システム保守費用の相場はいくら?見積もりを取る際の注意点と安く抑えるポイント
目次
- 現在のシステム保守費用が適切かどうか分からない
- システム保守費用の相場を知りたい
- システム保守費用を抑えたい
システム保守費用の適正な金額が分からず、不満や不安を感じている方もいるでしょう。システム保守費用の相場や適正な金額が分からないと、不要なコストが発生したり、トラブル発生時の損失リスクが高くなったりする可能性があります。本記事では、システム保守の目的や費用の考え方、保守費用相場、費用を抑えるポイントなどについて解説します。適正なシステム保守費用が知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事は、デザインワン・ジャパン DX事業本部でシステム・アプリ開発に携わる泉川学が作成しました。
ソフトウェアにおけるシステム保守とは?システム保守の目的と費用の考え方
ソフトウェアにおけるシステム保守とは、システムに発生したトラブルの解消や本来の機能を維持するために必要な業務の総称で、主に以下の5つの業務があります。
- アプリケーション上で発生したバグの対応
- サーバートラブルの対応
- システムのバージョンアップの対応
- セキュリティを維持するための対応
- 操作方法やトラブルなどの問い合わせ対応
保守と運用の違いについて
保守と混同されやすい言葉として「運用」があります。保守と運用はセットで考えられることが多いですが、業務内容は異なります。システム保守とシステム運用の違いを分かりやすくまとめると、以下のとおりです。
業務 |
詳細 |
主な業務 |
システム保守 |
不具合の解消やバージョンアップなどシステムに発生した問題を解決し、本来の機能を維持することを目的とした業務。突発的なトラブルの解決が求められることが多く、マニュアルに頼らない対応が求められる。 |
システムのバグ修正、障害対応、アップデート、セキュリティ強化、技術サポート |
システム運用 |
日々の監視やバックアップなど、システムを安定稼働させるために必要な業務。マニュアルに沿ってスケジュールどおりに対応することが多い。 |
システム監視、機能改善、バックアップ管理、ユーザーサポート |
どちらもシステムを安定稼働させるための「守りの業務」ではありますが、保守と運用の大きな違いは「定期業務」か「不定期業務」かになります。運用は業務内容がおおよそ決まっているため、必要な人員や工数の見積もりが出しやすいですが、保守は工数が予測しづらいため定期的に費用の見直しが必要です。
システム保守にかかる費用相場と費用が変動する要因
1年間にかかるシステム保守費用の相場は、システム開発費用の5~15%程度です。
ソフトウェア |
開発費用相場 |
保守費用(年間) |
保守費用(月額) |
基幹システム (勤怠管理システム) |
10万〜500万円 |
15,000〜75万円 |
1,250〜6万2,500円 |
業務支援システム (顧客管理システム) |
〜400万円 |
〜60万円 |
〜5万円 |
Webシステム (ECサイト) |
50万〜1,000万円 |
75,000〜150万円 |
6,250〜12万5,000円 |
コミュニティアプリ |
100万~500万円 |
15万〜75万円 |
12,500〜62,500円 |
ECアプリ |
200万~300万円 |
30万〜45万円 |
25,000〜37,500円 |
ゲームアプリ |
800万円~ |
120万円〜 |
10万円〜 |
引用元:システム開発の保守費用相場・内訳具体例とコスト削減のポイントも解説【2024年最新版】 | システム幹事
例えば、ECサイトを800万円で作った場合、年間120万円(800万円×15%)、月間にすると10万円(120万円÷12か月)程度がシステム保守費用の相場になると考えてください。
ただし、システムの規模や要件・範囲によって費用が変動するため、あくまでも目安となります。
システム保守費用が変動する要因
システム保守費用が変動する要因は、主に以下3つがあります。
- システムの規模
- システムの複雑性
- サポートの内容と時間
システム保守費用の適正を見極める適正稼働率の算出方法
システム保守における適正稼働率とは、システム保守のパフォーマンスや稼働時間が適正かを判断するものです。システム保守費用は開発費用の5~15%ですが、その金額が適正かどうかを以下の4つの指標で判断します。
指標 |
算出方法 |
概要 |
保守時間達成率(%) |
実績時間÷見積時間 |
見積もりで提示された時間と実際に稼働している時間との差 |
即答率(%) |
即答件数÷相談件数 |
疑問点などを相談した際にどれだけ迅速に対応してくれるか |
引受率(%) |
引受件数÷相談件数 |
相談した件数に対して実際にどれだけ引き受けているか |
納期達成率(%) |
納期達成件数÷引受件数 |
引き受けた業務の納期がどれくらい遵守されているか |
まず初めに見るべき指標は、保守時間達成率です。例えば、見積時間を月20時間で考えていたけれど、実稼働時間が10時間だった場合、保守時間達成率は50%となります。ただ、保守時間達成率は稼働時間を増やして達成するものではありません。保守時間達成率が極端に低い場合、見積時間が適正ではない可能性があるため、委託先に減額交渉をしたり、他社に見積もりを取ったりして、費用の見直しを検討しましょう。
次に、「即答率、引受率、納期達成率」は委託先のパフォーマンスを評価する指標です。これらの数値が悪い場合、システム保守のパフォーマンスや効率が悪い可能性が考えられるため、委託先と話し合ったり、社内フローの見直しをしたりしてパフォーマンスの改善を図ります。パフォーマンスや対応があまりにも悪い場合には、委託先の切り替えも検討が必要です。
しかし、見積時間に対して業務量が多すぎるために即答率、引受率、納期達成率が低くなってしまっている可能性もあります。その場合は見積時間が少なすぎたということですので、保守費用の増額を検討しましょう。
システム保守費用を安く抑える4つのポイント
システム保守費用を安く抑えるポイントは4つあります。保守業務の見直しや自動化などで、ある程度コストを削減できる可能性があります。
1.定期的に保守業務を見直して効率化を図る
システム保守の業務内容は、年に1~2回の頻度で見直しが必要です。発注当初と比べて業務量が減っている場合は、見積時間を見直すことでコスト削減につながる可能性があります。自社で対応可能な場合は、内製化を検討してもいいでしょう。ただし、目先のコスト削減を優先しすぎると、トラブルが増えてシステム運営に悪影響が出る可能性もありますので、注意が必要です。
2.一部保守業務の自動化を図る
外注しているシステム保守の中で定型的な業務があれば、自動化を図ることでコストを削減できます。システムの運用管理を自動化するRBA(ランブック・オートメ ーション)などを活用すれば、これまでは人間の判断が必要だった業務の一部を機械に任せられる可能性があります。
3.委託先は複数社で見積もりを取る
システム保守を外注する際は、複数社で相見積もりを取って費用を比較しましょう。同じ業務内容でも金額が異なる場合があります。相場よりも明らかに高い価格を提示する業者を選んでしまうリスクを軽減することができます。
4.オフショア開発の利用を検討する
24時間365日の監視が必要なシステムの保守業務は、「オフショア開発」を検討してみましょう。オフショア開発とは、海外の現地法人にソフトウェア開発などを委託することを指します。インドやフィリピン、ベトナムなど日本より労働賃金が安価な国を利用することで開発コストの削減が期待できます。24時間監視が必要なシステムにおいては、あえて時差のある海外を利用するのもひとつの手です。
【関連記事】オフショア開発とは 意味とオフショア開発が選ばれる理由を解説
システム保守の見積もりを取る際の注意点
システム保守の見積もりを取る際は、以下の3つに注意しましょう。
依頼範囲や条件を明確にすること
システム保守の業務範囲や稼働時間などの条件を明確にしましょう。不明確なまま見積もりを依頼すると、委託先が正確な工数を見積もることができません。工数が曖昧な見積もりは実際の業務内容との乖離が大きくなる原因にもなり、想定より多すぎた場合は委託先の不満、少なすぎた場合は自社の不満につながります。発注先と良好な関係を維持するためにも、依頼範囲や条件は明確にした上で見積もりを依頼しましょう。
リスク回避工数を含めること
見積もりを依頼する際は、突発的なバグへの対応などリスク回避工数を含めるようにしましょう。リスク回避工数を含めずに外注すると、委託先から契約内容に含まれていないなどの理由で十分な対応がされない可能性があります。
保守費用を必要以上に安くしすぎないこと
保守費用はシステムが安定稼働しているときにコスト削減の対象になりがちですが、必要以上に安くしすぎないことが大切です。保守費用を削ることで目先のコスト削減ができたとしても、長期的にみて損失のほうが高くつく可能性があります。システムが安定稼働しているのは、システム保守担当者がぬかりなく業務に取り組んでいる結果ともいえます。短期的なコスト削減だけを考えるのでなく、コストパフォーマンスとリスクを考慮したうえで納得のいく金額を算出することが重要です。
さいごに
システム保守は、システムが安定的に稼働しているときは過小評価される傾向がありますが、システムの安定稼働には必要不可欠な業務です。過度なコスト削減は、システムの安定稼働に支障をきたすだけではなく、大きな損害リスクにもつながります。高すぎる保守費用の見直しは必要ですが、一定のコストを負担する意識をもつことも大事です。システム保守費用に対するコストパフォーマンスをみつつ、費用の見直しをしましょう。