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不確実性の時代(VUCA)の「新規事業」のススメ 第2回 新規事業に求められるのは「お客様の課題を“自分ごと”として捉えられる」人材

不確実性の時代(VUCA)の「新規事業」のススメ 第2回 新規事業に求められるのは「お客様の課題を“自分ごと”として捉えられる」人材
これからの企業が生き残っていくために必要な「新規事業の創出」。失敗しないための新規事業の作り方第2回目は「プロジェクトメンバーの組成」について株式会社アバージェンス副社長の葛西幸充氏にお聞きしました。メンバーは指名制よりも公募制の方がプロジェクトは成功しやすく、何より重要なのはメンバーの「熱量」。人数や構成比、上手くいかないケースの共通点のほか、外部に一部を委託したり外部からヘッドハンティングを行った場合の方法などについてもうかがいました。

目次

不確実性の時代(VUCA)の「新規事業」のススメは、第1回から第3回までございます。

第1回 成功確率を上げる新規事業への取組み方

第2回 新規事業に求められるのは「お客様の課題を“自分ごと”として捉えられる」人材 (本記事)

第3回 “一人のお客様”を見つけることが突破口になりビジネスの広がりを加速させる


「リーダー的・行動力がある・技術に明るい」人材に需要がある

新規事業を行う際の必要な要素を確認した上で、次に必要なのはプロジェクトメンバーの組成かと思います。どのようにメンバーを選定していくべきでしょうか。

葛西 主に2パターンあります。

1.新規事業の立ち上げメンバーがメンバーを指名する
2.社内公募でやりたい人に手をあげてもらう

2の「社内公募でやりたい人に手をあげてもらう」方が成功する確率が高いように思います。やはり新規事業は辛いことが多いので、それに耐えられる耐性があるのか。自ら手を挙げた人材のほうが、その耐性はあるかと思います。そのあたりのヒアリングをコンサルティングファームが請け負うことが多いです。

指名の場合も公募の場合も、以下の3パターンの人材が必要です。

1.リーダー的な方(野心がある方)
2.行動力のある方(営業寄りの方)
3.技術に明るい方

できれば異なる業種・職種で構成されるのが理想的です。メンバーの年齢層は、公募の場合は関係ないことが多いですが、30代前半〜40代が多いですね。


最初のメンバーは何人くらいで組成されるのが一般的でしょうか?

葛西 一つのテーマに応じて、0→1を生む段階では3〜4人でもいいかなと思います。1ユニットが3〜4人で、それがいくつかあるイメージです。各ユニットが別々のテーマに取り組んでみて、1つ残ればいいかなという感じですかね。最初からユニットに分かれるというわけではなくて、まずは未来像を描く。そこで“このあたりが事業機会になりそうだな”と予測し、お客様の課題が見えて取り組むことがある程度決まったタイミングで分けるイメージです。


過去のDX王の取材でも「社内公募で手を挙げた人材は会社に何かしらの不満を持っており、その熱量が新規事業に向かった」というお話を聞くことがあります。「他薦ではなく自薦で、やる気のある人をまず募集する」ということですね。

葛西 テクニックやスキル以上に、熱量がいちばん大事だと思っています。特に新規事業はお客様に新しいものを提案しに行かないといけないので、そういったことに抵抗がない方がいいかと思います。ただ、スキル面で重宝されるのは技術者。プログラミングまでできなくてもいいですが、最近はテックが絡むことも多いので、先端技術に明るい方は最低限必要な構成だと思います。数字に強い方もいると心強いですね。



コンサルが入って熱量を測ろうとする場合、どのような問いかけをするのでしょうか。

葛西 まずは「現在のお仕事は何をしていますか」「現状に不満はありますか」「どういうときに自分の力を発揮できると思いますか」など、基本的な質問をしています。過去にあった回答としては、「工数ベースシステム開発・導入プロジェクトは先が見えているので、そうではないビジネスで新しい価値の創出に貢献したい」と表明される方もいらっしゃれば、「お客様に対してシステム導入をするまでのサービスしか関わらないので、その後に出てくる課題解決のサービスをつくりたい」と具体的な話をされる方もいらっしゃいます。また、社会課題に興味があって、というお話をされる方もいますね。

顧客課題でも社会課題でも、その課題を自分事に捉えられる方。課題に出会ったときに“自分がなんとかしなきゃいけない!”と思えるかどうかが、熱量だと思うんですね。新規事業に掛ける思いや新規事業を通してどんな世界をつくりたいか、“想い”のほうが大事だと思います。


課題に対して原体験があると熱量も変わりそうですよね。

葛西 あるのがベストですが、ない方ももちろんいます。擬似体験でもいいので、その課題に触れたときに自分が解決したいと思えるか。普段の仕事のやり方として、“お客様から表明された課題を自分事として捉えていたか”だと思います。ヒアリングをしただけでは、どう仕事に向き合ってきたかまでは、なかなかわかりません。ただ一緒に新規事業に取り組む中で、人生を掛けて解決したいと思っているかは見えてきます。

新規事業を計画する中で、来週までに、再来週までにこれをやらないといけないよねってことが多発します。そこであまり躊躇せずどんどん進められる方。お客様にアポを取り仮説検証する業務が発生します。営業職の方のほうが向いているとは思いますが、技術職でもオープンマインドな方であれば対応できることもあるでしょう。フットワークが軽い人、というイメージです。


新規事業のスタートに“評論家はいらない”ということですね(笑)。

葛西 そうですね。そこは正直、年齢と比例する部分があると思います。人生経験が多い人ほど過去の成功体験に縛られがち。思い込みが少ない方が新規事業においては貴重だと思います。


新規事業への思いがあっても会社の思いと合致するとは限りません。

葛西 そういうときは軌道修正できます。最終的には自分の想いより、会社の想いの方が大切です。自分の想いが強い人であれば、自分で起業する方がいいです。大企業がお金を掛けて取り組もうとしていることに対し、「こんなことがしたい!」と全く別方向の提案をしても、企業側は簡単にYESとはいえないですよね。


上手くいかないメンバーの共通点は「他人事」であるということ


新規事業が上手くいかなかったケースのメンバーの傾向はありますか?

葛西 先ほどの話と表裏一体で、“お客様の課題に対して自分事として捉えられない人”です。他人事な方ですよね。

特に上流工程の企画部分は、そこが事業の肝となります。経営層でも、自分は何もしてないのに批判ばかりする人っていますよね。まだ0→1の段階で「それって本当に儲かるのか?」と言うとか。もちろん、企業の新規事業なので最終的にマネタイズできるかどうかという視点は非常に重要ですが、最初期の段階ではその議論は不要だと思います。


自分の評価になるかもわからない新規事業に時間を費やすというのは、なかなかしんどいものがあると思います。チャレンジをしているのに、新規事業が失敗したことでその人のキャリアにも失敗の烙印が押されてしまう。離脱の気持ちがわからないでもありません。

葛西 サラリーマンならそうですよね。やっぱり既存事業をやりつつ新規事業もやって、新規事業に残りの会社人生をかけるか問われたら、そこまで本気ではなかったという話にもなると思います。

いざ事業計画をつくるときに「私は抜けます」というパターンもあります。「既存事業が忙しくて、これ以上新規事業に工数を割けない」という理由でやめられる方が多いです。メンバーの熱量が下がっちゃうタイミングって、あるんですよね。


いいコンサルティングファームの判断基準は「リスクを取り、伴走する」かどうか


外部のコンサルティングファームと組む方が、事業としての成功確率は上がるのでしょうか?

葛西 最短距離でいけるとは思います。リクルートさんのように新規事業の経験を積んでいる企業は依頼する必要はないと思いますが、そうでなければ伴走してくれる外部を入れたほうが早いと思います。

ただ、注意していただきたいのは、新規事業をコンサルに丸投げするのは、やめたほうがいい。企業側の熱量が全く入ってないものになってしまってはうまくいかないからです。そもそもコンサルが考えようが、企業が自分たちで考えようが、新規事業の成功確率ってすごく低いんです。


失敗の確率は、数値的にはどれくらいですか?

葛西 世間一般的な成功確率が10%だとすると、コンサルティングファームが携われば20%になるというくらいのこと。早いタイミングで成功するかの判断をするプロセスがあるかどうかが大きく左右していると思います。


上手くいかなそうなものは、コストに縛られない段階で見切りをつけるということですか?

葛西 そうですね。弊社の場合だと、モノづくりを行う前に、いくつかゲートを設けています。事業計画をつくるタイミングで、モノがあるという場合はほぼないです。最終的には事業計画をつくったタイミングで投資をするか判断してもらい、ある程度のモノができたら、もう一度事業計画を数値化するというプロセスを踏んでいます。


先ほど「伴走してくれるコンサルを選ぶべき」というお話がありましたが、新規事業立ち上げにおける伴走とは、どういうことでしょうか。

葛西 コンサルがアドバイザー的に入ったり丸ごと請け負ったりというのは、伴走にはならないです。アドバイザーは伴走というより、評論家に近いです。弊社の場合、我々も考えるし、材料を提供するし、ディスカッションしてよりいいものをつくっていくアプローチをしています。

また、本当にいい新規事業であれば、ファンドが出資をするところまで描いているコンサルティングファームもあります。VC(ベンチャーキャピタル)を連れてきたり、VCと先に座組みを組んでいたりして、いいものがあれば投資をするという流れです。そうすれば、コンサルも本気でやっていると思ってもらえます。「コンサルはリスクを取らないじゃないか」と言われることもありますから。



以前DX王で取材した大丸松坂屋百貨店さんや明光義塾さんも、ヘッドハンディングされた方がDX推進のリーダーとしてジョインしているのですが、最初は苦労されたというお話をしていました。その2人は成功事例でしたが、外部から人が入ることは、企業にとってもいい効果を生みやすいのでしょうか。

葛西 外部から呼んだリーダーでも、社内からリーダーを募っても、どちらもありだと思います。自分たちのなかでリーダーが生まれてくればいいですけど、自分たちじゃ変えられない部分もあるだろうし、世の中のことや競合のことを知らないというのはあると思いますので。

外部からリーダーとして迎え入れる場合、ある程度権限を与えないと厳しいですよね。プロ経営者を派遣して会社を再生させるのと似ていると思います。


短期で結果を出さないといけないとなると、抜本的な変革が必要になることが多いですよね。

葛西 外部から来た人たちに対して、周りはお手並み拝見となりますよね。それは協力者であろうがなかろうが、最初に目にわかる成果を出すのは大事だと思います。


外部から入る場合、周りの人たちを味方にさせる手法はあるのでしょうか?

葛西 弊社の場合、新規事業ではあまり行ったことはないですが、売上向上やコスト削減のプロジェクトではを、最初の4〜5週間くらいでクイックチャレンジをするんです。早期改善として、何か一つ変えてみましょうという活動です。そこで成果を出すことができれば、周りも、本人たちも乗り気になってきます。それによって、プロジェクト全体が勢いづくというのはあります。例えば、営業だとわかりやすいですが、“何年も訪問してないお客様に対して徹底的なヒアリングをやってみたら見込み案件が大量に出てきた”とか、そういうものがクイックチャレンジです。


営業において掘り起こしはオーソドックスですよね。

葛西 “できていないけど、絶対にやったほうがいいこと”ってありますよね。我々はそういう課題を特定して、原因を自責で捉えてやりましょうと促します。別に過去のことは問わないので“なぜできてなかったのか”“どうすべきなのか”を洗い出して、「いちばん成果が出やすいのはどれですか?」とみなさんに選んでもらいます。

第3回目は「リスクの想定」についてお話をお伺いします。

この連載の記事はこちら↓

不確実性の時代(VUCA)の「新規事業」のススメ 第1回 成功確率を上げる新規事業への取組み方

不確実性の時代(VUCA)の「新規事業」のススメ 第2回 新規事業に求められるのは「お客様の課題を“自分ごと”として捉えられる」人材

不確実性の時代(VUCA)の「新規事業」のススメ 第3回  “一人のお客様”を見つけることが突破口になりビジネスの広がりを加速させる

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<お話をうかがった方>
株式会社アバージェンス
副社長
葛西幸充氏

プラウドフットジャパン(アバージェンスの前身)、シグマクシス、PwCを経て、2016年(株)アバージェンス入社。経営コンサルティング歴18年。米MBA取得。営業改革・原価低減・生産現場改革、SCM改革などマネジメント改革を通じた収益改善や、新規事業創出・特定業種戦略立案・中期経営策定などを経験する。アバージェンスの新規事業として立ち上げた会員数約180名を誇るオンラインサロン『CLUB RIGHT HAND』のオーナーであり、YouTubeチャンネル『CRH』運営も行う。





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