インタビューインタビュー

バーチャルトリップで穴場発掘 ANA NEOが提案する新・旅行体験

バーチャルトリップで穴場発掘 ANA NEOが提案する新・旅行体験
ANA NEO株式会社がメタバースによる旅の拡張体験ができる「ANA GranWhale」をリリース。スマートフォンアプリで、国内外の旅行や旅先でのショッピングが楽しめます。バーチャル世界での旅行体験は、ANA就航エリアに限らず、世界中どこからでもアクセスできるのが魅力のひとつです。今回はANA NEOの冨田社長に、航空業界からみたデジタルを活用することへの役割や課題、今後の展望についてお話を伺いました。

目次

ANA NEO株式会社代表取締役・CEO
冨田 光欧氏

1987年、全日本空輸株式会社(以下ANA)に技術職として入社。1996年からはマーケティングを担当し、飛行機の路線計画や運賃を決定するレベニューマネジメントに携わる。2020年よりANA NEO株式会社の代表取締役CEOに就任。ANAでのマーケティング経験を活かしながらバーチャルトラベルプラットフォーム「ANA GranWhale」を開発。

メタバースで提案する新しい旅行ビジネス

ーまずは、ANA NEOの事業内容を教えてください。

メタバースで旅行やショッピングを楽しめるANA GranWhale202312月にリリースし、運営しています。スマートフォンでアバターを操作し、好きな地域への旅行体験ができるアプリです。旅行先には国内、海外問わず常時多数の目的地を用意しています。ANAマイレージクラブ(AMC)との連携も可能です。

ANA NEO GranWhaleのイメージ画像をクリックすると動画が流れます









ー航空業界トップでもある貴社が、メタバースを活用したサービスを開始したのはなぜですか?

航空業界では、社会情勢や天災などの要因で経営に大きな打撃を受けることがあります。過去にもリーマンショックや東日本大震災など、大きな変化が起こるたびに需要が激減。実際に、こうした社会情勢を背景に世界中の航空業界でも人員削減や経営破綻に追い込まれた企業も続出しました。

本業だけでは、経営がどうしても不安定になる。そこで、本業との関連性を持ちながらも、何か別の軸で事業を広げていこうという方針から、複数の新規事業開発に取り組み始めました。本サービスの誕生も、そこからスタートしています。


ANA NEOのプロジェクトが開始したのは、新型コロナが蔓延する前の2019年夏とうかがっています。

今でこそ、コロナ禍を経てメタバースやバーチャル関連のサービスが多くの人に受け入れられるようになったものの、当時は一部の人に利用されているにとどまっており、実際に、事業の立ち上げ当初は、社内でメタバースを使ったサービスの事業構想を伝えるのも一苦労。「何を言っているんだ?」といぶかしがられることもあるほどでした。

ANA NEO 冨田三欧氏 プロジェクト開始時の様子 


メタバースを使った新規事業に取り組むメンバーが、こうした仮想現実の世界にあまりなじみが無かったという点も、開発に当たって壁になりました。メタバースを活用したゲームなどのエンタメに慣れている若い世代であれば、こうした世界観をどうよく見せるか、どうしたら面白いのか、などに敏感なはずです。しかし、それよりも上の世代が中心になるので、議論が行き詰まることも多々ありました。事業展開するには、知見のあるところと手を組む必要がある。そこで、世界的に有名なゲーム開発の経験があるJP GAMES(JP GAMES株式会社)の田畑端さんにプロデュースをお願いしました。


バーチャルとリアルをつなぐ仕掛けとは

ANA Granwhale リアルとバーチャルをつなぐ仕組みのイメージ


ANA GranWhaleは無料のアプリです。ビジネスとしてどのようにマネタイズするのでしょうか?

まず、このアプリは、V-TRIP(バーチャル旅行空間)とSkyモール(ショッピング空間)のサービスで構成されています。Skyモールには提携している企業が出店しており、ユーザーはそこで実際に買い物ができるようになっていますまた、空間内に広告枠がありますので出稿いただくこともできます。

旅行先となる場所は、日本国内の自治体や企業、海外の観光局などと提携して制作。提携先の地域に赴き、現地の街中等の画像を撮影してバーチャルに落とし込んでいます。スマートフォンで利用するアプリなので、画面サイズ上での限界はあるものの、ユーザーがよりリアルにその場所を体感できるように、グラフィックにはかなりこだわりました。実際に、テレビや大画面に映しても遜色ないレベルの精度です。旅行先となる地域の自治体や地場の企業さんにどんどん参入していただきたいですね。


ーメタバースでビジネスを展開するにあたり、ターゲット層はどのように考えていらっしゃいますか?

AMC会員がベースとなると考えています。会員のボリュームゾーンは、仕事での出張利用が多い40〜50代の男性。オンラインでゲームをする層として、20代以上の男性が多いのではと予想していますが、女性にもぜひ利用していただきたいです。


ーバーチャル世界で旅行を楽しんだのちの、リアル世界での旅行への導線としては、どのような仕掛けがありますか?

バーチャル世界の中でリアルの旅行商材を販売できる体制を取り入れています。現在はV-TRIP内でその旅先のホテルが予約できます。ANA トラベラーズと提携し、アプリ内で現実のホテル予約ができる仕組みです。

また、ANAのマイレージを貯めたり利用したりできる仕組みを導入しました。貯めたマイルは実際に飛行機の航空券代に利用していただけるので、アプリを利用する動機付けにもなると見込んでいます。

お客様がバーチャル世界での旅行をしたあと、すぐにリアル世界での旅行のコンバージョンに直結するとは考えていません。あくまでも、ここでの旅を思い出して実際に現地にいってみたくなるきっかけ作りや、聞いたことはあるけど行ったことのない場所、行くにはかなりハードルが高い場所について知ることにもつながればと考えています。

今後はアプリ内での購買情報など、データの活用も見据えています。アプリの改善はもちろんですが、ユーザーの趣味嗜好に合わせた旅行の提案等にもつなげていきたい。インドア派の方にも旅行を好きになっていただけたら嬉しいですね。


ANA会員のアプリの利用状況はどうなのでしょうか。

アプリリリースから現在まで、ダイレクトメールや公式サイトなどさまざまなチャネルを活用して露出を続けていることもあり、国内外問わずダウンロードは徐々に増えています。ただ、まだまだ伸び代があると感じているので、今後さまざまなタッチポイントでアピールしていきたいです。


ー今後さらにビジネスとして成長させるためにはどういった施策を考えていらっしゃいますか?

旅行先となる自治体や企業と連携して、キャンペーンなどを実施しています。ANA GranWhaleで旅行を楽しんでくださった方が実際に現地を訪れることで、特典を受けられるなどメリットがあるといいなと。デジタルとリアルをつなげた施策を打ち出し、利用者が実際にどのくらい旅行されているのかも分析しながら、マーケティングに活かしていきたいです。


リアルの課題をデジタルが解決する

ー今、さまざまな分野でデジタル化が進んでいる中で、航空業界でのデジタル活用をどのようにご覧になっていますか。

航空業界でデジタル化が進むことで、業務効率化などへの貢献はもちろんありますが、一方で「イレギュラー対応」には弱くなる可能性を感じています。例えば、大雪の影響で飛行機のダイヤが乱れたり、緊急メンテナンスが必要になったりした場合、どうしても人の手を入れる必要がある。この点は、デジタルだけで完結することはできません。「物理的な移動」を事業にしている航空業では、デジタルの活用とリアルの人によるソリューションのすみ分けが進んでいくはずです。


ー本業である航空業での変化などはありますか。

訪日観光客に向けたマーケティング活動を行ってきていますが、就航している国に限られています。ANA GranWhaleでは、そうした限界を超えられる。アプリを通じて、ANAの就航エリアに限らず、世界中の人に日本の良さをより広くアピールできると自負しています。

ANA NEOの役割のイメージ



私たちの役割の一つは、ANA GranWhaleを通して日本のさまざまな地域の魅力を広く伝えていくことです。デジタルを活用することで、マーケティング活動が就航エリアという垣根を超え、従来の航空会社によるプロモーションの限界を突破できるのではないでしょうか。

日本には有名な観光地以外にも魅力ある地域がたくさんあるということを、全国の自治体や関連企業と協力してもっと広めていきたいです。


AMC会員は主に日本人ですが、アプリでは外国人利用者を見込んでいるということですね。

アプリは日本語・英語・繁体字の三か国語に対応しています。

正式リリースに先駆けて、台湾・香港・タイ・マレーシア・フィリピンでテストしました。この5か国ではすでにアプリを利用できる仕組みが整っています。現在は、外国人に向けた情報発信も積極的に行っています。今後も、主要な海外の国には、リリースできるような準備を進めています。


ーアプリ内で、京都や北海道などメジャーな観光地以外で注目された場所はありますか。

弘前の桜祭りが人気でした。GWごろに満開を迎える弘前の桜を撮影して旅行先に設定した際には、海外からも多くの訪問者が訪れていましたね。桜のように、四季の魅力は日本ならではです。まだあまり知られていない各地のお祭りやイベントなどを発信することで、新たな魅力の発掘にもなるはず。コンテンツ次第で、多くの方に地域の魅力を再発見していただける仕組みを作れると考えています。

ANA NEO GranWhale 弘前 桜祭りのイメージ画像をクリックすると動画が流れます







ー最後に、航空業界のデジタル化によって、どのような未来を目指していますか?

アプリで旅行やその地域に魅力を感じていただいたら、次は実際に訪れていただく。こうやってバーチャルとリアルをつなぎながら、現実での旅行でしか感じられないものも楽しんでいただきたいと考えています。

旅行は、目的地での観光自体だけでなく、そこに行くまでの道中もリアルならではの醍醐味です。長時間飛行機に乗ったりするのを、それも経験として楽しめる。バーチャルでこういった醍醐味を超えることはできません。

ANA NEO 冨田三欧氏 航空業界のデジタル化について語る


また、現在は旅行やショッピングがメインではありますが、将来的にはデジタルのプラットフォーム化を目指していきたいと考えています。例えば、医療や教育を行ったりNFTを活用して資産を持ったりすることも可能だと考えています。

バーチャル世界を自由に広げていけるのはデジタルの強みです。スマートフォンや端末のスペックや通信環境など課題はありますが、技術の進歩に合わせて今後も進めていきたいですね。



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