インタビューインタビュー

困ったときの駆け込み寺、IT業界の「ドラえもんのような存在」に

困ったときの駆け込み寺、IT業界の「ドラえもんのような存在」に
DX化が叫ばれる昨今。“ウェブを使って何かしなくては”とは、業種業態問わずどんな企業でも思うこと。ただ何から始めたらいいのかが、わからない企業も多いのが現状です。そんな要件が定まっていない時でも親身に相談に応じてくれるのが株式会社イー・ネットワークス。代表を務める柚木久生さんは、根っからのプログラミング好き。“好きこそものの上手なれ”を体現し、プログラミング技術を向上させてきました。利益以上にお客様のために。その思いをお聞きしました。

目次

株式会社イー・ネットワークス
代表取締役
柚木久生氏

8歳の頃から趣味でプログラミングを始める。1999年、大学院在学中に兄と2人でワールドワイドシステム(現・株式会World Wide System)を起業。ウェブコンテンツに関わる事業を展開する。国内のみならず、インドネシアやベトナムなど拠点を世界に展開。専務 兼プログラマーとして業務を行う。2010年同社を退職し、株式会社イー・ネットワークス入社。同年に代表取締役就任。4児の父親としての顔も持つ。


提案力で、お客様と一緒にコンテンツを作り上げていけることが他社との差別化

株式会社イー・ネットワークスの事業について教えてください。

柚木 「ウェブ制作・開発」「サーバーの構築・運用代行」「クラウドサービス」が主な事業内容です。

“弊社にはこのパッケージがあるので、これを導入してください”という売り方はしていないんですよね。「ウェブ」というとインターネットに公開されているサービスを想像されると思いますが、ウェブの技術、すなわちウェブブラウザ上で表現可能なサービス・コンテンツでお客様のご要望にマッチする仕組みをご提供できるのであれば、インターネットに公開するしないを問わず、便利な仕組みを積極的に提案しています。

地元の岡山では、ウェブコンテンツ制作はもちろんですが、各社向けの独自の業務管理システムや既存のシステム間を連携するためのミドルウェアも作っています。例えば駅に設置した時刻表のデジタルサイネージでは、GPSの情報と連携して遅延情報も反映させる仕組みを作ったりしましたね。

一般的に、システムに強い企業は、デザイン面や使い勝手の話をするとすごく面倒くさがります。逆にデザインが強い企業は、いわゆるウェブサイトや簡単なCMSなどはつくれてもGPSなどのウェブコンテンツ以外の話が絡んでくると聞く耳を持たなくなる。弊社はこのどちらの部分にも対応しているので、幅広いコンテンツの制作が可能です。


ディレクションが強みということでしょうか?

柚木 ディレクションというより作業イメージを汲み取った上での「提案」が強みだと思います。

ウェブコンテンツ全般を制作する上で、要件定義、設計は非常に大切な工程で、基本的には設計に従って制作はしますが、状況によっては要件・設計にこだわり過ぎて逆に運用・業務を難しくしているケースがあります。

そういったケースでは、より効率よく使えるコンテンツをお客様に提案するために、モックアップ(模型)を提出し、早い段階でお客様とイメージの共有をビジュアルベースで実際に動作まで見ながら行うこともあります。

まず“こんな感じでどうですか”というものを軽く見てもらってから、アドバイスしながら掘り下げていく。その上で“こうしてほしい”という次の手をお客様からいただきます。


お客様の意見を聞き、いち早く動き、意見を出し合いながらいいものをつくられているんですね。お客様はどのような方が多いのでしょうか?

柚木 広告代理店さんをはじめ、印刷会社やデザイン会社、中小企業のシステム部門が多いです。たまに大学の研究機関からの問い合わせも入ってきます。最近だとデザイン会社からの依頼も増えていますね。「デザインは自分たちでつくりたい。コーディングからはプロにお任せしたい」という相談にも対応しています。こうした口コミが広がって、弊社を見つけてくださった企業とお仕事をしているのが現状です。

他にはアウトソーシングを受けられている企業からの引き合いもあります。そういったアウトソーシング企業は、担当する企業の共通課題をウェブシステム化して効率よくこなしたいんですよね。弊社からすると、依頼されたお客様の向こうにもお客様がいる。私たちが打ち合わせのできないエンドユーザーからざっくりと「こういう機能がほしいんです」と言われてまして…といった相談にのることもあります。それでもエンドユーザーの目線でイメージを含ませて作りあげ、短納期で提出することも。説明が難しいんですけど(笑)。


そうなると予算もどんどん膨らまないでしょうか? 

柚木 ご依頼いただいた時点で大体予算は決まってしまっているので、予算の範囲内で、なるべく現場の人も苦労しないものをとは思っています。案件にもよりますが100〜300万円ぐらいの規模感が比較的多いでしょうか。1000万円を超えるプロジェクトもありますが、弊社のリソース状況のこともあるので相談させていただきながら進めるようにしています。


システム開発でそのぐらいの予算感だと気軽に相談できそうです。

柚木 弊社ではパッケージ化はしていませんが、代理店がパッケージ化した形で提案されて、似たような事例のものを繰り返し依頼してもらうということもあります。ただ初めてお会いする方に「何が得意ですか?」と聞かれることが多く、これに答えるのが一番難しい。ただ、お話をうかがった上で、「弊社のやりたいことを過去の案件でやったことはありますか?」と聞かれれば、大抵のことが「ありますよ」とは答えらえる。そこをベースに話を膨らませていくことが多いです。

また、弊社では運用する環境に特に制限がなければ、スタンダードなサーバー環境で動作する弊社のオリジナルのウェブシステム開発キットがありますので、その仕組みを利用してローコストかつスピーディーな開発をご提案することが可能ですね。


御社に依頼すれば、ふわっとした悩みやアイデアでも、形にしてくれる印象です。

柚木 そうですね。要望だけをイメージされた状態で依頼されてくるお客様もいれば、「別のところにすでに発注しだけど納期が間に合わないので、ここだけお願いしたいです」と依頼されるケースもあります。こちらも当然100%受けられるわけではないですが、割と急な案件にも対応していますね。


岡山を拠点にしながらも全国から依頼が集まることも、信頼の証ですね。

柚木 私自身は、技術肌なので、営業は本当に不得意。受注率は高いですが…。“こうやったほうが弊社は儲かるぞ”と考えるよりも先に、“長く使っていただけるには”、“効率良くしてしまってコストダウンを実感してもらうには”、“結果、保守の手間の掛からないものなら保守費用は不要にしても良いか”と考えてしまう。しかし、このような考えでも私が必要と言えば予算を増加してくれるなど理解は得られているので、信頼はしていただけているのかなと思っています。


“ミスのない”プログラミングを目指し、本当に必要な人に必要なものを届ける

創業時からコロナ禍を経て事業に変化はありましたか?

柚木 2000年の創業当時は、レンタルサーバー事業のみでした。私が代表になった頃くらいから、ウェブコンテンツ制作も手掛けるようになりました。器(サーバー)を提供するのであれば、中身(コンテンツ)も提供しよう。ということで、ウェブコンテンツ事業を入れることにしました。

レンタルサーバー事業も引き続きサービス展開していこうとしていたのですが、当時の展開しているサービスのみでは安さだけで薄利多売になってしまうため、大手の同業者の料金には歯が立たない。コンテンツ制作とサーバー構築をワンストップで提供できる事を強みに、要件に応じたカスタマイズを行えるサーバープランを用意し、サービス展開をしていきました。

今ではAWS(アマゾンウェブサービス)やAzureの構築や運用保守を請け負えるようになりました。

コロナ禍以降はお客様のほうでも特にIT導入に積極的になられたように思えます。非対面での事業の構築に初めて取り組む方や、運用業務をデジタル化するためのシステムの導入を検討する方が増えたように思えます。


お客様からの要望に変化はありませんか?

柚木 コロナ禍と同時期あたりから国内でもSDGsを意識する企業が増えてきています。それに伴って、これまで社内ネットワークの社内システムだけで運用していたものから、ウェブ版への移行を必要とされるケースが増えてきたようです。社外のネットワークからのアクセスをできるようにして、グループの社員に向けて情報を発信したり、拠点間で情報を共有したりとウェブ化の必要性が高くなったようです。

そういった必要に迫られる中で、Webコンテンツやシステムを自分たちで作ろうとして、「途中までできたけど、ここから先はよくわからない」というお客様も多いですね。「ワードプレスみたいな無料ソフトを使えば全部自分でできそうだと思ったんだけど…」みたいな。ただ、実際に満足いくところまで作り込もうと思ったら覚えることが多すぎるし時間もかかりますからね。そこを踏まえて「導入はしてみたけど、思ったように使えなかったので何とかして欲しい」と弊社に相談に来られます。実際は、セキュリティや個人情報のことも考慮する必要があるのでそういった方面のアドバイスや実装も評価いただいています。

これらはコロナ禍以降、IT導入を積極的に検討している方が増えているからこそのご相談。近年、ウェブコンテンツ・システムの重要性・可能性がより広まっていると感じています。


システムやウェブの困った際の駆け込み寺のようですね。

柚木 “ウェブ制作が強い会社として仕事をしていく”という強い思いがあります。いろいろなご相談をいただくことはありますが、何でも屋ではありません。

よく“高い品質”といいますが、私の思う品質(クオリティ)とは、「たくさん機能がついている」「難しい処理ができる」ではなく、「ミスなく確実に期待に応える」ということだと考えています。実装するコンテンツのクオリティをお客様のご要望以上にして提供していくことにブレがないようにはしています。

既存のローカルシステムのウェブ化をお受けするようなご相談も多いですが、そのまま再現することを目指すのではなく、ウェブを活かした形の再提案を心がけています。


御社としては、どのようなお客様を求めているでしょうか?

柚木 弊社はお客様が持ち込まれたアイデアを一緒に深掘りしていける会社なので、「やりたいこと」を持たれているどんなお客様でも歓迎します。お客様を主役にしたい。営業優先で「うちならこれもできますよ。あれもこれもやりましょう。」と無理に押し込んでいくことは絶対にしたくないんです。本当に必要な人に、必要なものを届ける。ドラえもんのような存在になれたら、と思っています。


DX化する未来には“AIに何をさせたいか”まともな判断ができる人が必要

最近では画像・テキスト生成AIが出てきて、これまでの仕事の流れががらりと変わると予想されています。こうした未来に対してはどのようにお考えですか?

柚木 この手の話は好きなので長くなってしまいそうですが(笑)。

最近のAIは、“単純な条件分岐を使って回答集の中から応える “というレベルから、”ビッグデータを元に学習して、問いかけに最適な回答を作り出す“といったところまで進歩していますね。本当に凄い時代になったと思います。

ですが、実際に使ってみるとまだまだ未熟であると感じます。実際に、AIに私がイメージしたイラストを描かせてみると、キーワードは踏まえているけど、まったく期待したものではなかったり、自分の名前でエゴサーチをしてみると、まったく違う経歴が混ざっていたりと不満が残るものになりました。こういったものが、イメージ通りのものが作られ、正しい情報で返してくるようになれば、実用的なレベルで仕事にもつかえることになるでしょうね。

ただし、AIを実用的なものに成長させる前に解決すべき問題もあります。実用できるものは悪用もできます。どんな良い技術も、実用よりも前に悪用が一世を風靡する傾向があります。例えば今でも自動翻訳をつかったスパムメールがありますが、最近のものでも、違和感のある日本語で構成されているので、引っかかる人も少ないと思います。

ですが、これが違和感のない文章をAIが作れるようになってしまうと、人間はどうやって区別するのでしょう。AIが本物そっくりな偽のウェブサイトを用意できたり、フェイクニュースを事実のように紹介するようになってくるとウェブ全般の情報に信用性がなくなってくると思います。

インターネットを流通しているメールの大半はスパムメールです。スパムメールにAIを活用させる前に、スパムメールや詐欺メールを食い止めるためのAIを実用化してもらいたいと考えています。正しい情報や期待する情報をいかに正確に学習させるか、悪意のあるものを排除できるかといった研究が必要だと考えます。


「AIでのクリエイターが流行ったら、多様性がなくなる。だから最終的には本気な人たちだけが残っていく」というようなことを言う方もいます。

柚木 AIが作り出してくれるものは、結局のところクリエイター側がイメージしたものを目指すことになります。イメージしているものが単純だと似通ったものを生み出すことしかできません。でも、これは実際に人間のクリエイターにも言えることで、独自のイメージを作り出せないクリエイターは誰かの真似でしかなく、多様性は見出せていません。そういった方の仕事がどんどん減るとは思います。

AI化が進んでいったとしても、それを学習させるのも利用するのも「人」です。人は新しいものや、インスピレーションを求める欲求がありますが、そういったものは最終的にも人にしか生み出せないのではないかと考えます。




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