中古車業界に「透明性」を取り戻せ!オンライン完結の中古車販売と出張修理・整備サービスで新市場を創出
目次
BUDDICA・DIRECT株式会社
代表取締役社長
中野 優作氏
2008年10月中古車販売大手株式会社ビッグモーター入社。店長、営業本部部長、子会社の代表取締役を歴任。2017年に中古車販売のBUDDICA(バディカ)株式会社を創業。2021年度に日本最大業販サイト 「オートサーバー」の5ツ星認定や2年連続販売台数日本一を獲得。「新車を作らず、愛車を作ろう」をコンセプトに累計160億円の売上と25,000台の販売を達成。直近は自動車産業専門家と名乗り、中野氏自ら出演するYouTubeチャンネルは登録者26万人以上を誇る。
取締役
佐川 悠氏
三井物産株式会社で10年間金属資源、リサイクル、自動車リビルト部品製造事業、アフリカ市場開拓案件を担当。南アフリカ・ヨハネスブルグ駐在も経験。その後、2019年にSeibii(セイビー)を創業(現:取締役)。約20兆円規模の自動車アフターマーケット市場にDX改革で切り込み、サービス開始4年で出張整備・修理累計10万台を突破。
取締役
田端 信太郎氏
株式会社NTTデータに入社後、株式会社リクルートに転職しフリーマガジン「R25」を立ち上げ広告営業責任者を務める。株式会社ライブドアではライブドアニュースの責任者、執行役員メディア事業部長を歴任。LINE株式会社上級執行役員を経て株式会社ZOZO(旧:スタートトゥデイ)でコミュニケーションデザイン室長として活躍。バディカダイレクト株式会社ではDX推進や経営全般の監督を担う。X(旧:Twitter)のフォロワーは32万人、YouTubeチャンネルの登録者は13万人を超える。
「透明性」と「誠実さ」という企業文化で業界を変える
中古車業界の常識を変えるためにバディカダイレクトを設立したとお聞きました。
中野 僕はビッグモーターを退職した2017年にバディカを立ち上げました。元々コンサルティングや業務販売といった裏方業務でスタートしたんですが、「ウェブサイトで見つけた車を中古車屋さんで買おうとしたらコーティング代10万円、オプション代10万円と価格がどんどん釣り上がり困ってしまった」とお客さんからの相談が増えていきました。要望に応えるため、4期目あたりから実店舗での中古車販売を本格的に始めています。2023年7月にみなさんの記憶にも新しい中古車業界の不正が明るみに出るとさらに全国から声が寄せられるようになりました。以前から中古車をネットで販売してみたいと思っていましたが、CMO(最高マーケティング責任者)として参画した田端さんが通販領域に精通していたこともあり、DXを加速させオンラインでの中古車販売を開始することを決意したんです。
田端 中野さんはバディカを全国進出させるためにFC展開を検討していました。でも、僕はYouTubeでリーチがありインターネット上での信頼の厚さを上手く活用して中古車をオンラインで売るビジネスモデルに挑戦すべきだと思ったんです。テスラやトヨタなど自動車業界も新車を含めた車のオンライン販売は未だに誰も上手くいってない領域なので、チャレンジできることは逆にチャンスと捉えました。
中野 セイビーさんとはお互いベンチャー企業として業界を変えようという中で「何か一緒にできることはないか」と模索する形でやり取りが始まりました。
佐川 「バディカダイレクトのプラットフォームを作って欲しい」と中野さんから声をかけていただきました。当時、中野さんはオンライン販売の他に整備・修理などのアフターサービスや、デジタル化を進める仲間を探している時期だったんですよね。提案をもらった時はやる以外に選択肢はないと腹を括りました。スマホ・ネットから簡単に出張整備の依頼ができる弊社のサービスに興味を持ってもらえたのは嬉しかったですし、流通革命に挑むと想像するだけでワクワクしましたね。システム開発はスピードが命なので、即断即決。2、3日後にはチームを組んで開発が始まりました。
新会社のスローガン「ダマさないから、ネットで売れる」に込められた思いを教えて下さい。
中野 「家で完結するネット車通販」などDX的な案も含めて経営陣が50以上のキャッチコピーを各々持ち寄ったのですが、業界全体を背負っていく意味でも「ダマさない」誠実な企業姿勢を分かりやすく表現することが大切だということで最終的には田端さんのアイデアでみんなの意見がまとまりました。
参考:グーネットマガジン
私たちの営業スタッフはSNSで実名&顔出しで情報を発信しているのでお客さんは「人」を選んで車を買うことができます。例えばミニバンを購入したくてトヨタのアルファードかホンダのステップワゴンで悩んでいるお客さんは、軽自動車やセダンに乗っている営業スタッフに接客してもらいたいかというと、ちょっと違う。お客さんにとって「車」は「家」の次に大きな買い物。だからこそ、信頼できる営業スタッフから安心して購入してもらえるように透明性を担保しています。
佐川 私は中古車業界の不正問題が取り沙汰される前から中野さんの存在をYouTubeで知っていて、1人のファンからスタートしています。中古車業界のビジネスモデルや儲け方を赤裸々に語る姿に引き込まれていき、気になって調べたら香川が本社だった。地方にこんな素敵な会社と社長がいるのかと驚きでした。ストーリーにも共感できたし、中野さん自身の人間性が「ダマさない」の源流なんでしょうね。
中野 自分の経営哲学や会社のミッション、ビジョンをSNSで発信していることが影響してか求職者の数は増えました。優秀で魅力的なスタッフも増えていますし、人に恵まれているなと実感しますね。
田端 中野さんが声を詰まらせながら不祥事を語る動画は再生数もすごい伸びていました。他社で起きた不正問題は会社の方針でやらざるをえなかった部分もあったんじゃないかと推測しています。社員もお客さんも大切にできない会社はいつか内部で反発が起きるし、デジタルタトゥーとして残るリスクがあることをきちんと理解しなければいけません。
不祥事が大きくクローズアップされた後の中古車業界の現状についてどのような認識をお持ちですか。
中野 2023年10月に中古車の「支払総額」の表示が義務化されましたが、中古車の世界は未だにブラックボックス化しており相場の判断がしづらい状況にあります。激安車を「おとり物件」として掲載してお客さんを呼び込み、粗悪車をつかませたり予算オーバーの中古車を販売することもあるのは非常に問題だと思っています。
田端 日本の自動車メーカーはトヨタを筆頭に日本を代表する産業で外貨も獲得している。社員が30代で子供がいたら幼稚園でも小学校でも「パパはトヨタで車を作っている」となったら自慢のパパに様変わりです。中野さんの隣で言うのははばかられますが「中古車」と分かった瞬間に二流扱いされてしまう。それくらい新車と中古車のイメージの差はあります。でも、今の車は壊れにくいので新車と中古車の境目を1年未満とすると、世の中で走っている車のほぼ9割が中古車なんですよ。自動車検査登録情報協会のデータによると、日本で登録されている乗用車の数は約6000万台。その大半は中古車みたいなものなんです。
乗用車は個人の所有物ですが、ある種の交通インフラになっている。子どもが生まれたからミニバンが欲しい、定年を迎えたらミニバンは卒業して2シーターのオープンカーに乗って夫婦で箱根に行きたいなど人生のステージに応じて欲しい車は変化します。だからこそ、車が不要になった人から買い取り、欲しい人に届けるマッチングは非常に大事で流通業として社会性・公共性が高いビジネスだと思います。
こんな状況で先陣を切って中古車業界を変えられるのは中野さんしかいない。打ち合わせでも中野さんは「僕は香川県の中古車屋なんで」と謙遜するので「もっと大きいことやりましょうよ」と焚きつけながら楽しく仕事をさせてもらっています。
DX改革を通じてもっと信頼できる業界へ
デジタルを活用してお客さんにどのようなサービスや透明性を提供するのでしょうか。
中野 大きく3つあります。【1】営業スタッフとオンライン上で商談日を決めてLINEやZoomでやり取りが可能になる。【2】全車種で顔が分かる査定士による車両状態を示した査定書が閲覧できる。【3】動画で楽しく試乗体験や車選びができる、です。
1つ目は、これまでにも無理やり売り込まれて希望していない車を購入したお客さんがいました。そんな嫌な思いは誰だってしたくないですよね。商談の場をもっとシンプルにして、チャット形式で履歴も残れば、言った、言わないのコミュニケーショントラブルも解消できます。また、営業スタッフの顔と名前も分かるのでお客さんも安心して相談ができます。
2つ目は、車の傷の有無や内装の汚れといった車両情報がまとまっているお薬手帳のようなカルテが今までありませんでした。購入した車の修理履歴など透明性の高い情報があれば将来車を売却する時に価値が高まる可能性がある。また、車の愛着が強くなれば長期保有する人も増え、SDGsの観点での貢献もありえますよね。
3つ目に、座った時の目線で見える景色、ドアの開閉、エンジン音など写真では知りえない、動画でしか伝わらないこともたくさんあります。実店舗を訪れなくても中古車に試乗した体験を生み出すことができれば、近くに店舗がないお客さんでも気軽に中古車を購入できるようになります。
そうしたことを実現していくにはスピーディな開発が求められますが、どのような手法で行っているのでしょうか。
佐川 お客さんに寄り添ったシステム開発を目指すため、RFP(提案依頼書) 前提ではなくアジャイルで開発を進めています。プロダクトの素案がない頃から田端さんの事務所にデザイナーやエンジニアが集まって「動画はあった方が良い」「こういうUI(ユーザインタフェース)にしよう」と議論を深めました 。2023年夏ぐらいに決まった話なのでとてつもないスピード感です(笑)。これから新しい機能もどんどん実装されてくるので楽しみにしていて欲しいですね。
田端 アメリカでは不動産のフリーペーパーがちょっとしたSNSの機能を果たしています。切手サイズの大きさに人の顔と経歴が並び、連絡先がずらっと書いてある。会社よりも担当者として誰を選ぶかというスタイルが浸透しているんですね。弁護士も同じだと思います。いくら有名法律事務所だって最後はやっぱり「人」。そういう意味では、中古車市場も同じようになって良いはずです。
佐川 業界の問題かもしれません。結局、商品を安く見せて売っているお店にお客さんが買いに行くビジネスモデルでここまで成功してきてしまった。だからこそ透明性の高い情報をお客さんへ届けたいですね。
車に乗る人・車に乗ることがカッコいい時代を取り戻す
バディカダイレクトをローンチして変化したことがあれば教えて下さい。
中野 正直な話、発表した直後、急にアンチが増えました(笑)。「ダマさないから…」のスローガンに対して非難するということは、何かしらの自覚がある証拠。これは私自身も前職の経験で責任があります。反応がもらえたことは逆に良かったなと考えています。
田端 あとは、かつては「ドライブ」そのものがある種の娯楽であり、ステータスでもありましたが、今は違います。車の遊び方にピンと来ていない人も多いので、それもどんどん提案していくつもりです。
佐川 車で出かけた場所や音楽の思い出も意外と記憶に残っていたりしますもんね。
中野 例えば、私自身もサービスエリアでカップラーメンを友人と食べたことも一生の思い出になっている。「車って良いよ」、というメッセージを、我々だからこその角度で発信できると思っています。「車に乗っている人がカッコいい時代」の復活を密かに目論んでいます。非日常を味わうために車でドライブすることが当たり前の世界を、もう一度取り戻したいですね。
最後にバディカダイレクトで実現したいことを教えてください。
佐川 中古車情報はカーセンサーやグーネットなどのサイトで簡単に検索できますが、情報が混在して欲しい車が見つけにくい現状があります。だからこそデジタルの力で情報を分かりやすくお客さんに届けられるようにしたい。「ネットで中古車を買うならバディカダイレクト」という評判を世の中に定着させ、イケてる中古車流通企業として業界を盛り上げられるように頑張っていきます。
田端 カーセンサーを展開しているリクルートやLINEにいた人間からすると、事業者と消費者を適切にマッチングできればもっと簡単に、快適に中古車を売買できるようになるはず。僕が見る限り、中古車業界は電話やメール文化が色濃く残っておりDX化がまだまだ進んでいないように感じます。このサービスによって利便性が高まり、結果的に車の楽しさや魅力に気づく人が増えれば達成感がありますね。
中野 他の業界に比べて中古車業界は利益率が低い。業界を健全化して利益率も上げていき、まずは数字の上で成功体験を作ってお客さんの層を広げていきたい。しっかり儲かると分かれば真似する人も出てきます。我々と似た会社が多くなれば巡り巡って業界全体が変わるので、競合他社が増えることは本望ですね。そして、バディカダイレクトを通じてシンプルに中古車を売買する時の面倒臭さからお客さんを開放したい。心の底から「バディカから車を買ってよかった」と思える体験をたくさんの人に提供できれば最高です。