル株式会社は日用品のECサイトを運営しています。アスクルは収集した顧客・購買データをECサイト参加企業に公開する仕組みを構築しました。(出典:アスクル株式会社)
利活用の背景
アスクルのECサイトに出品をしているメーカーは、ECサイトでの消費者のアクセスやレビューといった行動データを保有していませんでした。そこで運営側のアスクルが参加企業のデータを閲覧できる仕組みを構築し、メーカーがECサイトを訪れるユーザーのニーズを把握しやすくするよう検討が進んでいました。
利活用のポイント・効果
利活用によって、メーカーがデータをもとに商品開発できるようになり、限定商品の販売などが行われています。またデータをもとに、ECサイトの利用者を対象としたサンプリングや先行販売なども実施できるようになりました。
事例3:株式会社ランドログ
株式会社ランドログは建設業界向けのIotプラットフォームを開発している企業です。ランドログは蓄積されたデータを解析し、リアルタイム動画や進捗の共有ができるアプリの開発へと活用しました。(出典:株式会社ランドログ)
利活用の背景
過去に自動制御や操作ガイドの表示ができる建機の開発をしたところ、生産性の向上にはあまり貢献できなかったという経験がありました。生産性を向上させるためには、一連の工事を包括的にサポートする必要があると考え、データを利活用して施工状況の管理・把握が可能なシステムを開発しました。
利活用のポイント・効果
利活用によってこのプラットフォームは、得意な領域が異なる企業が集まり設立されました。得意な領域が異なるため利害の対立を避け、中立性を保ちつつもそれぞれが持つデータの利活用を実現しています。
事例4:株式会社シップデータセンター
株式会社シップデータセンターは、船舶の運航に関するデータのプラットフォーム事業者です。複数の企業がデータを共有することで設立されました。(出典:株式会社シップデータセンター)
利活用の背景
設立前は海事業界全体で、各社が持つデータは公開されず、それぞれの社内のみで利用されていました。船舶情報に関するプラットフォームができたことで、各社が持つデータの利活用が可能となり、それぞれの参加企業が得意分野に集中できるようになりました。
利活用のポイント・効果
多数の企業でデータを共有する上ではセキュリティ対策が重要です。そのためこのプラットフォームでは、安全な共有データベースへの登録や、参加企業による総会の実施など、情報の安全性と透明性を高める活動を実施しています。
データ利活用事例を応用する際の注意点
ここでは、紹介したような事例を自社に応用する際に、注意すべき点を紹介します。
注意点1:前提条件の違いを理解したうえで、事例を読む
会社ごとに「分析チームの有無」「データ分析基盤の整備状況」など前提条件が異なります。そのため前提条件を無視して、他社で成功した事例を鵜呑みにしてしまうと、データ利活用の体制が異なる会社を真似てしまい、全く効果が得られないことも。データ利活用を行う際は前提条件を確認し、違いを理解したうえで「自社に生かせるポイントはどこか?」という視点で他社事例を読みましょう。
注意点2:十分な社内リソースがあるかを確認する
予算や人員の社内リソースが不足していると、良いと思った事例でも実現が難しくなります。他社の事例を読む際には、「社内に充てられるリソースがあるか」「依頼する場合はどの部署・チームに依頼するべきか」など、実際に社内でデータ利活用を行う状況を考えながら読み進めましょう。
まとめ
データの利活用は様々な業界で進んでおり、事例は増え続けているものの「そのまま事例を真似るだけ」では、期待している効果を上げることはできません。データ利活用が必要になった背景や前提条件は会社ごとに大きく異なります。そのため各社の事例を参考にする際は、「前提条件を理解する」「十分な社内リソースがあるか」という視点で読み進めることで、応用すべき事例や施策の発見につながるのではないでしょうか。
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