小売りのDXとは?人手不足や売上低迷を解決する具体策と成功事例
目次
「DXに取り組みたいけれど、小売りでは何からやればいいのだろう?」
このような悩みを抱えているところかもしれません。
近年、小売業界では、DXが急務となっています。その背景として挙げられるのが、小売業界の深刻な人手不足と、消費者行動の変化です。
消費者の購買行動がデジタル化し、オンラインとオフラインの境界が曖昧になる中、小売業界は新たなビジネスモデルを模索しています。
本記事では、小売り業におけるDXの基本から、メリット・デメリット、導入の実践ガイドまでを網羅的に解説します。
時代のニーズに合ったサービスを提供し、さらに競争力を強化するヒントをつかんでいただければ幸いです。この記事は、デザインワン・ジャパン DX事業本部でDX支援に携わる泉川学が作成しました。
1. 小売りのDXとは何か?基本の知識
最初に、あらためて「DX」とは何か、基本的な知識から確認していきましょう。
1-1. デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、デジタル技術を駆使してビジネスプロセスを刷新し、顧客体験を革新することで、企業の成長を加速させる戦略です。
DXは、単に既存の業務をデジタル化することにとどまらず、新たなビジネスモデルの創出や、市場での競争優位性を確立する根本的な変革を意味します。
DXの特徴的なポイントを3つ挙げると、以下のとおりです。
【DXの特徴的なポイント】
・データのデジタル化:DXは、アナログ情報をデジタル形式に変換し、これを基盤として新たな価値を創出するプロセスです。デジタル化により、データの操作・保存・分析が容易になります。 ・プロセスの最適化:DXにより、ビジネスプロセスが効率化されます。デジタル技術を活用することで、作業の自動化や効率化が進み、生産性の向上が期待できます。 ・顧客体験の向上:デジタル技術によって、顧客に対するサービス提供方法が変わります。オンラインとオフラインの境界がなくなり、よりパーソナライズされた顧客体験を提供できるようになります。 |
※より詳しくは「【必見】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは。意味・目的をわかりやすく解説」にて、ご確認ください。
1-2. 小売りのDXとは具体的に何をすることなのか?
上記のような “DXの定義” を知っていても、
「では、自社のビジネスでは、具体的に何をする?」
という疑問が生じるかもしれません。
小売りのDXでは、顧客の購買体験を根本から見直し、業務の効率化を図ることで、売上の増加とコスト削減を目指します。
具体的な施策の例を、挙げてみましょう。
【小売りDXの具体的施策】
・クラウド化:リアルタイムでの売上データ処理を実現し、在庫管理の自動化に寄与します。 ・データ分析:さまざまなデータ分析を行うことで、顧客ニーズ対応や在庫の最適化に役立てます。 ・AI活用:たとえば、顧客からの問い合わせにAIが自動で応答し、待ち時間をなくします。 ・AR技術の活用:バーチャル試着室の導入により、顧客が店舗に足を運ばなくても商品を試すことができるようにします。 ・自動化ロボティクス:ピッキングや梱包などの物流業務を自動化し、人件費を削減します。 |
実際には、それぞれの業態や顧客層、ビジネス課題によって、さまざまなアプローチが存在します。
よって、上記はあくまでも一例ですが、具体的にイメージするためにお役立てください。
続いて、次のセクションでは、「小売りでDXに取り組むと、具体的にどんなメリットがあるのか?」について、見ていきましょう。
2. 小売りにおけるDXのメリット・効果
小売りにおけるDXのメリットや期待できる効果としては、大きく5つ、挙げられます。
1. 業務の効率化 2. 在庫管理の精度向上によるロス率低下 3. 店舗運営の省人化 4. 顧客満足度の向上 5. 競争力の強化 |
以下でそれぞれ解説します。
2-1. 業務の効率化
1つめのメリットは「業務の効率化」です。
デジタル技術を導入することで、時間を要する作業が自動化され、従業員の負担が軽減されます。
その分、顧客サービスに集中できる時間が増えるので、顧客満足度の向上やリピーターの増加につながります。
【具体例】
・クラウドPOSシステム:リアルタイムでの売上データを処理し、在庫管理を自動化。従業員は顧客対応に専念できます。 ・AIチャットボット:顧客からの問い合わせに自動で応答し、従業員の負担を軽減します。 |
※店舗の省人化については、別途後述します。
2-2. 在庫管理の精度向上によるロス率低下
2つめのメリットは「在庫管理の精度向上によるロス率低下」です。
小売りにおけるDXの特徴的なポイントとして、在庫管理の精度向上があります。
滞留在庫や不良在庫は、キャッシュフローを圧迫し、経営を傾かせる原因となる重要課題です。
デジタル技術を駆使することで、過剰在庫や品切れによる損失を、最小限に抑えられます。
【具体例】
・RFIDタグ(電子タグ):商品の正確な位置と数量を把握し、在庫の最適化に貢献します。 ・ビッグデータ分析:購買データを分析し、需要予測の精度を高め、在庫の最適化を図ります。 ・AIによる在庫管理:需要予測を高い精度で行い、過剰在庫や品切れを防ぎます。 |
2-3. 店舗運営の省人化
3つめのメリットは「店舗運営の省人化」です。
小売りのDXは、店舗運営の省人化を促進します。自動化技術の導入により、人件費の削減にも寄与します。
顧客にとっても、セルフサービスによる迅速な対応が可能となり、ショッピング体験が向上します。
【具体例】
・セルフレジシステム:顧客が自ら商品をスキャンし、支払いを行うことで、レジ業務の人員を削減します。 ・在庫自動補充システム:在庫の減少を検知し、自動で補充を行うことで、補充業務の手間を省きます。 |
2-4. 顧客満足度の向上
4つめのメリットは「顧客満足度の向上」です。
DXは、顧客一人ひとりに合わせたサービスを提供し、顧客満足度の向上にも貢献します。
たとえば、パーソナライズされたレコメンドシステムは、顧客の好みに合った商品を提案し、ショッピング体験を豊かにします。
【具体例】
・購買履歴ベースのレコメンドシステム:顧客の過去の購入データを分析し、好みに合った商品を連動アプリなどで提案します。 ・顧客管理システム(CRM):顧客情報を一元管理し、個々のニーズに応じたマーケティングを展開します。 ・データ分析:顧客の行動パターンを分析し、パーソナライズされたマーケティング戦略を策定します。 |
2-5. 競争力の強化
5つめのメリットは「競争力の強化」です。
DXを通じて、スピーディな意思決定と市場への適応が可能になります。
たとえば、AIによる市場分析は、トレンドを先読みし、新しいビジネスチャンスをつかむのに役立ちます。
【具体例】
・AI市場分析ツール:市場の動向を分析し、迅速な意思決定を支援します。 ・デジタルマーケティング:オンラインでの顧客獲得を強化し、ブランドの認知度を高めます。 ・Eコマースプラットフォーム:オンラインでの販売チャネルを拡大し、新たな顧客層を開拓します。 |
3. 小売りにおけるDXのデメリット・課題
一方、DXを進めるうえでは、事前に把握しておきたいデメリットもあります。
以下で確認しておきましょう。
1. コストの問題 |
3-1. コストの問題
1つめのデメリットは「コストの問題」です。
小売りにおけるDXは、他業種に比較して、コスト負担が大きくなりやすい傾向にあります。その理由は、次のとおりです。
3-1-1. 複雑なサプライチェーンの管理
小売業は、製造から流通、販売に至るまでの複雑なサプライチェーンを管理する必要があります。
これには、多くの異なるシステムやサプライヤーとの連携が含まれます。
大規模なシステムとプロセスの再設計が必要となるケースが多く、結果としてコストがかさみます。
3-1-2. 実店舗とオンラインの統合
小売りにおいて、実店舗とオンラインストアの統合は、顧客体験を向上させるために不可欠な時代へと、突入しています。
異なる販売チャネル間での在庫管理や、価格設定の一貫性を保つためのシステム投資が必要となります。
3-1-3. セキュリティとプライバシーの確保
小売りの多くは、一般消費者を対象としています。顧客データの取り扱いには、厳格なセキュリティ対策とプライバシー保護が必要です。
高度なセキュリティシステムの導入と、法規制への適応が含まれ、これらは高額な投資を必要とします。
これらの投資はDXの成功を左右する重要な要素ですが、コスト負担の大きさが、企業のDX導入を躊躇させることは少なくありません。
長期的な視点でコスト効果を見極めて、賢明な投資判断をすることが求められます。
3-2. DX推進人材の不足
2つめのデメリットは「DX推進人材の不足」です。
DXを推進するためには、専門的な知識を持つ人材が不可欠です。DX推進人材と呼ばれます。
具体的には、DXを主導するリーダー(プロデューサー)やデータサイエンティスト、エンジニアなどが該当します。
しかし、これらの人材は他業種でも不足しており、獲得のための競争が激しい状況です。
【参考:DX推進人材は大幅に不足】
出典:独立行政法人情報処理推進機構デジタル人材センター「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(2018年度)サマリー版」
小売業界は、IT企業や金融など他業種と比較して、デジタルに強い人材が不足している傾向にあります。
そのひとつの理由として、小売業界が従来より人的サービスに重きを置き、デジタル化の波が遅れて到来したことが挙げられます。
【参考:業種別のDXの取り組み状況】
出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究(2021年3月)」
近年のDXの波においても、適切な人材を確保し、技術的なハードルを乗り越えることが、重要な課題といえるでしょう。
4. 小売DXの成功事例
続いて、小売業のDXに潜む課題を乗り越え、DXを成功させた事例をご紹介します。
4-1. 大丸松坂屋百貨店
1つめの事例は「大丸松坂屋百貨店」です。
大丸松坂屋百貨店は、2020年5月に澤田太郎氏が社長に就任して以降、その取り組みを強化してきました。
とくに注目したいのが、コロナ禍における対応です。
4-1-1. 抱えていた課題
コロナ禍にあって大丸松坂屋百貨店は、
〈自分たちのタッチポイントがリアル店舗しかない。 |
という危機意識を持っていました。
4-1-2. 実際に行われた取り組み
ここから、DX戦略によって巻き返しを図っていくのですが、主要な取り組みとして以下が挙げられます。
・コスメのECをメディアコマース化:総合ECサイトの中にあったコスメカテゴリと店舗販促の役割が主だったオウンドメディアを合体させ、情報発信と商品提案を同時に行う今日的なECサイトへ。 ・ARToVILLA(アートヴィラ)のローンチ:アートの新たな楽しみ方を提案していくオンラインメディアの立ち上げ。 ・明日見世(あすみせ)の開設:“売らないお店”でお客様に体験を提案し、気に入った商品があればQRコードを読み取り各ブランドのECサイトで購入できるシステム。 |
4-1-3. 成功のポイント
これらのプロジェクトを主導したのは、大丸松坂屋からヤフーに転職していた岡崎路易氏です。
“出戻り” という形でDX推進部専任部長に任命され、DXを戦略的に推進されました。
優秀なDX推進人材の存在と、そのリーダーを中心とした人選が成功のカギといえそうです。岡崎氏は、DX人材の確保について、以下のように述べています。
私たちは、プロジェクト運営に必要な要素・能力・人材の獲得は、共創型のコンサルサービスなどの外部人材を活用しています。例えば、一つのプロジェクトにおいて、企業の新規事業・DXを担ってきたような人、マーケティングに詳しい人、物流に詳しい人、システムに詳しい人を共創型のコンサルサービスにより人選、それ以外のメンバーを社内で3人くらい人選し、それをワンチームにする。新規事業を行う際、その領域のことを知らないから何もできないパターンは多いはず。その領域に進出するにあたり、必要なパーツをそれぞれ必要なタイミングで必要な期間だけ参画いただけるような方法を選んでいます。 |
外部人材も含めて適切なチームを編成することが、小売業におけるDXでは重要なことがわかります。
※本項は「百貨店の弱みを逆手にとったDX戦略で新たな市場の創出に成功」から抜粋・再構成しています。より詳しくは上記ページをご覧ください。
4-2. エブリイ
2つめの事例は「エブリイ」です。
エブリイは、福山市に本拠を置き、広島県・岡山県を中心に店舗展開を行うスーパーマーケットですが、「DX白書2023」にリストアップされている企業です。
4-2-1. 抱えていた課題
エブリイの店舗数は、計57店舗あります(出典:エブリイ 2023年11月現在)。
これらの店舗ごとに、地域によって異なる特性や顧客のニーズに応じて、戦略策定が必要であるという課題を抱えていました。
4-2-2. 実際に行われた取り組み
課題に対して選択された戦略は、
「POSレジデータ以外に、アプリ利用ログや顧客の行動ログなど、様々なデータを活用して、地域ごとのオリジナリティある戦略策定と実践のPDCAを加速する」
というものです。
エブリイのグループ会社がシステム開発・運用を担当して、2020年10月にはアプリリリースと動画配信チャンネル開設を実行しました。
アプリから得られる消費者の情報とさまざまなデータを掛け合わせて、地域ごとの顧客ニーズを把握し、各店舗が独自に仕入れを行うシステムを構築したのです。
4-2-3. 成功のポイント
成功のポイントとして挙げられているのは、次の2点です。
・データ分析を分析で終わらせず、各部門で経営戦略や施策につなげていること ・地域ごとの特性や顧客ニーズを把握し、 各店舗が独自性をもって仕入や販売戦略策定を工夫していること |
実際にエブリイは、右肩上がりの成長を続けており、DXの取り組みを成果につなげている好例といえるでしょう。
出典:エブリイ
5. 小売DX導入の実践ガイド 5ステップ
実際には、どのようなプロセスでDXを進めていけばよいのでしょうか。ここでは、次の5つのステップに分けて、流れをご紹介します。
1. 業務プロセスの整理と課題の明確化 |
5-1. 業務プロセスの整理と課題の明確化
1つめのステップは「業務プロセスの整理と課題の明確化」です。
小売業におけるDX導入の第一歩は、業務プロセスを洗い出し、課題を明確にすることです。
この段階での徹底した分析は、のちに起こり得る非効率を排除し、顧客体験の向上に直結する改善点を見出すために役立ちます。
【業務プロセス整理の手順】
・現状分析:業務の流れを詳細に観察し、データを収集します。 ・課題抽出:収集したデータから問題点を特定し、改善の余地を探ります。 ・優先順位付け:各課題に重要度を割り当て、対処の優先順位を決定します。 ・関係者との共有:チーム内で課題を共有し、多角的な視点で意見を集約します。 |
このプロセスを通じて、DXの目標や、優先的に取り組んでいく領域が明らかになります。
なお、どのような規模感・フェーズのDXに取り組んでいくかは、企業が置かれている状況や売上規模などによって、異なります。
参考までに、以下はDX事例の取り組み内容を売上高別に整理した俯瞰図です。
5-2. パートナー企業の選定
2つめのステップは「パートナー企業の選定」です。
1つめのステップを経て、どの領域のDXに着手すべきか見当がついてきたら、それを相談できる企業を探しましょう。
DXを成功に導くには、信頼できるパートナー企業との連携が不可欠です。
DX人材の充足方法としては、既存人材からの育成や採用による獲得がありますが、前述のとおり、小売業では、DX人材の確保が課題となっています。
外部企業との連携なしには、実現が難しい現実があります。実際、日本でも米国でも、多くの企業が社外の専門家や企業との契約によって、DX人材を確保しています。
出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」より作成
ただし、注意したいのが「パートナー企業の選び方に失敗すると、DX自体がうまくいかない」という点です。
失敗しない判断基準として、最も重要なのは、“自社でシステムの企画から運用まで実施しているか否か” です。
DXにまつわるシステムは、リリース後の運用こそ本番です。運用を見据えた提案ができるパートナー企業を選ぶことを、何よりも大切にしてください。
そのうえで、以下のポイントを確認しましょう。
【パートナー選定のポイント】
・実績の確認:過去の実績を調査し、信頼性を見極めます。 ・技術力の評価:提供される技術の先進性と信頼性を検証します。 ・サポート体制:充実したサポートが提供されるかを確認します。 ・価格とのバランス:コストパフォーマンスを考慮し、予算内で最適な選択を目指します。 |
具体的なパートナー企業の選択肢については、以下の記事にて解説しています。あわせてご覧ください。
・【プロ厳選】本当におすすめできるシステム開発会社5選とその選び方を紹介! |
5-3. ボトルネックの発見と改善案の検討
3つめのステップは「ボトルネックの発見と改善案の検討」です。
ここからのステップは、2つめのステップで選定したパートナー企業とともに、進めていきます。
1つめのステップでは、課題の明確化を行いました。より詳細に、ボトルネックがどこなのか突きとめ、具体的な改善案を検討していきましょう。
【ボトルネック改善のアプローチ】
・プロセスマッピング:業務フローを視覚化し、問題点を特定します。 ・原因分析:問題の根本原因を深掘りし、理解を深めます。 ・改善策の提案:根本原因に対応する具体的な改善策を立案します。 ・試行錯誤:提案された改善策を実施し、その効果を検証します。 |
上記の改善策の提案については、契約前に複数の候補企業から、見積書・提案書・プレゼンテーションを提供してもらい、比較検討するのも良い方法です。
5-4. 推進プロセスの策定
4つめのステップは「推進プロセスの策定」です。
取り組み領域と改善策が明らかになったら、それを実行に移す計画を策定します。
出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」より作成
目標を達成するためには、具体的な行動計画が不可欠です。この計画は、目標に向かって進むための道しるべとなります。
【実行計画策定のステップ】
・目標設定:明確な目標と、それを測定するためのKPIを設定します。 ・リソース配分:プロジェクトの成功に必要なリソースを、適切に割り当てます。 ・タイムライン作成:各活動がいつ行われるべきか、時系列に沿って計画します。 ・リスク管理:予見可能なリスクを特定し、それに対する対策を準備します。 |
なお、KPIの設定については、「顧客への価値提供の実現」を指標として成果評価することが重要です。
参考までに、以下はDXのKPIの種類と評価頻度を日本と米国で比較した図です。
米国は、
・アプリのアクティブユーザ数
・顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)への影響
・消費者の行動分析
など顧客向けの取り組みについて、「毎週」「毎月」評価している割合が約5割あります。自社のKPI設定時の目安として、参考になるでしょう。
5-5. DXの推進
5つめのステップは「DXの推進」です。
計画が立てられたら、DXの推進に移ります。計画の進捗を定期的にチェックし、必要に応じて柔軟に計画を調整することが成功の鍵です。
【DX推進の要点】
・進捗管理:計画に沿ってプロジェクトが進行しているかを監視します。 ・問題対応:発生した問題に対して迅速に対応します。 ・成果の評価:定期的に成果を評価し、必要に応じて改善策を講じます。 ・継続的な改善:DXは一度きりのプロジェクトではなく、継続的な取り組みです。 |
なお、DXを推進していくうえで直面しやすい課題については、「DX推進を阻む3つの課題とは? 解決のポイントも合わせて解説」の記事で、詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
6. 小売りでDXに取り組む際の留意点
最後に、小売りでDXに取り組む際の留意点をお伝えします。
1. パートナー企業の選定を慎重に行う 2. セキュリティとプライバシーを軽視しない 3. 長期的な視点で取り組み諦めない |
6-1. パートナー企業の選定を慎重に行う
1つめは「パートナー企業の選定を慎重に行う」ことです。
繰り返しになりますが、パートナー企業の選び方によって、DXの成否や得られる成果のレベルが変わってしまいます。
「DX白書2023」でも、
〈予算・人材・ノウハウの確保など、自社単独では解決が難しい課題において、外部の企業・団体との協働は有効な手段である〉
と指摘されています。
ITベンダー(情報通信事業者)や取引先、グループ会社など、DXに成功している企業は、協働先との連携に成功しています。
【参考:他企業・団体協働類型別俯瞰図】
弊社デザインワン・ジャパンでは、DX推進プロセスを提供しています。
事業開発ディレクター、コンサルタント、デザイナー、開発エンジニアなど、 各分野のスペシャリストが、ビジネスパートナーとして、事業構築から運用までを継続的に⽀援します。
詳しくは「システム開発・アプリ開発・DX推進を支援するデザインワンジャパン」のページより、ご確認ください。
6-2. セキュリティとプライバシーを軽視しない
2つめは「セキュリティとプライバシーを軽視しない」ことです。
DX推進において、顧客データのセキュリティとプライバシーの保護は、企業の信頼性を左右する重要な要素です。
ここをおろそかにすると、取り返しのつかないダメージを負いかねません。
個々の従業員の常識や価値観に依存せず、企業主導で教育を行い、組織内の意識を均一化することが大切です。
【取り組みの例】
・セキュリティポリシーの策定:従業員が遵守すべき明確なセキュリティポリシーを設けます。 ・教育とトレーニング:従業員がセキュリティリスクを理解し、適切に対応できるように定期的な教育とトレーニングを実施します。 ・技術的な対策:データの暗号化やアクセス制御など、先進的な技術を駆使してセキュリティを強化します。 |
6-3. 長期的な視点で取り組み諦めない
3つめは「長期的な視点で取り組み、諦めない」ことです。
2018年のDX推進人材に関する調査レポートでは、DX成功の原則として、次の2つが挙げられています。
出典:独立行政法人情報処理推進機構デジタル人材センター「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査(2018年度)サマリー版」
DXは単なる技術導入ではなく、人材と組織文化の変革も伴うプロセスです。従業員一人ひとりのスキル向上と、変革を受け入れる組織文化の醸成が求められます。
近視眼的な視点に陥ることなく、長期的な視点で持続可能な成長を目指すことが、DXを成功に導く重要なステップといえるでしょう。
7. まとめ
本記事では「小売りにおけるDX」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
小売りにおけるDXのメリットとしては、以下が挙げられます。
1. 業務の効率化 2. 在庫管理の精度向上によるロス率低下 3. 店舗運営の省人化 4. 顧客満足度の向上 5. 競争力の強化 |
一方、課題として念頭に置きたいのが次の点です。
1. コストの問題 2. DX推進人材の不足 |
小売DX導入の流れを5ステップでご紹介しました。
1. 業務プロセスの整理と課題の明確化 2. パートナー企業の選定 3. ボトルネックの発見と改善案の検討 4. 推進プロセスの策定 5. DXの推進 |
小売りでDXに取り組む際には、以下にご留意ください。
1. パートナー企業の選定を慎重に行う 2. セキュリティとプライバシーを軽視しない 3. 長期的な視点で取り組み諦めない |
小売りにおけるDXは、企業の未来を切り開く鍵となります。
しかし、その推進には、適切なパートナー選定、セキュリティとプライバシーの確保、従業員のスキルアップや組織文化の変革が必要となります。
これらの要素に注意を払いながら、企業価値を高め、顧客体験を向上させるDXを実現していただければと思います。