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インタビューインタビュー

お祝い事で日本の未来を明るくするミッションのTAIAN ブライダル業界変革を血の通ったDXで全力支援

お祝い事で日本の未来を明るくするミッションのTAIAN ブライダル業界変革を血の通ったDXで全力支援
自身の結婚式の経験でブライダル業界に興味を持った村田磨理子氏。デジタルの力で“お祝い”を支援していこうと株式会社TAIANを起業しました。“終わりよければすべてよし”ではなく、結婚式の準備から結婚式当日、そして結婚式後までお客様に寄り添う。プランナーも本来の能力が解放される。デジタルの力を借りれば、それが可能ということを証明していく。村田氏が手掛ける結婚式業界変革への熱い思いをお聞きしました。

目次

株式会社TAIAN
代表取締役
村田磨理子氏

神戸大学国際文化学部卒業。2014年から新卒でリクルートスタッフィングに入社し、エンジニア領域の営業、新規事業企画、募集企画・BtoCマーケティングの3部署を経験する。2018年から株式会社ギブリーへ転職。カスタマーサクセスやリニューアルセールスの立ち上げに携わる。自身の結婚式の経験を機にブライダル業界に魅力と可能性を感じ、2020年6月株式会社TAIAN(旧社名:株式会社Concept Marry)創業。


プランナーは案内人ではなく「人生のプランニング」をしていく存在に

御社が展開する「Oiwaii(オイワイー)」について教えてください。

村田 “お祝いから日本を盛り上げる”ことをモットーに「Oiwaii Marketing」、「Oiwaii Produce」、「Oiwaii Anniversary」という3つのアプリを展開しています。

中でもメインプロダクトに置いているのが、結婚式の準備段階で使用して頂く「Oiwaii Produce」。Web招待状、引き出物選択・発注、結婚式までのスケジュール・新郎新婦の宿題管理などをオンラインで一括管理できるもの。これは業界初のプラットフォームです。管理が煩雑になっていたものがまとまったことで、お客様だけでなくプランナーの負担も軽減されました。結婚式の準備期間は半年から1年ほどですが、プランナーは発注代行者のような位置付けになってしまっていることも少なくない。業務量が多すぎて、本来やるべきプランニング業務ができてないんですね。彼等のポテンシャルを解放しなければと思っています。


プランナーが発注から管理までするとは、業務が属人化しているんですね。

村田 半年から1年の莫大なおもてなし情報が、プランナーの頭の中だけに集約されている。どこにもデータとして統合されていないのは、非常にもったいない。そのデータをしっかりつなぐことで、データ活用する地盤を作っています。

また、フェーズ管理ができている式場もありますが、ヒアリングをしているとできていないところがほとんどのようです。社長も接客業務を行わないと回らないくらい人手不足で業務過多な現場もあるなど、業界の課題は山積みです。例えば、引き出物でいうとアイテム数としては約3000点もある。でも、本当に心からオススメできるものがどれだけあるかというと、自分が知っているものに限られてしまったり、そもそも“オススメ”という業務自体ができていなかったりする。アプリで補佐的なことができたらと思っています。


招待客である私たちでさえも、引き出物のパンフレットだけを見てアイテムを決めるのは決め手に欠けていました。

村田 そうですよね。お皿が欲しいと思っても、値段はわからないし、大きさなどのスペックしか書かれていない。そこで、アプリでは“プランナーのオススメ”として、プランナーが実際に触ってみた感触や、使ってみた感想などが伝わるように情報を掲載しています。ECサイト上でできることは、対面での打ち合わせ時にわざわざ時間を取ってもらうのではなく、お客様にご自宅でやってきてもらう。単なるご案内に終始していたプランナーが“お客様が結婚式をきっかけに二人人生をどうしていきたいか”、という本当の意味でのプラニングができるようにしていきたいです。


結婚式業界の型を取っ払い、幸せになるデジタルを取り入れる

業界的に、例えばマーケティングツールのようなものは活用されているのでしょうか?

村田 業界のトップランナーだとマーケティングやDXを推進する部門を作られていますが、それらの意義をわかった上で取り組まれている式場はかなり少ないです。自社ホームページにLINE BOTや資料請求など問い合わせ窓口を設けている企業さんもいらっしゃいますが、間口を広げてしまったが故にあちこちに対応しなくてはならず、かえって業務が煩雑になってしまったり、お客様への真摯な対応ができなくなってしまっている例も多数見てきました。例えばLINEでの問い合わせ窓口を設けた場合、お客様は問い合わせをすれば即レスしてもらえると思うはず。それが2日経っても返信が来なければ逆効果ですよね。


よかれと思ってしたことが裏目に出てしまっているパターンですね。

村田 そうなんですよね。結婚式業界で従事されている方々にヒアリングするたびに感じるのですが、結婚式業界には、心からお客様の幸せを願うエモーショナルで素敵な方々が本当に多くいらっしゃいます。一部の方はマーケティングなどの専門スキルを独学で身につけ、業界の中では有名人になられているケースはありますが、本来的にはことITマーケティングとなると、詳しいというわけではない。手探りで頑張るケースが多いので、機会損失が見受けられます。

「Oiwaii」事業がスタートして1年半弱。元々Web招待状のサービスから始まった弊社ですが、現在はITの力によってお祝い文化を継承したいという強い想いに変わってきました。結婚式場の皆様とお話していくうちに、大切にしていかなければならないお祝いや結婚の文化がそこには存在していることを私たちは教えてもらいました。例えば、歴史ある会場がなぜ結婚式場としての側面を持つようになったのかなど、知られざるエモい話などもあるんですよ(笑)。そしてそこには式場に従事する方たちの熱い想いが必ずある。そういう“想い”を知らないまま、私たちは「システム運用はこうした方がいいんじゃないですか?」「データをちゃんと取りましょうよ」などと提案していた時代もありました。でも、この業界の大切な想いを無視した小手先だけのテクニックではダメなんだということに、今は気付きました。


システム導入にとどまらないコンサルティング業務を行っている感じですよね。

村田 結婚式場ごとにニーズもそれぞれですからね。ただ、一貫して“結婚式という体験を、よりよいものにしていきたい”というのは根底にあります。お客様のテンションが最初に上がるのが、式場見学。ただ、その後の準備段階でモチベーションが下がってしまうケースが多い。それは、煩雑な準備作業が、結婚式準備という本来わくわくするべきものを、あまりにも業務っぽくしすぎてしまってきた。これはカップルだけでなくプランナーに対してもです。なので、私たちは「Oiwaii」というサービスの提供に閉じずに、“打ち合わせはどうあるべきか?”という顧客満足度の設計や、“プランナーが本来のプランニング業務に時間を使えるようにはどの業務を「やめる」べきか?”を徹底的に結婚式場の経営者・現場の方々と対話し、カップルにもヒアリングをした上であるべき未来像を提案していく。そんなことをやっています。


カップルが一番ケンカになりやすい部分でもありますね(笑)。

村田 以前、挙式済みのカップルに調査しデータを取ったんですね。そのなかで「式の打ち合わせや準備について何か不満だったことはありましたか?」という質問に「あった」と答えた人が非常に多かったんです。一般的に車など高額商材は満足度が高い傾向にあるなかで、なんとも悲しい結果が出てきました。よく式場の口コミを目にすることがあると思いますが、基本的には式場側からお願いされて書くことがほとんど。私自身、挙式後に「口コミ書いてくれたらクオカードプレゼントします!」と明るく言われ、“悪いこと書けないな”と思った経験も……。だから、平均満足度は4〜4.5と高い数字を維持できている部分はあると思います。


現場の業務をヒアリングする中で実感していることなのですが、基本的にプランナーさん達は本当に良い方たちで、挙式に向けて頑張ってくれているので、よほどのことがないとクレームも入らないのも事実です。お客様も準備段階でなにか不満があったとしても、“当日楽しかったから、まぁいいや”と思うもの。ただ、この“まぁいいや”と飲み込んでいる部分が、結婚式をしない、いわゆる“ナシ婚”を生んでいる原因なのかなと。結婚式未経験の方が、経験者から「結婚式、大変だったけど楽しかったよ」と伝えられる場合と、「結婚式、準備段階から本当に楽しかったよ」と伝えられるのでは、意思決定は変わってくると思っています。


業界の問題に挙式後のカップルたちも知らぬ間に加担してしまっている構図でしょうか。

村田 世の中的には働き方改革と言われる中で、式場のプランナーたちは「打ち合わせは対面で回数が多いほうがいい」「1回の打ち合わせは2〜3時間を掛けたほうがいい」と本気で思っているケースが多い。その方が、より丁寧な対応だと感じてもらえると考えてのことでしょう。実際に、そのように教育されているのだと思います。ただ、オンラインでの打ち合わせという選択肢が当たり前になった現在において、お客様はそれを求めていないケースも多い。時短を求めるユーザーとプランナーとの間ですごく乖離がある部分です。


プランナーの方々は期待値を調整するのが最大の仕事になり、エモーショナルな提案ができていない。

村田 型ができてしまっているんですよね。ほとんどの式場が5回ほど打ち合わせするのが決まっていて、ひたすらご案内。お客様から「今度の打ち合わせ、どれくらい時間かかりますか?」と聞かれれば「2〜3時間くらいですかね」と答える。だけどお客様が自宅でしっかり準備してきてくれると、打ち合わせは1時間ちょっとで終わってしまった。1時間で済むなら、お客様は他の予定を入れられたかもしれませんし、その後お二人でデートをしてより仲を深めることができたかもしれませんよね。プランナーも、その分、本来やるべき“結婚式という特別な日を迎えるプロセスのプランニング”の業務に時間を割くことができるわけです。


そういった課題をDXを通じて取り組まれているのがTAIANのサービスです。

村田 我々のDXの先には“ナシ婚の原因を解消する”というのがあります。全員がスマートフォンを持っているこの時代に、現在の結婚式業界が行っている業務フローはマッチしていない。DXを用いることによって、お祝い文化を継承していきたい。これこそが、私たちの思いです。


歴史のある業界ほど、DXやITと聞くだけで拒否反応を起こす方もいらっしゃるかと思います。

村田 確かにそれはあります。ただ「みなさんLINE使えていますよね? それならうちのアプリも使えますよ」と話をさせてもらうんですね。もし拒否反応が出るなら「それは今までのシステムとのめぐりあわせが悪かったのかもしれません」とも話します(笑)。私自身、元々足で稼ぐ営業からキャリアをスタートして、途中からマーケティングや採用マーケティングの部署に移動。当初はエクセルも入力しかできなかったくらいですから。あとは、お客様の幸せに対して非常に熱い思いを持っている方たちなので、どういう思いで作ったかというハートの部分で共感してもらえると、なんとか使いこなそうと思ってもらえるのがこの仕事をやっていて嬉しいところの一つです。


「Oiwaii」ではユーザーがテンションの上がるような仕掛けもあるのでしょうか?

村田 結婚式場のロゴが入ったり式場によりカラーが異なったりします。結婚式準備が進んでいくと、決まったドレスやお花、会場装飾のイメージ、ペーパーアイテムなどが、1枚のプランニングシートに反映されていく。“この式場は、私たちだけの挙式準備をしている”という感覚を養ってもらえるんですよね。スマホで即時に見積もりも確認できるし、決まったアイテムがビジュアルで見られるのはテンションも上がる。同時に、プランナーの業務改善も行われています。


エンジニア×エモーショナルな結婚式業界が無限の可能性を生む

業界的な見通しとして、人口が減少していくと考えると厳しい部分があるかと思いますが、周辺の企業はどう考えているのでしょうか?

村田 少子化で人が減ってきている中で、生涯顧客化に対する取り組みをすべきなのは確か。しかし、ホテルなどの式場では1年後のアニバーサリーにホテルやレストランの予約券を郵送しているものの、どれくらい効果があったか全く計測できていない。そこを見える化したいニーズは、非常にありますよね。結婚式のように1日で何百万円使われないにしても、子供が生まれてお宮参りに、成人のお祝いに……式を挙げた方のライフプランに必ずつながっていくもの。お客様にも帰属意識の醸成はできていますからね。生涯顧客化は業界としての課題です。


挙式後にも顧客としてナーチャリングすることや、ロードマップ的なものがあるのでしょうか?

村田 生涯顧客化のプラットフォームや仕組みづくりを現在仕掛けている段階ですね。例えば、生命保険からの提携の話もあります。私としては産前産後支援系や出張フォトサービスなどのご紹介なども関心があります。昨年7月に初めて出産して見えてきたものもあったので、そういった部分で何か一緒にできそうな事業者さんと話し合ってもいますね。


村田さんご自身も2022年にご出産を経験されました。家族が増えた“お祝いで感じたものはありますか?

村田 私は自分の家族とのコミュニケーションが、あまり上手くできていなかったんです。距離を縮めてくれたのが我が子でした。今では心から可愛がってくれる両親に感謝するように。これは今までになかったコミュニケーション。関係性は本当に変わりました。私にとって、子どもができたことの思いもよらぬ副産物でした。こうした家族や周りの人との関係の良い変化は、お祝いが起点になると実感しています。


村田さんの今後の夢をお聞かせください。

村田 大企業で働く=会社の名前で仕事する部分があると思いますが、私は人間として戦いにいく仕事をしたいし、今の仲間にもそうなって欲しい。ベンチャーに転職したとき、そういう思いで働く仲間に恵まれました。社員がみんなめちゃくちゃ勉強していたんですよね。飲み会では「今日の商談もっとこうできたよね」などと本気で仕事の話をしている。下世話な話なんて一切なくて、雷に打たれたような衝撃がありました(笑)。

個人的に興味がある社会問題は、少子化問題。この問題を解決できたら、日本はまた再興できると思っています。少子化問題は暗い話題と紐付けされがちですが、結婚式という明るい話題と紐づけて取り組んでいきたい。それが私のミッションだと思っています。



最後に、村田さんの情報収集の方法や意識していることを教えてください。

村田 二つあり、一つ目は、自分が好きなニュースメディアのコメント欄を見ること。目を背けたくなるようなイヤなコメントもいっぱいありますが、世の中の人はどういった部分にヘイトが溜まっているのだろうという視点でチェックしています。

二つ目は、お客様とさらにそのお客様の声を聞くこと。お客様の声だけ聞いていても、情報の非対称性があると思っていて。ほかにもプランナーや経営者や式場との提携業者の方など、業界に関わるいろいろな方にじっくりお話を聞いています。その際は、エンジニアも同席。一緒に走りながら仕事をしていきたいからです。これまで業界にある問題がITで解決できなかった理由は、顧客のフロントに立つ役割の人と、技術畑のエンジニアとが、お互いの強みや役割や立場を超えてすり合わせることをしてこなかったからだと思うんですよね。本来は、業種が違う人たちの力を掛け合わせたら、素晴らしいものができるはず。私の強みでありやっていきたいのは、エンジニアとエモーショナルな結婚式業界の人たちをつなげること。私がいる価値は、そこにあると思っています。



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