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インタビューインタビュー

大手企業での安定を捨ててでも叶えたかった「幸福度」 実現のカギは【AI×DATA】にあり

AI
大手企業での安定を捨ててでも叶えたかった「幸福度」 実現のカギは【AI×DATA】にあり
“AI×DATAで世界中の価値を最大化する”をミッションに掲げるAIテックスタートアップXAION DATA(ザイオンデータ)の佐藤泰秀さん。日立製作所やアメリカ・シリコンバレーのAIスタートアップ企業で勤務した経験から、日本人の「幸福度」につながるような採用プロダクトを開発しました。企業×人材のwin-winなマッチングに取り組む佐藤さん。日本の採用市場に新たな風を吹かせるべく取り組みについてお聞きました。

目次

株式会社XAION DATA
代表取締役
佐藤泰秀氏

情報工学を勉強していた経験から「テクノロジーを通じ世の中のためになるものを創りたい」と、新卒で2014年から日立製作所に入社。公共システム部門において観光庁や自治体など公共分野のお客様に対ITによる支援を行う。大規模システム更改プロジェクトでは、事業所技術賞を受賞。その後、2018年にアメリカ・シリコンバレーのAIスタートアップ企業にジョイン。2020年に株式会社XAION DATA起業。


自分だけが提供できる価値を追い求め、一念発起


まずは佐藤さんが日立製作所に新卒で入社しようと思った経緯をお聞かせください。

佐藤 僕は高専時代からエンジニアリングの勉強をしていたので、“エンジニアとして公共福祉に社会的価値を提供したい”という思いがあり日立製作所で働き始めました。公共系の仕事は、限られた大手企業でしかできないですからね。その後社内向けに実施された「グローバル人材を育てよう」という育成プログラムの選抜メンバーに抜擢していただき、アメリカのシリコンバレーで働くという経験をさせてもらいました。そのときの衝撃が忘れられなくて……。日立製作所を辞めてそのままシリコンバレーの会社で働くことにしたんです。 


衝撃とは具体的にどのようなものだったのしょうか?

佐藤 これはもうネタにしているのですが、ITの最先端地域であるシリコンバレーのエンジニアたちは机の上に足を乗せて仕事をしているんですよね。日本のように必死になって働いている空気とは全然違います。ただ、エンジニアとしてのレベルでいうと“勝てるな”と思ったのが正直なところです。そこからエンジニアリングのノウハウを持った上で事業開発を担当させてもらい日本法人の立ち上げやカウントリーマネージャーも経験しました。それらの経験を経て、シリコンバレーの企業を卒業し、自身で起業するに至りました。

シリコンバレーには大手の超優秀な人が大手企業を辞めてスタートアップ企業を立ち上げたり、優秀な大学を卒業してそのまま自分で起業したりしているケースが非常に多いです。会社の名前で何かをやるというより、個人が直接マーケットに対してはたらき掛け、何かをやっていこうという志を持っている人がそこら中にいます。当時の自分は大手企業に所属するいち社員として指示された仕事をこなすことに何の違和感も感じていなかったのですが、彼らとの出会いを通じてハッとさせられました。自分自身の価値とは? 世の中に対して自分の価値を提供できているのか? と悶々とした時期がありました。大手企業で安泰のために毎日を過ごすのではなく、自分にしかできない仕事、自分だけが提供できる価値を追い求めたいという思いが日に日に強くなりました。


シリコンバレーの企業には2年ほど勤めた後、日本の採用における課題を解決するために現在のザイオンデータを立ち上げられました。

佐藤 シリコンバレー時代に勤めていたのはHR領域のAI企業だったのですが、「採用」という市場を見たときに、グローバルと日本とでは考え方の違いをすごく感じました。アメリカのエンジニア目線で、日本で展開したい採用のための事業と、僕自身がイメージする日本の採用の課題へのアプローチは、全くもって異なるなと感じました。ならばこの会社で日本向けの事業を展開するのではなく、自分たちが独立して、目の前で困っている人たちのために動いていこうと決意して、シリコンバレーで一緒だった石崎優人さんと起業しました。


日本人だからこそ感じていた課題とはどのようなことでしょうか?

佐藤 サービスの話にもつながりますが、日本人は一般的に自己肯定感が低い人が多いですよね。文化や教育制度など、さまざまな背景が相まってだと思いますが、自分の強みや特性を活かすというより、平準化の意識が根付いているように感じます。採用においても新卒至上主義は未だ根強く、その人の強みを活かした採用とは言い難い状況です。どちらかというとアベレージで人を見る採用になっていると思います。日本人は自分の強みを発信することに臆病です。一方、アメリカ人は自分の強みを理解して、自分から発信する人も多いです。ここに大きなマーケットの違いがあるなと感じました。


誰もが自分の情報をWeb上に発信し自分の価値を認知できる採用にシフト

そうした経緯で開発された御社のサービスについて教えてください。

佐藤 AUTOHUNT(オートハント)というサービスを提供しています。Web上に公開されているSNSを含む、いわゆるオープンデータを収集し統合する特許技術を所有しています。集めたデータを元にサービスをつくるビジネスモデルを展開しています。AUTOHUNTは、最適なユーザーを検索できる、AIを使ったタレント検索エンジンで、Google検索の人物版のようなイメージです。


本人が知らぬ間にその人のプロファイルがどんどんデータベースとして蓄積されていき、企業はそれを検索できるようになるということですよね。

佐藤 はい。日本の採用市場のビジネスモデルって、転職しようと思ったユーザーが大手人材紹介会社に登録し、リクルーターや採用担当者がそのデータを見にいく、いわゆるリボンモデルと呼ばれるものが一般的です。一方、海外ではそういった仕組みは衰退に向かっています。個人のキャリア情報を表に出す文化が浸透しているんです。なので、わざわざクローズドの媒体に登録する意味がないし、リクルーターも個別の媒体を見に行く必要がありません。Web上で公開されている様々な公開情報を、いかに効率よく集めるかが鍵になっているんです。現在の日本の仕組みでは人材の流動性もまだまだ低いですし、一社終身雇用では自分自身の価値を認識すらできないこともあります。採用市場そのものや採用慣習をアップデートするという意味で、このサービスモデルに辿り着きました。


実際、日本はまだまだ新卒文化ですよね。問題意識はあるけど、なかなかメスが入りにくい。最終的にこの文化を切り崩していくようなビジネスモデルになっていくべきですよね。

佐藤 時代の潮流をスタートアップとしてどう作っていくかが重要だと思っています。難しいからこそ、挑戦する価値があるとも感じています。海外の採用の仕組みは、大体10年〜20年遅れくらいで日本に導入されるというのが、今まで歴史の流れとしてあるんですよね。実際、AUTOHUNTには300万人を超えるプロフィール情報が集まっています。表に出る情報の総量は増えつつあり、少しずつ市場が切り替わっていると実感しています。

日本はどんどん人口減少する中、ITの採用需要は右肩上がりで、需要と供給のバランスが崩れてきています。各企業の人事の方も、今までのクローズドの媒体で顕在化した人を刈り取る採用だけだと、いつかは立ちゆかなくなる時が来ます。オープンデータをもとに、顕在層だけでなく潜在層にも早期にアプローチをして、自社にマッチする人材に対して転職意向が顕在化する前から接点を持つための動きが今後は重要になってくると思います。感度の高い企業さんは既に動き出していて、弊社にお問い合わせをいただいている状況ですね。


顕在層と潜在層の両者に同時並行でアプローチしていくことが重要ですね。

佐藤 そもそも潜在層のデータを企業が自分たちで集めようとすると、非常に労力がかかります。弊社はそこを自動化する仕組みや汎用的に色んなところのデータ持ってくる技術、それを統合してオペレーションとして簡易化する自動化の仕組みを作る技術を通じて、人事担当者の採用を効率化できるパッケージプランも用意しています。我々としても単一のサービス提供だけではなく、オープンデータを使った採用を第三者的な支援もしていきたいと考えています。実績を作りながら実地で学んでいきたいですね。

これまでの採用はエージェントに頼る部分が多かったと思いますが、採用をデジタルで効率的に仕組み化するのは、まさに人員採用のDX化と言えます。オープンデータに対するアプローチからの新しい採用の一例として、副業から参画してもらい、その後正社員登用など新しい採用手法で、成功体験を得ている企業さんは少しずつ出てきています。短期的に見ると転職顕在層ばかりに集中しがちですが、成功体験を通じて潜在層にもどうアプローチしていくかなど、新しい手法を取り入れていく重要性も伝わるといいなと思っています。


どうしても資本が大きいところから使われていくイメージはありますよね。

佐藤 データの流動性が高まることで、民主化が起きると考えています。今までは資本主義的な要素が大きくて、こういったデータがほしければマーケティングで資本を叩いて手に入れるというやり方が一般的で、その意味では大手が強いイメージはありました。でも誰もがデータにアクセスできるWeb3(ウェブスリー)の概念が広がれば、みんな自由にデータを取り扱える環境になる。資本力とは違う形で何か新しい仕組みが生まれるんじゃないかなと思っています。


となると大手企業だけでなく中小企業にもこうしたサービスを活用できるチャンスが生まれますよね。一方、若い方は大手企業や資本の大きい会社に惹かれる傾向はあると思います。

佐藤 そこは企業努力も必要だと思っています。今まで企業とユーザーの間には、情報の非対称性がかなりあったと思っています。例えばGoogleで検索すると上位10%の情報しか、大多数の人々の目に触れません。情報の流動化が進み、アクセス頻度などが平均化されれば、今まではタッチできなかった情報にアクセスする機会が増えるわけなので、資本力がないスタートアップ企業でも自分たちの力で情報発信して知ってもらえる機会を生み出すことができるようになってくると思います。今まではお金でしか解決できなかったことが、費用をかけずともできるようになってくるはずです。採用が上手くいっている企業は、エージェントも利用しつつ自発的に採用マーケティングを実践したり、情報発信をしたりと、何かしらの努力をされているなと感じます。


自己肯定感が上がることは、幸福度にもつながる

佐藤さんの情報収集の方法や意識していることを教えてください。

佐藤 マクロな情報は日経や海外のテック系の記事を読みつつ、ミクロな情報は海外のサービスに対しての口コミサイトなどを見てどういったユーザーがどういった意見を出しているのかなどインサイトの情報も取りにいきます。最近では自発的にTwitterで発信されている方も多いのでそういった情報は取りにいっています。ちなみに僕自身は情報を扱う仕事をしていますが、情報発信はめちゃくちゃ苦手です(笑)。


そこはギャップですね(笑)。日本人は海外の人と比較して「この仕事ができます!」と能力があっても言わないし言えない傾向はあると思います。

佐藤 海外の人は自分のアピールが止まらないですからね(笑)。本質的には、僕たちは自分たちのプロダクトと向き合ってお客様に価値のあるものを提供することに時間を使って向き合うべきだと思うんです。ただ他社との交流で情報をスピーディーに集められるメリットはあるので、今期の自分自身の課題はブランディングとしても“情報を発信する”ですね。


最後に、佐藤さんが願う未来をお聞かせください。

佐藤 我々のミッションは“AI×DATAで世界中の価値を最大化する”ことです。このミッションには、人の価値を見出し、最大化してあげる仕組みを、テクノロジーを通じて実現し、テクノロジーで人の幸福に寄与できる企業・事業を作りたいという思いが込められています。

私は、人の価値は、他人や社会との関わりの中で感じるものであり、人から承認されたときや、人の役に立ったときに初めて感じるものだと考えています。

時代潮流が変わっていって、自分の情報を発信するようになっていくということは、自分の価値がなんなのかを自分で認知できるようになってくることであり、それは自分自身のことを認められるということにつながっていると思うんです。自分の価値を認めて最大化することで自己肯定感が上がると、おのずと人生における幸福度も上がると思うんです。この潮流をつくっていきたいですね。

 


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