システム保守とは?業務内容・費用相場・運用との違いを解説
目次
システム保守とは何か
システム保守とは、稼働中のシステムに発生するトラブルや不具合に対処し、安定稼働を維持するための一連の業務です。企業のITシステムは、導入して終わりではなく、継続的に運用・改善していく必要があります。ここでは、システム保守の基本的な考え方について詳しく解説します。
システム保守の定義と目的
システム保守とは、開発されたシステムを常に最適な状態に保ち、不具合発生時に迅速に修正するための業務全般を指します。システム保守の主な目的は、障害がビジネスに与える影響を最小限に抑え、企業活動の継続性を確保することにあります。
システム障害が発生すると、業務の停止、顧客へのサービス提供不能、データの損失など、深刻な影響を及ぼす可能性があります。
適切な保守を実施することで、業務停止やデータ損失といった致命的なリスクを軽減し、システムの長期的な安定稼働とセキュリティ維持を実現します。
システム保守が必要な理由
システム保守が必要な理由は、大きく分けて3つあります。第一に、システムは時間とともに劣化するためです。ハードウェアの経年劣化、ソフトウェアの陳腐化、セキュリティ脆弱性の発見など、システムは放置すれば確実に問題が発生します。
第二に、ビジネス環境の変化への対応が求められるためです。法改正、取引先の要件変更、新しい業務プロセスの導入など、システムも柔軟に対応する必要があります。
第三に、企業の信頼性を維持・向上させるためです。システム障害による業務停止は、顧客からの信頼を大きく損なう可能性があります。
特に基幹システムや顧客向けサービスを提供するシステムでは、安定稼働が企業の競争力に直結します。これらの理由から、システム保守は企業のIT戦略において欠かせない要素となっています。
システム保守の対象範囲
保守の対象範囲は広く、サーバーやストレージ、ネットワーク機器といった「ハードウェア」から、OS、ミドルウェア、業務アプリケーションなどの「ソフトウェア」まで多岐にわたります。これらに加え、データベースの最適化やセキュリティシステムの更新も重要な保守業務に含まれます。
また、クラウド環境を利用している場合は、クラウドサービス特有の保守作業も必要になります。保守対象の範囲は、システムの構成や企業のニーズによって異なりますが、契約を締結する際には「どこまでが保守範囲か」を明確に定義しておくことが、責任分界点の曖昧さによるトラブルを防ぐ鍵となります。
システム保守の種類と具体的な業務内容
システム保守には複数の種類があり、それぞれ目的や対応するタイミングが異なります。また、システム運用との違いを理解することも、適切な体制構築のために欠かせません。
ここでは、システム保守の種類と具体的な業務内容について詳しく解説します。
予防保守と事後保守の違い
システム保守は、大きく「予防保守」と「事後保守」の2つに分類できます。予防保守は、定期点検やセキュリティアップデートを通じて障害の芽を事前に摘む活動であり、トラブルを未然に防ぐことを目的としています。
一方、事後保守は実際にバグや障害が発生した後に対応する修復活動を指します。
予防保守は計画的に実施できるため、業務への影響を最小限に抑えられます。対して事後保守は緊急対応が求められることが多く、迅速な原因特定と復旧作業が重要になります。
理想的には予防保守を充実させて事後保守の発生を減らすことが、コスト削減と安定稼働の両立につながります。
システム保守の主な業務内容
システム保守の業務内容は多岐にわたります。「修正保守」は、システムに発生した障害やバグを修正し、正常な状態に戻す作業です。
エラーログの分析、原因特定、修正プログラムの適用などが含まれます。「適応保守」は、ビジネス環境や技術の変化に合わせてシステムの機能を改良・拡張する作業で、法改正対応や新規デバイスへの対応などが該当します。
「完全保守」は、システムが正常に機能するよう維持管理を実施し、障害発生前に対策を講じる総合的な保守活動です。定期的なサーバー点検やサイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策に加え、老朽化した機器を交換してパフォーマンスと安定性を向上させるといったインフラ面のケアも、完全保守の重要な役割です。
システム保守とIT保守の違い
システム保守とIT保守は、しばしば混同されますが、厳密には異なる概念です。システム保守は、特定のシステム(基幹システム、業務アプリケーションなど)を対象とした保守活動を指します。一方、IT保守はより広い概念で、企業のIT環境全体を対象とした保守活動を意味します。
IT保守には、システム保守に加えて、社内のパソコンやプリンターなどのエンドユーザー機器のメンテナンス、社内ネットワーク全体の管理、IT資産管理なども含まれます。
自社のニーズに合わせて、どの範囲まで保守対象とするかを検討することが重要です。規模の小さい企業ではシステム保守とIT保守を一体で管理することも多いですが、大企業では役割を分けて管理するケースが一般的です。
システム保守と運用保守の違い
「運用」と「保守」は役割が明確に異なります。システム運用は、システムが日常的に安定して動作し続けることを目的とした業務です。
サーバーやネットワークの監視、データバックアップの管理、ユーザーアカウント管理、セキュリティパッチの適用など、予防的な業務が中心となります。
対してシステム保守は、システムに何らかの問題が発生した際に迅速に原因を特定し、修復・復旧を行ってシステムを正常な状態に戻すことを目的としています。
運用は「現状維持」、保守は「トラブル対応と改良」という役割分担ですが、実際の現場ではこれらをセットにした「運用保守」として一括管理されることが多くなっています。
システム保守の費用相場と契約形態
システム保守を検討する際、費用相場と契約形態の理解は欠かせません。適切な予算設定と契約内容の精査が、長期的なシステム運営の成功を左右します。ここでは、費用相場の目安から契約時のチェックポイントまでを解説します。
システム保守の費用相場と内訳
システム保守の費用は、システムの規模や複雑さ、保守内容によって大きく異なります。一般的には「システム開発費用の15%から25%(年間)」が相場とされています。
例えば、1,000万円で開発したシステムであれば、年間150万円から250万円程度のランニングコストが必要になると考えられます。
費用の内訳としては、定期点検・監視費用、障害対応費用、セキュリティアップデート費用、機能改善・追加費用などがあります。
24時間365日対応や即時復旧を求める場合は、費用が大幅に増加することを念頭に置く必要があります。見積もりを依頼する際は、どの業務が含まれ、どの業務が別料金になるのかを必ず確認しましょう。
| 項目 | 内容・詳細 |
|---|---|
| 費用相場(年間) |
|
| 費用の内訳 |
|
| 変動要因・注意点 |
|
システム保守の契約形態の種類
システム保守の契約形態は、主に「定額保守契約」と「従量課金型契約」の2種類があります。定額保守契約は、毎月または年間で一定の保守費用を支払う形式です。
予算が立てやすく、一定範囲の保守業務が含まれているため、トラブル発生時も追加費用を気にせず対応を依頼できるメリットがあります。
従量課金型契約は、実際に発生した作業に応じて費用を支払う形式です。トラブルが少ない場合はコストを抑えられますが、大規模障害が発生すると費用が膨らむリスクがあります。自社のシステム規模や障害発生頻度を踏まえて、最適な契約形態を選択することが重要です。基本料+従量制というハイブリッド型も選択肢の一つです。
システム保守契約を結ぶ際のチェックポイント
契約を結ぶ際は、後々のトラブルを防ぐために「保守対象範囲」を明確化することが最優先です。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの境界線をはっきりさせ、どこまでがベンダーの責任範囲なのかを曖昧にしないことが重要です。また、営業時間内のみの対応か、24時間対応かで費用も対応品質も大きく変わります。
また、障害発生時の連絡体制と報告フローの取り決めも重要です。誰がどのような方法で連絡し、どのタイミングで報告を受けられるのかを明確にしておくことで、有事の際にスムーズな対応が可能になります。さらに、契約更新条件や解約条件、知的財産権の帰属なども事前に確認しておくべき項目です。
SLA設計で押さえるべきポイント
SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)は、保守サービスの品質基準を定めた合意書です。
「システム稼働率」「障害復旧時間(RTO)」「問い合わせ応答時間」などを数値化して合意することで、期待するサービスレベルと実際の提供内容のギャップを防ぐことができます。
例えば、稼働率99.9%を目標とするのか、99.99%を目指すのかで、必要な体制とコストは大きく異なります。自社のビジネスにとって許容できるダウンタイムを明確にし、それに見合ったSLAを設計することが重要です。また、SLAを達成できなかった場合のペナルティ条項についても、事前に合意しておくことで、保守ベンダーのサービス品質維持へのモチベーションを高める効果が期待できます。
システム保守を成功させるための実践ポイント
システム保守を効果的に行うためには、適切な体制構築と継続的な改善活動が欠かせません。ここでは、保守を成功に導くための実践的なポイントを解説します。これらを押さえることで、安定したシステム運営を実現できます。
システム保守の体制構築と役割分担
効果的なシステム保守体制を構築するためには、明確な役割分担が必要です。全体の方針と予算を握る「保守責任者」、実作業を行う「技術担当者」、そしてユーザーやベンダーとの架け橋となる「窓口担当者」を定義し、誰が何に責任を持つかを可視化します。
内製と外注の判断も重要なポイントです。自社の技術力、人員リソース、コストバランスを総合的に判断し、最適な体制を選択することが求められます。
特に、専門性が高い領域や24時間対応が必要な場合は、経験豊富な保守ベンダーへの外注を検討すべきでしょう。一方で、業務知識が必要な領域や迅速な判断が求められる場面では、内製のメリットが活きることもあります。
システム保守で発生しやすい課題と対策
保守現場で最も多い課題の一つが「ドキュメント不足」です。システム構成図や設定情報、過去の障害対応記録などが整備されていないと、障害発生時に原因特定に時間がかかります。
対策として、保守開始時にドキュメントの整備状況を確認し、不足している場合は優先的に作成することが重要です。
もう一つの深刻な課題は「属人化」です。特定の担当者しかシステムを理解していない状態は、その担当者の退職や異動時に大きなリスクとなります。複数人でナレッジを共有し、定期的な引き継ぎを行うことで属人化を防ぐ必要があります。
また、保守ベンダーとのコミュニケーション不足も課題になりがちです。定期的なミーティングを設定し、システムの状況や今後の課題を共有する場を設けることが効果的です。
システム保守の品質を高める方法
システム保守の品質を継続的に高めるためには、PDCAサイクルを回すことが有効です。まず、保守業務の実施状況を定量的に把握するための指標を設定します。
障害発生件数、復旧までの時間、問い合わせ対応件数などが代表的な指標です。これらの指標を定期的に測定・分析し、改善点を特定します。
また、障害発生時には事後分析を必ず実施し、再発防止策を講じることが重要です。根本原因を追究し、同様の障害が発生しない仕組みを構築することで、保守品質は着実に向上します。
さらに、AIによる予兆検知や自動化ツールなどの新技術を積極的に取り入れ、業務自体の高度化を図る姿勢も重要です。
まとめ
本記事では、システム保守の基本的な定義から、業務内容、費用相場、運用との違い、そして保守を成功させるための実践的なポイントまでを解説してきました。
システム保守は、単なるトラブル対応ではなく、企業のビジネス継続性を支える重要な活動です。予防保守と事後保守を適切に組み合わせ、明確なSLAのもとで保守体制を構築することが、長期的な安定稼働の鍵となります。
システム保守では、自社のニーズと予算のバランスを考慮して最適な契約形態を選択することが重要です。
システム保守の成功には、技術的な対応力だけでなく、自社のビジネスを深く理解したパートナーの存在が欠かせません。
開発から保守・運用まで一貫して任せられるパートナーを選ぶことで、システムの価値を最大限に引き出すことができます。システム保守の体制構築や外注先の選定でお悩みの方は、まずは専門家への相談から始めてみてはいかがでしょうか。
ソリューション