DX推進に使えるアジャイル開発とは?注目されている理由・よくある課題と解決策を紹介
目次
DX推進と親和性が高いアジャイル開発とは
アジャイル開発とは、短い開発サイクルで小分けにして進行する開発手法です。従来型のウォーターフォールモデルの線形かつ逐次的な進行に対して、アジャイル開発は柔軟性が高く、変化の速い市場のニーズに対応しやすい点が特徴です。
アジャイル開発では、顧客からの継続的なフィードバックを取り入れながら製品やサービスを進化させることができ、リスクの早期発見や対応が可能になります。組織の柔軟性が増し、市場への適応力を強化できるという強みがあります。
■アジャイル開発とウォーターフォール開発の違い
アジャイル開発 | ウォーターフォール開発 | |
開発サイクル | 短期的 | 長期的 |
1サイクルあたりの開発量 | 少ない | 多い |
柔軟性 | 高い | 低い |
アジャイル開発について知りたい方は、「アジャイル開発とは 特徴とメリット・デメリットを解説|コラム一覧|DX王」の記事もご参照ください。
ウォーターフォール開発については、「システム開発の工程を解説 ウォーターフォールとアジャイル2つのモデルを図解」の記事で詳しく解説しています。
DX推進でアジャイル開発が注目されている理由
DX推進でアジャイル開発が注目されている、4つの理由について解説します。
顧客ニーズに合わせたリリースが可能
DXの主な目標の一つに、顧客体験の向上が挙げられます。アジャイル開発は、顧客体験の向上を達成する上で効果的な開発手法として注目されています。
前述のように、アジャイル開発は短い開発サイクルでこまめに製品を市場へリリースし、顧客のフィードバックを繰り返し取り入れ続けるという特徴を持っています。この性質により、開発チームは市場の動向や顧客の要望に素早く対応し、製品の調整や機能の追加を実施できます。
例えば、アプリケーションのベータ版を早期にリリースしてユーザーの反応をうかがうことで、製品の方向性を確認し、改善点を迅速に特定・解決できます。
また、アジャイル開発は製品の市場投入までの時間を短縮できるため、競争が激しい市場環境において企業が一歩先を行くための有効な戦略にもなり得ます。
イノベーションの促進につながる
DXとは、既存のビジネスモデルや業務プロセスにデジタル技術を導入し、根本的な改善を目指す取り組みです。アジャイル開発は、DXによってビジネスの変革を促すための有効な手段の一つであり、イノベーションの促進に寄与します。
アジャイル開発では、継続的なリリースとフィードバックを繰り返すことによって、新しいアイデアや技術を迅速に採用し、製品に反映させることが可能です。
また、顧客からの直接的なフィードバックを利用することで、まだ完全には探究されていない顧客のニーズや新しい市場機会を発掘することが可能になります。企業は既存の製品やサービスを進化させ、新たな価値を創造できます。
加えて、アジャイル開発はチーム内でのコミュニケーションとコラボレーションを強化し、創造的な問題解決を促進する効果も期待できます。チームメンバーが互いにアイデアを共有し、改善を提案する文化が育まれることで、イノベーションが自然と生まれやすい環境が形成されます。
損失リスクを最小限に抑えられる
アジャイル開発には、損失リスクを最小限に抑える効果もあります。
プロジェクトの初期段階で頻繁にフィードバックを取り入れることにより、間違った方向へ開発が進んでしまうリスクを低減し、不要な機能の開発を避けやすくなります。これにより、無駄な開発コストと時間を節約し、全体のプロジェクト効率を向上できます。
また、アジャイル開発では小規模なリリースを繰り返すことで、大規模な問題が発生するリスクを分散させます。リリースのサイクルごとに製品の機能や性能を評価することで、問題を段階的に特定して対応策を講じられるため、プロジェクト全体のリスク管理を行いやすくなります。
さらに、アジャイル開発では仕様変更を歓迎するため、市場の変動や技術の進展に応じて、製品仕様を柔軟に調整できるというメリットもあります。これにより、予期せぬ外部環境の変化がプロジェクトに与える影響を最小化し、投資のリターンを最大化することが可能です。
仕様変更に柔軟に対応しやすい
DX推進においては、市場の急激な変化に迅速に対応する能力が重要です。アジャイル開発は、柔軟な開発プロセスによって、進行中のプロジェクトにおいても仕様変更を容易に取り入れることができる手法です。そのため、企業は顧客の要望や市場の要求に応じて、迅速にシステムやサービスを更新・調整できます。
開発チームは、各開発プロセスごとにレビューを行い、必要に応じて製品の修正を行います。このサイクルを繰り返すことで、最終的な製品が市場の現状に最も適合する形で完成する可能性が高まります。
また、アジャイル開発を採用することで、開発プロセス全体の可視性が向上し、異なる部門やステークホルダーがプロジェクトの進行状況を容易に把握できるようになります。関係者が常に正しい情報を把握し、変更を用意に追跡できるようになれば、適切な時期により適切なフィードバックの提供が可能となり、全体の作業効率が向上します。
よく対比されるウォーターフォール開発がDXにマッチしづらい理由
ウォーターフォール開発とは、プロジェクトを複数の工程に分けて厳密に定義し、一つの段階が完了して初めて次の段階に移る開発手法です。品質管理を行いやすいため、規模の大きいプロジェクトやインフラ関係の開発に向いています。
一方で、ウォーターフォール開発は性質上、DXにはややマッチしにくいと言われています。ここでは、ウォーターフォール開発がDX推進にマッチしにくい3つの理由について解説します。
市場ニーズの移り変わりに合わせたスピード対応がしづらい
ウォーターフォール開発モデルは、その構造上、市場の迅速な変化に対応するのが難しい側面を持っています。プロジェクトを厳密に定義された複数の段階に分け、一つの段階が完了するまで次の段階に進まない線形的な進行を特徴としています。具体的には、要件定義、設計、実装、検証、保守といったプロセスが順に実行されるのが一般的であり、一度次の段階に進むと、基本的に前の段階に戻ることはありません。
そのため、開発途中で市場のニーズが変わった場合でも、ウォーターフォールモデルではプロジェクトの初期段階に戻り、要件を見直す必要が生じます。確実かつ丁寧な開発により、高い品質を確保しやすい開発方法ではありますが、時間とコストをロスしやすく、企業が競争優位を保つ上でのスピード感を損なう原因にもなり得ます。
顧客からのフィードバックを反映しにくい
ウォーターフォールモデルでは、開発の大部分が完了した後で初めて顧客のフィードバックを取り入れることが一般的です。開発プロセスが段階的に進行するため、実際に顧客が製品に触れられるのは、最終段階に近づいてからとなることが主な理由です。
このことから、顧客の要求や市場の動向がプロジェクト初期に設定された仕様と異なっていた場合、変更を反映させるためには大規模な修正が必要になります。技術の進展が速く、消費者ニーズも目まぐるしく変わっていく時代の流れに合わせて、近年では顧客の声を迅速に製品開発に活かすことが成功の鍵となります。そのため、変更の反映が遅れがちになることは、製品の品質問題や顧客満足度の低下につながる可能性があります。
高リスク・高コストな開発になりやすい
ウォーターフォール開発は、プロジェクトの初期段階で全ての計画を固定することから、変更が必要になった場合のコストが高くなりがちです。計画の初期にすべての要件を詳細に定義し、それに基づいてプロジェクトを進めるため、後から変更を加えると大きな追加費用や時間的な遅延を引き起こす可能性があります。
市場や技術の変化が予測できない中、すべての要件を事前に定義することは難しく、プロジェクトが進行するにつれて予期せぬ問題や新たな要件が浮上することはめずらしくありません。
そのため、ウォーターフォール開発を採用したプロジェクトは予算超過や納期の延長に直面するリスクが高く、赤字プロジェクトになってしまうケースも数多く見られます。
アジャイル開発の3つの手法
アジャイル開発は、細かく分けると主にスクラム、エクストリーム・プログラミング、ユーザー機能駆動開発の3つの手法に分類されます。ここでは、3つの開発手法を紹介します。
スクラム
スクラムはアジャイル開発の手法の一種で、小規模なチームが短い期間(スプリント)を設定し、その期間内に具体的な成果物を段階的に開発するアプローチです。
スクラムでは透明性、検証、適応を重視し、スプリントの終わりにはレビューを行い、プロジェクトの進行状況をチーム全員で連携して確認します。このプロセスを通じて、チームは継続的に製品を改善し、変更に迅速に対応する体制を構築できます。
スクラムは特に変更が頻繁に発生するプロジェクトや、プロジェクト開始時に製品の最終形が不明瞭な場合に適しています。この柔軟性がスクラムの最大の利点であり、計画的でない変更や追加要求にも現場が迅速に対応できるため、開発の不確実性が高いプロジェクトに最適です。
エクストリーム・プログラミング
エクストリーム・プログラミング(XP)は、高品質なソフトウェアの迅速な開発に焦点を当てたアジャイル開発の手法です。短いリリースサイクルを通じて頻繁にプロダクトを市場に投入し、ユーザーからの直接的なフィードバックを基に製品を改善します。
XPはペアプログラミング、テスト駆動開発(TDD)、継続的インテグレーションなどのプラクティスを採用しており、開発プロセス中の品質と生産性を高めることができます。
XPは、ソフトウェア開発の品質を最優先とするプロジェクトに特に適しています。XPを採用することで、エラーの発見と修正が早期に行われ、最終的な製品の品質が向上します。また、ペアプログラミングはコードの品質を向上させるだけでなく、知識の共有を促進し、チーム内のスキル向上にも寄与する役割も持っています。
ユーザー機能駆動開発
ユーザー機能駆動開発(FDD)は、プロジェクトを複数の機能単位に分割し、各機能を短期間で開発することを目指すアジャイル開発の手法です。
FDDでは、モデリングとスピーディーな反復に焦点を当て、顧客のニーズに対応した高品質なソフトウェアを提供することを目的としています。特に大規模プロジェクトや、複数のチームが関与する複雑な環境で高い効果を発揮します。
FDDにおいては、各機能が明確に定義され、短い期間(通常は二週間から一ヶ月程度)で開発されます。プロジェクトの進捗が容易に測定可能となり、問題が発生した場合に迅速に対処することが可能です。
また、FDDは機能ごとにプロジェクトの進捗を評価し、開発の優先順位を調整できるため、リソースの効率的な配分を実現できます。
アジャイル開発で直面しがちな課題と解決策
アジャイル開発を行う際は、IT人材確保の難しさや、社内の理解を得にくいといった課題に直面しがちです。ここでは、アジャイル開発を取り入れる際に起こりがちな問題と解決策を紹介します。
十分な技術を持ったIT人材を確保するのが難しい
アジャイル開発を効果的に進めるためには、最新技術に精通したエンジニアが必要です。しかし、高い専門性やスキルを持つ人材は市場における需要も高く、企業が十分な人材を確保することは難しい状況にあります。そのため、企業は従来の採用戦略を見直し、人材確保に関してより積極的なアプローチを取る必要があります。
解決策の一つは、内部の人材を専門家として育成することです。既存の従業員に対してアジャイル開発に関連するスキルトレーニングを提供し、内部から必要な専門知識を育てることで、必要な人材を確保できます。
また、外部から採用する場合は、リモートワークなどのフレキシブルな勤務条件を提供することで、より幅広い地域から高いスキルを持った人材を採用できる可能性が高まります。
フリーランスの専門家や外部コンサルタントとの協力関係を築くことも、特定のプロジェクトに必要な専門知識を短期間で確保する上で効果的です。
アジャイル開発の概念を社内に浸透させる必要がある
アジャイル開発への移行は、従来のウォーターフォールモデルからの大きな転換を伴います。
これまでにない新しい開発手法を効果的に採用するためには、組織全体でアジャイルの理念を理解し、受け入れる必要があります。社内にアジャイル開発の考え方を浸透させるためには、社員の教育と意識改革が重要です。
組織がアジャイル開発のメリットを最大限に活用するためには、従業員に対して包括的な研修プログラムを提供し、アジャイルの考え方や、ツールについての理解を深めることが不可欠です。
また、アジャイル開発を推進するためには、トップダウンでの支援が必要です。経営層がアジャイル開発の価値を理解し、積極的に支援する姿勢を示すことで、組織内の変革をよりスムーズに進められます。
現行の業務フローがアジャイル開発にマッチしない可能性がある
多くの組織では、既存の業務プロセスや組織構造がアジャイル開発の柔軟性と速度に適応するまでに、さまざまなギャップを感じる場合があります。このようなギャップを埋めるためには、組織風土の変革とプロセスの再設計を行うことをおすすめします。
プロセスの再設計では、各部門の現状の業務フローを詳細に分析し、アジャイル開発に適合するように調整することが重要です。
業務プロセスの再設計を行う際には、組織横断的なチームを結成し、異なる部門の意見やニーズを取り入れながら進めるのが効果的です。また、小規模な開発でアジャイル開発をテスト的にスモールスタートし、成功した要素を他のプロジェクトやチームに展開することで、組織全体の変革を促進しやすくなります。
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アジャイル開発は、短いサイクルでの反復的なプロセスを特徴とし、変化に対する迅速な対応と継続的な改善を可能にします。
アジャイル開発を取り入れたDX推進にお悩みなら、デザインワン・ジャパンが徹底サポートします。デザインワン・ジャパンでは、最新のアジャイル開発手法を用いて、迅速かつ柔軟なデジタル変革を実現します。
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下記からアプリ・システム開発の事例集もダウンロードできますので、これからアジャイル開発を検討されている方は、参考にご覧ください。