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インタビューインタビュー

天狗だった営業マンがしくじりから改心。「現場目線」のセールステックで市場を創造

天狗だった営業マンがしくじりから改心。「現場目線」のセールステックで市場を創造
“営業の土台を創る”ため創業した株式会社Mer(メル)代表取締役の澤口友彰さん。かつて自身がメンバー育成に興味がないトップ営業マンだった際、クレーム対応時に周囲の人に支えられた経験から、より多くの人が自身の可能性を最大限引き出すことができる土台作りの一助を担おうと決意。現在、3つのプロダクトを中心に展開しています。「デジタルを2割も使いこなせてないのでは」という日本企業や営業マンたちが営業のデジタル化で何をすべきか。お話をお聞きました。

目次

株式会社Mer
代表取締役
澤口友彰氏

2014年から約6年間、都内ベンチャー企業にて勤務し、同社執行役員に就任。事業者向けに経費の削減や業務の効率化の支援を行う。2019年より関連会社へ転籍。ビジネスサイドの立ち上げを行う。2020年2月株式会社Merを創業。CRMプラットフォームPipedrive(パイプドライブ)日本唯一のマスターパートナーに。Salestech(セールステック)とNocode(ノーコード)を活用し営業業務の効率化・自動化・最大を支援。夢は自宅にサウナを設置すること。


世界最大の電子国家・エストニアでDXへの関心が加速

株式会社Merの事業について教えてください。

澤口 CRM(顧客関係管理)プラットフォームのPipedrive(パイプドライブ)の日本展開、次世代型顧客情報プラットフォームのLeadPool(リードプール)、SaaSの選定・設計・自動化構築までを行い運用が定着しやすい最適なワークフローを構築・提供するdiver(ダイバー)と、3つの事業を行っています。


Pipedriveの日本展開の経緯をお聞かせください。

澤口 前職がエストニアに拠点がある会社で、実際に僕も行かせてもらうことがあったんですね。そこでエストニア発の顧客管理システムプロダクトPipedriveの存在を知りました。エストニアは世界最先端の電子国家。区役所に行ってやらなきゃいけないようなことは3つだけで、結婚・離婚・不動産登記の手続きくらいなんですよ。それ以外はオンラインでできる。DX化された国を目の当たりにして、関心が高まった体験があります。


そういった経験もありエストニアのプロダクトを日本でローカライズしているんですね。

澤口 そうですね。もう一つの背景としては、僕自身がファーストキャリアから営業マンで、事業部長として管理する立場になったときに営業組織をどう仕組みを持って生産性を上げていくか、どうテクノロジーを使って効率化ができるかにすごく焦点を当ててやってきたんです。その中でPipedriveは、僕が知るCRMプラットフォームで最も使いやすいと思いました。現場の営業マンがいかに使いやすいか。その目線を大事に作り上げられたプロダクトだと思います。


LeadPoolはどのようなプロダクトですか?

澤口 500万社以上の企業情報と300万人以上のキーパーソン情報を有しているようなプロダクトです。なんという会社のなんという事業部のなんという役職のなんという方がいて、どんなSNSを使っていて、こういう社内のつながりがあるか。その状況がわかるようなプラットフォームになっています。海外ではSNSを活用した、特にLinkedIn(リンクトイン)を中心とした活動が増えているんですよね。

例えば、商談前に事業軸の情報だけではなく、商談相手の人物の情報を確認してから商談するケースも多いんですよ。僕もそういう世界観を目指し、プロダクトを作っています。LeadPoolはセールスインテリジェンスプラットフォームと呼ばれるカテゴリーのサービスなんですが、データの調査や整理、キーパーソンへのダイレクトな1to1アプローチが可能です。


まずは“習うより慣れろ”。DXの環境に身を置くことが大切

営業マンとして働いていた当時から感じていた、組織の課題や問題点はありますか?

澤口 僕自身は調べたからたまたま知りましたが、日本の営業組織は国内外のテクノロジーをあまり知らない人・使った経験が少ない人が多い印象です。背景のひとつとして、なかなか予算が取りづらいといったこともあるかと思います。例えば顧客管理だったらスプレッドシートを使えばいいんじゃない?といった感じで承認を頂けないといった具合ですね。そうするとテクノロジーに触れる機会が損失し、リテラシーは育たない。経営的な観点からも中長期的な生産性の損失に繋がってしまうと思います。テクノロジーを活用する際に、もちろん”コスパ”は大事だと思います。なので導入検討するツールが、”コスパが合わない”と感じられてしまうことが多いのかなと。ただ海外を見渡すと、無料から始めることが出来て月額数千円でこんなにできるの?ってサービスがいっぱいあるんです。日本の同様のサービスの場合、月額数十万円掛かってしまうケースもあるので、視野をグローバルに広げると、実はすごく安く、且つ効果的なツールはたくさんあることがわかりました。

例えばマーケティングオートメーション(MAツール)がありますよね。MAツールを使うなら連絡先を1万件以上保有してからじゃないと、あまり効果が出ない。費用効果が合わないと言われることも多いかと思います。ただそれは月額数十万円かかるMAツールを使う場合の話。これが月額数千円で利用できるなら、連絡先の数が1万件なくたって”コスパ”は合いやすいです。何より実務者のITリテラシーやビジネススキルの向上にも繋がる訳ですから、規模が拡大してから学ぶより、レバレッジが効いてきます。


中小企業が積極的にプロダクトを使っていくには、企業のマネージメント層にプロダクトを選定する能力も必要ですよね。御社はどういった形で導入まで進めているのでしょうか?

澤口 我々がご提案をさせていただく際に、もちろん意思決定層の方が皆様ITサービスに明るい訳ではありません。一方で我々はお客様が行われてる業務のプロフェッショナルではないケースがほとんどなので、ツールベンダーでありながらも、それにとらわれず最適解をご一緒に模索していくスタイルを大切にしています。僕らはdiverという事業の中で、お客様とご一緒に業務フローの棚卸しからツールを活用する場合のフローに再設計し、その上で最適なツールを選定してきます。その際に大事なのは、そのツールを実際に活用できるかどうか。つまり現場の方にとって使いやすい、仕事がしやすい環境に出来ているか?を自分たちが何も知らない新人だと想定して構築していきます。“習うようり慣れろ”を体現頂けるくらいベストな環境を構築していきます。その環境の中に身をおいてもらうことが、マネジメント層の方にとっても、実務を行われる方にとってものが大事かなと思っています。



企業のニーズや課題は様々だと思いますが、どのような分野・業界からのニーズが多いでしょうか?

澤口 やはりIT業界が一番多いのですが、それ以外だと人材業界のお客様は多いですね。人材業界が難しいのは、対クライアントのデータもあれば、対クライアントの中の担当者様のデータ、自社で保有している求職者のデータもある。さらに企業に対して求人案件も存在してくる。結構、複雑なんですよね。その整理が大変な企業さんが多いのですが、我々の中でベストプラクティスができているかなと思っています。


提案した企業とツールが上手くマッチするのが理想ですが、アンマッチングになる要因は何が考えられますか?

澤口 アンマッチングになるという状態を運用定着がうまくいかなかったと定義するのであれば、要因として大きく2つかと思っています。1つは設計段階の見積もりの甘さ、もう一つは環境構築後の落とし込み、フォローアップの甘さです。もちろんそうならないよう我々もベストを尽くしますが、一方でそうなってしまった場合でもリカバーさせて頂けるようなコミュニケーションを日頃から取ることを意識しています。現場の方が喜んで頂ければ、より興味を持ってもらえるし、もっとこうしたいという前向きな意見をもらえる。その循環がどんどん成功に向かっていくと思います。


DX人材に必要なのは、興味を持ったものは試してみるミーハー精神

コロナ禍を経て営業もより一層デジタル化が進んできたとは思います。澤口社長から見て、活用の面で日本のセールス市場はどのくらい進んでいるでしょうか?

澤口 使いこなしているという観点でいえば、2割もないんじゃないかなと。我々もグローバルで毎週会議をしていますが「日本は特殊だね」と言われます。海外では無料トライアルから導入に至るまでの商談回数も日本より少ない印象です。また導入後も手厚いオンボーディングがなくとも、チャットやナレッジベースで解決することが多いようです。日本の場合、そうはいかないですよね。商談を3回程度させてもらって、そこから契約に到る。また契約後は手厚いオンボーディングが必要なケースも多いと思います。

現状のフェーズとしては、手厚いオンボーディングを行いながらセールス市場のおけるデジタル化、利活用の定着を促し、より市場を盛り上げる時なんじゃないかと考えています。


今後、日本も商談をせずに、トライアルだけで導入するようになるのか。どうご覧になっていますか?

澤口 英語圏の方はみんな英語で検索するので、日本語を母語とする我々とは得られる情報の量も質も全然違います。一方でテクノロジーの発達や、各企業の努力によって、今後英語が話せなくても、そういった情報にアクセスしやすくなってくると思いますので、そのようなフローで進んでいく日がいつかは来るとは思います。


これからのDX人材に必要なことをお聞かせください。

澤口 ミーハーであること。興味を持ってやってみないことには何事もわからないと思うんですよね。弊社のメンバーにも「興味持ったものはやってみよう」と話してます。実際に使ってみたらわかることもありますし、ちょっと自分たちの領域と外れたことであっても、興味を持てるかが大事かなと思っています。


澤口さん自身は、どのようにメディアに触れ情報収集をしているのでしょうか?

澤口 海外の特定のSNSユーザーの投稿を追ったり、グローバル版のITreviewのような比較サイトなどを見るようにしていますね。


いろいろな知識がないと“面白そう”というアンテナも反応しない。仮に目の前に面白いことがあっても見逃してしまいますよね。現在の情報収集をするようになったきっかけはあったのでしょうか。

澤口 前職でトップ営業だった時に、はじめて自分の組織を持ったんですけど、“俺のやり方が全てだ! なんで言った通りできないんだ!”と天狗状態だったんです。それが上手く回らなかったとき、まずみんながやるべきことがやれる環境を整えないといけないと思いました。やりづらい環境では、やるべきこともやりたいことも出来ないですよね。そこで初めて環境を作るための情報を収集し始めたんです。弊社の“営業組織の土台を作る”という考えにもつながっているんですが、その体験がきっかけかな?と思います。


成績も出てれば天狗になる気持ちはわかるように思います。そんな自分に気付けたのはなぜだったのでしょうか?

澤口 きっかけは、あるとき自分のミスで顧客から大クレームがきてしまったこと。自分のやり方を押し付けて仕事していたにも関わらず、この状況を何とかしようとチームのみんなが必死に取り組んでくれたんです。

それまで、自分の成績は全部自分の頑張りによるものと思っていたんですね。けどそうじゃなかった。自分の成績はみんなに支えられた上で成り立っていたものだったんだと、このとき初めて気付けました。そこから、僕がチームのためにできることであればやりたい。そう思いましたね。もちろん、自分のやるべきことをやったら結果が出るというのは、変わらず根底にあります。その環境作りを自分だけのためではなく、他の人のためにしていきたいですね。


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