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インタビューインタビュー

「SF映画の世界を現実に」 誰もがAIにアクセスできる体験でプロアクティブな社会に

AI
「SF映画の世界を現実に」 誰もがAIにアクセスできる体験でプロアクティブな社会に
仕事効率化「ミニアプリ」のプラットフォームを提供するエイチ。代表取締役を務めるのは、これまでランキングサイトの先駆けとなった「ベストマニア」やベビー用品レンタルECなど多くの事業を手掛けてきた伏見匡矩さんです。「これまで固定化されていたモノ・スペース・人がインターネットの力で流動的になっていく」ことに早くから気づき、AIを活用したビジネスを展開。そんな伏見さんのこれまでの経歴や叶えたい未来を語っていただきました。

目次

株式会社エイチ
代表取締役
伏見匡矩氏

1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、P&Gマーケティング本部入社。2011年にリクルートから10億円の出資を受け、エモーチオを設立し取締役に就任。2013年に現在の前身となるココロイロを設立し、代表取締役に就任。2014年、リジョブCSO兼顧問後に株式会社じげんに20億で会社を売却。2015年、エイチを設立。2018年、エイチワークスをリクルートと共同事業として創業し、代表取締役就任。2019年エイチに事業一本化。


“映画の世界の話”を現実に。つくりたい世界観へ邁進


これまでの伏見さんの経歴を拝見しましたが、いくつかの会社で多くの事業を手掛けられてきましたよね。

伏見 そうですね。エモーチオで運営していた「ベストマニア」をご説明すると、当時のGoogle検索は今と比べるとかなり未発達でした。“マンガ おすすめ”とかで検索すると、ただランキングが出てくるような時代だったんですね。それ以上の感性や感情的のものを入力しても、うんともすんとも言わなかった。それで“ちょっとやる気を失ったときにまた頑張ろうと思えるマンガBEST3”みたいなシーンやシチュエーションを切り出すことにより、通常のランキングよりコンバージョンが10倍近く跳ね上げることに成功したんです。つまり人は、自分のコンテキスト(文脈)に合っているものを探していると感じました。

例えば、会食会場やデートの個室を探しているときに、食べログのランキングを見たところで意味がない。ニーズがあるのに無視されている。“人のニーズを引き出して提案する”ということが、今後は伸びるだろうと思いました。

 

ココロイロ時代には、ベビー用品のレンタルサービスで国内トップクラスのシェアに躍り出ました。

伏見 結婚して子供が生まれ「Babyrenta(ベビレンタ)」を運営しました。当時は同じようなサービスを展開している企業は少なかったことと、参入していたとしてもWEBには弱かったんですね。「ベストマニア」でSEOも理解していたので“これは絶対に勝てるな”と。僕自身のプログラミングの勉強も兼ねてサイトを作ったんです。そのときに“レンタルってすごく素晴らしいな”ということも感じました。インターネットを通じて、お金がある人だけじゃなく、いろんな人に物が行き渡る。当時は「SDGs」や「シェアリングエコノミー」という言葉がまだ使われていない時代でしたが、モノだけではなくスペースもそうだなと思いました。例えば、みなさん会社説明会や社員総会を開催したいなとなったとき、どんな雰囲気がいいかなどニーズはバラバラなわけです。そんなとき、人の細かなニーズを引き出してレコメンドできたらいいんじゃないかと。“AI×コンシェルジュ”の考えが生まれました。



それから“人”のシェアリング。インターネットにより、明らかに“働く”ということも解体されてバラバラになっていく。流行る領域だと思い参戦しました。

 

モノ・スペース・人。すベてシェアできるということに辿りついたんですね。

伏見 こうやっていろいろなことをしていくと、シェアにしていくべき領域ってもう無限大にあるんですよね。当時30歳過ぎだったのですが、“このまま事業を無限につくり続けて意味があるんだろうか?”と自問自答したんです。“それで稼いだとしても何か違うな”という違和感がありました。本当に世の中を変えていいた企業のGAFAは、一つの仕組みをちゃんと突き詰めて本質的なことをやっていたはず。このままやっていても、僕にとっては多分意味がないことだとわかりました。




そして現在のエイチで事業を一本化された。

伏見 “AIが来る”ことは分かっていたので、「AIでレコメンドできる世界観を到来させる」ことをビジョンに掲げて知恵を振り絞りました。AI×コンシェルジュのプラットフォーム化。今はようやくChatGPTが普及し始めましたが、当時からすると映画のような世界を描いていたかと思います。SF映画でよく見掛ける場面がありますよね。「今からデートするんだけど、どこに行ったらいい?」とロボットに聞いたら教えてくれるような。それに対し「もっとムードのあるお店がいい」と言えばさらに提案してくれるような世界。これは現実でもできる世界観だと思いました。「エイチ」での事業が“AI xコンシェルジュ”という部分に近かったので、これだけを残して進化させていったという経緯です。

 

現在の具体的な事業内容を教えてください。

伏見 「AIアシスト叡知チャット」では、話しかけるだけでChatGPTのような生成AIも使えるし、問い合わせ先を自動的に回答したり、出張や会議室の手配をしたりもします。法人の場合だと、経費精算がなくなり郵送も代行する。このようなことできるサービスです。












従来のChatGPTはQ&Aを500個ほどつくって、かつメンテナンスも必要だったんですよね。それが簡単Q&A管理で、類義語や単語登録が不要なのでメンテナンスもラク。質問テンプレートとして、汎用性の高いテンプレートを無償提供しています。対話形式も、一問一答形式・シナリオ・簡易選択形式・アクションフロー形式・有人連携オプションと、問い合わせ内容に寄り添ったものに。

チャットのイメージ。社内文書も検索することができる











通常のITリテラシーの人がChatGPTをいきなり見せられても、結局どう使うのかよくわからないと思います。それを、使い勝手を良くして、一般の方でも使いやすいツールにしています。




削減時間の“見える化”で将来的な顧客獲得を実現


当初「ミニアプリ」は、どのような方向けにつくられたものなのでしょうか?

伏見 それは僕らも課題点ではあって。「何でもできそうだけど、何ができるのかわからない」とはよく言われるんですよね。プロダクトアウトの発想になってしまっている。ただ、まぁいいかとも思い始めていて。海外ですごく流行っているビジネスツール「Lark(ラーク)」というのがあるんですが、明らかにペインはあるんです。僕たちもこれを取り入れて“削減できる時間”が見える化できるようになっていく。こんな風に、まずは認知を取っていくしかないと思っています。


いわゆる総務の仕事などは、業務フローが決まってしまっている。業務フローをどう変えていけるかで活用も決まりそうです。その点でいっても「AIアシスト叡知チャット」は非常におもしろいなと思いました。

伏見 社内のチャットボットとしては、非常にレベルが高いと思います。出張手配とか経費精算とかって、やっぱり無駄ですよね。それに対して課題感を持っている人はいる。

面白い事例もあります。他社と共同で行っているAI電話というものがあるんですが、みなさん引っ越すと火災保険など更新しないといけませんよね。でもこれって請求する企業が手紙を送っても無視されて、いちいち電話をする羽目になっていたんです。それを「火災保険満期のお知らせを郵送をしています。更新の手続きをお願いします」とAI電話にしたことで、更新率UPに繋がった。みんな気づいてないだけで、今のテクノロジーを使えば、こんなことも簡単にできてしまうんです。

 

そもそも企業側がこうした潜在的なニーズに気付くことが必要ですが、“大変だな”と思っていても、それをデジタルで解決しよう、という発想にはならないとも感じます。

伏見 形にできる僕らがプッシュしていきたいと考えています。ボルテックスという企業さんとは「VORT AI assist」を共同リリースしましたが、これは例えば“ビルの空調が効かない”など、いちいちビルに電話をしないといけなかったのを自動化できるというもの。これをテナント2,000社ほどに無料で配りました。まずは無料にすることで、ユーザーを広げていく。今はとにかく“何時間削減”などより多くの事例を作っていくフェーズだと考えています。


社内手続きが多い大企業は遅れをとっていく

伏見さんは、今の日本の企業のDXをどのように捉えていますか?

伏見 大企業は“壊せない病”になっていますよね。新しいものが入ってきたからやってみるよ、くらいの感覚でDXをやっているような印象で、業務フローは変えずにデジタル化だけする。本当に一歩ずつしか進んでいない。それでペインがあるのかといえば、別にない気もする。「みなさん悩んでいますか?」と聞いても、別に悩んでいるわけでもない。

“紙をどうにかしたい”っていうニーズはあると思うんです。ただそれはあくまでニーズなんですよね。「ChatGPTを導入したい」という事業者さんはたくさんいらっしゃいますが、導入したいだけで何をやりたいかがわかっている人はほぼゼロ。具体的にどの業務がどうなるのかという解像度で物事が見られる人は、事業者も含めてまだそんなにいないんですよね。“とりあえずAIの流れに乗っておかないとマズい”みたいな危機感だけ煽らされて導入している企業がほとんどではないでしょうか。

 

経済産業省の方も仰っていましたが、大企業はレガシーシステムを課題と捉えつつも問題を先延ばしにしている状態。御社のターゲットは大企業ではないと思いますが、こうした課題にどのように向き合っていきますか? 

伏見 100〜200人ぐらいの中小企業が変わっていけばいいと思うんですよね。 “効率性が悪すぎて遅れをとる”という実感を持たないとダメだなと思いますよ。こんなにオールド産業が残っているのは、日本だけではないでしょうか。残念ですが次の世代に変わっていくのを待つしかないとも思っています。


 

最後に、御社は今後ビジネスを通じてどのようなことを実現していきたいですか。

伏見 人類のAIへの滑らかなアクセスを実現して、人の志に点火するということ。“自分ができる”という経験は肯定感を生みます。自分の感情を認めてもらえる。その経験こそが、プロアクティブにこれをやりたいんだ!という意欲につながると思っています。

元々マーケティングをしていたこともあり、常々感じているのですがほぼ同じ成分の飲み物でも見た目を変えてCMを流せば売れる。これって“人の思い”という部分が置き去りにされている気がします。人の思いにちゃんと問いかけることができたら、その人にとっての正しい答えは出てくるはず。それにより動き出すことが、あると思うんです。僕たちの「人×AIの融合」で、その人がやりたいと思うことを引き出していける社会をつくっていきたいですね。





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