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現場で得た知見から学ぶ!実践的なChatGPTと生成AIの活用法<トークセッションイベントレポート>

現場で得た知見から学ぶ!実践的なChatGPTと生成AIの活用法<トークセッションイベントレポート>
2023年7月6日 (木)、「現場で得た知見から学ぶ!実践的なChatGPTと生成AIの活用法と効果的な導入戦略」をテーマにした「Tech Meets Business」が東京・恵比寿で開催されました。トークセッションでは、ChatGPTに代表される生成AIの実践的な活用法と効果的な導入戦略について有識者の久保氏、白川氏、岡⽥氏が議論。ChatGPTの未来を感じるトークセッションに会場も大いに盛り上がりました。

目次

<トークセッション・登壇者>

株式会社ゼタント 代表取締役
久保 健氏

KDDI総合研究所にてモバイルコアネットワーク、アドホック・センサーネットワークなどの研究に従事した後、KDDI株式会社でインフラサービスのプロジェクトマネージャーを経験。2017年5月に株式会社ゼタントを創業。中小企業を中心とした業務課題や困りごとを解決する専用クラウドアプリ「クラウドテーラー」の提供やコンサルティング、システム開発を行っている。


株式会社GSSLAB取締役 CTO
白川 大記氏

日本とフィリピンに拠点があり、「ラボ型開発」に強みを持つ。マッチングプラットフォーム、社内システム構築、新規サービスの立ち上げ、ChatGPTを使ったサービスなど幅広い開発に実績がある。フィリピンに7年、ベトナムに2年間ほど滞在し、現地のエンジニアと共にシステム開発を行った経験もある。


株式会社デザインワン・ジャパン DX事業本部
岡⽥ 博豊氏

2016年デザインワン・ジャパン入社。日本最大級の口コミサイト「エキテン」の代理店営業・セミナー担当として埼玉県庁・大阪商工会議所などのウェブ集客セミナーを担当。 その後、商品企画部を経てDX事業本部に異動し、通算660件以上のシステムやアプリ、ChatGPTを活用したサービス開発の相談にのっている。オフショア開発の拠点はベトナムのダナンとフエの2箇所。


<ファシリテーター>
リトライブ株式会社
吉田氏


「Tech Meets Business」は「テクノロジーにビジネスの出会いを」というコンセプトのもと、最新技術やトレンドの紹介、セミナー(トークセッション)や懇親会を通じて企業間の技術交流やビジネスパートナーの発見につながるイベントです。今回はChatGPTに代表される生成AIが誕生しビジネスに活用する企業の増加が予測される中、有識者の実体験にもとづいた将来展望について、システム開発に携わる3名が、ChatGPTを活用したシステム開発について議論しました。


仕事や日常生活における「ChatGPT」の活用法や注意点

吉田 会場の参加者含めてChatGPTに触れた経験のある方がほとんどだと思いますが、改めてChatGPTの活用法や注意点を登壇者の皆さんにお聞きしたいです。

久保 ChatGPTはインターネット上にある膨大な量の書籍、ウェブページ、記事のテキストデータを分析し、事前学習させたOpenAI社が開発した「生成AI」です。ChatGPTは私たちが普段使っている言葉(自然言語)を処理する能力に秀でていて、単語やフレーズの関連性や文脈を考慮しながら適切な回答を生成し自然な対話ができます。


Siriやアレクサのような「音声アシスタント」が登場した時も衝撃を受けましたが、答えのない問いにはそっけなく応じるなど不便な点もありました。ChatGPTは質問に対して回答するだけでなく、文章の創作も可能なのでアイディアやサービスのネーミングがどうしても浮かばない時に、とりあえず質問を投げてみると「気づき」をもたらしてくれることがあります。何度依頼しても嫌がらないのは、人間とは異なりChatGPTの強みかもしれませんね。注意点は、ChatGPTは「嘘をつくことがある」前提で利用しなければいけないこと。学習データが古かったり誤った情報が含まれていても“それらしい”回答を生成してしまうため、間違った回答をしてしまうケースもあるんです。

白川 私は行政手続きの申請など記入項目が多いフォームの入力で、アシスタント的に活用しています。予め企業の事業内容やポートフォリオを文章にまとめておき、質問を投げて各項目に対する文章を作成したり、作成した内容の校正や添削も行っています。日報や報告書などお決まりの文章が必要とされる書類作成では、業務改善にとても有効ですね。

ChatGPTを賢く使うためには「役割を与えること」と「準備」が大切です。「○○の専門家として回答して下さい」と特定の役割を与えてから質問することで、短い時間で希望に沿った回答を得られる可能性が高くなります。また、ChatGPTが質問と内容をきちんと区別できるように、本文の1行目に質問を書き、その後に区切り線を入れて内容を入力していきます。文脈を分けるために記号も使うこともありますね。課題は検索エンジンとしては、結果の表示がかなり遅く、検索結果が期待外れの場合が多いこと。単純な情報だけ知りたい時はGoogle検索した方が現時点では早いですね。

岡⽥ ChatGPTのGPTは「Generative Pre-trained Trensformer(ジェネレーティブ・プリ・トレーニド・トランスフォーマー)」を略したもの。自発的に事前学習をして、アウトプットを生成するAIです。「AI」というワードが流行していた時代はある程度規模が大きい企業でしか扱えませんでしたが、「ChatGPT」の登場で中小企業や個人でも簡単に利用できるように民主化されたことが大きな変化だと思います。

ChatGPTは曖昧な質問だと回答の精度が低くなる傾向があります。そのため、チャット形式で質問を重ねたり、条件を細かく設定するなど人間側がChatGPTを使いこなす”コツ”を事前に理解しておく必要があるので注意して下さい。

2023年に入り有料版の「ChatGPT Plus」で新モデルの「GPT-4」が使えるようになったり、2023年3月にはAPIによるプラグインにも対応したことで様々なアプリケーションやサービスに組み込めるようになりました。プラグインの掛け合わせ次第では使い方は無限に広がり、現在約600種類あるプラグインは今後も増えていくことが予想されるので伸びしろに期待できます。


従来の「GPT-3.5」と「GPT-4」の違いと特徴とは?

久保 テキストだけでなく画像や音声も入力データとして処理できる「GPT-4」は画期的な進化だと思います。テキストと画像(写真、スクリーンショット、図など)を組み合わせて入力することで、複雑で表現しにくかった質問や指示も容易になりました。

岡田 試しに「GPT-3.5」と「GPT-4」で企業のLP(ランディングページ)のペルソナ設定を回答してもらったところ、「GPT-4」はきちんと理解して回答できていました。語彙も増え文章の表現が豊かになり、情報の正確性も向上しています。英語だけでなく日本語の処理にも強くなった印象を受けましたね。

白川 私も「GPT-4」推進派です。長文や要約などはまだ正確性に劣りますが、メールのような短文や言葉を大切にしたい時は「GPT-4」一択。情緒あふれる表現や言い回しがより人間っぽくなり、生成できる文字数も格段に増えたので将来的にはブログ記事やエッセイなどもChatGPTが代替するようになると考えています。


吉田 登壇者の皆さんはChatGPTを事業やサービスにどのように取り入れていますか。

久保 APIでChatGPTを「Slack」と連携させたのですがSlackのプラットフォーム上から文章を作成したり、アイデアをブラッシュアップするための壁打ち相手に使うこともできたのは便利でした。チャンネルやスレッドの要約、機械翻訳もスムーズだったのには驚きました。他にもウェブ記事の要約を自動的に表示する仕組みにChatGPTを導入しています。ウェブ記事を全文を読み込むのは時間も労力もかかっていたのでチームスタッフも大喜びでした。世間で騒がれる前から業務や研究でAIを活用していた知見が今に活きているのは嬉しい限りです。

白川 弊社ではChatGPTを用いたサービス開発や機能追加の問い合わせが増えており、ウェブサイトに書かれたレビューコメントに対して自動で「ありがとうございました」など適切なコメントを返信する機能を開発しました。設定通りに自然体で応答するので大変好評です。不動産情報など複雑な入力項目を必要な内容に絞って自動でまとめる機能もニーズがあります。面白い事例で言えば、マッチングアプリで異性から注目を集めるプロフィールを第三者目線で作成することもできます。将来的にはミーティングの議事録を自動で生成するなど活用範囲は広がると見込んでいます。

岡⽥ オンライン学習プラットフォーム「Udemy」で「ChatGPTのAPIを活用した新規事業・自社サービス組み込み事例の解説講座」を開設しており、興味のある方がChatGPTの活用事例を簡単に学べる取り組みを行っています。開発の現場では、MA(マーケティングオートメーション)ツール、メールの文章などの自動生成、観光関連のプラットフォーム上で地域のおすすめや観光名所を自動返答する機能開発のためにChatGPTを導入しています。例えば、メールマガジンは毎回文章を一から作成すると担当者によってバラツキが生じます。しかし、ChatGPTであれば似た表現の文章も作成できますし、完成度50〜70%の内容を手直しした方が作業効率もアップします。


ChatGPTを使った開発で注意すべきポイント

岡⽥  ChatGPTのAPIを活用してオリジナルのチャットボットを作りたいという依頼が増えたのですが、鍵になるのが事前に「学習データ」をどれだけ所有しているか、正しい情報がまとまっているかです。大規模なテキストデータが無ければ、サービスの独自性と品質を高めるのは正直難しい。特定の言語や専門領域に特化したい場合は「ファインチューニング」といった学習データを特定のタスクに最適化させることもできるので、まずは信頼性の高いデータの準備をお願いしています。


久保 便利なサービスだと思われがちですが、ChatGPTのAPIはテキストを構成するトークン数に応じて課金されます。諸説ありますが、日本語だとひらがなは1トークン、漢字は2〜3トークンとしてカウントされると聞いています。利便性とコストはこれからどんどん改善されるはず。企業が「人件費を削減してChatGPTに置き換える」ことが当たり前になる日は近いかもしれません。

白川 サムスン電子の従業員がソースコードや社内情報をChatGPTに入力したため、学習データとして蓄積されてしまい第三者に機密情報が流出したニュースが話題になりました。また、生成した文章が著作権を侵害してしまい訴訟にまで発展した報道も見かけます。そういったリスクに注意を払わなければいけませんが、リスク以上の効果と可能性があるのがChatGPTだと信じています。


最後に

吉田 ChatGPTの未来を感じるお話でした。最後にChatGPTでやってみたいことを教えて下さい。

岡⽥  インターネットにつながったIoT家電との連携サービスを実現させたいです。冷蔵庫の中に入っている食材を把握して、レシピを自動的に紹介するなど生み出せるサービスは無限大です。他には、国会の答弁や質疑などをデータとして読み込み、ChatGPTに国会議員の成績表作りを任せてみたいですね。ChatGPT APIを活用したサービス開発は全ての企業にチャンスがあります。このタイミングで手を出すか、出さないかで大きな差がつくのでまずは気軽に相談してもらいたいです。

白川 社内にはPDF、パワーポイント、エクセルなどあらゆるファイル形式のデータが点在しています。形式や規格関係なく、全てのデータを取り込んで精度の高い回答をする独自のチャットボットを開発してみたいですね。ChatGPTはこれから確実に進化していく。将来的に活用する前提で手元にある資料やデータをデジタル化するDX(デジタルトランスフォーメーション)も推進していく必要があります。

久保 思い込みによる確認不足や見落とし、入力間違いなど日常生活の中で起こるヒューマンエラーをきちんと指摘、修正してくれる「ChatGPT版の秘書」を作ってみたいですね。これからは社内にあるデータをいかに活用するかが肝になってきます。社内に眠っているデータが有効活用できるかも。この機会に一度総点検してみるのも良いかもしれません。



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