オフショア開発の単価は?人気国ごとの相場とコスト削減のコツを解説
目次
「オフショア開発はエンジニアの単価が安いらしいけど、昨今の円安でもコスト削減になるだろうか?」
「中国やインドは単価が上がっていると聞くが、最新の動向はどうなっているのだろう?」
そのように、オフショア開発におけるエンジニアの単価について、コストメリットの有無や、国ごとの実情が気になりませんか?
結論からお伝えすると、最新のオフショア開発の単価は以下のようになっています。
出典:オフショア開発.com「オフショア開発白書(2023年版)」
こうして金額を目の当たりにすると、安価とは言えない開発先もあるように思われるかもしれませんね。
実は、ご心配のように、オフショア開発の費用は、依頼の仕方や委託先によっては高くなり、コスト削減につながらないケースもあります。
しかし逆に言えば、単価を上昇させる要素を避け、適切な国や開発会社に委託すれば、国内よりもリーズナブルにリソース確保が可能です。
実際、「オフショア開発白書(2023年版)」の調査結果によれば、オフショア開発を実施する企業のうち半数以上が20%以上のコストダウンに成功しているのです。
そのようにコストメリットを享受できるようにオフショア開発を実施するには、開発費の多くを占めるエンジニアの単価について、国ごとに動向・特徴を詳しく把握しておくことが重要です。
そこで今回は、オフショア開発のエンジニア単価について、以下の通り解説します。
この記事は、ベトナムに開発拠点を持つデザインワン・ジャパン DX事業本部の泉川学が作成しました。
本記事の内容 |
・オフショア開発における各国単価動向と特徴 ・国内開発との単価比較 ・オフショア開発の単価を上昇させてしまう要素 ・開発費用を抑えるために注目すべき単価以外のポイント |
国ごとの単価について詳しく把握でき、不用意に単価や開発費を吊り上げないための方法も分かる内容となっています。ぜひ最後まで目を通してみてください。
1. 【国別に紹介】オフショア開発におけるエンジニアの単価
冒頭でも触れましたが、オフショア開発では、開発費用が高額になることもあれば、コスト削減につながることもあります。
その要因の一つとして、国によってエンジニアの単価が異なることが挙げられます。
以下は、オフショア開発企業へのアンケート結果で明らかとなった、主な委託先(国)の人月単価です。
出典:オフショア開発.com「オフショア開発白書(2023年版)」
※ プログラマー:コーディングや簡単なシステム開発を担当
※ シニアエンジニア:システム設計や開発を担当
※ ブリッジSE:ビジネスサイド(日本企業)とエンジニアサイドを繋ぐ役割を担うエンジニア
※ PM(プロジェクトマネージャー):プロジェクトにおける計画と実行の責任者
ここでは、こうした主要な委託先におけるエンジニア単価について、国別に詳しく解説します。
1-1. ベトナムのオフショア開発単価
まずは、日本企業からのオフショア開発先として最も人気の高いベトナムの単価について見ていきましょう。
1-1-1. ベトナムの単価の動向
ベトナムの職能ごとの人月単価と昨対比、国内比(日本との比較)は、以下の通りです。
【プログラマー】 ・人月単価:40.22万円 ・昨対比:+26.75% ・国内比(目安):-33% 【シニアエンジニア】 ・人月単価:49.13万円 ・昨対比:+23.2% ・国内比(目安):-50.9% 【ブリッジSE】 ・人月単価:57.73万円 ・昨対比:+12.44% ・国内比(目安):-42.3% 【PM】 ・人月単価:79.38万円 ・昨対比:+37% ・国内比(目安):-0.8% ※国内比は、以下の相場を基準に算出しています。 ・プログラマー:60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:100万円 ・PM:80万円 |
現状の単価は、突出して安いとは言えないまでも、日本の単価に比べればやや安いと評価できます。
ただ、昨対比に着目すると、全職能で単価が大きく上昇していることが分かります。
今年は円安の影響もあり、例年と比べて特に上昇が著しいのですが、人件費高騰や、欧米企業からのニーズ拡大もあり、今後も単価が下降に転じる可能性は低いです。
こういったことから、日本国内のエンジニア単価と比べれば、現状ではコストメリットを出せる状況ですが、将来的にコスト重視のプロジェクトには適さなくなる可能性もあると考えておきましょう。
ベトナムの単価動向まとめ |
現状評価:日本よりやや安い ◎現状ではコストメリットが期待できる △長い目でみるとコスト重視のプロジェクトでは予算オーバーになる可能性あり |
1-1-2. 単価にみるベトナムオフショアの特徴
ベトナムのエンジニアの単価は上昇傾向にはありますが、他国に比べるとブリッジSEやPMといった上級職の単価が安価な点に注目すべきです。
これは、上級職においてもエンジニアが潤沢であり、かつ日本語人材が豊富であることを示しています。
ベトナムは国をあげてIT人材の育成に取り組んでおり、年々エンジニアの数は増加しています。
また、2000年代後半から日本企業の開発を請け負ってきた背景もあり、PMを担えるほど成熟したエンジニアも豊富です。
加えて、ベトナムでは日本語教育が盛んであるため、日本語対応可能なブリッジSEも他国より確保しやすいと言えます。
このように、職能に限らずエンジニアが潤沢で、日本語人材も多いからこそ、日本企業のオフショア開発において、ブリッジSEやPMの手頃な単価が実現しているのです。
1-2. フィリピンのオフショア開発単価
続いて、ベトナムに次いで人気の高いフィリピンの単価についてご紹介します。
1-2-1. フィリピンの単価の動向
フィリピンの職能ごとの人月単価と昨対比、国内比(日本との比較)は、以下の通りです。
【プログラマー】 ・人月単価:35.83万円 ・昨対比:-1.15% ・国内比(目安):-40.3% 【シニアエンジニア】 ・人月単価:53.33万円 ・昨対比:+7.46% ・国内比(目安):-46.7% 【ブリッジSE】 ・人月単価:81.25万円 ・昨対比:+14.32% ・国内比(目安):-18.8% 【PM】 ・人月単価:70.83万円 ・昨対比:+7.6% ・国内比(目安):-11.5% ※国内比は、以下の相場を基準に算出しています。 ・プログラマー:60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:100万円 ・PM:80万円 |
現状の単価について、ベトナムと同様、日本よりやや安いと評価できます。
特にプログラマーの単価については安価な水準となっており、日本で人気の6カ国の中でも2番目に安くなっています。
全体的な単価は上昇傾向にありますが、他国と比べて上昇幅は小さく、ベトナムよりも長い目でコストメリットを得られると考えられます。
ただ、ベトナムほど日本語人材は多くなく、今後も(日本語対応可能な)ブリッジSEの単価は比較的高い水準で推移する可能性が高いです。
そのため、日本語で開発を進める企業にとっては、コストメリットを得づらい場合もあるということを留意しておかなければなりません。
フィリピンの単価動向まとめ |
現状評価:日本よりやや安い ◎現状〜中期的にコストメリットが期待できる △日本語で開発を進める場合はコストメリットを得づらい場合もある |
1-2-2. 単価にみるフィリピンオフショアの特徴
フィリピンでは、ブリッジSEの単価が他の職能に比べて高い水準で推移しています。
これは、フィリピンに日本語で対応できるブリッジSEが少なく、貴重であることを意味します。
そもそもフィリピンでは英語を公用語としていることもあり、オフショア開発企業の多くは欧米を対象としているのです。
このため、日本語対応可能なブリッジSEは単価が高くなる傾向にあります。
POINT:英語で開発が進められるならブリッジSEも安く起用しやすい フィリピンのエンジニアは、基本的に英語での対応を得意としています。 このため、英語対応可能なブリッジSEの単価は、今回紹介している金額よりもリーズナブルな傾向にあるはずです。 このことから、 「英語によるコミュニケーションが可能」 「英語圏を対象としたプロダクト開発」 といったケースでは、ブリッジSEも日本より低単価で確保しやすいと言えます。 |
1-3. インドのオフショア開発単価
続いて、フィリピンに次いで3番目に人気の高いインドの単価についてご紹介します。
1-3-1. インドの単価の動向
インドの職能ごとの人月単価と昨対比、国内比(日本との比較)は、以下の通りです。
【プログラマー】 ・人月単価:50.83万円 ・昨対比:+46.41% ・国内比(目安):-15.3% 【シニアエンジニア】 ・人月単価:68.75万円 ・昨対比:+33.34% ・国内比(目安):-31.3% 【ブリッジSE】 ・人月単価:94.29万円 ・昨対比:+38.72% ・国内比(目安):-5.7% 【PM】 ・人月単価:111.43万円 ・昨対比:+32.81% ・国内比(目安):+39.3% ※国内比は、以下の相場を基準に算出しています。 ・プログラマー:60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:100万円 ・PM:80万円 |
最新の動向を見ると、インドの単価は、日本と大きく変わらないと評価できます。
PMについては日本よりも単価が高い水準にあり、インド側で起用すると開発コストが逆に高騰する場合もあります。
今後の推移も、今年ほどは上昇幅が大きくないにしろ、技術力の高さや欧米企業からの需要拡大を背景に、上昇傾向が続く可能性が高いです。
こうしたことから、コスト重視のプロジェクトにおいては、既にメリットが得づらい状況にあると言えます。
ただ、単価が高い分、技術力も中国と並んで非常に高いレベルにあるため、
・大型案件の工数が短縮でき、結果的にコスト削減につながる
・ハイレベルなエンジニアを日本より安く起用できる
といったケースも少なくなく、プロジェクトによっては高いコストパフォーマンスを期待できます。
インドの単価動向まとめ |
現状評価:日本と大きく変わらない ◎技術力も高くプロジェクトによっては高いコストパフォーマンスを期待できる △コスト重視の(特別高い技術を必要としない)プロジェクトではコストメリットを得づらい |
1-3-2. 単価にみるインドオフショアの特徴
インドのエンジニア単価は、主なオフショア開発国の中で最も高い水準となっています。
これは、それだけ技術力が高く、欧米企業からのニーズが高いということでもあります。
インドでオフショア開発を行うためには、そうした欧米企業と競り合ってリソースを確保しなければなりません。
そうまでしてインドを選ぶべき理由が無いのであれば、他国や日本国内で開発を進める方が無難です。
一方、業務/基幹システム開発など、高い技術力を要するプロジェクトにおいては、委託先としてインドを積極的に検討すべきです。
そのようなプロジェクトなら、単価は高くても、優れた品質や効率を期待でき、良好なコストパフォーマンスを得られやすいからです。
このように、インドオフショアは、「コスト削減」ではなく「ハイレベルなリソース確保」のための有力な手段と言えます。
1-4. バングラデシュのオフショア開発単価
続いて、インドに次いで4番目に人気の高いバングラデシュの単価についてご紹介します。
1-4-1. バングラデシュの単価の動向
バングラデシュの職能ごとの人月単価と昨対比、国内比(日本との比較)は、以下の通りです。
【プログラマー】 ・人月単価:44.13万円 ・昨対比:+48.9% ・国内比(目安):-26.5% 【シニアエンジニア】 ・人月単価:46.13万円 ・昨対比:+16.38% ・国内比(目安):-53.9% 【ブリッジSE】 ・人月単価:90.96万円 ・昨対比:+30.62% ・国内比(目安):-9% 【PM】 ・人月単価:58.63万円 ・昨対比:+27.27% ・国内比(目安):-26.7% ※国内比は、以下の相場を基準に算出しています。 ・プログラマー:60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:100万円 ・PM:80万円 |
バングラデシュのエンジニア単価は、ベトナムと同様、日本よりやや安いと評価できます。
特に、プログラマー・シニアエンジニアといった実際に手を動かすリソースは、今のところ日本国内よりも安く確保しやすい状況です。
ただ、経済成長に加えて、インドと同じく欧米企業からの需要が拡大していることから、プログラマーの単価はプラス48.9%(29.64万円→44.13万円)と、大幅に上昇しています。
また、日本語人材は希少で、今後も(日本語対応可能な)ブリッジSEの単価が比較的高い水準で推移する可能性が高いです。
こういったことから、今後の状況が予想しづらく、特に日本語で開発を進める企業にとっては、コストメリットが小さくなる可能性があることを留意しておきましょう。
バングラデシュの単価動向まとめ |
現状評価:日本よりやや安い ◎現状ではプログラマー・シニアエンジニアの確保においてコストメリットが期待できる △今後の状況が予想しづらく、特に日本語で開発を進める場合はコストメリットが小さくなる可能性あり |
1-4-2. 単価にみるバングラデシュオフショアの特徴
バングラデシュでは、ブリッジSEの単価が他の職能に比べて高い水準にあります。
これは、フィリピンと同様、日本語で対応できるブリッジSEが少なく、貴重であることを意味します。
では英語なら問題なくコミュニケーションが取れるかというと、公用語として英語を用いるフィリピンには敵わないといったところです。
このため、日本語で開発を進める場合にはもちろん、英語を用いる場合でもコミュニケーション面での課題に直面する可能性があります。
こうした特徴を踏まえると、現状ではベトナムやフィリピンから優先的に委託先を検討するのがおすすめです。
1-5. 中国のオフショア開発単価
続いて、日本において5番目に人気の高い中国の単価についてご紹介します。
1-5-1. 中国の単価の動向
中国の職能ごとの人月単価と昨対比、国内比(日本との比較)は、以下の通りです。
【プログラマー】 ・人月単価:50.51万円 ・昨対比:+20% ・国内比(目安):-15.8% 【シニアエンジニア】 ・人月単価:61.79万円 ・昨対比:+18.68% ・国内比(目安):-38.2% 【ブリッジSE】 ・人月単価:79.29万円 ・昨対比:-6.48% ・国内比(目安):-20.7% 【PM】 ・人月単価:92.14万円 ・昨対比:+7.43% ・国内比(目安):+15.2% ※国内比は、以下の相場を基準に算出しています。 ・プログラマー:60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:100万円 ・PM:80万円 |
中国のエンジニア単価は、日本と大きく変わらない水準となっています。
1980年代から長きに渡り、日本のオフショア開発の主要な担い手であった中国ですが、現在では世界を牽引するIT大国とも呼べる存在です。
そのような技術の発展や人件費の高騰、円安の影響により、北京や上海などの大都市では、日本のエンジニアより単価が高くなる傾向も見られます。
このため、コスト重視のプロジェクトでは、既にコストメリットは得づらい状況です。
ただ、インドと同様、技術力は申し分無いため、大規模案件や高い技術力を要するプロジェクトに関してはコストパフォーマンスに期待できます。
中国の単価動向まとめ |
現状評価:日本と大きく変わらない ◎技術力も高くプロジェクトによっては高いコストパフォーマンスを期待できる △コスト重視の(特別高い技術を必要としない)プロジェクトではコストメリットを得づらい |
1-5-2. 単価にみる中国オフショアの特徴
ご覧の通り、中国のエンジニア単価は高い水準にはありますが、ブリッジSEの単価はフィリピンやバングラデシュよりもリーズナブルです。
これは、日本語対応可能なエンジニアが豊富であることを示しています。
今でこそ東南アジア各国の人気が高くなっていますが、かつては中国が主要なオフショア開発先だったため、日本企業との取引実績も多く、日本語人材も豊富なのです。
また、そもそも中国語と日本語は、漢字を用いるなど類似する言語です。
こういったことから、中国の高い技術力が必要で、なおかつ日本語で開発を進めたいという場合は委託先として検討してみてください。
POINT:長期のプロジェクトには慎重な判断が必要 中国の高い技術力やコミュニケーションの取りやすさは魅力的ですが、長期に及ぶプロジェクトの委託は慎重に判断すべきです。 というのも中国には、特有のカントリーリスク(チャイナリスク)が多く存在するためです。 急な政策転換や反日運動などの影響を最小限に抑えるため、開発拠点を分散させるなどの対策も併せて検討することをおすすめします。 |
1-6. ミャンマーのオフショア開発単価
最後に、中国と同率で5番目に人気の高いミャンマーの単価についてご紹介します。
1-6-1. ミャンマーの単価の動向
ミャンマーの職能ごとの人月単価と昨対比、国内比(日本との比較)は、以下の通りです。
【プログラマー】 ・人月単価:27.47万円 ・昨対比:+12.25% ・国内比(目安):-54.2% 【シニアエンジニア】 ・人月単価:54.16万円 ・昨対比:+42.96% ・国内比(目安):-45.8% 【ブリッジSE】 ・人月単価:68.33万円 ・昨対比:+40.63% ・国内比(目安):-31.7% 【PM】 ・人月単価:97.5万円 ・昨対比:+55.23% ・国内比(目安):+21.9% ※国内比は、以下の相場を基準に算出しています。 ・プログラマー:60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:100万円 ・PM:80万円 |
現状の単価について、PM以外のエンジニアは日本よりも安く確保できると評価できます。
シニアエンジニア・ブリッジSEも比較的安価な水準ですが、特にプログラマーの単価は主要開発国の中で最もリーズナブルです。昨対比も+12.5%と、円安だったことを考えれば落ち着いた推移となっています。
このことから、今後数年はコストメリットを得られる状況が続く可能性が高いです。
ただ、こうした単価の伸び悩みは政情の不安定さによるものという見方もできます。
2021年にクーデターが発生したミャンマーでは、他の国ほどオフショアの需要が拡大しづらく、そのために単価上昇が落ち着いているという側面もあるのです。
この状況はリスクともチャンスとも捉えることができますが、どちらにせよプロジェクトを委託する時期や期間は慎重に判断する必要があります。
ミャンマーの単価動向まとめ |
現状評価:日本より安い(PM以外) ◎現状〜中期的にコストメリットが期待できる △政情が不安定な傾向にあり、委託時期・期間は慎重な判断が必要 |
1-6-2. 単価にみるミャンマーオフショアの特徴
ミャンマーではPMの単価は比較的高いのに、PMと同様マネジメントの側面が強いブリッジSEの単価はリーズナブルです。
これは、PMが潤沢と言えるほどにはエンジニアが成熟しきっていない反面、日本語対応が可能なブリッジSEは育ってきているという状況を示しています。
実際、ミャンマーは日本市場を重視していることもあり、「国際交流基金」によれば近年日本語学習者の数は大幅に増えているとのことです。
このように、技術力は発展途上でありながら、スムーズなコミュニケーションが見込めるため、難易度の高くない作業リソースを安く確保したい、かつ日本語で開発を進めたいという場合にミャンマーオフショアはおすすめです。
2. 実際のところオフショア開発の単価は国内より安い?
日本の主要なオフショア開発先におけるエンジニアの単価を見ていただきましたが、ここで気になるのが、「本当に日本の単価よりも安いのか」という点ですよね。
その疑問にお答えすると、ご紹介した通り、ベトナム・フィリピン・バングラデシュ・ミャンマーでは現状、日本よりも安いと言えます。(インド・中国は日本とほぼ同水準)
このことは、日本の単価相場と比べれば明らかです。
日本の単価相場(当社調べ) |
・プログラマー:40〜60万円 ・シニアエンジニア、ブリッジSE:60〜100万円 ・PM:60〜80万円 |
出典:オフショア開発.com「オフショア開発白書(2023年版)」
円安の影響もあり、「格安」とはいかないまでも、上記の4カ国については「概ね安い」と言えるはずです。
このように日本国内よりも単価が安いオフショア開発を導入して、開発コストの削減に成功したという企業も多いです。
実際、「オフショア開発白書(2023年版)」では、オフショア開発を実施した企業は、平均して21.5%のコスト削減に成功しているという調査結果が示されています。
こういったことから、特にベトナム・フィリピン・バングラデシュ・ミャンマーにおいては日本よりもエンジニアの単価が安く、最終的な開発コストの削減にもつながると結論付けられます。
POINT:今後の円安の動向には注視が必要 現状、ベトナム・フィリピン・バングラデシュ・ミャンマーなら国内よりも安く、中国やインドなら日本とほぼ同水準の単価で開発を進められます。 ただし、今後円安が急激に進めば、状況が変わってきます。 例えば、現在中国のプログラマー単価は50.51万円ですが、元相場が今の1.19倍になれば、実質60万円の支払いが必要となります。 そのように、国内より単価が高くなってしまうであろう外貨相場の目安と、現状の為替相場を以下にご紹介しますので、今後の動向チェックのための参考にしてみてください。 ※国内より単価が高くなってしまうであろう相場目安は、「プログラマーの人月単価が60万円を超えてしまう為替相場」としています。 【ベトナム】 ・現状のドン/円相場=0.0061円 ・国内単価より高額になってしまうドン/円相場=0.0091円 【フィリピン】 ・現状のペソ/円相場=2.68円 ・国内単価より高額になってしまうペソ/円相場=4.48円 【インド】 ・現状のルピー/円相場=1.78円 ・国内単価より高額になってしまうルピー/円相場=2.1円 【バングラデシュ】 ・現状のタカ/円相場=1.35円 ・国内単価より高額になってしまうタカ/円相場=1.84円 【中国】 ・現状の元/円相場=20.95円 ・国内単価より高額になってしまう元/円相場=24.93円 【ミャンマー】 ・現状のチャット/円相場=0.071円 ・国内単価より高額になってしまうチャット/円相場=0.15円 |
3. オフショア開発の単価を上昇させてしまう要素
お伝えしてきた通り、オフショア開発の単価は特に東南アジア諸国・バングラデシュにおいて日本よりも安いです。
また、インドや中国でも大型案件や高度な技術を要するプロジェクトなら、国内より高いコストパフォーマンスが期待できます。
ただ、各国の単価は、以下のような要素によって相場より高くなってしまうこともあります。
オフショア開発単価を上昇させてしまう要素 |
・開発国が得意としていないのに日本語で開発を進める ・必要以上に高い技術を求める ・開発会社を一部の都市のみで検討する |
こうした要素を回避しなければ、期待したようなコストメリット/コストパフォーマンスを得られない恐れもあるため、委託先の国や企業を選ぶ際には注意してください。
では、それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
3-1. 開発国が得意としていないのに日本語で開発を進める
開発国が得意としていないにも関わらず、日本語で開発を進めることは、エンジニアの単価を上げてしまいます。
自社と開発企業のエンジニアの橋渡しを行ってくれるブリッジSEの単価が大幅に高くなるからです。
例えばフィリピンなら、公用語でもある英語は堪能ですが、日本語については特筆するほど得意というわけではありません。当然、日本語対応可能なブリッジSEは希少で、単価も高くなります。
にも関わらず、フィリピンオフショアで日本語による開発を進めるとなると、そのような高単価なブリッジSEを起用せざるを得ません。
このようにブリッジSEの単価を高騰させないために、日本語で開発を進めるなら、できるだけ以下の国から開発企業を選びましょう。
日本語が比較的得意なオフショア開発国 |
・ベトナム ・中国 ・ミャンマー |
3-2. 必要以上に高い技術を求める
開発予定のシステムやサービスに必要なレベルを超えて、高い技術力を求めることも単価の上昇を招きます。
当然のことではありますが、高い技術を求めればその分エンジニアの単価は上がるからです。
実際、技術力の高さに定評のあるインド・中国では、単価の水準が日本と同等以上になっています。
そのような高い技術力を必要としないプロジェクトを、例えばインドに依頼するとプログラマーの単価として50万円が必要となるかもしれませんが、ベトナムに依頼すれば40万円で済んでしまいます。
さらに、もしそのプロジェクトが、3人×2ヶ月で終えられる内容だったとすると、
インド:50万円×3人×2ヶ月=300万円
ベトナム:40万円×3人×2ヶ月=240万円
と、プログラマーの単価だけで60万円の差がつくことになります。
このように、プロジェクト遂行に特別高い技術が不要なら、わざわざ単価の高い国に依頼する必要は無いのです。
3-3. 開発会社を一部の都市のみで検討する
開発会社を選定する際に、一部の都市のみで検討すると、単価が高騰する可能性があります。
国によっては、都市や地域ごとに、エンジニアの単価や企業の方針が異なるからです。
例えばベトナムでは、首都のハノイの企業が日本市場をターゲットとしているのに対し、経済の中心であるホーチミンの企業は欧米市場をターゲットとしています。
このため日本企業にとっては、ハノイの方が単価を下げやすく、経済の中心地だからといって最初からホーチミンの企業に絞り込んでしまうと単価の水準が上がってしまいます。
そのような事態を回避するため、開発会社を選ぶ際には、一部の都市のみならず、広い視野で検討するようにしましょう。
4. 国内でのリソース確保にお悩みならオフショア開発はおすすめ
ここまでで、オフショア開発の単価に関する疑問は解消されたのではないでしょうか。
ただ、その上で自社にとってオフショア開発の導入が適切がどうか、迷われているかもしれませんね。
そのような方のためにお伝えしておくと、もし国内でのリソース確保に課題を感じられているなら、オフショア開発はおすすめです。
そもそも、オフショア開発を検討されているなら、時期によって作業ボリュームが異なるなど、外部でリソースを確保する方が好都合という状況にあるかと思います。
とはいえ、ご存知の通り国内のIT人材は不足しており、その不足数も増加する一方です。
その中で、あなたの会社でも次のような事態に直面しているのではないでしょうか。
国内でのリソース確保における課題 |
・国内ベンダーに依頼すると開発コストが予算オーバーしてしまう ・派遣会社で募集してもプロジェクトに見合う人材がなかなか見つからない ・必要なタイミングで国内リソースを調達できず、プロジェクトが停滞しがち ・結局リソースを調達できず、人手不足で不安定な体制のまま開発を進めている ・システムやサービスを完成させても、保守・運用にまわせるリソースがない |
こうした課題は、主にコストを抑えて柔軟にリソースを調達できさえすれば解決されるものですよね。
それを叶えるのがオフショア開発なのです。
コストに関しては、これまで見てきた通り、東南アジア諸国なら単価が国内より安価ですし、インド・中国も技術力がある分コストパフォーマンスに期待できます。
また、オフショア開発先として人気の6カ国では、国内外の需要を担うためにIT教育に注力しており、人材が潤沢なため、国内よりずっと柔軟にリソースを調達できます。
このように、「最小限のコストで・必要な時に・必要な分だけ」エンジニアを確保できるオフショア開発は、これまで国内のリソース確保で苦労してきた企業こそ導入すべきなのです。
5. オフショア開発で費用を抑えるために単価以外で注目すべきポイント
最後に、オフショア開発実施に向けて、委託先の国や企業選定を行う際に、単価以外で注目すべきポイントについてご紹介しておきます。
単価以外で注目すべきポイント |
・時差はどれくらいか ・日本企業との取引実績の有無 ・依頼先は日系企業か |
これらのポイントは、一見費用とは関係ないように思えるかもしれませんが、きちんと確認することで最終的な開発コストを削減しやすくなります。
ぜひ覚えておいてください。
5-1. 時差はどれくらいか
かなり基本的なことではありますが、オフショア開発の候補地(国)を選ぶ際には、日本との時差を把握しておいてください。
というのも、自社の営業時間と開発先の営業時間に大きなズレがあると、午前中に対応して欲しいことが午後に回される等、作業の遅れが出やすくなるからです。
そういった遅れが積み重なれば、スケジュールが後ろ倒しになり、納期に間に合わないという恐れも出てきます。
かといって、残業や休日出勤を依頼すれば、その分コストも大きくなりやすいです。
スケジュールを守り、かつ追加のコストを発生させないために、候補地の時差や営業時間を把握した上で開発先を選びましょう。
ちなみに、日本でオフショア開発先としてよく選ばれる6カ国の時差は以下の通りです。
・ベトナム…-2時間 ・フィリピン…-1時間 ・インド…-3.5時間 ・バングラデシュ…-3時間 ・中国…-1時間 ・ミャンマー…-2.5時間 |
5-2. 日本企業との取引実績の有無
開発国を選ぶ際にも、開発企業を選ぶ際にも、日本企業との取引実績の有無(多寡)を確認しておきましょう。
日本企業との取引が盛んな国や開発企業なら、日本の業界知識や商習慣を把握していて、よりスムーズに開発を進めやすくなります。
結果的に、コミュニケーションコストや勘違いによる手戻りが発生しづらくなり、余計なコストの発生も抑えられるはずです。
ちなみに、日本でオフショア開発先としてよく選ばれる6カ国は、以下のように分類できます。
【取引実績:多】 ・ベトナム ・中国 【取引実績:中】 ・フィリピン ・インド 【取引実績:今後増加の見込み】 ・バングラデシュ ・ミャンマー |
こうした国別の取引実績だけでなく、候補として挙がった企業についてもしっかり確認してくださいね。
5-3. 依頼先は日系企業か
依頼先候補として挙がった開発企業が、日系企業かどうかもチェックしておきましょう。
このポイントについては、実は日系企業を選択することで、国内の物価に合わせた手数料などが発生し、開発コストが高くつく可能性もあります。
ただ、オフショア開発に初めて取り組む場合、不慣れな海外企業との開発を、現地企業と1対1で進めるのは不安も大きいはずです。
慣れないうちはコミュニケーション面ですれ違い、思わぬトラブルが発生する可能性もあります。
そうなれば、開発コストの増大につながります。
このように、確実にコスト削減になるというわけではありませんが、保険をかける意味合いで、初めてのオフショアは日系企業への依頼をおすすめします。
オフショア開発を依頼するならデザインワン・ジャパンが安心!
「オフショア開発を検討しているけど、初めてでもうまくいくだろうか?」
「過去にオフショア開発で苦労した経験があって不安…」
オフショア開発について、そのように心配されているなら、ぜひ一度デザインワン・ジャパンにご相談ください。
デザインワン・ジャパンは、日本企業でありながらベトナムに開発拠点を持ち、実績も豊富なため、安心してオフショア開発をお任せいただけます。
以下は、当社が提供するオフショア開発の主な安心ポイントです。
【ポイント1】コミュニケーション面
窓口となるのは、東京・新宿オフィスの担当者のため、日本語でやり取りができる
【ポイント2】社会的信用
・東証スタンダード上場
・Pマーク取得
【ポイント3】費用面
ベトナムに開発拠点があり、コストと品質のバランスが取れた開発をご提供
【ポイント4】開発実績
・300件を超えるアプリ・システム開発の実績あり
・自社でのシステム運用実績もあり、リリース後を見据えた提案が可能
このように安心できるポイントが揃ったデザインワン・ジャパンが、あなたの会社のオフショア開発を成功に導きます。
お見積り、ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
6. まとめ
オフショア開発の単価について、各国の動向や特徴がお分かりいただけたでしょうか?
最後に今回の内容をまとめておきます。
主なオフショア開発先の人月単価は、以下の通りです。
出典:オフショア開発.com「オフショア開発白書(2023年版)」
このように、エンジニア単価が日本より安い国もあれば、日本とそう変わらない国もあるというのが現状です。
ただ、どの国で開発を進めるにしても、以下の要素によってエンジニア単価は高くなりやすくなるため、注意が必要です。
オフショア開発単価を上昇させてしまう要素 |
・開発国が得意としていないのに日本語で開発を進める ・必要以上に高い技術を求める ・開発会社を一部の都市のみで検討する |
さらに、オフショア開発で最終的な開発コストを削減するためには、エンジニア単価以外にも以下のポイントに注目して開発国・開発企業を選ぶようにしてください。
単価以外で注目すべきポイント |
・時差はどれくらいか ・日本企業との取引実績の有無 ・依頼先は日系企業か |
あなたの会社で、コストメリットの大きい、あるいはコストパフォーマンスの高いオフショア開発が実施できることを祈っています。