【事例あり】飲食DXできること|導入システム、効果など詳しく解説
目次
「飲食店でもDXって必要?」
「飲食業ができるDXにはどんなものがある?」
飲食業に携わっていて、そのような疑問を持っている方も多いでしょう。
「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」の略語で、その意味は「デジタル技術によって、商品やビジネスのあり方自体を変えること」です。
これを飲食業で考えると、以下のように言えるでしょう。
【飲食業のDXとは】 現在は人が行っている 予約や注文、接客、会計などの業務をデジタル技術で自動化し、 ・業務を効率化すること ・顧客満足度を向上させること ・従業員満足度も向上させること |
具体的には、飲食業における以下のような業務を、ITシステムやITツールを活用して自動化、効率化することが可能です。
【飲食店でDXできる業務・シーンと活用できるシステム・ツール】
DXできる業務 | 活用できるシステム・ツール | システム・ツール例 |
注文・会計 | キャッシュレス決済 | ・「スマレジ・PAYGATE」 ・「Airペイ」 ・「STORES 決済」 など |
オーダーエントリーシステム | ・「スマレジ・ウェイター」 ・「Airレジ オーダー」 など | |
セルフオーダーシステム | ・「USEN Order」 ・「メニウくん」 ・「FoodFrontia St」 など | |
売上管理 | POSレジ | ・「ユビレジ」 ・「ワンレジ」 ・「Square レストランPOSレジ」 など |
販売管理システム | ・「フーディングジャーナル」 ・「MAIDO SYSTEM」 ・「MARUYU SOFTWARE」 など | |
予約対応 | 予約管理システム | ・「UMaT」 ・「ebica」 ・「テーブルチェック」 など |
顧客の見える化 ・顧客管理 | POSレジ | 前出 |
映像解析 | ・「OPTiM AI Camera」 など | |
顧客管理システム | ・「トレタ」 ・「リザーブキーパー」 など | |
来客予測・ 仕入れ管理・ 人員配置の最適化 | 来客予測システム | ・「EBILAB」 ・「AI-Hawk-」 など |
集客 | グルメ系検索サイト ・ポータルサイト | 食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメなど |
SNS | Instagram、X(旧Twitter)、facebookなど | |
デリバリーサービス | Uber Eats、出前館など | |
勤怠管理 | 勤怠管理システム | ・「ジョブカン勤怠管理」 ・「AKASHI」 ・「かえる勤怠管理 飲食」 など |
これらのDXを行うのは、以下のようなメリットがあるためです。
【飲食店でDXを推進するメリット】
・人手不足を補える
・非接触で顧客対応ができる
・中食需要に対応できる
・集客力を強化できる
ただ、注意しなければならない点もありますので覚えておいてください。
【飲食店でDXを推進する際の注意点】
・具体的な目的を設定する
・費用対効果を考える
・従業員全体に周知徹底させる
この記事では、飲食店がDXについて考える際に知っておきたいことをまとめました。
◎飲食店におけるDXとは
◎飲食店のDX成功事例
◎DXが向いている飲食店とは?
◎飲食店でDXできる業務・シーンの具体例
◎飲食店のDXに活用できるシステム・ツール
◎飲食店でDXを推進するメリット
◎飲食店でDXを推進する際の注意点
◎飲食店がDXする際に利用できる助成金・補助金など
最後まで読めば、疑問の答えが得られるでしょう。この記事で、あなたのお店がDXに成功するよう願っています。
この記事は、デザインワン・ジャパン DX事業本部でDX支援に携わる泉川学が作成しました。
1.飲食店におけるDXとは
飲食店の中にもDXを検討するケースが増えてきたようです。
そこでまず、「飲食店において『DX』とはどんなことか?」についてあらためて考えてみましょう。
1-1.「DX」とは?
「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」の略語で、「デジタル技術によって、商品やビジネスのあり方自体を変えること」を指します。
経済産業省が公開している「デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」 出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」 |
つまり、単にデジタル技術を取り入れたりIT化するだけでは「DX」とは言えません。
それにより、「製品やサービス、ビジネスモデルを変革」して、その成果として「競争上の優位性を確立する」=競合他社をリードすることが求められるのです
1-2.飲食店におけるDXとは
では、「飲食店でDXする」とはどんなことでしょうか?
端的にいえば、現在は人が行っている予約や注文、接客、会計などの業務をデジタル技術で自動化し、
・業務を効率化すること
・顧客満足度を向上させること
・従業員満足度も向上させること
だと考えればいいでしょう。
飲食業の場合、まだまだマンパワーに頼る部分が多く、デジタル技術を導入する余地が多く残されています。
たとえば、注文をタッチパネルで顧客自身が行うシステムに変更したり、予約をWEBで受け付けて顧客管理システムで管理するようにしたり、最近では接客をロボットが行う例も話題を集めました。
これらの技術を単に取り入れるだけでなく、顧客満足度の向上や売り上げ拡大などの目的のために必要な仕組みを構築しましょう。
2.飲食店のDX成功事例
では、実際に飲食でDXに成功した事例にはどんなものがあるでしょうか?
いくつか具体例を紹介しておきましょう。
2-1.マクドナルド:アプリの活用でコロナ禍の打撃から迅速に回復
ファーストフードチェーン「マクドナルド」では、2017年に「Velocity Growth Plan」というDX強化計画を打ち立て、世界的にDXを推進しています。
日本でも、日本マクドナルドホールディングス株式会社が、スマートフォンのアプリから注文できる「モバイルオーダー」や、アプリで注文すると宅配してくれる「マックデリバリー」などのサービスを導入しました。
これにより、店舗スタッフが注文を受けるだけでなく、さまざまな方法でのオーダーが可能になりました。
その結果、コロナ禍で一時的に売上を落としたもののすぐに回復、外食産業の中でパンデミックの影響からもっとも早く回復したうちの1社とも言われています。
2-2.FOOD & LIFE COMPANIES(スシローなど):的確な需要予測で食品ロスを削減
回転寿司の「スシロー」などを運営する株式会社FOOD & LIFE COMPANIESは、DXによって「食品ロス削減」と「お客さまの安全確保」を目指して取り組みを始めました。
そこでスシローに取り入れたのが、「回転すし総合管理システム」です。
寿司を載せたお皿それぞれにICタグを取り付けることで、「どのネタが、いつレーンから取られたのか」をリアルタイムに把握できるようになっています。
そのデータをもとに、顧客が着席してから「1分後」「15分後」それぞれに何皿の寿司を求めているか、需要予測を行なって商品を回転レーンに流すようにしているそうです。
これにより、廃棄する食品の量を減らすという目標を達成することに成功しました。
今後はシステムにAIを導入し、来店客数の予測や仕入れ・在庫管理まで活用していくとのことです。
2-3.トリドールホールディングス(丸亀製麺など):業務システムの導入で店舗マネジメントを省力化
「丸亀製麺」などを展開する株式会社トリドールホールディングスでは、顧客に「食の感動体験」を届けるために「人手をかける」ことを重視しています。
が、その反面で「人手不足」という課題も抱えていて、この矛盾を解消するために取り組んだのがDXでした。
その取り組みは多岐にわたります。
たとえば、これまでに成果を上げたのは、
・業務システムでSaaSを利用し、店舗マネジメント業務を省力化
→店長が「人のぬくもり」を感じさせる接客をする時間の余裕ができた
・バックオフィスの定型業務にはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を導入
→労務管理などがしやすくなり、海外出店などの事業拡大に対応できる体制ができた
などです。
今後は「真のグローバルフードカンパニー」を目指すため、「DXビジョン2028」を掲げて以下の8つの柱の実現を目指すそうです。
1.デジタルマーケティングプラットフォームの構築
2.AI需要予測を活用した店舗マネジメント業務の自動化
3.人材のリスキリング、多様性のための教育マネジメントシステムの構築
4.IoTを活用したエネルギーマネジメントシステムの構築
5.店舗マネジメントプラットフォームの深化とグループ展開
6.財務会計・連結会計プラットフォームのグループ展開
7.データマネジメントプラットフォームの深化とグループ展開
8.CO2排出量を可視化するカーボンマネジメントシステムの構築
3.DXが向いている飲食店とは?
前章で紹介した事例は、全国展開している大規模な飲食チェーンのケースでした。
そこで、「うちのような中小規模のお店でも、DXが必要なの?」と疑問に思う人もあるでしょう。
その答えは、「中小規模の飲食業でも個人店でも、DXが必要なケースはあります」。
大規模なチェーンの場合、自社のDXについてホームページやプレスリリースなどで公表している場合があるため、導入事例として目立ちますが、個人店であっても自店舗に合ったDXで成功している例は多くあるでしょう。
ただ反対に、「無理なDXはあえてしなくてもいい」というケースもあるかもしれません。
そこで、「自店舗はDXすべきかどうか」を判断できるよう、「DXが向いている飲食店とはどんなお店か」をまとめましたので、以下を見てください。
DXが向いている飲食店とは |
・人手が不足している店舗 ・業務を効率化して生産性を高めたい店舗 ・新たなサービスや事業を生み出したい店舗 |
このような店舗は、小さなところからでもぜひDXに取り組んでみてください。
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4.飲食店でDXできる業務・シーンの具体例
このように、飲食店ではさまざまな業務をDX化することが可能です。
では具体的に、どんな業務がデジタル化できるのか、あげてみましょう。
・注文・会計
・売上管理
・予約対応
・顧客の見える化・顧客管理
・来客予測
・人員配置の最適化
・仕入れ管理
・集客
・勤怠管理
それぞれ説明しますので、あなたのお店ではどんなDXが可能なのか検討してみてください。
4-1.注文・会計
飲食店でもっともよく見かけるDX事例のひとつが、注文や会計のデジタル化です。
たとえば以下のようなツールやシステムを導入している飲食店も多く見かけます。
・キャッシュレス決済:現金ではなく、クレジットカードや各種電子マネーなどで支払いができる
・オーダーエントリーシステム:お客様からの注文を注文票に手書きするのではなく、ハンディ端末に入力することでキッチンなど店舗全体で共有する
・セルフオーダーシステム:タブレット端末やQRコードの読み取りなどによって、顧客が自分で注文する
これらを導入すれば、注文をとったり会計したりする作業が大幅に削減され、ホール業務を効率化することができます。
また、注文の聞き間違いや伝え間違い、会計ミスなどを減らす効果も期待できるでしょう。
導入効果が期待できる店舗は… |
・人手が足りない店舗 ・オーダー間違いやレジの打ち間違いなどの人的ミスを減らしたい店舗 ・(オーダーエントリーとセルフオーダーについて)居酒屋など、追加注文が多い店舗 など |
4-2.売上管理
飲食店では、閉店後に売り上げを計算したり、伝票と照合したりする売り上げ管理作業、いわゆる「レジ締め」の業務が発生します。
一日中接客や調理をしたあとでこの作業をするのは大きな負担ですので、これもDXするといいでしょう。
・POSレジ:レジを通した商品、個数、日時、値段などの情報を収集、管理する
・販売管理システム:売上管理に加えて在庫管理などもできる
などのシステム、ツールがあります。
特にPOSレジは、比較的低コストで利用できるものも増えていますので、個人店でも導入しやすいといえるでしょう。
導入効果が期待できる店舗は… |
・来店客の属性などを見える化して売り上げアップの戦略を練りたい店舗 ・売り上げの分析のために閉店後に残業をしている店舗 など |
4-3.予約対応
飲食店では、営業時間内にのみ予約電話を受け付けているところも多いようですが、ピークタイムに電話が入ると忙しくて対応できないこともあるはずです。
そのような場合は、予約をWEBで受け付けるシステムやサービスを利用するといいでしょう。
・予約管理システム:自社のホームページや、飲食店のポータルサイトなどからWEBで予約できる
これを導入すれば、予約電話の対応が不要になるため、営業時間中は従業員が接客に集中できるようになります。
顧客側も、24時間いつでも予約できるようになるため、利便性が向上します。
また、来店人数や顧客情報などを記録、管理できるため、聞き間違いや記録漏れなどのミスを防げますし、来店時にその顧客の属性や好みなどに合わせたサービスを提供することも可能です。
従業員のストレスを軽減し、顧客満足度を向上させるDX化の方法と言えるでしょう。
導入効果が期待できる店舗は… |
・接客や仕込みで忙しく、予約電話の対応が負担になっている店舗 ・営業時間外にも24時間予約受付をして、機会損失を防ぎたい店舗 など |
4-4.顧客の見える化・顧客管理
来店する顧客にはどんな属性の人が多いのかを把握、管理できれば、より顧客満足度の高い商品やサービスを提供することが可能になります。
が、顧客が来店するごとにそれを人力で記録するのは大変でしょう。
そこで、顧客の性別や年齢などを見える化し、管理するシステムを導入すれば、必要なデータを把握できるようになります。
たとえば以下のようなものです。
・POSレジ:レジを通す際に、顧客の年代や性別などを入力することで集計、データ化する
・映像解析:店内の防犯カメラなどを通して、顧客の人数、性別、年齢などを解析、データ化する
・顧客管理システム:顧客の名前、来店履歴、注文内容、好みなどのデータを一元管理する
これらのシステムを用いて自店の顧客を見える化することで、より顧客のニーズに合った商品、メニューを開発提供できます。
「昼は20代女性が多く、夜は30代以上の男性が多い」といった傾向がわかれば、「ランチにはデザートをサービス、ディナーはドリンク1杯サービス」など、時間帯や時期ごとに適したメニューやサービスを使い分けることも考えられるでしょう。
導入効果が期待できる店舗は… |
・顧客のニーズが把握できていない店舗 ・顧客それぞれに適したパーソナルなサービスを提供したい店舗 など |
4-5.来客予測・仕入れ管理・人員配置の最適化
飲食店経営で難しいことのひとつが、来店客数の予測でしょう。
来客数は曜日や時間帯、天候などさまざまな要素によって左右されるためです。
もし予測が外れて、思ったより来客が少なければ、仕入れた食材が余ってフードロスが生じます。
逆に多く来店すれば、人手が足りずに顧客を待たせてしまったり、サービスが行き届かず顧客満足度が低下したりする恐れがあります。
そこで、この難しい来客予測をデジタル技術で自動化するシステムが開発されました。
・来客予測システム:曜日、天候、過去の売り上げデータ、イベント情報などをもとに来客数を予測する
さまざまなデータをもとに、システムが来客予測のアルゴリズムを用いて分析するため、システムのベンダーによっては90%以上の確度で予測することができると謳っているものもあります。
来客数を正確に予測できれば、それをもとに仕入れを適正量に管理したり、従業員の配置を最適化したりすることも可能になり、ムダのない効率的な店舗経営につながるでしょう。
導入効果が期待できる店舗は… |
・フードロスが多く発生している店舗 ・人員配置を最適化したい店舗 など |
4-6.集客
以前は飲食店の集客といえば、チラシやショップカードを配ったり、ダイレクトメールを郵送したりといったアナログな方法で行っていました。
それが近年では、グルメ系のポータルサイトに登録したり、SNSアカウントを作って情報発信したりする店舗が増えています。
このように、集客面でのDXといえば、
・グルメ系検索サイト・ポータルサイト:食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメなどに登録する
・WEBサイト作成:自店舗のWEBサイトを作成し、店舗情報などを掲載する
・SNS:Instagram、X(旧Twitter)などで店舗アカウントを作成、情報を発信する
・デリバリーサービス:Uber Eats、出前館などのデリバリーサービスに加盟し、リストに掲載される
などを活用する方法が挙げられます。
特に、SNSは無料で始められるため、個人店でも導入しやすいはずです。
ただ、アカウントを開設しただけでは閲覧数を増やすのは難しいでしょう。
宣伝効果を上げるには、SNS運用サポートツールを導入したり、SNSに強いコンサルティング会社に依頼したりという方法もありますので、検討してみるといいでしょう。
導入効果が期待できる店舗は… |
・集客して新規顧客を呼び込みたい店舗 ・お店の「ファン」を作って育てていきたい店舗 など |
4-7.勤怠管理
個人店や小規模店などでは、勤怠管理をタイムカードや手書きの出勤簿などで行っているケースもあります。
が、それでは打刻・記入漏れが発生したり、月末に集計作業が生じたりと非効率ですので、勤怠管理もDX化するとよいでしょう。
・勤怠管理システム:出退勤時の打刻、シフト表の作成・管理、給与計算などを自動で行う
このようなシステムを導入すれば、正確な勤怠管理ができるようになります。
また、タイムカードや手書きでは、不正に勤務時間を多く見せかけられてしまうリスクがつきものです。
その点、出退勤時に店舗でタブレットなどから打刻するようにすれば、リスクを減らすことができるでしょう。
さらに、システムによっては打刻の際に生体認証などで本人確認が必要なものもあるため、より不正防止の効果が期待できます。
導入効果が期待できる店舗は… |
・従業員がタイムカードなどで不正を行っていて困っている店舗 ・シフト表の管理や給与計算をもっと効率化したい店舗 など |
5.飲食店のDXに活用できるシステム・ツール
このように、飲食店業務のさまざまなシーンでDX化が可能です。
そこで、「実際にうちの店舗でもDX化したい」という人のために、活用できるシステムやツールの例をいくつか紹介しておきましょう。
5-1.キャッシュレス決済
近年多くの店舗で導入されている「キャッシュレス決済」とは、支払いを現金以外の方法で行うシステム、サービスです。
その主な機能としては、以下のようなものが挙げられます。
・クレジットカード決済
・電子マネー決済
・QRコード決済
・タッチ決済
・POSシステム連携
・会計ソフト連携
・クーポン発行 など
選ぶ際のポイントとしては、以下に注目しましょう。
選ぶ ポイント | ・自店の顧客がよく使う決済方法(クレジットカード、電子マネーなど)に対応しているか ・端末の形式(据え置き型・モバイル型) →POSレジと連携させるなら据え置き、テーブル会計や屋外などの場合はモバイル |
決済方法は大きく「クレジットカード」「電子マネー」「QRコード」の3種ありますので、コストなどを考慮した上で可能であればすべて対応しているもののほうがよいでしょう。
【システム・サービス例】
・「スマレジ・PAYGATE」
・「Airペイ」
・「STORES 決済」 など
5-2.オーダーエントリーシステム
「オーダーエントリーシステム」とは、飲食店での注文を従業員が紙の伝票に手書きするのではなく、スマホやタブレット、専用ハンディ端末などに入力、データ化して店舗内で共有するシステムです。
入力されたオーダーは即時に厨房内の端末に表示されますので、ホールのスタッフが注文を伝えに行く手間が必要ありません。
また、手書き文字で書き間違いや読み間違いが生じるリスクも減らせます。
その主な機能には以下のようなものがあります。
・注文入力
・テーブル管理:各テーブルの利用状況、配膳状況などの管理
・メニュー登録:メニュー情報の登録、管理
・伝票出力、会計 など
選ぶ ポイント | ・セルフオーダー/セルフレジ機能も備えているかどうか →顧客に自分でオーダー・会計してもらいたいなら、セルフオーダー対応のものを選ぶ ・時間帯やコースなどによって、メニューなどを細かく設定変更できるか |
同じメニューでも時間によって価格が変わったり、サービスやオプションの種類が豊富だったりする場合は、その設定が細かくできるものを選ぶといいでしょう。
【システム・サービス例】
・「スマレジ・ウェイター」
・「Airレジ オーダー」 など
5-3.セルフオーダーシステム
「セルフオーダーシステム」とは、顧客が自分で注文するシステムです。
各テーブルにタブレット端末を据え付け、タッチパネル式でメニューを選ぶものや、QRコードを顧客のスマホで読み取り、表示されたメニューをタップして注文するものなどがあります。
機能としては以下のようなものが含まれています。
・タッチパネルでの注文入力
・注文履歴確認
・スタッフ呼び出し機能
・多言語切り替え
・品切管理:品切れになったメニューは注文できないようにする
・時間管理
・会計 など
選ぶ ポイント | ・初期費用をかけられるか →タブレット型は導入コストがかかるが、QRコード読み取りなら顧客自身のスマホを使うのでコストを抑えられる ・高齢者などデジタル機器に弱い顧客でも使いやすいか ・決済までセルフで行うか →セルフ決済の場合は顧客側での会計機能が必要 |
セルフオーダーシステムを利用する場合、顧客側でどのような操作が必要かを考えて、自店舗に合った機能を備えたものを選んでください。
飲み放題やハッピーアワーなどを設定している店舗なら、時間管理機能が必要ですし、顧客自身に決済までしてもらうのであれば、会計機能のあるものがいいでしょう。
【システム・サービス例】
・「USEN Order」
・「メニウくん」
・「FoodFrontia St」 など
5-4.POSレジ
「POSレジ」とは、決済時に「商品、個数、日時、金額、顧客の属性」などのデータを記録、集計できるレジシステムです。
その主な機能は以下です。
・バーコード読み取り
・会計
・売上集計、管理
・キャッシュレス決済 など
選ぶ ポイント | ・多様な支払い方法に対応できるか ・他のシステムとの連携ができるか →予約システムや顧客管理システムなどを導入済みの場合は、それらと連携できるといい |
飲食店の場合、ランチとディナーなど時間帯によって価格が変動したり、コース料金が設定されていたり、各種キャッシュレス決済があったり、多人数での割り勘が発生したりと、さまざまな支払い方法に対応する必要があります。
そのため、POSレジを選ぶ際には自店舗の形態に対応できる機能を持ったものにしましょう。
【システム・サービス例】
・「ユビレジ」
・「ワンレジ」
・「Square レストランPOSレジ」 など
5-5.販売管理システム
「販売管理システム」あるいは「売上管理システム」とは、日々の売上の集計、分析、在庫管理などを行うシステムです。
・売上管理
・在庫管理
・POSレジなど外部システムとの連携
・売上分析 など
といった機能があります。
選ぶ ポイント | ・直感的な操作のしやすさ ・POSレジを導入している場合は、POSレジと連携できるもの ・売上などのデータをグラフなどで見える化したり、分析したりできるか |
売上をただ自動集計するだけではDXにつながりません。
それを的確に分析し、売上をアップさせる改善策を計画、実現できてこそDXですので、分析しやすい機能が必要でしょう。
【システム・サービス例】
・「フーディングジャーナル」
・「MAIDO SYSTEM」
・「MARUYU SOFTWARE」 など
5-6.予約管理システム
「予約管理システム」は、顧客からの予約をWEB上で受け付け、管理できるものです。
電話での受け付けと比べて24時間365日いつでも予約を受けることができ、ダブルブッキングや記入漏れなどのヒューマンエラーをなくすことができるため、従業員の業務負荷や顧客のストレスを減らす効果が期待できます。
主な機能には、
・予約受付・予約管理
・グルメサイトとの連携
・顧客情報管理
・POSレジや決済端末との連携 など
があります。
選ぶ ポイント | ・グルメサイトに掲載している場合は、そこから連携して予約を受けられるもの ・POSレジや決済端末、会計ソフトなどを導入している場合は、それらと連携できるもの ・できれば飲食店向けのもの |
予約管理システムには、さまざまな業種で利用できるものと、飲食店向けなど業種に特化したものとがあります。
飲食店特化のシステムであれば、「店内のテーブル配置を事前に登録、どの席に予約が入っているかを見える化する」「当日キャンセルやノーショー(無断キャンセル)を防ぐため、事前決済ができる」などの機能が備わっている場合もありますので、自店舗に必要な機能を見極めて選びましょう。
【システム・サービス例】
・「UMaT」
・「ebica」
・「テーブルチェック」 など
5-7.映像解析
「映像解析」は、ネットワークカメラや防犯カメラで撮影した店舗の様子から、来店客の数や属性を分析するものです。
自店の顧客を的確に把握することで、よりニーズに合ったメニューに改良したり、新たなサービスを開発したりといった、売上向上・顧客満足度向上につながる施策をとることができます。
・来店客数カウント
・顧客の属性認識・分析
・リピート分析:各来店客が何回目の来店かを把握する
・接客支援:購買しそうな行動や不審な行動を顧客がとると、従業員に通知する
などの機能があります。
選ぶ ポイント | ・初期費用を抑えたい場合は、専用ソフトの導入が不要なクラウドサービスのほうがよい ・現在設置しているカメラを利用したい場合は、システム・サービスがそのカメラに対応しているかを確認する |
【システム・サービス例】
・「OPTiM AI Camera」 など
5-8.顧客管理システム
「顧客管理システム」とは、顧客のさまざまな情報や店舗での行動履歴などを一元管理するものです。
これらの情報をもとに、顧客に適切なアプローチをしたり、パーソナルなサービスを提供したりすることができるため、顧客と店舗との関係性を深め、顧客満足度の向上や売上アップが期待できます。
主な機能としては以下のようなものがあります。
・顧客情報・会員情報管理
・注文履歴、予約・来店履歴、購買履歴などの管理
・問い合わせやクレームの記録
・POSレジなど外部システムとの連携 など
選ぶ ポイント | ・操作のしやすさ ・POSシステムや予約管理システムなどを導入している場合は、それらと連携できるもの |
POSシステムや予約管理システムと顧客管理システムを連携できれば、「予約が入った際に、その顧客の氏名や連絡先、過去の注文履歴などを把握する」「POSシステムで収集した顧客の属性や来店履歴、注文履歴などを顧客情報に追加する」といったことが可能です。
情報をひとつに集約・管理することで、顧客ニーズをより的確に捉えることができるでしょう。
【システム・サービス例】
・「トレタ」
・「リザーブキーパー」 など
5-9.来客予測システム
「来客予測システム」とは、店舗に顧客がいつ・何人くらい来店するかをAIなどで分析、予測するシステムです。
飲食店の来店客数は、曜日や時間帯、気候、近隣でのイベントなどさまざまな要素に左右されます。
このようなデータにその店舗の過去の売上データなどを加えて、翌日の予測、今後1ヶ月の予測はもちろん、システムによっては1時間ごとの予測、1年間の予測などを立てることが可能です。
・来店客数予測
・混雑予測
・POSレジや画像解析など外部システムとの連携
などの機能を持っています。
選ぶ ポイント | ・気象情報や人流データ、イベントデータなどの外部データを収集できるもの ・使いやすく自店舗だけで運用できるもの、あるいはベンダーのサポートが充実しているもの |
来客予測の精度を高めるには、店舗の過去の来客データや売上データだけでは足りません。
前述したように、気象データや人流データといったビッグデータ、また近隣でのイベント情報なども必要です。
これらを店舗側で集めるのは大変なことですので、来客予測システム自体にこれらデータの収集機能が備わっているかどうかを確認しましょう。
【システム・サービス例】
・「EBILAB」
・「AI-Hawk-」 など
5-10.勤怠管理システム
「勤怠管理システム」は、文字通り従業員の勤怠を管理するものです。
主に以下のような機能を備えています。
・出退勤時の打刻
・不正打刻の防止:生体認証、ICカード認証など、本人が出勤したときのみ打刻できる
・ヘルプ勤務対応:他店舗にヘルプ勤務した履歴も一括で管理できる
・シフト管理
・給与計算システムなど外部システムとの連携 など
選ぶ ポイント | ・シフト表の作成や管理がしやすく、シフト変更にも柔軟に対応できるか ・不正打刻を防止できるか ・法改正に自動的に対応できるか |
飲食店の場合、シフト管理が複雑だったり、従業員が打刻で不正をして勤務時間を水増しするリスクがあったりしますので、それらに対応する機能が必要です。
また、労働基準法など労働に関する法律は、しばしば改訂されます。
そのたびに勤怠管理システムの設定を変更するのは大変ですので、システム側が法改正に対応して自動的にアップデートされる機能があるとよいでしょう。
【システム・サービス例】
・「ジョブカン勤怠管理」
・「AKASHI」
・「かえる勤怠管理 飲食」 など
これらの他にも、複数の機能が備わったシステムやサービスも多くありますので、自店舗の営業形態や業務内容に適したものを選んでください。
6.飲食店でDXを推進するメリット
ここまで、飲食店のDXについて実例を交えて説明しましたが、
「DXで何ができるかはわかったけれど、そもそもなぜ飲食店がDXする必要があるの?」
と疑問に感じる方もあるでしょう。
そこであらためて、飲食店がDXを推進するとどんなメリットがあるのかを考えてみましょう。
それは主に以下のような点が挙げられます。
・人手不足を補える
・非接触で顧客対応ができる
・中食需要に対応できる
・集客力を強化できる
6-1.人手不足を補える
コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食業界では、新型コロナウイルス感染症が5類に移行して規制が緩和された後も、人手不足が続いています。
そんな中で、DX化によってさまざまな業務を自動化できれば、人手が足りない部分を補うことができるでしょう。
たとえばオーダーエントリーシステムやセルフオーダーシステムを導入することで、ホール業務が大幅に削減されます。
また、POSレジでレジ締め業務を簡略化したり、勤怠管理システムでシフト管理を自動化したりできれば、店舗責任者やオーナーはコア業務に割く時間を増やすこともできます。
6-2.非接触で顧客対応ができる
同じくコロナ禍を経て、飲食店でも従業員には非接触での顧客対応が求められるようになりました。
その点、キャッシュレス決済やセルフオーダーシステムなどであれば、顧客と従業員の接触や対面を最小限に抑えることができます。
DXは、感染症対策という意味でも有効と言えるでしょう。
6-3.中食需要に対応できる
さらに、デリバリーやテイクアウトなどのいわゆる「中食」への需要も急速に増加しました。
これまでは、小規模な飲食店の場合、これらの需要に応えられないケースも多かったようです。
ところが、Uber Eatsなどのデリバリーサービスに加盟してWEBで注文を受けられるようになったことで、従業員は店舗にいながらデリバリーやテイクアウトの需要に対応できるようになりました。
WEB注文によって、これまで取りこぼしてきた顧客を取り込むことができるというわけです。
6-4.集客力を強化できる
もうひとつのメリットは、集客力の強化です。
POSレジや販売管理システム、顧客管理システム、来店予測システムなどを活用すれば、さまざまなデータを集計・分析することができます。
顧客が多い時間・少ない時間、注文内容、人気メニュー、店内での滞在時間などが把握することで、顧客の行動の傾向やニーズがわかるでしょう。
それをもとに、より顧客ニーズに合ったマーケティング施策を立てられるため、より多くの集客が期待できるのです。
7.飲食店でDXを推進する際の注意点
一方で、飲食店でDXを実施するには注意しなければならないこともあります。
たとえば以下のような点です。
・具体的な目的を設定する
・費用対効果を考える
・従業員全体に周知徹底させる
7-1.具体的な目的を設定する
DX化する際には、まず「何のために行うのか」という目的をなるべく具体的に設定しましょう。
ただ「人手不足を補いたいから」「業務を効率化したいから」というだけでシステムやツールを導入するのであれば、それは「DX」ではなく単なる「業務のデジタル化」にすぎません。
「1-1.「DX」とは?」で説明したように、DXにおいてはデジタル化は「手段」であって「目的」ではないのです。
デジタル技術によって「ビジネス自体の変革」をし、「競合他社をリードする」のがDXです。
たとえば、セルフオーダーシステムやPOSレジなどで業務を自動化し、それによって生まれた時間の余裕を活かして、顧客管理システムやPOSレジなどで収集した顧客情報をもとに、「店舗の経営自体を見直して新たな顧客層を開拓する」、あるいは「新規サービスを開発して売上拡大、顧客満足度の向上を目指す」といった明確なゴールを設定してください。
7-2.費用対効果を考える
「5.飲食店のDXに活用できシステム・ツール」で紹介したシステムやツールの中には、無料で利用できるものもあれば導入コストやランニングコストがかなり発生するものもあります。
そのためDXを推進する際には、費用対効果も考慮しましょう。
特に個人店などの小規模な飲食店では、あまり費用をかけすぎても、DX化による利益増分と比較して割に合わない恐れもあります。
たとえば最初は無料トライアル期間があるサービスを使ってみて成果を見るなど、「どの程度の費用対効果が得られるのか」を冷静に判断する必要があるでしょう。
7-3.従業員全体に周知徹底させる
DX化を実施すると、最初は「今までと業務手順が変わった」「ややこしくなった」と感じるかもしれません。
従業員の中には、デジタル機器が苦手でうまく操作できないという人も出てくるでしょう。
そのような不満をなるべく最小限にとどめ、業務を効率化するためには、DX化について従業員全体に周知徹底させなければなりません。
「何のためにDXするのか」という具体的な目的、システムの操作のしかた、それによって業務がどう改善されるのかというメリットなどをわかりやすく伝え、理解を得てから導入しましょう。
8.飲食店がDXする際に利用できる助成金・補助金など
さて、メリットと注意点も理解したところで、「うちの店でもDXしたいが、予算がとれない」と躊躇するオーナーさんもいるはずです。
そのような人は、助成金や補助金の利用を検討してみてください。
国や自治体からさまざまな助成金・補助金が出ますので、もらえるものがあるかもしれません。
ここではその中から代表的なものをいくつか紹介しておきましょう。
助成金・補助金 | 概要 | 受給の条件と金額 |
経済産業省・中小企業庁による補助金。 小規模事業者が商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む販路開拓のために支給される。 | 販路開拓のための設備導入、チラシ・パンフレット、ホームページやウェブ広告、店舗の改装、展示会の出展、新商品の開発費用など 補助金額:50~200万円 | |
経済産業省・中小企業庁による補助金。 IT導入やDXによる生産性向上をはかる企業に支給される。 | 生産性を向上させる目的でのITツールの導入費用 補助金額:最大450万円 | |
経済産業省・中小企業庁による補助金。 中小企業・小規模事業者が革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うために設備投資する場合に支給される。 DXの場合は「デジタル枠」で申請する。 | DXに資する革新的な製品・サービス開発又は⽣産プロセス・サービス提供方法の改善による⽣産性向上に必要な設備・システム投資など 補助金額:750万〜1,250万円 |
このほかにも、自治体で支給される補助金・助成金もあります。
以下のポータルサイトなども利用して探してみてください。
▶︎経済産業省中小企業庁 中小企業向け補助金・総合支援サイト「ミラサポ plus」
▶︎独立行政法人中小企業基盤整備機構「J-Net21」
9.まとめ
いかがでしたか?
飲食業のDXについて、知りたいことがわかったかと思います。
では、最後にあらためて記事の要点をおさえておきましょう。
◎飲食店におけるDXとは、現在は人が行っている予約や注文、接客、会計などの業務をデジタル技術で自動化し、
・業務を効率化すること
・顧客満足度を向上させること
・従業員満足度も向上させること
◎飲食店でDXを推進するメリットは、
・人手不足を補える
・非接触で顧客対応ができる
・中食需要に対応できる
・集客力を強化できる
◎飲食店でDXを推進する際の注意点は、
・具体的な目的を設定する
・費用対効果を考える
・従業員全体に周知徹底させる
この記事で、あなたのお店がDXに成功できるよう願っています。