システム保守とは?業務内容と運用の違い、内製・外注の判断基準も紹介

システム保守とは?業務内容と運用の違い、内製・外注の判断基準も紹介
システム・アプリケーション開発は、リリース後も継続的な保守が必要です。適切な保守を怠ると、サイバー攻撃やシステム停止などのリスクが発生する恐れがあります。 本記事では、システム保守の定義や目的、運用との違い、さらに内製と外注の判断基準について詳しく解説します。システムを安定的に稼働させ、円滑な業務遂行に役立てましょう。 この記事は、システム・アプリ開発を行っているデザインワン・ジャパンDX事業本部の事業責任者・泉川学の監修のもと作成しています。

目次

システム保守の定義と目的

システム保守とは、稼働中のシステムに発生したトラブルに対処することを指します。具体的には、システムの不具合や障害を修正したり、パフォーマンスの改善を行ったりすることです。

システム保守には日々の点検作業も含まれます。定期的にシステムの状態を監視し、潜在的な問題を早期に発見・対処することで、トラブルを未然に防ぎます。例えば、金融機関のシステムがダウンした場合、顧客の信頼を失うほか重大な経済的損失が発生する恐れがあります。これを防ぐため、日々の点検やシステム状態の監視を行っているのです。


システム保守の主な目的は、トラブルを解決・改善し、業務への支障を最小限に抑えることです。システムは会社の業務を支える重要なITインフラであり、その安定的稼働は事業継続に欠かせません。保守作業を適切に行うことは、システムの信頼性や可用性を高め、ユーザーの利便性を維持するためにも重要です。

なお、システムの保守と運用は似ているものの明確に区別されています。保守がトラブルへの対処や予防が主な目的であるのに対し、運用は日々のシステム管理オペレーションを指します。この2つは密接に関わっていますが役割や目的が異なるため、分けて考える必要があります。


システムの保守運用についての詳細はこちらの記事をご覧ください。


システム保守の5つの種類

システム保守は、目的や内容に応じて以下の5種類に分けられます。


種類

内容

具体的な作業

修正保守

システムの不具合や障害を調査・修正

・故障したシステムを修理

適応保守

法律や規制の変更、業務要件の変更などに対応

・プログラム機能を修正

完全保守

システムの機能や性能を改善、追加

・新しいプログラムを設定
・既存のプログラムを更新

予防保守

定期的な点検やデータのバックアップし、トラブルを未然に防ぐ

・メモリの解放
・ウイルススキャン

予測保守

システムの稼働データを分析し、将来的な問題を予測・対処

・故障しそうなときにシャットダウン



これらの保守作業を適切に組み合わせることは、システムの信頼性や可用性を高め、ビジネスの継続性を確保するために重要です。

修正保守や適応保守は、トラブルや変化への対応力を高めます。完全保守は、システムの価値を維持・向上させる役割を担っています。予防保守と予測保守は、積極的な対応でトラブルを未然に防ぎ、安定的稼働を実現するために必要です。5つの保守は、それぞれが重要な役割を担っており、バランスよく実施することが求められます。


システム保守を怠った場合のリスク

システム保守を適切に行わないと、会社はさまざまなリスクに直面します。内容次第では事業継続に影響する恐れがあるほど、重要な業務の一つです。


発生するリスク

具体的なトラブル例

システムの不安定化

・システムが頻繁にフリーズする、クラッシュする
・レスポンスが遅延し、業務効率が著しく低下する
・予期せぬエラーやシステム停止が起こる
・システム不具合により生産や納期に影響する

セキュリティの脆弱性

・サイバー攻撃による顧客情報の漏えいが起こる
・ウイルス感染によりシステム全体がダウンする
・重要なデータが暗号化され身代金を要求される

システムの陳腐化

・最新のセキュリティパッチが適用できない
・故障頻度が増加し、パフォーマンスが低下する
・新しいソフトに対応できず、業務効率が低下する

コストの増大

・障害復旧に時間と費用がかかる
・陳腐化したシステムにより運用コストや保守コストが増大する
・情報漏えいが原因で損害が発生する


システムを安定的に稼働し続けるには、適切な保守が必要不可欠です。小さな問題だからと放置すると、のちに大きな損失につながる可能性があると理解し、早めの対策を講じましょう。


システム保守とシステム運用の違い

「システム保守」と「システム運用」は、どちらもシステムを適切に管理し、安定的な稼働を実現するために重要です。しかし、その目的と内容には違いがあると知っておくべきです。


項目

システム保守

システム運用

目的

・不具合や障害の修正
・性能の維持・向上

・日常的なオペレーション
・監視、制御

内容

・バグ修正
・復旧作業
・異常への対処
・機能追加
・メンテナンス

・システム監視
・サーバーの起動・停止
・セキュリティ対策
・バックアップ
・ユーザーサポート

頻度

・定期的または問題発生時に実施

・日常的に継続して実施

対象

・内部構造など

・外部からの動作、パフォーマンス

必要スキル

・システムに関する高度な知識
・問題解決力

・システム管理
・トラブルシューティング
・コミュニケーション力


システム保守とシステム運用は、相互に関連し補完し合う関係にあります。例えば、保守によるシステム品質の維持・向上で、運用における安定性や効率性が高まるといえるでしょう。また、運用から得られるシステムの稼働状況や利用者からのフィードバックは、保守計画の策定や改善点の特定に役立ちます。

このように、システムを最適な状態で稼働し続けるためには、保守と運用の両方を適切に実施することが大切です。2つのバランスを取りながら、継続的にシステムの管理・改善を行っていきましょう。


システム保守の課題はIT人手不足

日本企業がデジタル化を推進し、競争力を維持していくためには、システム保守人材の不足解消が重要な課題となっています。


日本のIT人材は、他国と比較すると不足している状況です。総務省の調査によると、UI・UXに係るデザイナーが在籍していると回答した日本企業は18.3%に留まるのに対し、他国では60〜70%となっています。また、AI・データ解析の専門家が在籍していると回答した日本企業は18.8%である一方、他国では60〜80%でした。

参照:総務省「令和6年版 情報通信白書」


IT人材不足は、システム保守の分野にも深刻な影響をおよぼしています。システム保守を担える技術者が不在の会社では、既存システムの適切な維持・管理が難しくなっているためです。またその結果、システム障害の発生頻度が高まったり、セキュリティ脆弱性への対処が遅れたりするなど、業務に大きな支障をきたす恐れがあります。


さらに、システム保守の担当者に過度な業務負担がかかることは、人材の離職や士気の低下を招く恐れがあります。こうした事態を避けるためにも、システム保守を社内で行うことができる人材の育成・確保が急務といえるでしょう。自社にリソースがない場合は、外部のシステム保守サービスを活用するのも選択肢の一つです。安定的なシステム保守・運用のためにも、適切な体制を整備することが重要です。


システム保守における内製と外注を比較

システム保守は、必ずしも自社内のITスキルを磨かなければならないわけではありません。内製化と外注にはそれぞれ特徴があるため、自社の規模や予算、人材の状況などを総合的に判断しながら、どちらにするか選択することが重要です。


内製化のメリット・デメリット

内製化のメリット・デメリット

内製化の大きなメリットの一つは、コストを安く抑えられる点です。自社の人材を活用することで、外部への委託費用を削減できます。また、意思決定のスピードが早いため、システム保守に関する判断を社内で迅速に下すことができるでしょう。自社システムに精通した人材を育成でき、継続的な保守運用が目指せます。


一方、デメリットも存在します。社内人材のスキルに不安がある場合、十分な保守体制を整えられないかもしれません。不安を補うにしても、人材育成には時間とコストがかかるため、負担が大きくなる可能性があります。


外注のメリット・デメリット

外注のメリット・デメリット

外注のメリットは、適したスキルを持つ人材を配置できるところです。システム保守を専門とする会社には豊富な経験とノウハウがあるため、自社では対応が難しい問題でもスムーズに解決してくれるでしょう。また外注により、自社のリソースを別の業務に集中できます。さらに、専門家に依頼することで最新の技術トレンドに合わせた対応が可能になります。


ただし、外注にもデメリットがあります。一つは、内製化と比べるとコストが高くなる可能性がある点は否めません。特に、専門性の高い人材を配置する場合は、人件費や技術費用なども大きくなる傾向にあります。

また、外注先との調整が必要になると、意思決定のスピードが遅くなる場合があります。内製化と異なり、自社システムの知識が社内に蓄積されにくいのも、課題の一つといえるでしょう。


状況別で判断!内製・外注を選ぶポイント

システム保守の内製化と外注、どちらを選ぶべきかは自社の状況によって異なります。ここでは、いくつかのケースを想定し、それぞれのケースに適した判断を説明します。


ケース1:小規模システムで、リソースが社内に残っている場合

小規模なシステムで、社内に保守を担当できる人材がいる場合は、内製化が適しているでしょう。社内リソースの有効活用により、コストを抑えられます。また、自社システムに精通した人材が保守を行うことで、将来的な人材育成も期待できます。

効率的な内製化 4つのSTEP

社内リソースを保守に割り充てるには、本来の業務に支障をきたさないよう注意が必要です。保守業務の負荷が高くなりすぎないよう、適切な人員配置とタスク管理に配慮しましょう。


ケース2:セキュリティ対策を強化したい場合

システムのセキュリティ対策を強化したい場合は、専門会社への外注がよいでしょう。なぜなら、セキュリティに強い専門会社は、最新技術や脅威に関する知見を持ってるためです。自社で対応するよりも、高度なセキュリティ対策を導入できる可能性があります。

また、セキュリティに強い専門会社への外注では、定期的な診断や監視を行いシステムのセキュリティレベルを維持・向上させることが期待できます。自社でセキュリティ人材を育成・確保するのは容易ではありませんが、外注なら専門性の高いセキュリティ対策をすぐに実現できるでしょう。


ケース3:短期間でシステム改修に対応する必要がある場合

短期間でシステム改修を行う必要がある場合は、外注が適しているでしょう。システム改修では、柔軟性とスピード感が求められます。外注先の専門会社であれば、必要に応じて人員を柔軟に配置するため、スピーディーな対応が期待できます。

専門会社は豊富な経験とノウハウを持っているため、自社のリソースで改修にあたるよりも、より短かい時間での対応が可能です。また自社で対応する場合は、人材の確保や教育面から、スケジュール・コストに影響を与える可能性があります。


失敗しない外注先を選ぶ2つのポイント

システム保守を外注する際は、適切な委託先を選ぶことが重要です。外注先選びを間違えると、トラブルへの対応が遅れたり、コストが膨らんだりするリスクがあります。ここでは、失敗しない外注先を選ぶためのポイントを説明します。


1:専門性のある人材が豊富

システム保守を依頼する際は、専門性の高い人材が豊富に在籍している会社を選びましょう。特に、自社のシステムに関連する技術分野での実績があるかどうかを確認しておくことが大切です。

また、担当者が不在になった場合でも、代わりの人材をスムーズに配置できる体制があるかどうかも重要なポイントです。特定の個人に依存しすぎない、チームでの対応力を備えている会社を選ぶことが望ましいでしょう。


2:保守の範囲や費用が明確

外注は内製化と比較して、コストがかかるのは避けられません。そのため、品質の高いシステム保守を継続的に受けるため、無理のない予算を立てておく必要があります。外注先の候補から、あらかじめ保守の範囲や費用について見積りを取るなど、費用感を確認しておくのも大切です。

保守の範囲についても、業務内容を明確化して認識齟齬を防ぐことが重要です。どのようなレベルで、どの部分までを担当してもらいたいのかを明確にしておくと、トラブル発生時の責任の所在も明らかになります。

併せて、費用や契約内容を事前によく確認しておきましょう。契約前には、見積もりが適切かどうか、自社のニーズに合った契約形態かどうかを吟味する必要があります。


デザインワン・ジャパンでは、貴社システム専門のチームを編成した保守運用が可能です。お見積りやお問い合わせは、こちらからお気軽にご連絡ください。


システム保守には適切なリソースを確保しよう

システムは開発して終わりではなく、その後の保守・運用が大切です。日常的な点検やトラブルへの早期対応により、安定的な稼働と業務を実現します。

システム保守には、内製化と外注の2つの方法があります。どちらもメリット・デメリットがあるため、自社の希望する業務範囲や予算に合わせて選択することが重要です。どちらにしても、業務を円滑に運営できるよう、日頃から適切なシステム保守に努めましょう。


当社では保守運用のほか、アプリ開発やシステム開発も行っています。Webシステムの事例は、こちらから無料ダウンロードしていただけます。


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